連載コラム「最強アメコミ番付評」第6回戦
どうも、こんにちは野洲川亮です。
2018年9月5日にBlu-rayが発売された『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』。
今回はMCU19作目である本作までに、各作品で起こった出来事を振り返りながら、“149分全編が見どころ”と言われる本作の魅力を5つのシーンに注目して徹底考察していきたいます。
そこにはMCU10年の歩みが刻まれていました。
CONTENTS
『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』のあらすじ
地球に向かっていたソー、ハルク、ロキとアスガルドの民たちは、インフィニティ・ストーンを狙うサノスたちの襲撃を受けます。
抵抗するソーとロキですが、すでにパワーストーンを得ていたサノスの圧倒的な力の前に歯が立たず、
アベンジャーズ最強の戦闘力を持つハルクも倒されてしまいます。
ソーの仲間ヘイムダルは、最期の力を使いハルクを地球に送ります。
ソーたちが持っていた四次元キューブからスペース・ストーンが奪われ、最後の抵抗を見せたロキも、サノスに殺されてしまいます。
地球に送られたハルクは、ドクター・ストレンジの下に落下し、サノスの襲来を告げるのです。
トニー・スタークは、恋人のペッパーと結婚に関する話をしていると、ブルース・バナーとストレンジが現れます。
トニーは、インフィニティ・ストーンの説明を受け、タイム・ストーンをストレンジが持っていると聞かされます。
タイム・ストーンを破壊するべきだと提案するトニーですが、
ストレンジは守り通す事が使命だと譲らず、2人の強烈なエゴがぶつかり合います。
また、マインド・ストーンがヴィジョンの額に埋め込まれていることから、
ブルースはヴィジョンと連絡を取る事を提案しますが、トニーはヴィジョンの居場所が分からず、
居場所を知っている可能性のあるキャプテン・アメリカとは仲違いをし、アベンジャーズが解散した事も伝えました。
そこに突然巨大な地響きが起こり…。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』から連なる圧倒的な絶望の幕開け
アヴァンタイトルで観客が浴びせかけられる絶望感は、目の前でソーが敗れているからだけではありません。
この作品直前を描いた『マイティ・ソー バトルロイヤル』において、「アスガルドは場所ではない民だ」というセリフと共に、決死の思いでソーが救った民たちが、すでにサノスとその部下たちにより、ほとんどが倒れてるのを目にしたからです。
さらに素手の戦闘において、アベンジャーズ最強であるハルクがストーンを使っていないサノスに殴り負けてしまい、MCUシリーズ名物悪役のロキも、あっさりと殺されてしまいます。
冒頭でサノスの恐ろしさが分かると同時に、「この映画はこのテンションで行きますよ」という製作者の意思表示を受け取り、観客も前代未聞の展開を覚悟することになります。
ご機嫌な音楽にのせて待望の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』合流
ドクター・ストレンジが持つストーンを狙い地球へやってきたサノスの部下たちとの戦いの直後、「SPACE」のテロップと共にスピナーズ(The Spinners)の楽曲「The Rubberband Man」(1976)がかかります。
観客はすぐに悟ります、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの登場です。
ガーディアンズは、唯一これまで直接的に登場人物たちが交わってこなかっただけに、ソーを救出したガーディアンズが、スラッシュトークでいがみ合うシーンは、トーク自体の面白さとは別に、何とも言えぬ心地よさが漂います。
ピーター・クイルとソーが会話をすれば、当然こういうことになるよな、と納得させられてしまう脚本のレベルの高さを実感させられます。
その後、ソーがロケットを「ウサギ」、グルートを「木」呼ばわりしながらも絆を深めていく展開も、ファンにとってはたまらないものでしょう。
