Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/08/10
Update

『アントマン』一般人のスコットはアベンジャーズシリーズを変えた⁈映画『アントマン&ワスプ』はどうなるか|最強アメコミ番付評2

  • Writer :
  • 野洲川亮

連載コラム「最強アメコミ番付評」第2回戦

こんにちは!野洲川亮です。

毎年のように新作が製作され、2018年もこれまで『ブラックパンサー』、『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』が公開、いずれも大ヒットとなったアベンジャーズシリーズ。

そんなシリーズ最新作、『アントマン&ワスプ』は、8月31日(金)より公開となります。

それに先立ち、この連載コラム「最強アメコミ番付評」では1作目である『アントマン』の魅力を振り返ってみましょう。

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

『アントマン』以前、過剰なシリアスモードに迷い込んでいたアベンジャーズ


(C)Marvel 2015

2018年8月現在までに公開されているアベンジャーズシリーズ(マーベル・シネマティック・ユニバース)は19作品、新作『アントマン&ワスプ』が記念すべき20作目となります。

シリーズは数年ごとに”フェイズ”という分類がなされていて、例えば『アイアンマン」から「アベンジャーズ」までの6作品がフェイズ1、『アントマン』はフェイズ2の最終作でシリーズでは12作目でした。

フェイズ1を経て、『アントマン』に至るまでのフェイズ2は、シリアスな作品が続いていました。

『アイアンマン3』で、アイアンマンであるトニー・スタークはPTSDを発症。

また『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』は、ソーは母親を亡くし家族はバラバラになってしまいます。

さらに『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、キャップは信じていた政府から追われ、逃亡者として昔の親友と戦う羽目になってしまいます。

そのほかにも『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、トニー・スタークの過剰な平和への探求が、ウルトロンという新たな敵を生み出してしまいました。

これらの作品群は評価自体もかなり賛否の分かれるものでしたが、それ以上にシリーズ全体に過度なシリアスムードが漂っていました。

同じフェイズ2で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』こそ、70~80年代のポップスに乗せた明るい作風でしたが、まだ他作品と同じ世界観にあることが強調されていなかったため、当時はファンの間でも、アベンジャーズの本流作品とは認識しづらかったところがあります。

そんな状況の中で、登場したのが2015年に公開された『アントマン』でした。

映画『アントマン』のあらすじ


(C)Marvel 2015

アントマンのコミックでの初登場は1979年、その後アベンジャーズにも加入します。

その後、『イエスマン“YES”は人生のパスワード』などで知られるペイトン・リード監督によって、2015年に映画化されました。

企画段階の時点では、『ベイビードライバー』などで知られたエドガー・ライト監督の起用がされていましたが、撮影開始前に降板となりました。

しかし、ライト監督が仕上げた脚本はそのまま流用されており、本編でもエドガー・ライトらしいテンポのいいギャグ描写は満載です。

映像の演出面でもライト監督の演出を彷彿とされたものが垣間見え、アメコミファンならずとも、エドガー・ライト好きにも『アントマン』はオススメです。


(C)Marvel 2015

『アントマン』のは、窃盗の前科をもったスコット・ラングが離婚した別居中の娘への養育費を払うため、ふたたび窃盗を計画することから始まります。

窃盗仲間から得た情報をもとに、富豪の屋敷へ侵入しますが、そこで見つけたのはアントマンのスーツでした。

実はこの窃盗計画は、スーツの開発者ハンク・ピム博士が仕組んだものであり、ピムのかつての弟子による物体縮小技術の悪用を防ぐため、スコットをアントマンに仕立てることが目的でした。

犯罪者から更生し、娘にふさわしい父親になるように、ピム博士、博士の娘ホープと共にアントマンになり、世界の危機へ立ち向かっていくというストーリーです。

小さくなることで無限のアクションと軽快なコメディへ


(C)Marvel 2015

そんな『アントマン』の魅力と言えば、アリほどに小さくなるというギミックと、そのギミックを利用した無限に広がるアクションやコメディ描写です。

小さくなって敵から見えない、人が入っていけないところへ侵入できる、というメリット。

また一方で、小さくなったことで他の生物や物体が脅威になるというデメリット。

その両方を利用したアクションは、映画的なカタルシスをもたらし、同時にその全てがコメディ描写へと昇華する、単純かつ効果的な映像表現満載です。

主人公のスコット・ラングというキャラクターも、アベンジャーズシリーズにいなかった、これといった特殊能力の無い人物です。多少身軽ではありますが…。

前科者のオジサンという、“選ばれたもの”ではないところに、容易に好感を抱けるものにキャラクターのデザインがされています。

ごく一般的なオジサンであるため、アントマンになるための修行がある訳ですが、これらのシーンの数々が普通である人物からヒーローになったという説得力を与え、その過程のギャグも大変高度なもので中だるみもありません。

