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Entry 2023/01/13
Update

【ネタバレ】思い出のマーニー|あらすじ感想解説とラスト結末評価。怖い?切ない?杏奈が時を越えて思い出す“まるごとの愛”

  • Writer :
  • 大塚まき

ふたりの少女が出会い、ひと夏の思い出が永久のものになる……。

ジョーン・G・ロビンソンの児童文学作品を原作に、『借りぐらしのアリエッティ』(2010)の米林宏昌が監督を務めたアニメーション作品。

それが、映画『思い出のマーニー』です。

北海道の美しい湿地帯を舞台に心を閉ざした主人公・杏奈と謎めいた金髪の少女・マーニーとの不思議なひと夏の出来事を描きます。

本記事では、映画『思い出のマーニー』の魅力をネタバレあらすじ有りでご紹介いたします。

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映画『思い出のマーニー』の作品情報


(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

【公開】
2014年(日本映画)

【英題】
When Marnie Was There

【原作】
ジョーン・G・ロビンソン

【監督】
米林宏昌

【脚本】
丹羽圭子、安藤雅司、米林宏昌

【声のキャスト】
高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、根岸季衣、黒木瞳、白石晴香、杉咲花、石井マーク、頼経明子、石山蓮華、甲斐田裕子、森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真、吉行和子、森山良子

【作品概要】
イギリスのジョーン・G・ロビンソンの児童文学作品を「スタジオジブリ」がアニメ映画化。本作が『借りぐらしのアリエッティ』(2010)以来の4年ぶりの監督作となった手がけた米林宏昌が監督を務め、第88回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされました。

ジブリ作品としては「宮崎駿」の名前がクレジットされていない初の映画となり、『かぐや姫の物語』(2013)を世に送り出した西村義明がプロデューサーを務めた本作。後にスタジオジブリは制作部門の休止が発表され、米林監督は彼と「スタジオポノック」を立ち上げています。

心を閉ざした主人公・杏奈役には声優初挑戦となる高月彩良が大抜擢され、謎めいた少女・マーニー役を『るろうに剣心 最終章 The Biginning』(2021)や『花束みたいな恋をした』(2021)などで知られる有村架純が演じます。

杏奈の養母である頼子役を松嶋菜々子が、彩香役を杉咲花が演じた他、寺島進、吉行和子、黒木瞳など豪華な俳優群が声のキャストで集結。また映画の主題歌には、シンガーソングライターのプリシラ・アーンが歌う「Fine On The Outside」が採用されました。

映画『思い出のマーニー』のあらすじとネタバレ


(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

12歳の杏奈は、両親を幼少期に失い、里親である頼子に育てられました。感情を表に出さず、学校でも周囲になじめずにいました。

ある日、写生の授業で一人でスケッチをしていた杏奈は「この世には目に見えない魔法の輪がある」「輪には内側と外側があって、私は外側の人間」「でもそんなのはどうでもいいの。私は、私が嫌い」と心の中で呟きます。

一人の先生が杏奈のスケッチを見に歩み寄りますが、近くにいた子どもが泣き始めたことで、その場から立ち去ってしまいます。

やがて杏奈は持病である喘息の発作を起こし、そのまま早退し主治医の山下医師に診てもらいます。そこへ、学校の同級生たちが鞄を届けに来ます。

頼子は彼女たちの態度から、杏奈が学校で孤立していることを察しました。また医師からは「喘息の発作はストレスの影響もある」と言われ、環境のいいところでしばらく療養させることを提案させられました。

夏休みの間だけ、頼子の親戚の大岩清正・セツ夫婦のところで過ごすことになった杏奈は、札幌から特急列車で海辺の田舎町に向かいました。

大岩夫婦の家に向かう車中、小高い丘に立つサイロに目が留まりました。

家に着いてから、杏奈は頼子宛てに書いた葉書を郵便ポストへ出しに行きますが、人目を避けて逃げた先の入り江で水面に続く洋館を見つけます。

人々から「湿地っ地(しめっち)屋敷」と呼ばれる洋館。それになぜだか懐かしさを覚えた杏奈は、靴を脱いで入り江に面した屋敷まで渡りました。

もう誰も住んでいない廃墟となっていた洋館で、いつの間にか眠り込んでしまった杏奈。はっと目を覚ますと、洋館の目の前の水かさが増していました。ちょうど、ボートを漕いでいた十一という老人が通りかかり、杏奈は無事帰ることができました。

