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『モンスターズ・インク』ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。サリーとマイクの“飛び切り1番の名コンビ”の大活躍を読み解く!

  • Writer :
  • 谷川裕美子

モンスターの凸凹コンビから目が離せない!

『トイ・ストーリー』(1996)の監督であるジョン・ラセターが製作総指揮を務めた大ヒットアニメーション『モンスターズ・インク』。

電力供給会社のモンスターズ株式会社を舞台に、大柄で気のいいサリーとひとつ目で小柄なマイクの名コンビが、モンスターの世界に迷い込んだ人間の女の子・ブーをもとの世界に戻すために大奮闘するさまを楽しく描きます。

想像外の行動をとるかわいいブーに振り回されながらも、彼女を命がけで守ろうとするふたりのモンスターたちから愛と勇気をもらえる一作です。

誰もが夢中にならずにいられない魅力をご紹介します。

映画『モンスターズ・インク』の作品情報


(C)DISNEY/PIXAR

【公開】
2002年(アメリカ映画)

【脚本】
ダン・ガーソン、アンドリュー・スタントン

【監督】
ピート・ドクター

【編集】
ジム・スチュアート

【キャスト】
ビリー・クリスタル、ジョン・グッドマン、メアリー・ギブス、スティーブ・ブシェーミ、ジェームズ・コバーン、ジェニファー・ティリー、ボブ・ピーターソン、ジョン・ラッツェンバーガー、フランク・オズ、ダニエル・ガーソン 

【日本語吹き替え版キャスト】
石塚英彦、田中裕二、井上愛理、青山穣、大平透、高乃麗、磯辺万沙子、立木文彦、牛山茂、亀山助清、長島雄一

【作品概要】
ディズニーとピクサー製作のフルCGアニメーション映画。ピクサー作品で初めて『トイ・ストーリー』のジョン・ラセターが製作総指揮に回り、ピート・ドクターが初監督を務めています。

2001年のアカデミー賞では主題歌賞を受賞しました。

原語版ではジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、スティーブ・ブシェーミら名優が声優を務めています。

日本語吹き替え版では「ホンジャマカ」の石塚英彦と「爆笑問題」の田中裕二がモンスターコンビのサリーとマイクを演じて大好評を博し、5カ月に渡るロングラン上映となりました。

映画『モンスターズ・インク』のあらすじとネタバレ


(C)DISNEY/PIXAR

いろいろなモンスターたちが暮らす世界。「モンスターズ・インク」は夜中に子どもたちを驚かせ、その悲鳴を集めてエネルギーにする会社です。そこには子供部屋へ通じる数えきれないほどのドアがありました。

子供を怖がらせるための練習を重ねるモンスターたち。子どもに触られるとその菌でモンスターは死んでしまうため、恐怖とも隣り合わせの仕事です。ゲームや映画などの影響で最近の子どもたちはなかなか怖がってくれないために業績は下がり続け、モンスターワールドのエネルギーは危機に陥っていました。

毛むくじゃらの大きな青い体を持つ怖がらせる名人・サリーと、ひとつ目の小柄な緑色の陽気なマイクは名コンビです。

そんなサリーに次いで2番目の成績の怖がらせ屋・ランドールは、トップのサリーに対抗心を燃やしていました。

恋人のセリアとデートの約束があるマイクのかわりに、彼の書類を提出してあげることになったサリーは、白地に花柄のドアがフロアに残っていることに気づきます。

誰かが仕事中ではないかとサリーはドアを開けて確かめましたが誰もいませんでした。そっとドアを閉めると、いつの間にか小さな女の子のブーがモンスターワールドに入り込んでいたからさあ大変。

サリーはあわててカバンに彼女を押し込んで逃げ出します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『モンスターズ・インク』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『モンスターズ・インク』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