キャップ降臨! その登場が物語る『シビルウォー』後の苦悩
ヴィジョンが身体に宿すストーンを狙いやってきた部下との戦いで、ワンダと共に追いつめられたヴィジョンたちを救いに、キャプテンアメリカが登場するシーンは、本作随一のカッコいいシーンです。
そして、このシーンは単にキャップの格好良さだけでなく、『シビルウォー』からの2年間という劇中の時間的な経過を一目で表現しています。
キャップのシンボルだったコスチューム、盾を持たず、無精ひげを伸ばした姿は、お尋ね者となり、非公式な形でヒーロー活動を続けてきたことを物語っているのです。
袂を分かってしまったキャップとアイアンマンは、今作で直接顔を合わせません。
次回作でキャップが本来の姿を見せる時、それはアイアンマンとの絆を取り戻した時で、ストーンを巡る戦いとは別に、最大の見どころの一つと言えます。
『ブラック・パンサー』で描かれた住んでみたい国ワカンダ
公開順としてはMCUシリーズでは、今作の一つ前である『ブラックパンサー』は、キャラクター以上に、舞台となった架空の国「ワカンダ」が魅力的でした。
世界的には発展途上の農業国と装っているワカンダですが、実はヴィブラニウムという希少金属が発掘される、世界一の超文明国なのです。
その文明表現の数々は、ブラックパンサースーツの高機能だけでなく、ワカンダ戦士たちが有する武器や、死にかけの人間も全快させてしまう医療機器など様々な形で表現され、旅行、移住してみたいと思わされます。
「キャプテン・アメリカ」シリーズで、洗脳され悲運の人生を歩んできたバッキーことウィンターソルジャーも、ワカンダでの治療により無事に洗脳が解け、ファンが待望したキャップとの再会を果たすことができました。
クライマックスでの地球での戦闘シーンも、ワカンダを舞台に繰り広げられ戦闘の激しさと共に、ワカンダのテクノロジー表現は小気味よさを観客に与えました。
ポリコレ的な正しさだけでない強き女性たち
地球・ワカンダと、宇宙・タイタンでの戦いが交互に描かれるクライマックスは、アベンジャーズとワカンダ戦士たちの全アクションシーンが見どころと言えます。
その中でも目を引くのが、ワンダ、ブラックウィドウ、オコエ、3人の強き女性たちが、サノスの部下、女戦士プロキシマと繰り広げる戦闘シーンです。
3人ともMCUシリーズで印象的な活躍をしてきたキャラクターですが、これまで単独主演作はなく(ブラックウィドウは今後製作予定)、あくまでも”重要な脇役”の枠内に収まっていました。
女性の権利が叫ばれるようになってきて久しいですが、マーベルの親会社であり、そういった時代の空気に過敏なディズニーが政治的な配慮の差別や偏見に囚われない表現というポリティカル・コレクトネスを重視する姿勢から、このシーンが生まれたとも言えるでしょう。
しかし、このシーンの魅力は、そんな”ポリコレ的な正しさ”に留まらず、3人のキャラクターが物理的な強さだけでなく、内面的にも男性キャラクターに勝るメンタリティーを有しているからこそ、手を取り合って強敵に立ち向かう様が感動的であり、魅力的に映る要因となっているのです。
MCUシリーズを追いかけてきたファンへのご褒美
このように『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』は今作単独の面白さだけでなく、それまでの18作全てのキャラクター、設定が余すことなく連結しています。
シリーズを追いかけてきたファンにとってはその連結する瞬間を、より味わい、堪能することが出来る構造となっています。
「『アイアンマン』から順番に全部見て!」と言うつもりはありませんが、本作の魅力により深く没頭したいという方は、例えばこの記事でも紹介した『マイティ・ソー バトルロイヤル』や『ブラックパンサー』など、ここ最近の作品だけでもチェックしてみてはいかがでしょうか。
この”連ドラの最終回一つ前”作品を、よりよい状態で楽しんでもらえるはずです。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第7回戦では、黒人初のスーパーヒーローを描いた2018年の映画『ブラックパンサー』を紹介していきます。
お楽しみに!