Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/02/05
Update

『女王陛下のお気に入り』キャスト。ジョー・アルウィン&ニコラス・ホルトのインタビュー【お気に入りの男たち】FILMINK-vol.1

  • Writer :
  • FILMINK

FILMINK-vol.1 「Joe Alwyn and Nicholas Hoult: Favourite Men」

海外の映画情報をオーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連動リンクしてお届けします。


©︎FILMINK

FILMINK」から第1弾としてピックアップしたのは、2019年2月15日(金)から日本公開されるヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』。

注目の俳優ジョー・アルウィンとニコラス・ホルトのインタビューをお届けします。

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら

ジョー・アルウィンとニコラス・ホルトが作品の魅力を探る

ヨルゴス・ランティモス監督作品の『女王陛下のお気に入り』は、主演の3人の女性だけでなく脇を固める男優も話題に。

今回は2人の助演俳優のジョー・アルウィンと、ニコラス・ホルトのインタビューをお届けします。

Nicholas Houl(1989年12月7日生まれ、イギリスの俳優)

──『女王陛下のお気に入り』は大変“風変わりな”作品です。初めて脚本を読んだ時、本作に対してどのような印象を持ちましたか?

ニコラス・ホルト:この作品をとても気に入り、時間をかけて読み込みました。私はランティモス監督の他の作品も大好きなんですよ。

『女王陛下のお気に入り』は時代劇ですし、真実に基づいた物語ですからこれまでの監督の過去作品とは異なっていたし
詳細に書かれていないところもあったけれど、私は監督の意図を感じ取ることができました。

時代劇の役柄に挑む秘話

──役を演じるにあたり、多くのことを準備しましたか?

ジョー・アルウィン:『女王陛下のお気に入り』の舞台となっている時代や歴史について監督とは最後まで対話をしなかったんです。監督はドキュメンタリー的な作品にしようとしていなかったし、その時代をとらえようとはしていなかったんです。

監督はキャラクターの人間関係について探求することを求めていました。私たちがこの異常とも言える世界にためらい無くに飛び込めるように、時代についてこだわったり、社会的常識にとらわれないことを望んでいました。

ニコラス・ホルト:私は監督に「このキャラクターはどんな人物だと思いますか?」って聞いたんです。すると監督は「分からないよ、まあ、すぐ分かるでしょう」って。

2週間はリハーサル室で私たちはダンスやハミングや歌の練習をしました。この作品はまるで舞台のようで面白くユニークでしたね。

──巨大なかつらを着用するのはどのような経験でしたか?

ニコラス・ホルト:名前が違う3つのかつらがあったんですよ。“Babs”っていうのがメインのかつらでした。

そのかつらを着用している間はひたすらじっとしていなくてはいけなくて。衣装デザイナーのサンディ・パウエルが「ヒールで歩く練習をしなくちゃいけませんね。だって、普段の歩き方では歩けないもの」って。

私自身が演じるキャラクターそのものになるように、そのヒールで慣れた感じで歩く練習をしました。

でも撮影現場には、周囲にたくさんのキャンドルがあって、私が練習のためにウロウロしていると、いきなり誰かが「あ、あ、あ、危ない、そこを出て!」みたいに言うもんだから、危うく火がついてしまいそうになって…。私は「引火性の男」でしたよ。

──時代劇作品に出演するのは苦労しましたか?

ジョー・アルウィン:ええ、かなり。だけれどヨルゴスはあまり(時代劇ということに関して)厳格ではありませんでした。

監督は私たちが(その時代の人物として)正確に立っているかや、姿勢をとっているかとか、お辞儀をしているかなどには焦点を当てていませんでした。

彼はキャラクターたちの人間関係とそれを取り巻く世界に焦点を当てたかったのです。監督が中世という時代にとらわれていなかったので、とてものびのびと演じることができました。

Joe Alwyn(1991年2月21日生まれ、イギリスの俳優)

『女王陛下のお気に入り』と他の作品について

──本作の後、他の映画に出演されましたか?

ジョー・アルウィン:『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』という本作とは全く異なる時代劇と、ジョエル・エドガートン監督の『ある少年の告白』、そして『オペレーション・フィナーレ』という映画に出演しました。

──ジョエル・エドガートンとの映画製作の経験は、いかがでしたか?

