連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第72回
2021年11月24日からNetflixで配信が開始されたヒューマンドラマ映画『ブルーズド ~打ちのめされても~』をご紹介します。
本作はハル・ベリーが監督、主演を務めたNetflix映画です。
一度は格闘家としてトップに立った女性が失脚し、実の息子との再会から人生の再起をかけてやり直す物語。
自身も格闘技の大ファンであることを公言しているハル・ベリーがリアリティたっぷりの演技を見せています。
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CONTENTS
映画『ブルーズド ~打ちのめされても~』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【監督】
ハル・ベリー
【キャスト】
ハル・ベリー、シャミア・アンダーソン、シーラ・アティム、スティーブン・ヘンダーソン、エイダン・カント、ワレンチナ・シェフチェンコ
【作品概要】
主演、監督を務めたハル・ベリーは1984年にミスオハイオに選ばれたことをきっかけに女優を目指すようになりました。『ジャングル・フィーバー』(1991)で映画デビューしてからは、『ブーメラン』(1992)などに出演。「X‐MEN」シリーズでもメインキャストとして注目を集めました。
ビリー・ボブ・ソーントンと共演した『チョコレート』(2001)での演技が認められ第74回アカデミー賞で有色人種として初の主演女優賞を受賞しています。私生活では、4度の結婚と3度の離婚を経た2児の母親。
映画『ブルーズド ~打ちのめされても~』のあらすじとネタバレ
元UFC(Ultimate Fighting Championship)選手のジャッキー・ジャスティス(ハル・ベリー)。
ひどい負け方をして選手を引退してから、現在は清掃員の仕事をしながらうだつの上がらない怠惰な生活をしていました。
元マネージャーをしていた恋人のデシ(エイダン・カント)もろくに働いていませんでしたが、ジャッキーを非公式のファイトクラブに連れていきます。
そこで、まわりの観客たちがジャッキーに気付きそこで試合に出ていた無骨な大女と戦うことになりました。
はじめは投げ飛ばされ殴られ通しでしたが、得意の寝技に持ち込んで打ちのめします。
その様子を見ていた大手女性リーグのインビクタFCを経営しているイマキュート(シャミア・アンダーソン)という男にスカウトされました。そこのトレーナーであるブッダ・ガンに会うように言われました。
家へ帰ると、ジャッキーの母親のエンジェルがマニー(ダニー・ボイド・Jr)という子どもを連れて来ていました。
その子はジャッキーの実の子で、父親が内偵捜査中に打ち殺されてしまって、精神的ショックから言葉を離せなくなっていました。
ジャッキーは息子とはずっと疎遠だったので、どう接したらいいのか分からず戸惑います。恋人のデシもほかの親戚に引き取ってもらうように言います。
ブッダガンの元で、トレーニングを始めることになったジャッキー。煙草を吸い、自信がない様子のジャッキーに対して不安なブッダガン。
ジャッキーは、スマホに残っていたマニーの父親とマニーが一緒にキーボードを弾きながら歌う動画を見つけました。父親はマニーに対して母親は死んだと話していたのでした。
マニーを育てていくためにも試合に向けてトレーニングに精を出します。出征証明書を持って学校に手続きをするものの、しゃべろうとしないマニーはお漏らしをしてしまいます。
トレーニングにやむを得ずマニーを連れて行ったジャッキー。マニーに話しかけ、ブッダガンは優しく面倒をみます。
ギャング上がりのイマキュートから、レディキラーという選手とのタイトルマッチを持ちかけられます。そして、その契約をマネージャーのデシは通さず、ジャッキーとの直接契約をするよう言われました。
デシは、ジャッキーが現役時代に10戦全勝で全盛期のとき無理に試合を組んで選手生命を絶たせる結果になったのです。デシにはマネージャーの素質がないのだと言われました。
家に帰ってからマニーにきつく当たるデシと喧嘩になったジャッキー。キッチンでぼやを起こしかけたマニーに怒鳴りつけるデシからマニーを守りました。
