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『サッドヒルを掘り返せ』感想と解説。「続夕陽のガンマン」のロケ地を映画マニアたちが聖地へと甦らせる|だからドキュメンタリー映画は面白い9

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回

荒れ果てた名作西部劇のロケ地を、俺たちの手で復活させる!

『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回は、2019年3月8日に日本公開の、『サッドヒルを掘り返せ』。

クリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウエスタン『続・夕陽のガンマン』(1967)のロケ地復元という、一大プロジェクトに密着します。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

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映画『サッドヒルを掘り返せ』の作品情報


(C)Zapruder Pictures 2017

【公開】
2019年(スペイン映画)

【原題】
Sad Hill Unearthed

【監督】
ギレルモ・デ・オリベイラ

【キャスト】
クリント・イーストウッド、エンニオ・モリコーネ、ジェームズ・ヘットフィールド、ジョー・ダンテ、アレックス・デ・ラ・イグレシア、カルロ・レバ、エウヘニオ・アラビソ、セルジオ・サルバーティ

【作品概要】
マカロニ・ウエスタンの名作『続・夕陽のガンマン』のロケ地として知られる、サッドヒルの復元プロジェクトに挑む有志たちを追ったドキュメンタリー。

同作品の出演者であるクリント・イーストウッドや、音楽家のエンニオ・モリコーネといった製作スタッフの貴重なインタビュー映像を交えつつ、この壮大なプロジェクトの模様を振り返ります。

映画『サッドヒルを掘り返せ』のあらすじ

(C)Zapruder Pictures 2017

スペイン、マドリードの北方約250キロにある、カスティーリャ・イ・レオン州。

中心都市ブルゴス郊外に位置するミランディージャ渓谷。

取り立てて目立った名所や施設もないこの場所に、とある時期から旅人が頻繁に訪れるようになっていました。

実はこの土地は、1966年製作のクリント・イーストウッド主演、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタン『続・夕陽のガンマン』のロケ地として、知る人ぞ知る場だったのです。

撮影時、この土地に「サッドヒル墓地」という5000基の墓標が円形に配置された巨大なオープンセットが作られ、物語においての最後の決闘の場となりました。

それから50年近い年月が経ち、この“聖地”は土と緑に覆われた状態に。

2014年、ミランディージャ渓谷に、バー経営者のダビッド、宝くじ売りのディエゴ、ホステル経営者セルジオ、そして教師のヨセバという4人の男が足を踏み入れます。

彼らは、風化してしまったミランディージャ渓谷を、自らの手で「サッドヒル墓地」へと復元する意図で結成された、「サッドヒル文化連盟」の創設メンバー。

早速、クワやシャベルを使って、黙々と発掘作業に挑むに取り組む4人でしたが、予想以上の手間と困難から、作業は遅々として進みません。

そこで彼らは、プロジェクト賛同者を募る策を練ることに。

インターネットを通じてボランティアを募集するや否や、ヨーロッパ中から賛同者が続々と集まりだしていき…。

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マカロニ・ウェスタンの名作、『続・夕陽のガンマン』とは

参考映像:『続・夕陽のガンマン』予告

本作のキーとなる映画『続・夕陽のガンマン』(日本初公開時は「地獄の決斗」という副題がついていた)は、クリント・イーストウッドとセルジオ・レオーネの主演・監督コンビが、『荒野の用心棒』(1964)、『夕陽のガンマン』(1965)に次いで放った、イタリア製西部劇=マカロニ・ウエスタンの第3弾です。

南北戦争末期の西部を舞台に、隠された大金をめぐって、“善玉”、“悪玉”、そして“卑劣漢”のガンマン3人が、友情と裏切りの交錯した三つ巴の死闘を展開。

加えて、極端に少ない会話や遠景ショットと人物の目や手への極端なクローズアップ、“メキシカン・スタンドオフ”と呼ばれる、互いに武器を向け合ったまま膠着する三すくみ状態といった、レオーネ独特の演出が冴えわたっています。

