連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第3回
映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。
今回紹介する作品は、2020年1月17日公開の『記憶屋 あなたを忘れない』です。
第22回日本ホラー小説大賞で読者賞を受賞した、織守きょうやの小説「記憶屋」を、『ツナグ』『僕だけがいない街』の平川雄一監督が、「Hey!Say!JUMP」の山田涼介と芳根京子の共演で映画化。
都市伝説と化した、人の記憶を消すことが出来るという「記憶屋」の存在。記憶を消すことは悪なのか正義なのか?記憶から消された者の苦しみとは?
映画公開に先駆け、原作のあらすじ、映画化で注目する点を紹介します。
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CONTENTS
映画『記憶屋 あなたを忘れない』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本)
【原作】
織守きょうや「記憶屋」
【監督】
平川雄一朗
【キャスト】
山田涼介、芳根京子、佐々木蔵之介、蓮佛美沙子、泉里香、田中泯、杉本哲太、佐々木すみ江、櫻井淳子、戸田菜穂、ブラザートム、須藤理彩、濱田龍臣、佐生雪、稲垣来泉
小説『記憶屋』のあらすじとネタバレ
大学生の吉森遼一は、いつもの夢を見ていました。
男と子供が向かい合っています。白い煙。黒い革靴。灰色の布。遠くでクラクションが鳴っています。伸ばされる腕を見て、遼一は「逃げろ」と誰にでもなく強く思って目が覚めるのでした。
遼一を起こしに来たのは、3つ下の幼なじみ、河合真希でした。遼一は、この夢に現れる子どもは何となく真希なのではないかと思っています。
遼一が「記憶屋」という都市伝説を始めて聞いたのは、小学校にあがる前でした。夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座って待っていると、記憶屋が現れる。そして、消してしまいたい、どうしても忘れられない記憶を、消してくれる。
遼一の祖母なども、誰かがうっかり物忘れをすると、「記憶屋が出たね」と言ったものでした。
信じていなかった遼一が、「記憶屋」に興味を持ったのは、この幼なじみ真希が関係していました。
幼い頃、聞いてはいけないことを耳にしていしまった真希は、ショックで泣いてしまったことがありました。
遼一の慰めも効かず、まぶたが真っ赤に腫れるほど泣いた次の日。大丈夫かと尋ねた遼一に真希は、「何のこと?」と、無邪気に答えたのでした。
そして、遼一が「記憶屋」の存在を確信したのは、3人目の記憶を消された存在に出会った時でした。
2人目の存在は、遼一が大学に入学してまもなく知り合った先輩の澤田杏子です。飲み会で知り合った杏子に好意を持った遼一は、たびたび彼女に声をかけるようになります。
ある日、杏子から夜道恐怖症だと打ち明けられた遼一は、なんとか彼女の力になりたいと考え、夜道を送り迎えすることに。
杏子の症状は予想以上に酷いものでした。過去に痴漢にあった体験がトラウマになり、夜道が歩けないのです。
飲み会の誘いも、遼一の誘いも断る杏子。杏子はひとり思い悩んでいました。杏子の口から「記憶屋」が飛び出したのもその頃です。
「ちゃんと、吉森と向き合いたい。甘えて、助けてもらうんじゃなくて、ひとりで出来るように」。電話口で杏子はとても辛そうでした。
その日から遼一は、杏子と連絡が取れなくなってしまいます。心配し彼女の姿を探すも、遼一は思いがけないところで杏子を見かけます。
それは杏子が、怖くて歩けるはずのない暗がりの道でした。驚き、声を掛ける遼一に杏子は、怪訝そうな顔で「誰ですか?」と返します。
暗い夜道をひとりで歩けるようになった杏子は、遼一のことを一切覚えていませんでした。何があった?遼一の頭には「記憶屋」の存在が浮かんでいました。
確信に変わった3人目は、惜しくも遼一自身のことでした。
遼一の電話に、見覚えのない番号から電話がかかってきます。相手は、以前一度、公演を聞いたことがある、高原法律事務所の高原智秋でした。
親し気に話す高原に、遼一は戸惑います。なぜなら、高原とちゃんと話をした記憶がなかったからです。
真希、杏子、自分、遼一の周りで起こる不思議な現象と「記憶屋」が関係あると確信し、遼一は情報収集を始めます。
高原は個人的に記憶屋に興味を持っているようでした。遼一は、高原の事務所を訪ね、記憶屋について話をすることにします。
映画『記憶屋 あなたを忘れない』ここに注目!
忘れたい記憶を消してくれるという都市伝説の怪人「記憶屋」。主人公の遼一の周りで起こる不思議な事件。「記憶屋」の正体とは。
ホラー小説のジャンルでありながら、感動で心が震えたと口コミが殺到したという、織守きょうやの小説『記憶屋』が映画化となりました。
2020年1月17日の公開に先駆け、原作と比較し、注目したい点を紹介します。
遼一と杏子の関係
原作では、主人公の遼一(山田涼介)は誰とも付き合っておらず、大学の先輩の杏子(蓮佛美沙子)に遼一が思いを寄せている設定です。
映画では、2人は恋人同士で、遼一がプロポーズをした翌日に、彼女の記憶から遼一の存在だけ消えてしまうというあらすじです。
遼一と杏子の関係性が原作よりも深い映画版。狙いは一体どこにあるのか?恋人の記憶から自分だけ消えるなんて、想像しただけで悲しくなります。
高原の事情
「記憶屋」を探すもう一人の人物、弁護士の高原(佐々木蔵之介)。原作では、家族はなく、自分の死が近いことを知り、なるべく特定の親しい人を作らないように過ごしていました。
自分を慕っている高校生の七海を心配し、「記憶屋」を探しだします。
映画では、高原には家族がいる設定で、幼い娘のためにしてあげられる唯一のことを考えているようです。
こちらも原作と映画では、人間関係に大きな差があります。
杏子が記憶を失くした原因
原作では、極度の夜道恐怖症を患い、自分を変えたいと思っていた杏子。遼一と出会ったことで、その思いを強くしていきます。
映画では、遼一と杏子の関係性が恋人となることから、杏子が記憶を失くした原因も異なってくるのではと想像します。
杏子は、自ら記憶を消したのか?それとも、誰かの願いで消されたのか?注目です。
記憶屋の正体
「記憶屋」の正体は、ずばり、真希(芳根京子)なのですが、真希の祖父もそうであったことから、祖父と孫にその力が備わったと考えられます。
幼い真希の、母親の浮気を知った悲しみの記憶を消したのは、祖父でした。祖父は、理由はともあれ人の記憶を消すことは良くない事だと思っていました。
では、真希はどのような理由で「記憶屋」をすることになったのか。また、祖父がそこまでして消した真希の記憶とは。映画化で孫と祖父の関係性が、より鮮明になることを期待します。
まとめ
愛する人のために、あなたは何ができますか?消えた記憶に秘められた想いが感動を呼ぶ小説『記憶屋』を紹介しました。
原作ではなかった、恋人、父と娘という関係性が加わることで、記憶をめぐる様々な愛の形が、映画化で新たな感動を生むことでしょう。
また、映画は舞台が広島県ということで、広島の美しい景色や、登場人物の広島弁にも注目したいです。
映画『記憶屋 あなたを忘れない』は、2020年1月17日、公開予定です。
次回の「永遠の未完成これ完成である」は…
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