連載コラム『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』
第7回「『Cosmetic DNA』キャストの川崎瑠奈さんについて」
お世話になっております。『Cosmetic DNA』監督の大久保健也です。今日も1日疲れましたね。
さて、今回は第6回の東条アヤカ役の藤井愛稀さん、第7回の西岡サトミ役の仲野瑠花さんに続いて『Cosmetic DNA』の監督である僕が、出演者さんの印象を綴りシリーズ第3弾です。
夢も目標もないままアパレル店員として日々を生きるフリーター・松井ユミ役・川崎瑠奈さんについてです。
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CONTENTS
『Cosmetic DNA』キャストの仲野瑠花さんについて
川崎瑠奈さんとの出会いはまさに偶然でした。
まず、僕は前回でも言った通り、『Cosmetic DNA』のメインキャストを探すためにシネマプランナーズでキャストを募集しました。松井ユミ役の候補の方もたくさんいました。
その中で僕と西面が選んだ人、その人は川崎瑠奈さんではありませんでした。(この時点でまだ川崎さんからのキャスト応募はありませんでした)
アヤカ役、サトミ役、ユミ役、それぞれ揃って個性的で、三人がHEP FIVEでワッキャ楽しそうにしている様子をやや後ろから眺めながら「最強の布陣だ……!!コスメは絶対にいい映画になる!!」と思いました。
そのまま本読みをして、軽いリハーサルなどもし、撮影は始まっていきました。しかし、松井ユミ役の方が、ままならぬ事情で降板してしまったのです。なんということでしょうか。
これは誰が悪いという話ではありません。ただ撮影はストップしました。僕も西面(柴島恵介役兼製作)も焦りました。ただ、僕は焦りよりも悲しみが勝っていました。
『Cosmetic DNA』のアヤカ、サトミ、ユミのうち、アヤカとサトミは自分自身、あるいはかつての自分を投影して描いたキャラクターでした(アヤカとサトミの会話は基本的に僕の心の中の会話です)。
しかし、ユミは完全に他者でした。こういう女の人がいるかもしれない。こんな思いをしているファッキンクールガールが、悲しみや苦しみを乗り越えて暴れてほしい。心救われてほしい。僕は自分自身が生み出したキャラクターにめちゃくちゃ情を抱いていたのです。
だからユミの演じ手が突如いなくなった瞬間、ユミに振られたような気持ちになりました。
俺はユミを何とか理解しようと頑張ったのに、ユミは俺のことをスパッと振ってしまう。ユミがわからない。なんて最悪な気分。撮影の帰り道、電車に揺られながらひとりで泣きました。
あれ、これ大丈夫でしょうか。気持ち悪かったら読むのやめてもらっても大丈夫です。映画『Cosmetic DNA』は10月9日(土)新宿K’s cinemaにて2週間レイトショー!
川崎瑠奈さん演じる松井ユミ
そんな自己陶酔に肩まで浸かってても映画は完成しないので、すぐさまシネマプランナーズで急遽ユミ役を演じてくださる役者さんを探し始めました。それと並行し、ユミがいなくても撮れるシーンを先に撮影しながら……
前振りが長かったですね、ここで川崎瑠奈さんに出逢いました。川崎さんは東京にいました。
『Cosmetic DNA』の撮影は全編大阪ロケです。何とかお願いして、川崎さんは夜行バスで来阪、即打ち合わせ!!即衣装合わせ!!即移動!!即撮影開始!!撮影は深夜まで!!みたいな限界スケジュールを嫌な顔せずこなしてくださいました。
川崎さんは何となくいつも現場で笑っている記憶があります。
何もかもが全くもってスケジュール通りに進まずに、人手も予算も機材も常識もない僕がドン底まで精神的に追い詰められて、それでも「コスメを完成させる」モチベーションのみをガソリンに現場で脚本をめくっている時でも、川崎さんは笑顔だった気がします。
いつの日か川崎さんと西面と僕の三人で食べた蒲生四丁目のラーメンの味は格別でした。川崎瑠奈さんが松井ユミじゃなかったら『Cosmetic DNA』は無事完成していなかったかもしれません。
以上、3回に渡って主要3人キャストへの想いを綴ってきました。
今こうして振り返ると、もし東条アヤカが藤井愛稀さんじゃなかったら。西岡サトミが仲野瑠花さんじゃなかったら。松井ユミが川崎瑠奈さんじゃなったら。想像もつきません。
この3人の掛け合いが良くて皆ハマり役という評はいろんな方に頂いているのですが、本当に僕もそう思います。僕はただ脚本を書き、撮り、繋げるだけで、人と人とのこういったミラクルマジックは意図的に作ることはできません。
みなさん、僕に興味がなくとも、コスメのあらすじ読んで「おもんなさそ~」と思っても、是非この三人のハッっとするような連帯感、この役にこの人以外あり得ない感、無双感、これだけでも観る価値があると思います。
僕や映画のことを嫌いになっても、東条アヤカ、西岡サトミ、松井ユミの三人だけのことは嫌いにならないでください!!
次回の「自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦」は…
今後、定期的に大久保健也が自らを連載コラム通して、インディーズ映画『Cosmetic DNA』の魅力を更新していきます。
『Cosmetic DNA』の劇場公開を終えるまで、粛々と続けていこうと思います。全ての劇場公開が終わった時、それまでの連載コラムの記事を全部読んだという人は自己申告してください。自己申告は大事です。
【『Cosmetic DNA』公式Twitter】
@CosmeticDna
【『Cosmetic DNA』公式facebook】
https://www.facebook.com/CosmeticDna/
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大久保健也監督プロフィール
1995年生まれ、大阪育ち。中学時代より自主映画の制作を始め、60本以上の映像作品を制作。近年は様々なアーティストのMVなどを手がける傍ら、自主映画の制作を行っている。
2021年秋公開予定の『Cosmetic DNA』は初の長編監督作となる。
映画『Cosmetic DNA』のあらすじ
化粧を愛する美大生・東条アヤカ(藤井愛稀)は、ある日クラブハウスで出会った自称映画監督・柴島恵介(西面辰孝)に性的暴行を受ける。
泣き寝入りせざるを得ない状態に精神的に病んでいくアヤカだったが、大学院生のサトミ(仲野瑠花)、アパレル店員のユミ(川崎瑠奈)と出逢うことで少しずつ自我を取り戻していく。
しかし、柴島の次なる標的がユミであることを知ったアヤカは突発的に柴島を殺害。やがて死体処理を行う最中に人間の血液こそが理想の化粧品であることに気付くが……。
大久保健也監督へ応援のメッセージをお寄せください。
映画『Cosmetic DNA』を監督した大久保健也さんの連載コラムを読んでいただき、
*本記事は大久保健也監督がnoteに執筆したものを、監督本人に意向を伺いながら再構成した内容になっております。本文の一部の文言について編集部で追記調整した箇所があります。