いよいよ今週末の2017年2月18日(土)と19日(日)が最終開催となる、東京上野にある東京国立国立博物館の展覧会をご存知ですか。
現在公開中の「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」。
今後の巡回予定地は2017年3月25日(土)〜5月28日(日)に東北歴史博物館で開催。
さらに最終巡回展は2017年7月11日(火)〜9月3日(日)に九州国立博物館で開催予定。
1.なぜ、映画考察サイトのCinemacheが博物館の展覧会を紹介するのか?
それはスバリ!ラスコー壁画は、“世界最古の映画館”的な場所だと考えるからです。
後期旧石器時代にヨーロッパに住んでいたクロマニョン人。彼らはその生活の中で洞窟壁画をいくつも残してきました。
最も有名なのが1940年のフランス西南部にあるヴェゼール渓谷。地元の少年たちによって偶然に発見されたのが、ラスコー洞窟の壁画なのです。
ラスコー壁画は、アルタミラ洞窟壁画と同じく先史時代の美術作品(フランコ・カンタブリア美術)であり、遺跡なのです。
また、その洞窟に描かれた生命力が伝わる描写力で描かれた動物たちの姿は、世界のアニメーション作家たちにインパクトを与えたものだというのはあまりにも有名な話です。
つまり、ラスコーの壁画は“映像表現の原点”とも言えるのです。
これがまたフランスということがとても面白く、映画の父と呼ばれたリュミエール兄弟よりも、ずっと前。
さらに太古の昔からフランスに、映画の原点があるというのは、少々出来過ぎのようですが、でも驚きは隠せませんね。
壁画に描かれた動物の中には、足が実際よりも多く描かれているものもあり、これは動きの表現と考えられます。
また、連なる動物の頭部が、上下や前後する描写も動きの表現と見て間違いないでしょう。
これに洞窟内に入るときに、手にした火のランプの揺れる光と陰がその描かれたものと壁面の凹凸で動かすように見せていたのでしょう。
つまり、動きの描写と壁面に灯りを照らして動かして観るという初歩的な技法(古典的な映写の原点)は、太古のクロマニョン人によってすでに表現されていたもので、イメージを動かす映像のみならず、映画館的なものは考案されていたのです。
2.アニメーションの由来はラテン語の“霊魂を意味するアニマ(anima)”
生命のない、動かないものに命を与えて動かすことが今日の意味するアニメーションということになります。
古代の洞窟壁画は、止まった(死んだ)絵に再び命を与え、動かしたい(蘇生)という、呪術こそが人類の表現と言えるのではないでしょうか。
もちろん、厳密には映画館ではありません。それは入場料という金銭のやり取りの興行があってこそ、映画であるという定義があるからです。
それでもラスコーの壁画が“映画館的である”のは間違いないでしょう。
しかし、暗闇の洞窟の中では、光(灯り)がないと何も見えません。そこで獣脂を使用した火のランプの灯りによって、ぼんやりと照らされた壁画は炎の揺らぎ、“壁画を動かす”というイマジネーションを生んでいきます。
この洞窟壁画を暗闇の中で、炎の光によって制作者の創造として作り、描いた動物が動き出すという神秘体験を共有した行為は劇場に近い存在。やはり、最古の映画館だと呼んでも良いのではないでしょうか。
東京上野での展覧会を見逃した映画ファンや、アニメーションに興味がある、あなた!
現在では、ラスコー洞窟をはじめ、多くの洞窟壁画は保存と保護のために非公開となっています。
かつては、大勢の観客を洞窟内に受け入れていましたが、観客の呼吸した際に吐く二酸化炭素により壁画が急速に劣化してしまったのです。
1963年以降から壁画の外傷を防ぐため洞窟は閉鎖された。フランスは世界でも最も美術修復に優れていると言われています。
いつかは実物を見られる日が来るかもしれませんが、まずは、ばレプリカであっても、「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」を見ることをお薦めします。
今後は、東北歴史博物館(宮城)と、九州国立博物館(福岡)に巡回予定です。
ぜひ、お見逃しなく!
あなたにお薦めの関連記事
ハリウッド映画の原点に興味のある、あなたにお薦めな記事は?
博物館の舞台裏を描いた映画を観てみたくなった、あなたにお薦めの記事は?