その晩、夢の中で杏奈は、湿地っ地屋敷の窓から淡い金髪の少女を見ます。それから杏奈は、入り江で湿地っ地屋敷のスケッチをしに出かけるようになり、夢の中でも何度も屋敷を訪れ、金髪の少女を目撃しました。

近所の七夕まつりに行きたくもないのに、同世代の女子・信子と一緒に行くことになった杏奈は、短冊の願い事に「毎日、普通に過ごせますように」と書きました。

信子は杏奈の短冊を勝手に見ると、執拗に「“普通”って何?」と聞いてきます。腹が立った杏奈は、信子に向かって「うるさい!太っちょブタ!」と言い放ちその場を走り去ってしまいます。

杏奈は走りながら幼少の頃のことを思い出し、「私は私が嫌い」と自己嫌悪に陥ります。そして逃げるように入り江へと着くと、置いてあったボートに乗ります。

何とかボートを漕いで屋敷の前まで来ますが、止まることができず、ぶつかる寸前で夢に出てきた子にそっくりの少女に助けられます。少女はボートを「あなたのためにわざと置いてきたの」といたずらに笑いながら、屋敷に住んでいると言います。

廃墟だった屋敷を見たのが嘘のように、目の前には、夜の暗がりに美しい洋館の光りが灯っていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『思い出のマーニー』ネタバレ・結末の記載がございます。『思い出のマーニー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

帰り際、「マーニー」と名乗った少女は「わたしのことは秘密よ、永久に」と言って、二人はボートの中で手を握り合います。

以来、マーニーに会うために満潮になるのを心待ちにする杏奈は、マーニーと夜のピクニックやパーティーを楽しみました。しかし、杏奈と会っているのを老家政婦のばあやに見つかったマーニーは、外出を禁止されてしまいます。

そうとは知らず、マーニーが姿を消してしまったと不安になる杏奈でしたが、それでもいつものようにスケッチをしに行きました。そこで、同じように湿っ地屋敷の絵を描いている老婦人・久子に話しかけられます。

また湿っ地屋敷には、新しい住人が越してくることになり、改装工事が進められていました。東京から越してきた家族の末っ子・彩香から「マーニー」だと勘違いされた杏奈は、マーニーのことを「自分が作り上げた想像上の友だちだ」と言いました。

やがて彩香は、屋敷の部屋の中でマーニーの日記を見つけます。日記は一部が破り取られていていましたが、マーニーとの思い出が書かれていました。

再び姿を現したマーニーとともに、杏奈は森の中を散策します。杏奈は、頼子が里親であることで毎月給付金をもらっていたことを打ち明けました。

マーニーも、両親はほとんど屋敷には帰って来ず、留守の間はメイドのねえやと家政婦のばあやから悪質ないじめを受けていることを明かしました。

やがてマーニーがサイロを恐れていることを知った杏奈は、克服できるようにと「サイロに行こう」と誘います。すでに薄暗くなったサイロへの道に風が強く吹き荒れる中、マーニーはなぜか杏奈のことを「和彦」と呼びはじめます。

サイロにたどり着き中へ入りますが、雨風が強くなる一方で、マーニーは寒さと怖さで震えていました。二人は肩を寄せ合ってうずくまるようにして、いつしか寝入ってしまいました。

杏奈がはっと目を覚ますと、そこにマーニーの姿はなく、自分だけ置き去りされたと思います。ひどく怒り悲しんだ杏奈は、そのままサイロを出ると嵐の中を走り続け、帰路の途中で転んで気を失ってしまいます。

彩香たちが道端に倒れていた杏奈を助け、家に戻りました。高熱でうなされる杏奈は、夢の中でマーニーと再会します。

マーニーは湿っ地屋敷の窓から、サイロで姿を消したことは故意ではなかったことを詫び、許してほしいと懇願します。訴えを信じた杏奈は彼女を許し、二人で過ごした時間を「永久に忘れない」と約束しました。

「あなたのことが大すき」と言い残したマーニーは、微笑みながら白い光の中へ消えていきました。

サイロでの出来事を覚えていない杏奈に、彩香が日記とともに見つけた湿っ地屋敷が描かれた一枚の絵を見せます。その絵の裏には「to Marnie from Hisako」と書かれてありました。

絵の持ち主は、以前入り江で知り合った画家の久子だったのです。久子がマーニーの友だちだったことを知った杏奈は、彼女からマーニーの生涯を聞かされます。

留守がちの両親に屋敷へ残された幼いマーニーは、家政婦やメイドからいじめを受けていました。やがて幼馴染の和彦と結婚し一人娘の絵美里も生まれたものの、至福の時も束の間に、和彦が病気で亡くなってしまいます。