数多くのマカロニ・ウエスタンの中でも名作とされ、世界中にフォロワーが存在。

この映画で使用されたロケ地、サッドヒルの復元に動いた者たちは皆、そうしたフォロワーなのです。

『続・夕陽のガンマン』の撮影秘話も明かされる

(C)Zapruder Pictures 2017

本作は、サッドヒル墓地の復元を目指す者たちに密着すると同時に、『続・夕陽のガンマン』の撮影秘話も盛り込んだ、メイキングの要素も含まれています。

音楽を担当したエンニオ・モリコーネや、墓地をデザインした美術助手のカルロ・レバといったスタッフが当時を語ります。

さらには、監督のジョー・ダンテや映画研究家のクリストファー・フレイリングに、メタリカのボーカリストのジェイムズ・ヘットフィールドといった、映画に魅せられた人物のインタビューも収録。

もちろん、“善玉”ガンマンを演じたイーストウッドのインタビューもあります。

撮影用に作った橋を、本物の爆弾を使って爆破したという危険極まりない撮影の裏側など、『続・夕陽のガンマン』を愛する著名人の熱い想いを知ることができます。

映画を愛する巡礼者は惹かれあう

(C)Zapruder Pictures 2017[/caption]

本作の中心人物となる、「サッドヒル文化連盟」を立ち上げた4人の一般人。

地元でロケされた『続・夕陽のガンマン』をこよなく愛する彼らは、この作品で“卑劣漢”ガンマンを演じたイーライ・ウォーラックの訃報を機に、風化したロケ跡地復元に乗り出します。

そして、本作の監督ギレルモ・デ・オリベイラ自身、いわゆる“聖地巡礼”と呼ばれる、映画ロケ地めぐりを趣味とするほどのマニア。

いみじくもジョー・ダンテ監督が、「映画は宗教で、映画館は教会みたいなもの」と語るように、映画を愛する巡礼者たちは自然と惹かれあうもの。

オリベイラも同じように連盟の存在を知り、先行き不透明なそのプロジェクトに密着していきます。

連盟発起人の一人であるヨセバが、「自分たちにとっては魔法のような場」と評するサッドヒル墓地。

その墓地の形が魔法陣のようにも見えるのは、偶然でしょうか。

参考映像:映画『サッドヒルを掘り返せ』監督コメント入り予告編

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フィクション劇がノンフィクションを生む痛快さ

本作のように、作品のファン主導の元でロケ地や施設を復元した例は、過去にもあります。

日本では、1983年にNHKで放送されたドラマ『おしん』の撮影で使用された家屋などがそうです。

この家屋を残すべく、舞台となった山形県中山町の地元ファンが動き、一度大雪で倒壊した際も、町の有志がテレビのクイズ番組に出演して得た優勝賞金で修復しています。

「映画や音楽やアートが好きなら共感できると思う」とオリベイラ監督が語るように、本作のポイントは、映画やドラマと言った創作物は、時として「現実」を生むことにあります。

作品に思い入れのない人にすれば、サッドヒルの巡礼者たちの行為は、くだらなくてバカバカしいと一蹴するかもしれません。

しかし、メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドの、「彼らはサッドヒルの“一部”になりたいから、それを復元するんだよ」という言葉に、全ての答えがあるのです。

そしてクライマックスでは、そんな有志たちを見届けてきたオリベイラ監督が、スペシャルなプレゼントを用意。

それは、墓地復元に尽力した民に捧げた、創造主の労いの言葉だったのです。

(C)Zapruder Pictures 2017

2019年3月は“イーストウッド月間”

参考映像:『運び屋』予告

奇しくも日本では、この『サッドヒルを掘り返せ』が劇場公開される2019年3月8日に、クリント・イーストウッド監督・主演の『運び屋』も公開されます。

90歳の老人が麻薬の運び屋をしていたという実際の事件を描き、イーストウッド自らその老人を演じたことでも話題の一作です。

『続・夕陽のガンマン』撮影時の36歳のイーストウッドと、5月に89歳となるイーストウッドを同時期にスクリーンで観られるという、またとない機会。

『サッドヒルを掘り返せ』と『運び屋』、併せてご覧になってみてはいかがでしょうか。

次回の「だからドキュメンタリー映画は面白い」は…


©Globus Group Productions Films and TV LTD

次回は、2015年公開の『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』を紹介。

1980年代に、映画界に彗星のごとく現れてヒット作を連発し、彗星のように消えていった製作会社、キャノン・グループの栄枯盛衰を辿っていきます。

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