連載コラム『海外ドラマ絞りたて』第5回
人気ドラマ『THIS IS US』のシーズン4は、北米で2019年9月24日に放送開始。日本でも2019年10月にシーズン3が始まります。
ファン待望の新シーズンを前に、本コラムではシーズン3のエピソードを3話ずつネタバレで掲載し、解説と撮影秘話も含めてご紹介します。
本作は、元々クリエイターのダン・フォーゲルマンが映画化しようと80ページ近く脚本を執筆し構想を温めた物語。
シーズン3最初の3話で注目の登場人物は、レベッカ、ケイティ、ベス、そしてデジャの女性4人です。「あ″分かる!」「なるほどぉ~」と思わず頷くエピソードが満載。
CONTENTS
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第1話あらすじとネタバレ
NFLピッツバーグ・スティーラーズで活躍するランニングバックのフランコ・ハリスは、試合前に緊張して家族へ電話。威勢の良い母が温かく息子の背中を押します。
流産した後ケイティは諦めず子作りに専念しますが、なかなか妊娠できずにいました。診察を受け、卵巣に疾患があることが判明。医師は、肥満が不妊に影響している可能性を指摘。トビーも検査をすることになります。
ケヴィンは、ベスの従妹・ジョーイとの合意で、セックスだけの関係を続けています。ベスの怒りを買うと分かっている為、親族には内緒。
フランコ・ハリスの大活躍でピッツバーグが勝利した夜、ジャックはレベッカが歌うバーへ現れます。一目で彼女に惹かれるジャック。レベッカも視線に気づき、ジャックに笑顔を返します。
ジャックは手持ちの9ドルでレベッカを楽しませようと遊園地へ連れて行きます。
現在。ビッグスリーが38才になる誕生日。早起きしたベスは、まだ眠っているランダルの為に朝食を準備。娘達は父に誕生日のカードを書いています。
起きて来たランダルは、誕生日会に合流するケヴィンがグルテンの入っていないケーキを望んでいるとベスに伝えます。
ケヴィンが来ることを知らなかったゾーイは、平静を装いながらも声が裏返ります。
すかさず察知したベスは、野菜を切っていた包丁をまな板に突き刺し、「2人はデキてる!」と目を吊り上げます。
証拠が無いと言うランダルは、誕生日にことを荒立てないよう妻に約束させます。オプラに誓えと言われ、仕方なく応じるベス。
ケイティとトビーは、不妊治療の専門医を訪れます。医師は、6年間トビーが服用している抗鬱剤が精子の減少に起因しているかもしれないと話します。
検査データを精査した医師は、ケイティが妊娠する確率が極めて低い為、患者として受け入れられないと告げます。
体外受精のリスクを承知だと主張するケイティに、責任問題に発展する危険な医療処置を必要とすると申し訳なさそうに医師は断ります。
妊娠は難しいと聞いたケイティはショックで涙を溜めながらも、正直な見解を述べた医師に礼を言って席を立ちます。
過去。遊園地に来たジャックとレベッカ。入場券2人分を購入したジャックは、係員とアメフトの試合が凄かったと会話。
リンゴの飴菓子の思い出を話すレベッカに、ジャックはホットチョコレートとその飴菓子を買ってあげます。残金は2ドルに。
現在。ランダル家へ到着したケヴィンに、ケイティの結婚式以来だと大声を上げながら、ゾーイが握手。
その会話を隣の部屋で聞いているベスは、オプラに誓ったと自分に言い聞かせます。
ゾーイは、ドキュメンタリーを編集する間ベスの所に滞在していると更に大声。
何とか作り笑顔でやって来たベスは、2人を見た途端、「あんた達セックスしてるわよね」と凄みます。
ランダルは、自分とベスが購入したアパートのビルへデジャを連れて来ます。実の父を訪問した36才の誕生日、そしてやっと見つけたウィリアムを癌で再び失った話をします。