マーニーは心身を壊し、サナトリウムに入ります。絵美里は物心つく頃から全寮制の学校に入れられたことで母を恨み、13歳で戻ってきた時にはすでに心を閉ざしていました。

それからも母子の関係は、ぎくしゃくしたまま。絵美里は若くして家を出て結婚し子どもを産みますが、夫婦そろって交通事故で命を落とします。年老いたマーニーは絵美里の娘を引き取り、たくさんの愛情を注いで育てましたが、のちに病気でこの世を去ったのでした。

マーニーの生涯を話し終えた久子は、「あなたもマーニーに逢ったのね」と静かな微笑みを杏奈に向けました。

大岩夫婦の元に杏奈を迎えにきた頼子は、療育費の手当が自治体から支払われていたこと、お金をもらっている事実で杏奈の心が傷つくのを恐れていたことを打ち明けました。そして「わかっている」と答えてくれた杏奈を、抱きしめました。

杏奈は頼子から、引き取られる際に幼い自身をずっと握りしめて離さなかったという、一枚の写真を受け取りました。

「杏奈の祖母から渡された」というその写真に映っていたのは、あの湿っ地屋敷。そして写真の裏には「私の大好きな家 マーニー」と書かれていました。マーニーが自分の実の祖母であったことに気づいた杏奈は、涙を流します。

久子には、頼子のことを「お母さん」と紹介した杏奈。

そして、その後の札幌の自宅へと向かう車中では、湿っ地屋敷の窓から手を振るマーニーの姿が見えたような気がしました。

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映画『思い出のマーニー』の感想と評価


(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

心に傷を抱えている内気な少女・杏奈は、周りをはねのけ、自分の殻に閉じこもっています。

冒頭では、杏奈の「この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間」というモノローグで心情を垣間見せています。

杏奈が表す「魔法の輪の内側」とは、例えるならば「赤子が母親の胸の中にいる時のような安堵感と無条件の愛に包まれている側」ともいえるでしょう。それは同時に、「対する省かれた外側は、安堵する場がなく、疎外されている身なのだ」という訴えでもあります。

大概の人は、身近な大人(親)に悩みを打ち明けたり、相談できる環境にいますが、杏奈はそれができなくなっているのです。それ故に他人に甘えることも頼ることもできずに苦しみが肥大し、劣等感だけが強くなったのでしょう。

杏奈は血縁関係ではない義母の頼子を「おばちゃん」と呼ぶようになり、自分への愛情に疑心を抱きます。また療養先の大岩夫婦の家でも、親切心を「おせっかい」と突き返すような意地の悪さが描かれています。

自分の心に素直になれない上に自分自身が嫌いでたまらない。だからこそ、他人に心を開くことが怖いのです。

杏奈の意地の悪さと対比して浮かび上がらせたのは、心の中で叫び声をあげている苦しい葛藤でした。また、行き過ぎた自己防衛は傍から見ると意地の悪い少女となり、疎まれる対象にならざるを得ないことをも映画で示しているかのようです。

まとめ


(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

杏奈が一目見て心を奪われたマーニーという存在は、閉ざされたモノクロの世界で「色」を見つけたようなものだったのでしょう。マーニーに惹かれたのは「夢に出てきたから」「なぜか懐かしさを覚えるから」という理由だけでなく、美しいものへの純粋な憧れだったのではないでしょうか。

顔を赤らめ、近い距離にいるとドキッとする仕草は、恋愛感情にも似たものを感じます。それはカテゴライズされていない、純粋な「愛」という感情とも言えるでしょう。

杏奈はマーニーと過ごす時間で「愛」を知りましたその愛とは、「他者を想う心」そのものでした。

頑なに閉ざされていた心の壁がいつしか取り外され、杏奈は自身の心の内を他者(マーニー)に見せていきます。それは同時に、忘れていた愛を思い出していく時間でもありました。

時空を超えた出来事は、タイムスリップなどのSF的な設定ではなく、マーニーの記憶を追体験するための意図として描かれています。

孫娘(杏奈)に愛情を注ぎながらも、絵美里との修繕できなかった関係、そして若くして命を落としたことへの悲しみを抱えていた年老いたマーニー。疎外感を抱え、仕舞には憎悪さえも持つようになっていた杏奈。

そんなふたりが、同世代の少女として時空を超えて結ばれるとき、お互いの悲しみと苦しみを認め合い、許し合うといった“まるごとの愛”を知ることとなったのです。




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