連載コラム「山田あゆみのあしたも映画日和」第12回
今回ご紹介するのは、『ムーンライズ・キングダム』(2012)や『フレンチ・ディスパッチ』(2021)などで唯一無二の世界観を誇る監督ウェス・アンダーソンの最新作『アステロイド・シティ』です。
1950年代のアメリカを舞台に、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ジェイソン・シュワルツマンら豪華俳優陣が集結している注目作品です。
それでは、今作の魅力と感想を解説していきます。
映画『アステロイド・シティ』の作品概要
【日本公開】
2023年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
ウェス・アンダーソン
【原案】
ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
【キャスト】
ジェイソン・シュワルツマン、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、ジェフリー・ライト、ティルダ・スウィントン、ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、リーヴ・シュレイバー、ホープ・デイヴィス、スティーヴン・パーク、ルパート・フレンド、マヤ・ホーク、スティーブ・カレル、マット・ディロン、ホン・チャウ、ウィレム・デフォー、マーゴット・ロビー、トニー・レヴォロリ、ジェイク・ライアン、ジェフ・ゴールドブラム
【作品情報】
『アステロイド・シティ』は、2023年カンヌ国際映画祭のプレミア上映で6分間のスタンディング・オベーションで讃えられ、アメリカでの先行公開では3日間で1劇場あたり13.2万ドル(約1872万円:1ドル141円換算)と、『ラ・ラ・ランド』(2016)以来の最高記録を樹立。拡大公開となった翌週も全米6位、1劇場あたりのアベレージではトップを記録しています。
映画『アステロイド・シティ』のあらすじ
時は1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。ここは紀元前3007年9月23日に隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所です。
隕石が落ちた日、“アステロイド・デイ”を祝うため、ジュニア宇宙科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子供たちとその家族が招待されました。
14歳のウッドロウ(ジェイク・ライアン)は、戦場カメラマンの父オーギー(ジェイソン・シュワルツマン)が運転する車で、まだ幼い3人の妹とやって来ます。
到着するなり車が故障、帰りはオーギーの妻の父スタンリー(トム・ハンクス)が、迎えに来ることになりました。
実は子供たちの母親は3週間前に亡くなったのですが、オーギーはそのことを彼らに伝えられずにいます。到着したスタンリーは孫娘たちの心の傷を癒そうとします。
映画『アステロイド・シティ』感想と評価
パステル調の色彩、左右対称の構図、衣装やセットの細部までこだわり尽くされた、ウェス・アンダーソン監督作品。
最新作『アステロイド・シティ』も、期待に応える作品になっていました。まさに、芸術作品。ワンカットずつポスターにして部屋に飾り、愛でたい…。そう思う人は少なくないはずです。
本作の舞台は1955年アメリカ南西部の砂漠の街、アステロイド・シティ。
新作劇のために用意された架空の街で、劇の舞台裏から創作過程まですべてを観客に向けて放映するという設定になっています。
ウェス・アンダーソン監督が「この映画を当てはめられるジャンルはなさそうだね」という通りの作品でした。
劇中劇という構成がこの映画の特徴であり、少々複雑なポイントです。
役を演じるために集められた俳優たちというのは、ある意味で、職業や家庭的立場などという役割をもって生きる私たちのようです。
それぞれのキャラクターたちが抱える、喪失や迷い、ときめきや好奇心は決して作り物ではなく生身の人間らしさです。
劇を演じるために集められた俳優たちに、観客は‟自分たち”を重ねて観るかもしれません。
それそれ事情を抱えた彼らの元に、突如として訪れた”未知との遭遇”は、彼らの行動にどう変化をもたらすのか。ぜひ見届けてほしいと思います。
また、スカーレット・ヨハンソンやジェイソン・シュワルツマン、トム・ハンクスらの一流俳優らの繊細な味ある演技も今作を盛り上げる重要な要素です。
さらに、『ムーンライズ・キングダム』(2013)にも出演したジェイク・ライアンほか、若き俳優たちの生き生きとした存在感と個性にも目を奪われることでしょう。
まとめ
今作の物語のポイントとなるの、アステロイドシティへの宇宙人の襲来なのですが、この宇宙人のビジュアルがなんとも可笑しみ溢れる魅力がありました。
『ファンタスティックMr.FOX』(2009)や『犬ヶ島』(2018)でみられたストップモーションアニメ技術とそのぬくもり感が満載の箇所になっています。
物語のキーを握るこの宇宙人の魅力もぜひ楽しみに、鑑賞してみてはいかがでしょうか。
『アステロイド・シティ』は9月1日TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。
山田あゆみのプロフィール
1988年長崎県出身。2011年関西大学政策創造学部卒業。2018年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを計13回開催中。『カランコエの花』『フランシス・ハ』などを上映。
好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を観る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中(@AyumiSand)。