ちなみに公開当時に鑑賞した際は、それほど気になりませんでしたが、スコットが操るアリたちは、なんとヒアリであり、2018年現在の日本人目線で見ると、あの危険な外来生物を従えている姿に、別種の面白さを見出すことも出来ます。

終盤には、そのヒアリたちにすっかり感情移入すること請け合いですよ。

続編『アントマン&ワスプ』の他作品との繋がりは

続編となる『アントマン&ワスプ』では、スコットと恋仲になったホープが、アントマン以上の能力を持つ相棒”ワスプ”となり、新たな敵に挑んでいきます。

そこで気になるのがアベンジャーズシリーズ前作、次作との繋がりです。

前作『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』では、アントマンは政府監視下で謹慎中ということで登場しませんでした。

その『インフィニティ・ウォー』衝撃のラスト、サノスが手にしたインフィニティストーンの力で、全宇宙の人間の半分が消滅してしまいます。

おそらく、『アントマン&ワスプ』は時系列的にそれ以前のものとなるでしょうが、その整合性をどのように表現してくるか?シリーズファンとしては要注目です。

さらに『インフィニティ・ウォー』続編となるアベンジャーズ第4作公開前となる、2019年3月(全米公開)には、『キャプテン・マーベル』が封切られます。

静止画以外では、未だほとんどのビジュアルが未発表のキャプテン・マーベル。

その一端が『アントマン&ワスプ』内で垣間見えるのか?こちらも同じく注目していきたいところです。

次回の「最強アメコミ番付評」は…

いかがでしたか。

次回の第3回戦では、『ニンジャバットマン』を中心に、『レゴ バットマン』や『DCスーパーヒーローズvs鷹の爪団』などのスピンオフについて紹介しつつ、2次使用作品をご紹介していきたいと思います。

次回の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画監督ジョン・キャメロン・ミッチェルのインタビュー【パーティーで女の子に話しかけるには】FILMINK-vol.14

FILMINK-vol.14 John Cameron Mitchell: Vive Le Punk オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携 …

連載コラム

映画『ひとくず』感想評価とレビュー解説。監督・主演の上西雄大が描く虐待する側が抱える問題と守るということ|銀幕の月光遊戯 56

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第56回 ミラノ国際映画祭で作品賞と主演男優賞(外国語映画)を受賞するなど、国内外の映画祭で高い評価を得た映画『ひとくず』。 劇団10ANTS(テンアンツ)代表の上西雄大が …

連載コラム

映画『ゲヘナ』ネタバレ感想。結末まで片桐裕司ホラー作品を徹底解説|未体験ゾーンの映画たち2019見破録1

様々な理由から日本公開が見送られてしまう、傑作・怪作映画をスクリーンで体験できる劇場発の映画祭、「未体験ゾーンの映画たち」も2019年で第8回目となりました。 ヒューマントラストシネマ渋谷で1月4日よ …

連載コラム

映画『スパロークリーク』あらすじネタバレと感想。元ネタがレザボアドックスだけにB級ファンなら見逃すな!|未体験ゾーンの映画たち2020見破録4

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第4回 映画ファンにとって新年初の大イベント、劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」が、今年も1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷 …

連載コラム

韓国映画『藁にもすがる獣たち』あらすじと感想評価レビュー。韓流キャストが原作・曽根圭介の犯罪小説の“お金にすがりつく人々”の末路を演じる|映画という星空を知るひとよ42

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第42回 曽根圭介による犯罪小説『藁にもすがる獣たち』が韓国スタッフ&キャスト陣で映画化されます。 映画『藁にもすがる獣たち』は2021年2月19日(金)よりシ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学