鮮やかな色彩で描かれるブラジル産アドベンチャーアニメーション
アニメーション映画『父を探して』(2013)で脚光を浴びたアレ・アブレウ監督の最新作『ペルリンプスと秘密の森』が、2023年12月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開となります。
対立する2つの国のエージェントが、巨人に脅かされる魔法の森に入り込んだ「ペルリンプス」を見つけるべく繰り広げる、めくるめく色彩表現も鮮やかなアニメの見どころをご紹介します。
CONTENTS
映画『ペルリンプスと秘密の森』の作品情報
【日本公開】
2023年(ブラジル映画)
【原題】
Perlimps
【製作・監督・脚本・編集】
アレ・アブレウ
【共同製作】
ライース・ボダンスキー、ルイス・ボロネージ、エルネスト・ソート
【助監督】
ヴィヴィアーニ・ギマランイス
【音楽】
アンドレ・ホソイ、オ・グリーボ
【声のキャスト】
ロレンゾ・タランテーリ、ブルーオジウリア・ベニッチ、ステーニオ・ガルシア、ホーザ・ホザー、ニウ・マルコンジス
【作品概要】
2013年の『父を探して』が第88回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた、ブラジルの気鋭監督アレ・アブレウの長編第3作。
巨人による破壊から魔法の森を救う謎の存在「ペルリンプス」を探す2人のエージェントの冒険を、独自の色彩表現で描きます。
映画『ペルリンプスと秘密の森』のあらすじ
テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエと、自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの2人の秘密エージェントは、巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣されていました。
2人の共通目的は、森を救うと伝えられている「ペルリンプス」を探すこと。一世紀にわたって対立していた両国の2人は、やむなく協力し合うことに。
反発しながらもペルリンプスを求めて森を彷徨う2人は、カマドドリのジョアンという鳥の姿をした老人と遭遇。老人はかつて巨人だった時のことを語り始めます。
そして物語は、思いがけない結末へとたどり着くのでした…。
映画『ペルリンプスと秘密の森』の感想と評価
独創的な色彩と音楽で綴られるSF冒険譚
1人の少年を主人公に、南米大陸の歴史と冒険を描いた長編2作目『父を探して』(2013年)が高く評価され、アニメーション界に彗星のごとく現れたアレ・アブレウ監督。彼の最新作『ペルリンプスと秘密の森』では、一変してSFの世界が舞台となります。
敵対する国同士の秘密エージェントであるクラエとブルーオ。謎の巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣された両者は、森を守る唯一の方法とされる「ペルリンプス」を見つけるべく、協力し合うことになります。
表面上は、いわゆるトレジャーハンティング要素を含んだ冒険譚。ですが、監督が生まれ育ったブラジルではアマゾンの森林保護は大きな課題となっており、「エコロジーのメッセージを強調するつもりはない」と語りつつも、自ずとその重要性を内包しています。
その一方で、我々の現実世界各地で起こる緊張や摩擦、対立事情にも関連付けることができます。
本作の魅力は、魔法の森を描いた「色彩表現」。色彩を決めるために、紙の上、次にコンピューター上で実験を重ねていき、最も意味のある色のパレットによって生み出された世界観に、目を惹かれることは必至でしょう。
そしてもう一つの魅力は「音楽」。監督の幼なじみにして、前作『父を探して』でもコンビを組んだ音楽家アンドレ・ホソイが奏でる中国、ベネズエラ、コロンビアの楽器を使って生まれた音色と、透き通ったコーラスによる心地よいメロディが、観る者を魔法の森へと誘います。
『ペルリンプスと秘密の森』楽曲「Daqui prá lá, de lá prá cá」
「友情の絆を描きたかった」――アレ・アブレウ監督&ヴィヴィアーニ・ギマランイス助監督記者会見レポート
11月14日、日本公開に先駆けて来日したアレ・アブレウ監督とヴィヴィアーニ・ギマランイス助監督を迎えての記者会見が、駐日ブラジル連邦共和国大使館にて行われました。
今回の来日で細田守監督と親交を深められたというアブレウ監督は、「東京は(生まれ育った)サンパウロのような大都市なのに、とても平和で落ち着いた町。アニメーションの仕事をしている者としては、町の中の色使いや企業ロゴのデザインにも惹かれました」と、6年ぶりに訪れた日本への印象を語りました。
かたや今回が初来日のギマランイス助監督は、「私たちを迎え入れてくれるリスペクトを感じました。私はまだ(日本文化の)表面しか触れていないので、その奥に何があるのかを探っていきたいです」と、クリエイターとしての探求心を覗かせました。
「ペルリンプス」という謎のフレーズについては、「プロデューサーのルイス・ボロネージが語った“蛍”という意味のポルトガル語『ピリランポス』にヒントを得て生まれた造語です」と明かした監督。
「製作中に、魔法の森自体が“ある物”(ネタバレに抵触するのでここでは伏せます)のメタファーになっていることに気づいた。そこで観客の皆さんが自由に想像できる余地を残したくて、『ペルリンプス』という抽象的な言葉を使いました」という、言葉に込めた狙いも語りました。
「この作品のテーマは友情という“力”」「友情の絆を描きたかった」と、「友情」というフレーズを強調していたアブレウ監督。創作ヴィジョンの源が「世界のアニメーションからもそうですが、むしろ音楽や絵画の影響を受けている」と語っていただけに、その映像と音楽は目を見張るものが。なおギマランイス助監督は現在、自身初の長編監督作の準備を進めているそうで、こちらも期待したいところです。
ちなみに、今回の来日で監督が好んだ日本食が「だんご」。打ち合わせ時に差し入れされたコンビニのだんごが大変気に入り、舌鼓を打っていたそうです。
まとめ
はたして「ペルリンプス」の正体とは何なのか?
劇中の至るところにそれを示すヒントは隠されていますが、あくまでもそれは暗示に過ぎません。一つ言えるのは、観る人によっていかにようにも解釈ができるということ。
「各地で争い事が絶えない現状において、こうした作品を世界に届けられることができてうれしい」。
アレ・アブレウ監督が本作『ペルリンプスと秘密の森』に込めたメッセージを、体感してください。
映画『ペルリンプスと秘密の森』は、2023年12月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開。