Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『シャザム!』ネタバレ感想と評価。子供がスーパーヒーローになる喜び|最強アメコミ番付評32

  • Writer :
  • 野洲川亮

連載コラム「最強アメコミ番付評」第32回戦

こんにちは、野洲川亮です。

今回は4月19日公開の『シャザム!』をネタバレ考察していきます。

DCEUシリーズ第7作目となる異色のヒーロー映画を、少年がスーパーヒーローへと成長する過程を中心に考察していきます。

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

『シャザム!』のあらすじとネタバレ

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

1974年、サデウス・シヴァナは父、兄とともに雪道を車で走っていました。

すると突然、父と兄の姿が消え、サデウスは謎の宮殿へと召喚され、魔術師シャザムと出会います。

シャザムから魔術の力を継承する資格を問われたサデウスでしたが、宮殿に封印されている“七つの大罪”からの誘惑に負ける姿を見せてしまい、シャザムに現実世界へと戻されてしまいます。

時は流れ現在、15歳の少年ビリー・バットソンは、これまで何組もの里親に引き取られてきましたが、幼い頃に生き別れた母親を一人で探そうと度々脱走する問題児でした。

今回も母親は見つからず、警察に保護されたビリーは、また新しい里親のグループホームで引き取られることとなります。

そこでビリーは、足が不自由なフレディ、おしゃべりなダーラ、大学進学を目指すメアリー、ゲーム好きなユージーン、無口なペドロといった個性的なホームの兄弟たちと出会いますが、家族を知らないビリーは馴染もうとはしません。

その頃、サデウス(マーク・ストロング)はシャザムに資格が無いと言われた日から数十年、自分のようにシャザムに召喚された人たちを研究していました。

そして、宮殿へ行く方法を見つけ、再びシャザムの前へと現れたサデウスは、“七つの大罪”を封印する目の力を解き放ち、自らの体に魔物たちの力を取り込んでしまいます。

一方、兄弟たちと同じ学校へ通うことになったビリーは、いじめっ子に絡まれていたフレディが、母親がいないことをなじられていることに怒り、いじめっ子を殴りつけ追いかけられます。

地下鉄に乗って逃れたビリー、しかし目の前から乗客たちが姿を消し、電車を降りると謎の宮殿へと着いていました。

シャザムと出会ったビリーは勇者と認められ、シャザムから力を継承し、スーパーヒーロー・シャザム(ザッカリー・リーヴァイ)へと変身します。

突然、ヒーローのコスチュームをまとった大人の肉体となってしまったビリーは、スーパーヒーローマニアであるフレディを呼び出し、助けを求めました。

フレディはシャザムの超能力を撮影しながら試させ、その力の凄さ、「シャザム!」と叫ぶことで元の姿に戻ることを発見した二人は、人助けや金稼ぎをしながら撮影したビデオを投稿し、シャザムはスーパーヒーローとしての知名度をあげていきます。

ところが、ヒーローの力を自分のためだけに使い、自作自演の救出劇で喝さいを浴び、いじめっ子からも助けてくれようとしないビリーにフレディは怒り、ケンカになってしまいます。

そこへ魔物たちの力を手にして、自分を軽んじてきた父や兄を殺し、シャザムの誕生を知ったサデウスが現れ、シャザムの力を奪おうと襲いかかってきます。

サデウスの力に圧倒され恐怖したビリーは、「シャザム!」と叫んで元の姿に戻り、戦いの混乱に乗じて逃げ出しました。

ビリーを見失ったサデウスは、居合わせたフレディがシャザムの正体を知っていることに気付き、人質に取ります。

何とか逃げ出してグループホームへ戻ったビリーは、ホームの兄弟たちからビリーの母親の居場所がわかったと告げられ、急いでその場所へと向かいます。

母親と再会したビリーは、すでに母親が再婚していること、ビリーと生き別れたのは偶然だったものの、その後シングルマザーとなる不安から、ビリーを探さなかったことを知りショックを受けますが、母を思いその場を去りました。

そこへフレディの携帯を奪ったサデウスから、ホームに戻ってくるようにと連絡が入り、ビリーはシャザムに変身しホームへと急行します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『シャザム!』ネタバレ・結末の記載がございます。『シャザム!』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
兄弟たちを人質に取られたビリーは、サデウスの要求に従って宮殿へと向かい、シャザムの力を奪われそうになりますが、そこへ追いかけて来たフレディたちの助けを借り、現実界へと脱出します。

クリスマスのイベント場所へと逃げ込んだビリーたちでしたが、サデウスと魔物たちが現れ、再びフレディたちが捕まってしまいます。

今度こそ、力を奪われる覚悟をするビリーでしたが、シャザムから力を継承する際のに言われた「兄弟姉妹で力を合わせろ」と言う言葉を思い出し、サデウスの杖を奪って兄弟たちと共にそれを掴みながら「シャザム!」と叫びます。

