細田守監督の代表作映画『サマーウォーズ』
『時をかける少女』などで知られる細田守監督によって、2009年に公開されたアニメーション映画『サマーウォーズ』。
人工知能や仮想空間との関わり方について問うた、今こそ観るべきとも言えるアニメーションとして、2009年の劇場公開から10周年を記念して、2020年に体感型上映システムに対応した4DX版が公開もされました。
個性豊かな登場人物たちの、コミカルなやりとりや温かい家族愛。しかし、その裏で進んでいた混乱に巻き込まれ、突如家族に訪れた悲劇は、現代を生きる私たちにとって深く考えさせられます。
仮想空間「OZ」と現実世界の強力なつながりの中で、ふと現れた謎の人工知能「ラブマシーン」と繰り広げられる壮大なバトルは圧巻です。
映画『サマーウォーズ』の作品情報
【公開】
2009年公開(日本映画)
【脚本】
奥寺佐渡子
【原作・監督】
細田守
【キャラクターデザイン】
貞本義行
【キャスト】
神木隆之介、桜庭ななみ、富司純子、谷村美月、斎藤歩、横川貴大、信澤三恵子、谷川清美、桐本琢也、佐々木睦、玉川紗己子、永井一郎、山像かおり、小林隆、田村たがめ、清水優、中村正、田中要次、金沢映子、中村橋弥、高久ちぐさ、板倉光隆、仲里依紗、安達直人、諸星すみれ、今井裕貴、太田力斗、皆川陽菜乃
【作品概要】
『時をかける少女』などを手掛けた、細田守監督の長編オリジナルアニメーション。インターネット上の仮想空間が引き起こした、世界中を巻き込む大事件に大家族が立ち向かう姿を描いています。
脚本は奥寺佐渡子が務め、キャラクターデザインは貞本義行は担当しています。2020年には公開10周年を記念して「4DX」版が公開。
映画『サマーウォーズ』のあらすじとネタバレ
世界は、インターネット上の巨大仮想空間”OZ(オズ)”を通して、あらゆることができる時代。
全世界で10億人以上が利用しており、パソコンや携帯電話からOZに繋げば、自分のアバターを通して世界中の人とコミュニケーションを取れることはもちろん、買い物から健康の管理までOZの中で済ますことができます。
OZは、現実の世界ともリンクしているため便利な一方、こうした巨大なネットワークで起きた事件は現実に驚異的な影響を与えてしまいます。
高校生の健二は、数学オリンピックの日本代表に選出されかけるほど数学が得意。夏休みも学校でOZの管理をしてお小遣い稼ぎをしていたところ、先輩の夏希にアルバイトとして彼氏役を頼まれました。
学校一の美少女である夏希の頼みを断るわけもなく、向かったのは、長野県は上田。夏希のひいおばあちゃんが当主をする壮大な屋敷で、ひいおばあちゃんの90歳の誕生日を一族総出でお祝いしようとこうとします。
いきなりの展開に戸惑う健二でしたが、大家族の賑やかさとあたたかさに圧倒されます。
そんな中、健二の携帯電話に一通のメールが届きました。開いてみると、謎の暗号が。数学の問題だと勘違いした健二は、反射的に解いてしまいます。
しかし、健二が解いたその暗号はなんと、仮想空間「OZ」を守っている、2000桁以上のセキュリティーコードだったのです。
絶対に安全だと言われていたOZのセキュリティーが、一晩にして解かれ、交通機関は麻痺し、偽の情報が飛び交い、世界中が大混乱に陥ってしまいました。
原因は自分だと、パニックになる健二でしたが、実は健二の解答は間違っていて他にも回答者がいたこと、さらにメールの送り主は、巨大な人工知能「ラブマシーン」であることが判明しました。
ほっとしたのも束の間、「ラブマシーン」に乗っ取られたOZでの混乱が、現実の世界に次から次へと被害を及ぼしていきました。
それを食い止めようと、OZでは、最強格闘技チャンピオンのキングカズマと共にアバターを通して、「ラブマシーン」を倒そうと奮闘します。
一方、現実世界では、事の重大さを察したひいおばあちゃんが、広大な人脈を使い、あの手この手で収束させようと動いてくれていました。
そんな中、ひいおばあちゃんにとって夫の妾の子であった侘助が10年ぶりに帰って来ました。侘助は、なんと今回の騒動である「ラブマシーン」の開発者が、侘助自身であることを明かします。
映画『サマーウォーズ』の感想と評価
映画『サマーウォーズ』は、いつ観ても、何度観ても新しさを感じる細田守作品です。毎年、夏になると“実家に帰省するかのごとく”、必ず観るというファンも多いのではないでしょうか。
長野県は上田にある大きな屋敷の雰囲気や大家族の賑やかさ。何と言っても、おばあちゃんのパワフルと温かさは、本当の祖母のあったようでもあるし、観る度に実家や親戚と再開した気持ちにさせてくれます。
また、インターネット上の仮想空間「OZ」や人工知能「ラブマシーン」の存在、現実世界との関わり方など、2009年当時に描かれた事実に驚きですし、今尚、未来の話のような気にさせてくれ、古さを感じさせないリアルさがあります。
いつの時代、そしてどの世代の人たちが観ても、作品テーマから学び考えることがある。そして誰かのために思いを抱き、果敢に困難に立ち向かうことの大切さを諭してくれます。
まとめ
2009年に『時をかける少女』、2012年に『おおかみこどもの雨と雪』2015年に『バケモノの子』といった、数々の人気アニメを手掛けてきた細田守監督。その原点とも言える作品が、本作『サマーウォーズ』であり、初の長編オリジナルアニメーション作品です。
また、数学が得意ですが、気弱な高校2年生の小磯健二の声を演じたのは、神木隆之介。彼にしか出せない優しさと強さという雰囲気を見せることで、この後も実写での俳優業の活躍のみならず、アニメーション作品は『借りぐらしのアリエッティ』(2010)、『君の名は。』(2016)、『メアリと魔女の花』(2017)と、大作ぞろいです。
一方の憧れの先輩・篠原夏希の声を務めたのは、桜庭みなみ。本作後にブレイクを果たし、『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』で、第35回報知映画賞新人賞、『最後の忠臣蔵』で第53回ブルーリボン賞新人賞など大きな評価を得ました。
そんな2人が演じた健二と夏希が、家族や仲間と共に「仮想空間OZの暴走」に立ち向かうことで、仮想現実の世界ではなく、「すぐそばにいる大切な他者」との繋がりの大切さに気付かせてくれる作品です。