そのまま外に出て、仲直りのために花束を買ってきたデシとは結局目も合わせないままになったジャッキーでした。
翌日、デシの酒を全て捨てたジャッキーに怒って暴れるデシ。八つ当たりにマニーのキーボードをたたき壊してしまいました。
その拍子にジャッキーにケガをさせてしまい、ジャッキーはマニーを連れて母親の家に泊めてもらいに行きます。
ダイナーで身の上話をするジャッキーとブッダカン。母親のエンジェルとのわだかまりを解くように諭し、なにか話したいことがあればいつでも来たらいいとブッダカンは自分の住所を教えました。
家でエンジェルと口論になったジャッキーは、子どものころエンジェルの恋人たちや弟からレイプされていた事実をエンジェルに打ち明けます。
まったく知らなかったエンジェルは、なぜ言ってくれなかったのかと怒ります。ジャッキーはずっと胸の内に溜めていた思いを吐き出しました。
マニーを学校に連れて行こうとしたものの、道端のステレオからマニーと父親の思い出の歌が流れてマニーは立ち上がれなくなってしまいました。
そんなマニーを置いてトレーニングに行けず、ジャッキーはマニーを連れて映画館に行きました。ふたりでつかの間の時を過ごしたものの、結局ボスであるイマキュートにはきつく責められてしまいます。
レストランでマニーとジャッキーのふたりで食事をしていましたが、ジャッキーはプレッシャーからパニック発作を起こしてしまい、マニーをひとりきりにしてしまいました。
マニーはひとりで映画館の前で夜にひとりきりでいたところを、通りかかった女性がエンジェルの住所のメモを見て連れてきてくれたのでした。
今のジャッキーには任せられないからと、マニーはエンジェルが預かることになりました。
泣く泣くマニーをエンジェルに預け、トレーニングに打ち込むジャッキー。行き場のないジャッキーはブッダカンの家に居候することになります。
映画『ブルーズド ~打ちのめされても~』の感想と評価
ハル・ベリーが初監督を務め、格闘家役をストイックな姿で見せた本作。彼女は、映画のシーンのほぼ半分以上をメイクによって顔面傷やあざだらけの痛々しい姿で、体当たりの演技に挑戦しています。
そして、55歳とは思えない引き締まった筋肉質な体つきと身のこなしから本作への気合を十分に感じることができます。
一度は手に入れた栄光を失った女性格闘家が、再起をかけて戦うと同時に、息子への愛のために生きる姿に胸を打つ作品となっています。
人生の再起をかけた物語
ハル・ベリー演じる主人公のジャッキーは、幼いころに父親と生き別れ母親との関係も良好とは言えませんでした。また、マネージャー兼恋人も酒浸りで頼れる存在とは言えません。
せっかく格闘家として才能を発揮できて、脚光を浴びていた時の突然の失脚は彼女の人生をどん底に突き落したと言っても過言ではないでしょう。
そんな彼女が、人生をやり直すきっかけとなったのが実の息子の存在でした。彼のために生まれ変わったように必死にトレーニングに打ち込む姿はとても凛々しく、逞しいものです。
父親の死のショックで言葉を話せなくなってしまった息子と、少しずつ心を通わせるようになる様子は心が温まります。最後のシーンまで注目してほしいところです。
迫力満点の試合シーン
一番の見どころ本作のクライマックスともいえる約15分間に及ぶ試合のシーンです。スローモーションを効果的に使った格闘シーンは手に汗握る緊張感です。
接戦の試合模様にハラハラさせられ、どうか勝ってほしい。と願うような気持ちで食い入るように観てしまうことでしょう。
ハル・ベリーの鍛え上げられた肉体と、その体当たりの演技は必見です。
ハル・ベリー自身が、UFCの大ファンとのことで試合の臨場感やリアリティはこだわって演出されているのではないでしょうか。
顔面から流血し、痛々しい姿ながらその逞しい雄姿に今まで見たことのなかったハル・ベリーの魅力を感じることができる一作だと言えます。
まとめ
ハル・ベリー初の監督作である本作ですが、今までにない彼女の一面と女優魂を感じられる作品でした。
格闘技を普段見ない人には少し過激に感じられるようなリアルな格闘シーンもありますが、詳しいルールなどを知らなくても楽しんで観ることができる作品となっています。