すると、兄弟たち5人全員がシャザムのパワーを得て、大人の肉体のスーパーヒーローへと変身しました。

力を合わせてサデウスと魔物たちを撃退し、その場に居合わせた人々を救ったビリーたちは喝さいを浴びます。

そして、ビリーはホームの兄弟たちと家族として生きていくことを決意します。

ラストでは、シャザムと友人だと嘘をついたとして、学校で孤立していたフレディの前に変身したビリーが現れ、生徒たちの前でフレディは友人だと宣言します。

さらに、シャザムが連れてきた友人として、胸にSマークを付けた青いコスチュームのヒーローが登場し、、、

子供がスーパーヒーローへと成長する喜び

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

本作において、主人公ビリーは孤児の15才、数々の里親から見放されるほどの問題児として描かれています。

そんな少年が、純粋で正義の心を認められシャザムとなるわけですが、セリフで本人が述べている通り、「僕はそんな純粋じゃない」キャラクターにしか見えません。

どういう基準でビリーがシャザムに選ばれたかは、最後まで劇中で語られることはなく、脚本上ではあえて言い落されていることがうかがい知れます。

ここまでにビリーが生き別れた母親を探し、家族という絆に飢えている存在であり、里親などに仮初めの家族関係を否定していることは観客にも示されています。

観客は決してヒーローに向いているとは思えないビリーに疑問を持ちますが、それもそのはず、この物語はどこにでもいる少年が、数々の試練や他人との交流の果てに、スーパーヒーローへと成長する過程をこそ楽しむものなのです。

中盤でサデウスとの戦いの末、ビリーはサデウスに心から怯え、ただただ自分がその場から逃げ出すことだけを考えて行動します。

しかし、その後に仲たがいしていたフレディが人質になっていることを知らされると、迷うことなくシャザムへと変身し、フレディの元へと駆け付けます。

それまで自分の利益しか考えず行動していたビリーが、明確に利他的な行動をするのを見て、観客はビリーが人間的な成長を遂げていることを実感します。

その成長が行きついた先に、兄弟たちを心から信頼することで全員がヒーロー・シャザムに変身する、という一見トンデモな展開が感動を呼ぶことになるのです。

9割ボケ続ける純正コメディだからこその感動

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

初期のDCEUシリーズは『マン・オブ・スティール』(2013)、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)など、シリアスでリアリティーを重視した、硬質な世界観が築かれてきました。

しかし、その作品傾向は『ジャスティス・リーグ』(2017)あたりから徐々に変化していき、シリーズ前作の『アクアマン』(2019)に至っては、作品全体が陽気でコミカルな雰囲気を前面に押し出していました。

この流れの一つの到達点となったのが本作の、“9割ボケ続ける純正コメディ”仕様のストーリーでしょう。

シャザムに変身し手にした超能力を使い、子供のような遊びに興じていく様をとことんユーモラスに描き、敵との戦闘時も中身が子供という設定を忘れず、大人の姿で放つ子供なセリフが笑いを誘います。

こういったコメディ性をベースとしているからこそ、サデウスが家族を虐殺するシーンの凄惨さに恐怖し、ビリーたちが家族の絆を築く姿に感動しやすくなります。

作品全体に漂う安心感は、スピルバーグ作品や『グーニーズ』(1985)などの、ジュブナイル、SF映画の系譜を継ぐ意志を感じさせます。

MCU作品で言えば、「アントマン」シリーズ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が好きな人にとっては、本作の持つカラッとした陽気さはとても相性が良いと思われます。

次回の「最強アメコミ番付評」は…

(C)2019 MARVEL

いかがでしたか。

次回の第33回戦は4月26日公開、MCU10年の集大成となる作品『アベンジャーズ/エンドゲーム』を考察していきます。

お楽しみに!

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

アニメ鬼滅の刃 遊郭編ネタバレ考察解説|三期刀鍛冶の里編の放送前に原作比較×オリジナル描写を振り返り【鬼滅の刃全集中の考察34】

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第34回 大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。 2021年12月5日より放送 …

連載コラム

【ネタバレ】シティ・オブ・ジョイ|あらすじ感想と結末の評価解説。感動おすすめヒューマン映画が4Kリマスター版で復刻【未体験ゾーンの映画たち2022見破録25】

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第25回 映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が2022年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、待望 …

連載コラム

映画『カットスロート・ナイン』あらすじネタバレ結末感想。タランティーノ代表作の元ネタとなった残虐ウエスタン|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー1

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第1回 かつてお昼や深夜のテレビ放送で、レンタルビデオ店で目にする機会があった、よく判らないけど気になるB級映画の数々。 それと知らずに見て強烈に記憶に残 …

連載コラム

『キックアス』『ヒーローマニア-生活-』感想と比較考察。なりきりヒーローが行き着いたそれぞれの答え|最強アメコミ番付評8

連載コラム「最強アメコミ番付評」第8回戦 こんにちは、野洲川亮です。 2018年9月は『キャプテン・マーベル』、『ダークフェニックス』の予告解禁で、大いにテンションが上がっております。 さて、これまで …

連載コラム

【ネタバレ】1950鋼の第7中隊|あらすじ結末感想と評価解説。戦争映画おすすめ作品は“朝鮮戦争・長津湖の戦い”を3人の名匠監督で描く|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー106

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第106回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学