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Entry 2020/11/13
Update

映画『燃えよ剣』『沖田総司』感想考察と比較解説。新撰組の“青春”について過去作を紐解く|おすすめ新作・名作見比べてみた8

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「おすすめ新作・名作見比べてみた」第8回

公開中の新作映画から過去の名作まで、様々な映画を2本取り上げ見比べて行く連載コラム“おすすめ新作・名作を見比べてみた”。

第7回のテーマは「新選組」です。

司馬遼太郎の代表作『燃えよ剣』が原田眞人監督、岡田准一・主演で再び映画化されました。これを機に過去の新選組映画を振り返って行こうと思います。

今回のおすすめ新作・名作を見比べてみたは、数ある新選組映画の中でも「青春」をテーマに、最初に映画化された『燃えよ剣』(1966)と『沖田総司』(1974)を見比べます。

【連載コラム】『おすすめ新作・名作を見比べてみた』記事一覧はこちら

映画『燃えよ剣』(1966)の作品情報


(C)1966 松竹株式会社

【公開】
1966年(日本映画)

【原作】
司馬遼太郎

【監督】
市村泰三

【脚本】
加藤泰、森崎東、長谷部利朗

【キャスト】
栗塚旭、小林哲子、和崎俊哉、石倉英彦、天津敏、戸上城太郎、内田良平、芥川隆行(ナレーション)

映画『燃えよ剣』(1966)の作品概要

司馬遼太郎の歴史小説『燃えよ剣』の最初の映画化。主人公・土方歳三役は、本作の前年に放送されたテレビドラマ『新選組血風録』(1965)で土方歳三を演じた栗塚旭。

後にテレビドラマ『燃えよ剣』(1970)でも土方歳三を演じ、土方歳三=栗塚旭というイメージを定着させました。

NHK大河ドラマ『新選組!』(2004)でも山本耕史演じる土方歳三の実兄・為次郎を演じていました。

池田屋事件をクライマックスに再構成

司馬遼太郎の原作『燃えよ剣』は新選組副長・土方歳三の生涯を描いた作品です。

物語の舞台は多摩から京都そして蝦夷の函館へと至り、巻数も上下2冊に及ぶ長大な物語です。しかし本作『燃えよ剣』の上映時間はなんと90分しかありません。

そのため本作『燃えよ剣』は土方歳三の多摩時代から池田屋事件までが描かれ、物語は土方とヒロイン・佐絵、ライバル・七里研之助の3人を中心に再構成されています。

前半で描かれるのは土方歳三の多摩時代から浪士組に参加し上洛するまで。土方歳三と佐絵の出会いと恋、土方と七里研之助の因縁が前半で丁寧に描かれ、舞台を京都に移した後半では3者が複雑絡んだドラマが展開します。

新選組と尊王攘夷派という敵味方に別れてしまった土方と佐絵、その背後で罠を仕掛ける七里研之助の暗躍が映画の中心となります。

そのため新選組の歴史の中でも大きなポイントである芹沢鴨暗殺はハイライト的な描写に留められました。

見せ場や事件の多い京都の新選組の活躍をコンパクトに納め、多摩時代の土方歳三に尺を割き丹念に描いていた本作『燃えよ剣』。土方歳三を主人公にした青春映画とも言えるでしょう。

また本作の見所は、やはり映像作品における「土方歳三」像を作り上げた栗塚旭の存在感でしょう。

栗塚の見開いた眼と全体から漂う荒々しさは、触れると怪我をするような乱暴者を意味する土方のあだ名「バラガキ」を見事に体現しています。

映画『沖田総司』の作品情報

【公開】
1974年(日本映画)

【脚本】
大野靖子

【監督】
出目昌伸

【キャスト】
草刈正雄、高橋幸治、米倉斉加年、真野響子、西田敏行、河原崎次郎、池波志乃、神山繁、小松方正、殿山泰司、荒木一郎、大滝秀治

映画『沖田総司』の作品概要

大野靖子のオリジナル脚本を、『神田川』(1974)『天国の駅』(1984)の出目昌伸監督が映像化。

沖田総司には若き日の草刈正雄が抜擢され、土方歳三を高橋幸治、近藤勇を米倉斉加年と2人の名優が演じています。

また『キューポラのある丘』(1962)などで知られる映画監督の浦山桐郎が伊藤甲子太郎に扮しています。

さわやかでエネルギッシュな青春群像

映画『燃えよ剣』は主人公・土方歳三とヒロイン・佐絵、ライバルの七里研之助の3人の関係性を中心に描き、クライマックスには池田屋事件が配置されていました。

一方、本作『沖田総司』は上映時間92分と『燃えよ剣』とそう変わらない尺ですが、多摩時代から沖田の死までを描いています。

新選組一番隊長ですが労咳を患い20代前半で没する沖田総司は、どちらかと言えば薄幸な美剣士や、中心メンバーの中でも年少のため悪戯っぽいイメージを持たれがちです。

しかし本作で沖田総司を演じていたのは草刈正雄。長身で彫りが深くやや色黒な草刈正雄は、世間一般のイメージする沖田総司よりも精悍な雰囲気を放っており、数多の俳優が演じた沖田総司の中でも一線を画しています。

本作はそんな草刈=沖田が雄叫びながら野を駆ける様から始まり、エネルギッシュな「若さ」を感じさせていきます。

本作『沖田総司』は全体的に青春映画のようなテイストで製作されています。沖田たち試衛館道場の面々の多摩時代の描写はさながら男子校の部室のようでした。

また沖田・近藤・土方の3人が芹沢鴨暗殺の会議をするのはなんと川原です。

こういった場面は暗い閉じた一室などであることが多いのですが、青空の下の川原で行われているというのは非常にユニークです。

話の中心は暗殺と血なまぐさいのですが、川に寝そべった3人が次第に故郷の多摩を思い出していく様子は「さわやか」で、他の新選組映画とは一風変わった雰囲気でした。

池田屋事件の最中に喀血し、自身の命が残り少ない事を知った沖田総司。本作の後半では、時代の流れには逆らえず悲劇的な運命をたどる新選組と沖田の死が描かれます。

前半のさわやかな雰囲気が、後半の悲劇的な展開に効いてくるのです。

最新・新選組映画『燃えよ剣』の作品情報

【公開】
近日公開予定(日本映画)

【原作】
司馬遼太郎

【監督・脚本】
原田眞人

【キャスト】
岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、伊藤英明、尾上右近、山田裕貴、坂東巳之助、谷田歩、金田哲、松下洸平、村本大輔、阿部純子、ジョナス・ブロケ、高嶋政宏、柄本明、市村正親

最新・新選組映画『燃えよ剣』の作品概要

司馬遼太郎の代表作『燃えよ剣』を原田眞人監督が映像化。主人公・土方歳三はV6の岡田准一が演じます。

同じく司馬遼太郎の代表作『関ヶ原』(2016)を映画化したコンビが再びタッグを組みました。ヒロイン・お雪には柴咲コウ、新選組局長・近藤勇には鈴木亮平、沖田総司には山田涼介、その他豪華キャストが集結しています。

まとめ

土方歳三の多摩時代と恋を中心的に描いた66年版『燃えよ剣』、全体的に爽やかな雰囲気の『沖田総司』。

2作品とも新選組を描いた映画ですが、特に彼らの「青春像」に焦点を当てた作品です。

新選組を描いた最新作『燃えよ剣』の前に、今回取り上げた2作品を鑑賞してはいかがでしょうか。

【連載コラム】『おすすめ新作・名作を見比べてみた』記事一覧はこちら





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