養子として生きた人生は自分の選択ではなく、デジャには自らの意志で人生を選択して欲しいと彼女を見つめ、公式に手続きを行い養子に迎えたいと申し出ます。
「ランダル、あなたが良い人だってことは良く分かっている。家族も皆良い人。自分の為にしてくれたことは感謝してる。でも、私と同じ境遇だっていう素振りは止めて」
「あなたには、人生を通して1つの家族があった。2人の父親から凄く愛されたじゃない。私には、自分を捨てた父親1人と自分を置き去りにした母親だけ」
「だから、私達が同じだとか、私に選択があるとか言わないで欲しい」
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第2話あらすじとネタバレ
ロン・ハワードが監督した映画に出演したケヴィンは、プレミアにゾーイを誘いますが、カジュアルな関係を続けたいゾーイはやんわり断ります。
遅くまで仕事をするベスの背中をランダルはマッサージ。新学校は白人ばかりで居づらいと言うデジャを、ランダルは同世代の黒人の少女が集まるレクリエーションセンターへ連れて行くことに。
翌日。ケヴィンのプレミアへ向かうケイティは、不妊治療に義務付けられたホルモン注射の副作用で起こるほてりを我慢。最近様子が変わったトビーの貧乏ゆすりを気に掛けます。
レベッカや他の家族には心配させないよう、不妊治療のことを内緒にしようと確認し合います。
過去。火事でジャックが死亡した数か月後。ランダルは志望していた大学の合格通知を受け取ります。
家族で新居を見に訪れた際、不動産会社から寝室は2部屋だと聞かされます。レベッカは、ランダルが秋には大学の寮へ入り、音楽志望のケイティもきっと受かるので充分だと答えます。
しかし、ケイティは、書類選考が通った後、自分の歌を録音したテープを提出して居らず大学へ行かないと初めて話します。
ケヴィンは四六時中酔っぱらい、ケイティはお菓子ばかり食べ、レベッカはジャックの死に押し潰されそうな毎日を何とかこなしていました。
母親の苦しみに気づいたランダルは進学するはずの大学に連絡し、家族の側に居たいので入学を辞退するとメッセージを残します。
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第3話あらすじとネタバレ
レベッカの母は専業主婦。小さい頃から家事を手伝っていたレベッカは、単調でメイドの様な役割を嫌っていました。
ジャックと遊園地へデートに出かけた翌日、元彼のアランが花束を持ってレベッカを訪ね、ずっと忘れられなかったと告白。
2人がキスしている所を目撃して帰宅したジャックは、虐待的な父親・スタンリーを見てうんざりし、母親を連れて家を出ることに。
現在。ケヴィンの映画を泣きながら観るランダルとケイティ。プレミア終了後、劇場は拍手喝采が起こります。感動したベスも「スター!」とケヴィンに声を掛けます。
ランダルは、ケイティに言葉の真意を問いただします。血の繋がらない自分はジャックを受け継げないのかと挑みます。
もし駄目なら養子も考えると答えたケイティに、ランダルは、家庭を必要とする多くの子供が居るのに、大金を掛けてリスクが伴う体外受精を選ぶのかと問い詰めます。
ケイティは、ランダルが最初に2人の実子をもうけたことを指摘。
妊娠できない苦しみや流産の辛さを知らないランダルが養子を持ち出して説教する態度に対し、ケイティは、自分の子供を欲する気持ちなど分かる訳がないと腹を立てます。
手術を翌日に控えたケイティに謝ろうとして上手く行かないランダルは、飛行機で駆けつけることに。
ケヴィンは、ラジオのインタビュー番組に出演。戦争映画である為、ジャックの従軍経験を役作りに利用したのか尋ねられます。