ジョー・アルウィン:素晴らしかったです。

俳優から監督に転向した方とは今まで仕事をしたことがなかったので、エドガートン監督との仕事は大変興味深かったんですが、それだけでなく、彼は回想録を映画に適応させて、全編にわたって驚くほど丁寧に器用にこなしていました。

そしていつも冷静、ポジティブで、最高の環境を作り出していました。

私は『女王陛下のお気に入り』の撮影後、『ある少年の告白』のキャラクターを1週間で演じました。もうすでに撮影が始まり、制作されている作品の世界に飛び込むことはかなり難しいことです。それは動いている踏み車から自分の足の踏み場を見つけるようなものですからね。

『ある少年の告白』は非常にヘビーな題材を取り扱う作品ですが、それでもエドガートン監督は皆をリラックスさせることが得意でした。


JOE ALWYN AT UK PREMIERE OF THE FAVOURITE. PHOTO BY GARETH CATTERMOLE/GETTY IMAGES FOR BFI

──『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』『女王陛下のお気に入り』は大変異なる時代劇と仰いましたが、具体的にはどのような点でしょう?

ジョー・アルウィン:例えば、『女王陛下のお気に入り』のリハーサルの2週間は床を転げ回ったり踊ったり、ただ変なやつみたいに振る舞ったんです。

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』のジョージー・ルーク監督は、もともと劇場演劇の監督でこの作品が映画デビュー作ですから、より演劇的、劇場に基づいたアプローチのリハーサルを行いました。

それは一種、「歴史の本を現実の世界に引っ張り出してみよう」といったもの。部屋には歴史家がいましたし、その時代の特徴やキャラクターたちについてよく話し合いました。

それぞれの作品で、完璧に異なった経験することは、とても興味深いものでした。『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は、より伝統的な制作過程だったと思います。森の中を飛び回ったり、走り回ったりしない映画の性質と(リハーサルの仕方)はよく合っていましたから。

映画をめぐる環境の変化

──Netflixと伝統的な映画からの脱却について、あなたの考えを聞かせてください。

ニコラス・ホルト:とても難しいことだと思いますが…。この前、“2018年の映画の鑑賞方法”を読んだんです。Netflixを立ち上げて5分10分スクロールして、ここに見たいものは無いと判断する、ドキュメンタリーをクリック、携帯を取り出していじる、映画に特に注意を払わないでベッドに行く(笑)。

それは異様です、だって映画は明らかに美しいものですし。それに映画館に行ってそこに座り映画に集中、自分の全てを完璧に作品に委ねる体験は異世界との出会いのなのです。

一方で、Netflixの利点は製作の面で多くの機会があることかな。これまでになかったものが手に入るプラッットフォームがあるのですが、何を見るかを選択するのがとても難しくなってきています。

ジョー・アルウィン:私は大きな劇場に座り、大画面で映画を見ることに勝るものはないと思います。

値段が高いから映画館に行く人々がどんどん少なくなること、スクリーンがリュックサックやらポケットやらに収まるサイズに縮小されることは悲しいことです…、しかしNetflixは世界を広げ、映画製作の機会を多くの人にもたらしました。

そこでしか見られない作品へのアクセスもね。それは素晴らしいことですから、Netflixと映画館の鑑賞問題を扱うのは難しいですね。

ニコラス・ホルト:加えて、映画はたくさんの人と同じ経験を共有することです。特にヨルゴスの作品なんて、劇場の半分の人は面白いと感じていても、もう半分の人は衝撃的、嫌だなあって思っているかもしれない。

同じ物事の中で、ごちゃ混ぜの反応を見ることができるんです。あなたが最高に愉快だって思っていても、他の人は「見るに耐えられない…」って思っているかもしれないって。映画館の鑑賞で面白いのは、他の人の反応を見ることでもあると思います。

ジョーとニコラスの好きな映画

──では最後に、あなたのお気に入りの映画は何ですか?

ジョー・アルウィン:私は『エターナル・サンシャイン』が大好きです。

ニコラス・ホルト:それは私も好きだ!

ジョー・アルウィン:ジム・キャリーの作品が好きなんですよ。

ニコラス・ホルト:彼は最高。私は『マスク』『トゥルーマン・ショー』『エース・ベンチュラ』など、彼の作品をたくさん見て育ったし、私は「彼のようになりたい」と思った俳優の一人でした。

ジム・キャリーとロビン・ウィリアムズ。彼を見たとき私は「うわ、すっごい!」っていう感じでしたよ…、ドキュメンタリー『ジム&アンディ』、映画『マン・オン・ザ・ムーン』は、本当に面白いですよ。ジム・キャリーは本当に彼のキャラクターに“なる”んです!

