連載コラム「最強アメコミ番付評」第25回戦
こんにちは、野洲川亮です。
今回はアカデミー賞にノミネートされた、3月8日公開のCGアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の作品情報を、公開前に解説していきます。
すでに全米で公開され、各所で好評を得る本作はいったいどんな作品かに迫っていきます。
『スパイダーマン:スパイダーバース』のあらすじ
「スパイダーマンが死んだ」。スパイダーマンことピーター・パーカーの訃報に、ニューヨーク中、そしてピーターの意志を継ぐ、新スパイダーマンの中学生マイルス・モラレスも悲しみに暮れていました。
裏社会に君臨するキングピンが、時空を歪めたことにより発生したこの事態は、さらに別次元同士をも繋げてしまいます。
これにより様々な次元=ユニバースから、それぞれの世界のスパイダーマンたちが出現、力を合わせてキングピンに挑んでいくことになります。
異世界で存在していたスパイダーマンたちが同じ世界に集結するアニメーション映画で、『LEGOムービー』、『くもりときどきミートボール』などの監督・脚本コンビ、フィル・ロードとクリス・ミラーが、脚本と製作総指揮を務めています。
全米での好評!あの大坂なおみも絶賛
本作は日本に先駆けて、全米では2018年12月14日に公開されました。
そして公開されるや否や、評論家、観客が次々とに好評の声を挙げていて、いわゆる玄人受け、一般受けの両方の評価を獲得しています。
ゴールデングローブ賞、英アカデミー賞、アニー賞などを軒並み受賞し、2019年、第91回米アカデミー賞でも長編アニメーション部門にノミネートされています。
I think Spider-Man : Into the spider-verse is one of the best movies of recent times. I’ve never been so happy throughout a entire movie 😂
— NaomiOsaka大坂なおみ (@Naomi_Osaka_) 2019年2月4日
好評は各界にも広がっていて、プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手はツイッターで“『スパイダーマン:スパイダーバース』は最近観た映画で、最も良かった1作。映画を通してこんなにハッピーな気分になれたことはないです”と、本作を絶賛しました。
日米のハーフであり、度々自身の国籍についての報道がされている大坂選手にとって、黒人系のマイルス・モラレスという主人公から浮かび上がるアイデンティティを巡る本作のキャラクター設定。
そして成長していく過程は、自身を鏡写しにしたように共感を呼ぶものだったのかもしれません。
この大坂選手のツイートに、製作総指揮を務めるフィル・ロードは“あなたのプレーにこそ感動した。感動のお返しです”と粋な返信をしています。
今なぜ、マイルスを主人公に描くのか、時代性とのフィット感を感じますね。
また、アメコミ翻訳家の光岡三ツ子さんも“スパイダーバース、革新的な手法を使ったアニメも素晴らしいし、多様性を尊重した作品作りも素晴らしい”と、これまた絶賛評をツイートしています。
素晴らしいスパイダーマン映画であり、史上最高のスパイダーマン映画です
現在最高のスパイダーマン映画の一本でした
温かさとヒロイズム、ユーモアが詰まっていて、スタン・リーも誇りに思うでしょう
ユーモアが駆け抜けていく、まぎれもない(すべての年代にぴったりの)スパイダーマン映画で、アクションは激しくぶっ飛んでいて、この形式でしかできないものとなっています
こうして絶賛評を並べていくだけで、本作への期待感は限界まで高まっていきます。
レンタル移籍中!スパイダーマンの不在から生まれたSUMC
2019年現在では、トム・ホランドが演じる実写版スパイダーマンは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)を皮切りに、「アベンジャーズ」などのMCUシリーズに登場しています。
しかし、本来スパイダーマンの映画化権を持っているのはマーベル及び、親会社ディズニーではなく、ソニーピクチャーズです。
両社の思惑が一致し、スパイダーマンのMCU参戦が決定しますが、その結果ソニーは一定期間スパイダーマン抜きで独自のシリーズ、「SUMC」ソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクターを進めていくことになります。
その第1弾となったのが、スパイダーマンの宿敵ヴィランを描いた『ヴェノム』でした。
そして『ヴェノム』エンドロール後に、「また別の世界」と紹介される形で本作の特別映像が流されました。
“レンタル移籍中”で、実写映画では登場させられないスパイダーマンの不在を埋めるため、ヴィランやアニメーション作品など、スピンオフ作品の製作へと舵を切ったわけです。
製作に名を連ねるフィル・ロード&クリス・ミラーのコンビは、監督・脚本を務めた『LEGO ムービー』内で、バットマンなどのコミックヒーローを多数登場させ、その原作やキャラクター、エピソードを活かし、パロディとして上手く劇中に落とし込むことに成功していました。
その手腕は、製作に回った続編『レゴバットマン ザ・ムービー』でも発揮されており、『レゴバットマン ザ・ムービー』はどの実写版バットマンよりも、“正しく面白いバットマン像”を作りだし、「全てのバットマン映画の中で最高傑作!」と言われるほどの評価を受けます。
別次元のスパイダーマンたちが集結するという設定は、原作コミック「スパイダーバース」を反映したものになっていますが、この原作をどのような形でフィル・ロード&クリス・ミラーら製作陣が活かしているかも、コミックファンにとっても楽しみの一つになるでしょう。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第26回戦は、3月15日公開のMCUシリーズ最新作『キャプテン・マーベル』の公開前情報を解説していきます。
お楽しみに!