デート中だったマイクにブーのことをうちあけようとしたサリーでしたが、彼女がカバンから飛び出してしまったため大騒ぎになります。

自宅に連れ帰ったものの、泣いたり笑ったりのブーに振り回されっぱなしのサリーとマイク。ブーが笑うと部屋の電気がパッとつきました。ブーが危険ではないことに気づいたサリーは彼女をもとの世界に送り返してあげようと決心します。

モンスターに変装させたブーを連れて出社したサリーとマイク。トイレに隠れていた彼らは、ランドールがブーを探していることを知ります。

サリーはすばしっこいブーを見失ってしまいますがやっとの思いでみつけだし、ランドールの企みによって用意されていたブーのドアの前にやってきます。

ランドールを信じられないサリーは警戒しますが、マイクはドアを開けて入っていきました。すると、その途端マイクはランドールにつかまって運ばれていってしまいます。

ランドールの狙いは、ブーを実験に使って危険な悲鳴吸引機で悲鳴を吸い出すことでした。マイクを救い出したサリーは、ランドールが危険であることを社長に伝えに行きます。

社長に頼まれて、練習をしている新人の前で怖がらせる手本をみせることになりましたが、恐ろしい顔で吠えてみせたサリーの顔を間近で見てしまったブーは、怖がって近づかなくなってしまいます。

事情を聞いた社長はブーを送り返すそぶりをしますが、実は社長こそが黒幕でした。社長にだまされたサリーとマイクはヒマラヤの雪山へと送り込まれてしまいます。

自分を恨むマイクと仲たがいしてしまったサリーは、ひとり吹雪の中をそりで命がけでふもとの村を目指します。そこでモンスターズインクのドアをみつけたサリーはモンスターワールドに戻ってきました。

会社ではブーが悲鳴吸引機にセットされてしまっていました。サリーは機械を壊してブーを助け出します。

ランドールとの戦いで窮地に陥ったものの、心配して帰って来たマイクに助けられたサリーは、ブーを連れてブーの家のドアを必死で追いかけます。

数えきれないほどたくさんのドアを出たり入ったりしながらブーのドアへ近づいていくサリーたち。しかし、ランドールがブーをさらって、マイクとサリーを突き落とします。

ランドールとブーにその後なんとか追いついたサリーは、ランドールと大乱闘になりますが、危ういところをブーの活躍に助けられ、ランドールをドアの向こうに追い出して二度と戻れないようにドアを破壊しました。

ブーのドアの前では社長たちが待ち構えていました。罠にはめられ、局員たちの目の前で「エネルギーのためなら子供を誘拐する」と言ってしまった社長は逮捕されました。

社長が出ていくのと入れ替わりに、ロズが現れました。実は彼女たちは2年半前から潜入捜査をしていました。ロズはブーをもとの世界に返すことに同意します。

元の部屋へブーを戻したサリーは最後の別れを告げ、自分の世界にひとりで帰ってきます。シュレッダーにかけられたブーのドアの破片をサリーは握りしめました。

その後サリーが社長になり、悲鳴ではなく笑い声を集める方式に変えたことから業績は上がり始めます。笑い声には悲鳴の10倍のエネルギーがありました。モンスターズ・インクも笑いがたえません。

ある日、マイクが粉々になったブーのドアをサリーのために修復させました。サリーが大事にしていた破片を入れるとドアは復活します。

ドアをあけたサリーの耳に、大好きなあのかわいい声が聞こえてきました。

映画『モンスターズ・インク』の感想と評価

色とりどりの最高にキュートなモンスターたち

モンスターたちが働く会社を舞台に繰り広げられる楽しいファンタジーアニメ『モンスターズ・インク』。

そこではカラフルで個性的なモンスターたちが一生懸命毎日働いています。彼らの仕事は子どもを怖がらせて悲鳴を集め、エネルギーに変えることでした。

一番優秀な社員が主人公のサリーです。青色の大きな毛むくじゃらの体をしたサリーが大声で吠えるととても迫力があり、どんな子どもも怖がって泣き叫びます。でも本当はとてもやさしくて、トレーニングも欠かさない努力家です。

