連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第84回
2022年2月6日(木)にNetflixで配信された学園ホラー映画『恵まれた子供たち』。
ドイツで大人気のヤングアダルト小説「時間旅行者の系譜」シリーズを映画化した「タイムトラベラーの系譜」シリーズを手がけたフェリックス・フックシュタイナー、カタリーナ・シェードによる学園ホラー。
裕福な家庭で育った18歳のフィン(マックス・シンメルフェニッヒ)は、姉の悲惨な死がトラウマとなり、悪夢や幻覚に悩まされるも家族や周りの人は子供時代のトラウマだと真剣に取り合ってくれません。
フィンの周りで起こる不可解な出来事。真相を調べていくフィンとその友人らがたどり着いた先には恐ろしい陰謀が待ち受けていたのでした……
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映画『恵まれた子供たち』の作品情報
【日本公開】
2022年(ドイツ映画)
【原題】
Das Privileg – Die Auserwahlten
【監督】
フェリックス・フックシュタイナー、カタリーナ・シェード
【脚本】
セバスチャン・ニーマン、エッカルト・フォルマル、カタリーナ・シェード、フェリックス・フックシュタイナー
【出演】
マックス・シンメルフェニッヒ、レア・ファン・アッケン、ティジャン・マライ、ミレーナ・ツァルントケ、リーセ・リソム・オルセン、ローマン・クニシュカ、ナデシュダ・ブレニッケナデシュダ・ブレニッケ、ホルスト・ヤンセンホルスト・ヤンセン、カロリーネ・ハルティヒ、マウリス・ラトケ、ジャネット・スパソバ、オレグ・ティコミロフ
【作品概要】
映画『恵まれた子供たち』は、ドイツで大人気のヤングアダルト小説「時間旅行者の系譜」シリーズを映画化した『タイムトラベラーの系譜 ルビー・レッド』(2013)、『タイムトラベラーの系譜 サファイア・ブルー』(2014)、『タイムトラベラーの系譜 エメラルド・グリーン』(2016)の三部作をまとめたフェリックス・フックシュタイナーとカタリーナ・シェードが、監督・脚本を手がけました。
キャストはNetflixドラマ『DARK』(2017)のマックス・シンメルフェニッヒ、『アンネの日記』(2016)でアンネ・フランクを務めたレア・ファン・アッケンなど。
映画『恵まれた子供たち』のあらすじとネタバレ
両親とゾフィーが出かけ、家に残ったアナとフィン。
リビングでゲームをしていたフィンは突如停電と共に家のセキュリティーが解除されていることに気づき、不安を覚えて2階の姉・アナの元へ向かいます。
すると中からアナのうめき声が聞こえ、部屋から出てきたアナは血のついたナイフを持ち、口から血を流しています。
正体のわからない何かから逃げるアナとフィン。フィンを勇気づけようとアナは歌を歌い、歌ったら怖くなくなると言います。
しかし、追いつかれアナは引っ張られていきます。アナはフィンに向かって自分を放すように叫びます。
怖がりながらもフィンはアナを蹴飛ばし、アナは暗闇の中に落ちていきます……。
アナの凄惨な死を間近に見たフィンは18歳になった今でもトラウマを抱え、精神科医にかかり、薬を飲んでいます。
精神だけでなく健康状態から何までシュタインケ医師の元に管理され、その情報はフィンの両親に伝えられます。
あの日、何かが家にいて追いかけられたと話すフィンでしたが、誰にも相手にされず、シュタインケ医師には罪悪感から生み出した幻想だと言われます。
高校でも変人と呼ばれているフィンの友人は、レズビアンのレナ。
フィンはシュタインケ医師の娘であるサミラに思いを寄せていましたが、なかなか話す機会を作れないでいました。
ある夜フィンが夜中に目を覚ますと、両親と双子の姉・ゾフィーが何やら儀式のようなものをしているのを目にし、覗き見します。
裸の老婆がゾフィーに近づいていくのを見て、フィンは斧を持って止めようとしますが何者かに襲われ気を失います。
目を覚ましたフィンは自分が見たことを話しても誰にも相手にされず、夢遊病扱いされてしまいます。
しかし、ゾフィーは体育の途中に鼻血を出して倒れ、うまくいっていたはずの恋人に対し突然態度を変え、その姿を見たフィンは何かがおかしいと思い始めます。
更にアナのようにゾフィーが血を流している幻覚のようなものが見え始めます。
自分だけがおかしいのか……そう思っていたフィンでしたが、ふと自分が毎日飲んでいる薬の中に異物が入っていることに気づき、理科の先生にみせると、その正体は絶滅したはずの菌ネクロフンガス・シビレタケだと判明します。
死体を培養として繁殖するというネクロフンガス・シビレタケは幻覚作用があり、かつて魔女が悪魔との扉として使っていたことがわかります。
さらに詳しく知るためにフィンは友人のレナと共に先生に紹介してもらった薬の専門家のところに向かいます。
映画『恵まれた子供たち』の感想と評価
“恵まれた生活”の裏に潜む陰謀
18歳のフィンの身の回りで起こる不可解な出来事。
その真相を探っていくと、両親は自分を憑依させる器として育てていたという真実が明らかになる、ヤングアダルト要素を含んだオカルトホラーになっています。
ノイズを起こし、悪魔祓いのため霊との交流を試みたり、異世界との扉として魔女が使用していたという菌など、従来のオカルトホラーを想起させるような演出が随所にあらわれています。
しかし、オカルトホラーだけでなく、本作に描かれているのは“恐怖のない世界を”と新たな薬により精神的な病や不安から解放され、幸せなより良い世界になることをうたうトロンダル社の存在です。
私たちもどこかで見たかのような広告にハッとさせられます。
ダイエットサプリ、健康サプリ…世の中にはさまざまな薬にあふれていることに気がつきます。勿論それらの多くは正しい検査を受け販売され、危険なものではありません。
けれど一方で謳い文句に踊らされそのもの自体を疑うことのなくなった側面もあるのではないでしょうか。
ファンは裕福な家庭で育ち、エリート高校に通い、疑問を持つこともなく両親から与えられるものを享受してきました。
そのような裕福な家庭に育ったフィンの目を通し、今まで信じてきた世界の裏で行われていた陰謀に気づく恐怖を描いたオカルトホラーになっています。
まとめ
裕福な家庭で育った18歳のフィンの身の回りで起こる不可解な事件。
真相を探っていくと、フィンのトラウマとなっている姉の死、そして自分を取り巻く恐ろしい陰謀が判明する映画『恵まれた子供たち』。
オカルトホラーであり、‟恵まれた”子供たちが疑いもせずに享受していたものの背後にあるものの正体に、観客もはっとさせられます。