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Entry 2022/02/10
Update

映画『恵まれた子供たち』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。エリート階級の子供の過去のトラウマと裕福な生活に潜む陰謀とは?|Netflix映画おすすめ84

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第84回

2022年2月6日(木)にNetflixで配信された学園ホラー映画『恵まれた子供たち』。

ドイツで大人気のヤングアダルト小説「時間旅行者の系譜」シリーズを映画化した「タイムトラベラーの系譜」シリーズを手がけたフェリックス・フックシュタイナー、カタリーナ・シェードによる学園ホラー。

裕福な家庭で育った18歳のフィン(マックス・シンメルフェニッヒ)は、姉の悲惨な死がトラウマとなり、悪夢や幻覚に悩まされるも家族や周りの人は子供時代のトラウマだと真剣に取り合ってくれません。

フィンの周りで起こる不可解な出来事。真相を調べていくフィンとその友人らがたどり着いた先には恐ろしい陰謀が待ち受けていたのでした……

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『恵まれた子供たち』の作品情報


Netflix 恵まれた子供たち

【日本公開】
2022年(ドイツ映画)

【原題】
Das Privileg – Die Auserwahlten

【監督】
フェリックス・フックシュタイナー、カタリーナ・シェード

【脚本】
セバスチャン・ニーマン、エッカルト・フォルマル、カタリーナ・シェード、フェリックス・フックシュタイナー

【出演】
マックス・シンメルフェニッヒ、レア・ファン・アッケン、ティジャン・マライ、ミレーナ・ツァルントケ、リーセ・リソム・オルセン、ローマン・クニシュカ、ナデシュダ・ブレニッケナデシュダ・ブレニッケ、ホルスト・ヤンセンホルスト・ヤンセン、カロリーネ・ハルティヒ、マウリス・ラトケ、ジャネット・スパソバ、オレグ・ティコミロフ

【作品概要】
映画『恵まれた子供たち』は、ドイツで大人気のヤングアダルト小説「時間旅行者の系譜」シリーズを映画化した『タイムトラベラーの系譜 ルビー・レッド』(2013)、『タイムトラベラーの系譜 サファイア・ブルー』(2014)、『タイムトラベラーの系譜 エメラルド・グリーン』(2016)の三部作をまとめたフェリックス・フックシュタイナーとカタリーナ・シェードが、監督・脚本を手がけました。

キャストはNetflixドラマ『DARK』(2017)のマックス・シンメルフェニッヒ、『アンネの日記』(2016)でアンネ・フランクを務めたレア・ファン・アッケンなど。

映画『恵まれた子供たち』のあらすじとネタバレ


Netflix 恵まれた子供たち

両親とゾフィーが出かけ、家に残ったアナとフィン。

リビングでゲームをしていたフィンは突如停電と共に家のセキュリティーが解除されていることに気づき、不安を覚えて2階の姉・アナの元へ向かいます。

すると中からアナのうめき声が聞こえ、部屋から出てきたアナは血のついたナイフを持ち、口から血を流しています。

正体のわからない何かから逃げるアナとフィン。フィンを勇気づけようとアナは歌を歌い、歌ったら怖くなくなると言います。

しかし、追いつかれアナは引っ張られていきます。アナはフィンに向かって自分を放すように叫びます。

怖がりながらもフィンはアナを蹴飛ばし、アナは暗闇の中に落ちていきます……。

アナの凄惨な死を間近に見たフィンは18歳になった今でもトラウマを抱え、精神科医にかかり、薬を飲んでいます。

精神だけでなく健康状態から何までシュタインケ医師の元に管理され、その情報はフィンの両親に伝えられます。

あの日、何かが家にいて追いかけられたと話すフィンでしたが、誰にも相手にされず、シュタインケ医師には罪悪感から生み出した幻想だと言われます。

高校でも変人と呼ばれているフィンの友人は、レズビアンのレナ。

フィンはシュタインケ医師の娘であるサミラに思いを寄せていましたが、なかなか話す機会を作れないでいました。

ある夜フィンが夜中に目を覚ますと、両親と双子の姉・ゾフィーが何やら儀式のようなものをしているのを目にし、覗き見します。

裸の老婆がゾフィーに近づいていくのを見て、フィンは斧を持って止めようとしますが何者かに襲われ気を失います。

目を覚ましたフィンは自分が見たことを話しても誰にも相手にされず、夢遊病扱いされてしまいます。

しかし、ゾフィーは体育の途中に鼻血を出して倒れ、うまくいっていたはずの恋人に対し突然態度を変え、その姿を見たフィンは何かがおかしいと思い始めます。

更にアナのようにゾフィーが血を流している幻覚のようなものが見え始めます。

自分だけがおかしいのか……そう思っていたフィンでしたが、ふと自分が毎日飲んでいる薬の中に異物が入っていることに気づき、理科の先生にみせると、その正体は絶滅したはずの菌ネクロフンガス・シビレタケだと判明します。