もうひとりの主人公は、仕事でサリーとタッグを組んでいる小柄で大きなひとつ目の緑色のマイクです。彼はサリーとは対照的に活発で口がうまいお調子者。そんな性格が女の子にもモテるようで、セリアという髪の毛がヘビになっている素敵な彼女から溺愛されています。

こんな最高の凸凹コンビのもとに迷い込んできたのは、人間の幼い少女・ブーです。この子はすぐにサリーになついて、彼の心を虜にします。ところがすばしっこい上に予測不能な動きをして視界から消えてしまうため、にサリーとマイクはいつも彼女を必死で追いかけるハメに。

忘れてはならないのはとても魅力的な悪役のランドールです。姿を消すというすごい能力を持っている彼は、ブーを悪事に利用しようと狙っています。成績が2番手の彼は、サリーからどんなことをしてもトップを奪いとりたいと企む野心家です。

成績トップを目指すランドールは会社員の悲哀をリアルに体現していて、『モンスターズ・インク』というタイトルに一番ピッタリかもしれません。彼の企みはやがて会社規模の騒動へと発展していきます。

そのほかにも、社長のウォーターヌース、只者ではない感を醸し出すロズなど魅力的なモンスターがたくさん登場。マイクにベタ惚れのセリアが見せるかわいいやきもちにも胸キュンしますよ。

マイクが使っている、オーデコロン代わりの加臭剤のユニークな名前や、楽しいエンドロールなど、たっぷり仕込まれている小ネタも必見です。

サリーとブーの深い絆

子どもを怖がらせることしか考えていなかったサリーが、心奪われたのは人間界からモンスターワールドに迷い込んでき小さな少女・ブーです。このブーという名前は、サリーがつけたものです。

自分に懐いてくれたブーを、サリーは心から愛するようになっていきます。子ども嫌いだったのに、自分の子どもが生まれた途端メロメロになるパパみたいな感じでしょうか。

ブーがサリーを好きになる理由はよくわかります。大きくてフワフワな気持ち良い体つきのサリーは、子どもから愛される大きなクマのぬいぐるみによく似ていますから。そして何より、小さな子ほど敏感に本質を見通す力を持っています。ブーもまた、サリーが自分を必ず守ってくれる相手だと見抜いたことでしょう。

動きが素早くてその時その時興味がある方へ行ってしまうブーは、すぐにサリーとマイクの目をすり抜けてどこかへ行ってしまいます。しかも、彼女のことをいつも腹黒いランドールが狙っているのです。

そんな大変な状況にあるブーを助けるために命がけで突き進むサリーと、彼をいつも見捨てず力になるマイク。彼らの必死な姿とハラハラドキドキのストーリーに目も心も奪われるに違いありません。

まとめ

いろいろなモンスターが住んでいる世界を最高に楽しく描いた一作『モンスターズ・インク』には夢がいっぱい詰まっています。

悲鳴を吸い取るとメモリが上がる装置や、子供部屋に通じる無数のドアが吊り下げられた空間など、思わず目を奪われる面白いアイデア描写が後から後から出てくるので、一度観始めたら片時も目が離せなくなること間違いなしです。

かわいらしいモンスターもいれば、ちょっとグロテスクな姿のモンスター、大きいのもいれば小さいのもいます。子どもたちは個性的なモンスターたちに興味津々になることでしょう。

みんな姿形は違うけれど、その誰もががんばって生きているところは人間と変わりません。小さな子どもならブーに感情移入して、どんなときも助けようと必死でがんばってくれるサリーとマイクに心奪われるに違いありません。

天才肌のトップ社員のサリー、トップ奪還を目指す万年2番手のランドール、潰れそうな会社をどうにか立て直そうとする社長など、人間界と見紛うリアルな描写もあり、大人ならちょっと身につまされるかもしれませんね。

子どもから大人までみんな一緒に画面をみつめて、それぞれいろいろな思いを抱きしめて楽しんでほしい名作です。




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