FILMINK【Joe Alwyn and Nicholas Hoult: Favourite Men
written by James Mottram

映画『女王陛下のお気に入り』の作品情報

【公開】
2018年 [日本公開:2019年](アイルランド・イギリス・アメリカ合作映画)

【原題】
The Favorite

【監督】
ヨルゴス・ランティモス

【キャスト】
オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン、ジェームズ・スミス、マーク・ゲイティス、ジェニー・レインスフォード

【作品概要】
主演を務めるのは『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011)や、ランティモス監督作品では『ロブスター』(2015)に出演するオリヴィア・コールマン。

コールマンは本作でヴェネツィア国際映画祭女優賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞 主演女優賞を受賞した他ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされました。

共演は『ナイロビの蜂』(2005)でアカデミー賞助演女優賞受賞、『愛情は深い海の如く』(2011)でニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞を受賞しているレイチェル・ワイズ。

また『ラ・ラ・ランド』(2016)でアカデミー賞主演女優賞受賞、2018年日本公開された『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』で女子プロテニス選手ビリー・ジーン・キングを演じたエマ・ストーン。

そのほか『シングルマン』(2009)『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)に出演するニコラス・ホルトも今までのイメージを払拭するような役で出演。

本作はすでに英国インディペンデント映画賞で作品賞をはじめ10部門受賞、ヴェネツィア国際映画祭では審査員大賞を受賞するなど高く評価されています。

映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ

18世紀はじめ、フランスとの戦時下にあったイングランド。

アン女王の幼なじみのレディ・サラは、わがままで気まぐれな女王を動かすほどの権力を握っていました。

そこにサラの従妹で没落した貴族の娘である、アビゲイルを乗せた馬車が宮廷にやってきます。

アビゲイルはサラの働きかけもあり、アン女王の侍女として仕えることが出来ました。

サラはアビゲイルを自分の支配下に置きますが、しかしアビゲイルは、自ら貴族の地位に返り咲くチャンスを坦々と企てますが…。

インタビュー/James Mottram
翻訳・作品データ/Moeka Kotaki
監修/Mitsunori Demachi(Cinemarche)
英語記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au

本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載されたインタビュー記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を取得して再構成したものです。本記事の無断転写は一切禁止となります

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら


関連記事

連載コラム

映画『死刑にいたる病』ネタバレ感想考察と結末ラスト解説。原作と違う最後で真犯人の正体と“病”の社会を描く|サスペンスの神様の鼓動51

サスペンスの神様の鼓動51 ある青年が、死刑が確定した殺人鬼が主張する1件の「冤罪事件」に関わったことから、次第に社会の闇へと陥り始めるサイコ・サスペンス『死刑にいたる病』。 櫛木理宇の同名小説を原作 …

連載コラム

ヘルレイザー|ネタバレ結末感想とあらすじの考察解説。ラストでピンヘッドら魔導士が“与えるもの”とは|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー50

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第50回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

映画『ハローワールド』の考察評価と内容解説。ポスト・セカイ系の特徴|映画道シカミミ見聞録41

連載コラム「映画道シカミミ見聞録」第41回 こんにちは、森田です。 今回は9月20日に全国公開されたアニメーション映画『HELLO WORLD』を「ポスト・セカイ系」の1本と位置づけ、紹介いたします。 …

連載コラム

映画『夜明け前のうた』感想評価と内容解説。“私宅監置”で消された沖縄の障害者の“実態と理由”を追うドキュメンタリー|映画という星空を知るひとよ57

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第57回 映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』は、かつて日本に存在した精神障害者を隔離する制度「私宅監置」の実態に迫ったドキュメンタリーです。 「私宅監 …

連載コラム

映画監督の二宮健が広島尾道でイベント開催!スペシャルライブ企画などで濃密な時間を【SHINPA Vol.12後編】シネマ尾道の名もなき映画イベント2

第4回尾道映画祭中止なるも、ファンの要望に応え一部開催 新型コロナウイルス感染拡大防止のあおりをうけ、2020年2月28日~3月1日にかけて開催予定となっていた第4回尾道映画祭は中止することが決定。 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学