父親の戦争体験を全く知らないことに気づいたケヴィンは、幼い頃におもちゃ屋へ父親と来た時、プラスチックのグレネードや銃を手にした自分を、真剣な顔で駄目だと言ったジャックの顔を思い出します。
インタビュアーは、ベトナム戦争の帰還兵は兵役経験者だけに辛い思いを明かすことがあると話します。
一方、上司に呼び出されたベスは12年間働いた会社を解雇されます。上級職員として自分の能力に誇りを持っていたベスは、結果と生産性が理由だと聞いてショックを受けます。
同じ頃、ランダルはニュージャージーからL.Aの病院へ到着。麻酔で眠ったケイティは夢の中へ。乳児室に居る生まれたばかりのビッグスリーを見つめます。
幼いケイティが大人のケイティに、父親の死後20年間犬も飼えなかったのに、人間を育てられるのかと厳しい口調。そこへジャックが現れ、ケイティを見て「ケイティガール」といつもの愛称で呼び掛けます。
『THIS IS US』シーズン3第1話から3話の見所
アンサンブルの強化と、個々のキャラクター魅力
新シーズンでは、短い場面を複数回重ねることで、より深くそれぞれの登場人物を描写しています。
夜遅くまで家で仕事をし、土曜出勤もするベスの姿を挟んだ後に解雇を通告されるシーンへ繋げ、良妻賢母でキャリアを積み上げた彼女の不意を突かれたショックが手に取るように伝わります。
また、リスクを背負うケイティを助けたい為に、トビーは抗鬱剤をトイレに廃棄し、服用を中断した事で起こる副作用が段々顕著になる様子が描かれた後に感情を爆発させる姿は、彼の苦悩が見えるようです。
台詞にせずに行動で見せるからこそより心情が伝わることを知っている脚本家達の妙と言えます。
そして、妊娠は難しいと一番言われたくないことを聞いたケイティが、涙を堪えながらも正直な見解を示した医師へきちんと礼を尽くす態度は、彼女が成熟した大人であると分かる一場面。この姿に心を打たれた医師は、ケイティの為にひと肌脱ごうと決めます。
細かい補足を短くシンプルに且つ効果的に織り込んだ卓越した構成力です。
2018年度と2019年度に本作は全米映画俳優組合賞アンサンブル賞を受賞。
規定のエピソード数に達していないビッグスリーを演じる子役達の為に、ジャック役のマイロ・ヴァンティミリアとレベッカ役のマンディ・ムーアは、3Dプリンター店でトロフィーをコピーし、6人全員に渡したことをクリエイターのダン・フォーゲルマンが明かしています。
リリック・ロス
デジャを演じるリリック・ロスはシカゴ出身の15才。本作でディスカバーされた逸材です。表舞台で演技をした経験がほぼゼロだった彼女はオーディションを受けてキャストされました。
当初はゲスト出演として起用されましたが、直ぐにレギュラーへ昇格。一緒に演じる機会の多いランダル役のスターリング・K・ブラウンが小まめに面倒を見てくれるとロスは話します。
彼女の演じるデジャは聡明で賢く芯の強さが光り、ベスの台詞にあるオプラ・ウィンフリーを彷彿とさせます。
しかし、自毛を切るシーンがあると聞いた時は(シーズン2第4話)泣いてしまったと話す、まだ思春期の女の子。表現する感情があまりに生なので、周囲はデジャと同じ境遇なのかと勘違いするほどです。
「違います~」と手をひらひらさせて見せる笑顔は、別人のように柔らかくて可愛らしい!天性の才能を持つ人は、最初から輝くとつくづく分かるロスの演技力です。
まとめ
第1話からいきなりパワフルなシーズン3。ジャックとレベッカが恋人になる前の馴れ初めやジャックの経験したベトナム戦争など過去が少しずつ明らかになっていきます。
そして、現在に生きるビッグスリーとその家族の物語も進行。
味わい深い存在感を見せるウィリアム役のロン・セファス・ジョーンズが脇を固め、圧巻の脚本とアンサンブルキャストで『THIS IS US』は増々充実したシーズンを迎えています。
次回はシーズン3の第4話から6話までをご紹介します。