2017年に放送されたテレビシリーズの続編を描いた『劇場版 幼女戦記』
快進撃を続ける第二○三航空魔導大隊が新たな戦場を舞い、激戦に身を投じていく姿を描きます。
主人公ターニャの前に現れる少女、メアリーとの対決の行方は⁈
カルロ・ゼンによる戦記ファンタジー小説を原作に、テレビ版の上村泰監督が引き続き描いたアニメ「幼女戦記」の劇場版をご紹介します。
映画『劇場版 幼女戦記』作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
上村泰
【キャスト】
悠木碧、早見沙織、三木眞一郎、玄田哲章、大塚芳忠、濱野大輝、小林裕介、笠間淳、林大地、土師孝也、小柳良寛、戸松遥、高岡瓶々、飛田展男、稲垣隆史、チョー、森川智之、福島潤、田村睦心
【作品概要】
カルロ・ゼン原作のライトノベルを原作としたアニメーション作品のTVシリーズからの続編を映画化。
監督を上村泰、脚本を猪原健太がTVシリーズから続投しています。
主人公ターニャとテレビシリーズのクライマックスで戦死した、アンソンの娘メアリーとの因縁を中心に新たな局面を迎える帝国の戦いを描いています。
映画『劇場版 幼女戦記』のあらすじとネタバレ
統一暦1966年、連合王国の教会で一人の男が取材を受けています。
男の名はアーデルハイド・フォン・シューゲル、かつて帝国陸軍で技師を務めていました。
記者はシューゲルに帝国はなぜ、世界大戦に踏み切ったのかと尋ねますが、シューゲルは分からないと答えます。
しかし、なぜ世界大戦が起こったかはわかると答え、世界が帝国を恐れたからだと続けました。
統一暦1926年2月。
南方大陸に渡った帝国陸軍第二○三航空魔導大隊、通称、ピクシー大隊を率いるターニャ・フォン・デグレチャフ少佐は憤っていました。
大陸に渡った自由共和国軍は部隊を分散するとされ、数で劣る帝国軍上陸部隊は最も北の共和国部隊を撃破するために本隊をあて、他の部隊の足止めを大隊が担当するはずでした。
しかし、共和国軍は部隊を分散しておらず、帝国上陸軍本隊へ向かっていました。
それを知ったターニャは帝国軍敗北の危機を悟り、転進を迫られます。
本隊の救援に向かうか尋ねる、副官、ヴィクトーリヤ中尉に敵の隙を突き、司令部の攻撃を決意、守備を突破し見事、司令部を撃破し南方大陸での勝利を収めます。
部下に本国への凱旋を伝え意気揚々と帰還する大隊ですが、数週間後、北方へ向かう輸送機に乗せられていました。
遡ること10時間ほど前、帰国した大隊を帝国陸軍参謀本部情報部のエーリッヒ・フォン・レルゲン大佐が出迎えます。
大陸での功を労い、部隊の状況を尋ねるレルゲンにターニャは損害も無く、士気も高いと応えると、帝国の隣国、ルーシー連邦で会戦に向けた動きが見られるため強行偵察の任務を言い渡されます。
しぶしぶ連邦に向かうターニャは嘘でも大隊の損害がひどいといえばよかったと後悔しながらも国境を越え、連邦の国土に侵入します。
そこで、連邦軍の部隊が展開されていることを確認、司令部に報告しようとすると配備されていた列車砲が突如発砲、同時に司令部より連邦が帝国に宣戦布告したことが伝わります。
すぐさま、戦闘を開始する大隊は周囲の敵を撃滅、司令部に指示を仰ぐと、任意に攻撃を命じられます。
ヴィクトーリヤに次の攻撃先を訪ねられるとターニャは連邦の首都モスコーへの攻撃を口にし、反対する部下達に成功すると不敵な笑みを浮かべるのでした。
連邦の首都、モスコーに対帝国のため各国から召集された魔導師部隊、多国籍義勇兵が到着、その中に合州国義勇兵 准尉 メアリー・スーの姿がありました。
その頃、連邦内務人民委員、ロリヤは巡視と称し自らの趣向に合う幼女を物色するためモスコー市内を走っていました。
その時、上空を飛行する魔導師を目撃、突如発砲し政府機関や軍関係の施設を次々と破壊し始めます。
驚くロリヤを尻目に魔導師の部隊、ピクシー大隊は帝国旗を掲げモスコーの空を飛び交います。
時を同じく、多国籍義勇兵の宿舎も襲撃を受け、メアリーは帝国軍の襲撃を知ります。
父を帝国軍に殺されたメアリーは隊長の連合王国中佐ウイリアム・ドレイクの制止を振り切り、出撃します。
目的を達成し、撤退を始めようとする大隊の前にメアリー、遅れて出撃した義勇兵本隊が到着、交戦状態となります。
ターニャに肉薄するメアリーはターニャが持つ銃器がかつて自分が父に贈った物である事に気づき、ターニャが父の敵であると知ります。
しかし、ターニャに殴打され、メアリーは墜落、防御陣を張り、一命を取り留めますが重傷を負います。
メアリーが張った防御陣の膨大な魔力に不審に思うターニャですが大隊と共に撤収します。
映画『劇場版 幼女戦記』の感想と評価
主人公ターニャの可愛らしい容姿とは裏腹の冷酷な発言や、血に塗れた戦争を描く残酷なストーリーが話題となり、人気を博したテレビアニメ『幼女戦記』。
シリーズの続編となる本作は、復讐に燃える少女メアリーとターニャの因縁を中心に描かれています。
ターニャとメアリーの対決は父の敵を討とうとするメアリーの「感情」、ただ軍人としての任務に臨むターニャの「理論」の対決だった訳ですが、その強い「感情」から、ひたすら敵討ちに没するメアリーの姿は戦時中という物語の背景を濃く現しています。
うら若き少女が何ゆえ銃をとり戦地に赴かなければならないのか、やりきれない想いになりました。
それ故にウィリアムの「敵と仇を間違えるな」と言う言葉が印象的。
対して、ターニャがどこまでも淡々と任務をこなしていく姿は軍人とはいえ異様に思えてなりません。
元は現在日本のビジネスマンが転生したという設定ですが、それだけに戦争を知らない人物がまるで書類仕事を淡々とこなすように敵を排除していき、「戦争=人殺し」をしているという感覚が大きく欠如しており、そこまで「理論」的になれるのかと疑問を抱きました。
また本作は空戦シーンが見どころで、スクリーン狭しと飛び回る魔導師たちや、砲弾の爆発を表現した空の様子は見事です。
特にクライマックスのターニャとメアリーのドックファイトは飛び散る破片、土煙が緻密に表現、臨場感を表現し、実際に自分も飛んでいるかのように感じました。
ターニャを演じた悠木碧の演技も眼を見張るものがあり、幼い声の中ににじむ自身や欺瞞、時に垣間見える残虐さが表現されており、容姿と内面が乖離したキャラクターを見事に演じていました。
まとめ
本作は「信仰」と「無信仰」、「感情」と「理論」を体現するメアリーとターニャの対決を描いていたわけですが二人の対決はまだ始まったばかりです。
新たな戦闘団を率いることとなるターニャにメアリーはどのように挑むのでしょうか?
つぎの戦場での「幼女の皮を被った悪魔」の活躍を期待いたしましょう。