死体を培養として繁殖するというネクロフンガス・シビレタケは幻覚作用があり、かつて魔女が悪魔との扉として使っていたことがわかります。

さらに詳しく知るためにフィンは友人のレナと共に先生に紹介してもらった薬の専門家のところに向かいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『恵まれた子供たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『恵まれた子供たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ネクロフンガス・シビレタケの入った瓶を見せると、薬屋のエリスカは顔色を変えます。更にフィンがゾフィーの様子を伝えると、今すぐ助けるために悪魔祓いをしなくてはならないと言います。

非現実的な話にフィンは馬鹿馬鹿しいと帰り、祖父の見舞いにいきます。

ふと気にかかったフィンはかつて牧師であった祖父に、この世のならざるもの……つまり悪魔などは本当に存在するのか、今までに出会ったことはあるかと尋ねます。

すると祖父はかつて出会った病気の少年の話をします。彼との出会いで全てが変わった、そしてしきりにフィンに向かってまた会いに来ると告げるのでした。

意を決したフィンは両親が出かける日を見計らってエリスカとその息子を呼び寄せ悪魔祓いの儀式を始めます。

家にやってきたエリスカはアナの写真を見て、以前フィンの手を握った時に彼女が見えた、今もあなたを守ろうとしていいると告げます。

机を囲み手を握り合って霊との接触を試みます。何度か呼びかけると霊が反応し、「彼女は自分のだ、邪魔をするな」と警告し、エリスカに襲い掛かります。

そこに両親が帰ってきて儀式は途中で中断されてしまいます。

次の日学校に向かうと、レーガンが体の中に何かがいると自らの口にナイフを突き刺し、飛び降ります。

そして搬送される最中にフィンに向かって自分のカバンの中のファイルを見るように伝えます。

言われた通りファイルを見てみると、養子縁組の資料が出てきました。フィンとゾフィー、そしてレーガン、更にはサミラも養子でした。

驚きの事実を知ったフィンの元にレーガンの父親がやってきます。

そしてフィンの父親も養子であったこと、フィンの祖父と両親はトロンダル社に出会い一大企業にした、素晴らしいことなんだ、君達は選ばれたエリートなんだ、息子は理解しなかったと力説します。

その頃フィンの父親がCEOを務めるトロンダル社の新薬発表に潜入したレナは、会社の研究施設で死体を培養に菌を生殖させている現場を目撃します。それだけでなく、その死体の中にはエリスカの姿もあったのです。

慌ててフィンに伝えようと車を走らせるレナ。

その頃フィンは捕まえられ、家の地下に連れられていきます。そこにいたのは両親やゾフィー、シュタインケ医師ら。

彼らはこの世のものではなく、堕天使、鬼、悪魔の手先と呼ばれるもの達だったのです。

彼らはフィンを最高の器として大切に育て、食事もさせてきたのです。

フィンに憑依するのはもう長くはないと言われていた祖父でした。

祖父に憑依した何者かが、新たな器としてフィンに移動するための儀式が始まってしまい、身動きの取れないフィンでしたが、間一髪のところでレナが駆けつけ、サミラを救い出し、儀式の最中に飛び込み、人々に火を放ちます。

追手に追われながらも命からがら逃げ出したフィンとレナ、そしてサミラ。

歩き出す3人の前には“恐怖のない世界を”新たな薬の可能性をうたったトロンダル社の広告が見え、もう誰も信用できないと笑う3人。

次の瞬間サミラが後ろを振り向きます。その目は白く変わり何者かが憑依していることを物語っています。

しかし2人は気づかず歩き続けるのでした……

映画『恵まれた子供たち』の感想と評価


Netflix 恵まれた子供たち

“恵まれた生活”の裏に潜む陰謀

18歳のフィンの身の回りで起こる不可解な出来事。

その真相を探っていくと、両親は自分を憑依させる器として育てていたという真実が明らかになる、ヤングアダルト要素を含んだオカルトホラーになっています。

ノイズを起こし、悪魔祓いのため霊との交流を試みたり、異世界との扉として魔女が使用していたという菌など、従来のオカルトホラーを想起させるような演出が随所にあらわれています。

しかし、オカルトホラーだけでなく、本作に描かれているのは“恐怖のない世界を”と新たな薬により精神的な病や不安から解放され、幸せなより良い世界になることをうたうトロンダル社の存在です。

私たちもどこかで見たかのような広告にハッとさせられます。

ダイエットサプリ、健康サプリ…世の中にはさまざまな薬にあふれていることに気がつきます。勿論それらの多くは正しい検査を受け販売され、危険なものではありません。

けれど一方で謳い文句に踊らされそのもの自体を疑うことのなくなった側面もあるのではないでしょうか。

ファンは裕福な家庭で育ち、エリート高校に通い、疑問を持つこともなく両親から与えられるものを享受してきました。

そのような裕福な家庭に育ったフィンの目を通し、今まで信じてきた世界の裏で行われていた陰謀に気づく恐怖を描いたオカルトホラーになっています。

まとめ

裕福な家庭で育った18歳のフィンの身の回りで起こる不可解な事件。

真相を探っていくと、フィンのトラウマとなっている姉の死、そして自分を取り巻く恐ろしい陰謀が判明する映画『恵まれた子供たち』。

オカルトホラーであり、‟恵まれた”子供たちが疑いもせずに享受していたものの背後にあるものの正体に、観客もはっとさせられます。

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