人は何に正義を見出すのか? アニメ『HERO MASK』が問いかけます。
有能だが型破りな刑事・ジェームズは、ある殺害事件を追うなか、装着すると超人的能力をもたらす「マスク」にたどり着きます。
正義とは? “マスク”とは? 様々な人物の思惑と謎が絡み合い、深まる闇の中、ジェームズは事件を解明することができるのでしょうか? 謎が謎を呼ぶ、Netflixアニメ『HERO MASK』PART1をご紹介します。
CONTENTS
Netflixアニメ『HERO MASK』PART1の作品情報
【配信】
2018年(オリジナルアニメ)
【監督】
青木弘安
【キャスト】
加瀬康之、甲斐田裕子、森田順平、高野憲太郎、内山昴輝、青山穣、菅生隆之、仲野裕、渋谷はるか、志村知幸、烏丸祐一、藤井ゆきよ、宮寺智子
【作品概要】
『バケモノの子』で助監督をつとめた青木弘安を監督に起用、『PSYCHO-PASS サイコパス』で作画監督で知られる片桐貴悠がキャラクターデザインを担当、日本を代表するアニメ制作会社、スタジオぴえろにより制作されています。
恩人の死をきっかけに、不可解な現象を起こす“マスク”とその陰謀に巻き込まれる捜査官、ジェームズの活躍を描きます。
Netflixアニメ『HERO MASK』PART1のあらすじとネタバレ
第1話
都市警察、SSC(特殊捜査部)の捜査官、ジェームズ・ブラッド(加瀬康之)は型破りな捜査で成果とともに物的被害を出し、同僚のエドモンド・チャンドラー(高野憲太郎)に心配させ、上司のレノックス・ギャラガー(森田順平)に絞られます。
その頃、検察官のモニカ・キャンベル(渋谷はるか)は参考人、フレッド・ファラデー(志村知幸)を個人的に親交があるジェームスとギャラガーのいるSSCに保護してもらおうとしていました。
モニカの同僚で同じく検察官のサラ・シンクレア(甲斐田裕子)は帰宅の途中、フレッドと別れるモニカと出会います。
しかし、サラの目の前でモニカは倒れてしまい、そのまま、息を引き取ります。
モニカの葬儀に参列したジェームズとギャラガーはサラから、モニカは何者かに殺された可能性があることを聞かされました。
翌日、モニカのオフィスを片づけるサラは床のタイルが不自然にめくれていることに気が付きます。そこに隠されたファイルを見つけたサラは、SSCへ向かいます。
時を同じく、SSCが本部を置く首都警察庁舎に謎の男が向かっていました。
第2話
謎の男は首都警察庁舎を襲撃、折り悪く、サラはその場に遭遇します。その様子を本部で見ていたジェームズは男の姿を見て現場に駆け出します。
その男は、以前、連続殺人でジェームズが逮捕したグリム(烏丸祐一)という男で、投獄された後、病死したはずでした。
襲い掛かるグリムに応戦するジェームズはグリムが持つ人相を自在に変える不思議なマスクを目撃します。
グリムは突如苦しみ、窓を突き破り逃走します。サラと合流するジェームズはモニカの部屋にあったという写真を見せられます。
そこには、グリムが所持していたマスクとそれを装着し、死亡した被験者の姿が写っていました。
ジェームズとサラの報告を受けるギャラガーは、モニカがマスクに関わっていたため殺害されたと推理します。
グリムはジェームズを誘き出すためSSCが使用するGPS弾を起動させます。
GPSが作動したことをジェームズは知り、現場に向かいます。サラもジェームズ同行します。
サラを車に残し、1人でグリムと対峙するジェームズですが、グリムは以前と同じように突如苦しみ始めました。
一瞬のうちに老人へと変化したグリムに驚くジェームズ。グリムの所持していたマスクの正体が何なのか聞き出そうとしますが、グリムは答える前に死亡します。
第3話
ジェームズとサラはSSC本部へマスクとグリムの遺体と共に戻ります。
ギャラガーはグリムが獄中死したという話が偽装されたものと考え、エドモンドに調べるよう命じます。
ジェームズとサラは、謎の武装集団に襲われます。
武装集団を率いるのはジェームズのかつての相棒、ハリー・クレイトン(内山昴輝)でした。
驚くジェームズを尻目にハリーはマスクとグリムの遺体を奪って逃走します。
第4話
グリムの記録を調べるエドモンドはグリムが獄中死した刑務所がグリムの死後、閉鎖されたことを知り、不自然に感じ、その刑務所へ向かいます。
ハリーはマスクを所持するもう一人の男、セオを追います。
刑務所を調べるエドモンドは獄中死したのがグリムだけではないことを知り、獄中死したとされる囚人を顔認識ソフトにより街頭カメラから探し出そうとします。
やがて顔認識ソフトは街頭を歩くセオを発見します。偶然、近くにいたエドモンドはセオの元へ向かいます。その頃、ハリーもセオを見つけており、襲撃します。
セオは取り出したマスクを装着、異常なほど向上した動体視力で飛んでくる銃弾を回避します。
その一部始終を目撃したエドモンドは驚きました。
Netflixアニメ『HERO MASK 』PART1の感想と評価
本作は謎のマスクを巡る事件と陰謀を描くクライムアクションですが、登場人物の信念やそれぞれの正義が色濃く描かれています。
特にジェームズがハリーに袂を分かった理由を問う場面でハリーが答えた「お前には理解できない」と言うセリフは印象的でした。
このセリフの裏には、かつてSSCの一員であり、恋人の治療費の為、ライブ社で非合法の仕事を行うハリーの事を、自直な正義感を持ち合わせるジェームズには、理解出来ないという意味があるようです。
これはハリーが以前の相棒であるジェームズをよく知るからこそ、自然と口に出たセリフだったのではないでしょうか。
この場面は、正義は人の数だけあり、それぞれの正義が共存することなく、ぶつかり、捻じれ、交錯し物語が紡がれるという、本作の主題を表現しているように感じます。
本作は近年では『おそ松さん』や『キングダム』などで知られる、スタジオぴえろがNetflixにて全世界に向け配信されました。
スタジオぴえろにとっても世界進出の第一作となった本作は、従来の日本アニメにはない表現、趣向が凝らされています。
まず目を引くのはキャラクターです。
明確に公表されていませんが、本作は架空の国家での物語で、各キャラクターは欧米人風にデザインされ、実在の人物のようにリアルな画風で描かれていました。
また、ストーリーにおいても、アメリカのテレビドラマを意識したような構成になっており、各話のエンディングを中途半端なところで終わらせ、次話への期待を持たせる演出もまた、アメリカのテレビドラマを参考にしているようです。
さりとて、日本アニメらしさが見られないかというとそういう訳ではなく、濃厚なドラマが繰り広げられる本作だからこそ、日本アニメの繊細さが垣間見られます。
特に、セリフには表れない戸惑いや怒り、憂いと言った感情がキャラクターの表情はもちろん、手や視線の動きから伝わってきたのは、手描きによる細かな表現を得意とする日本アニメならではでした。
全世界配信されるにあたり、アニメに馴染みのない海外の視聴者に「アニメらしさ」を見せず、目の肥えた日本のファンには「アニメならでは」を演出している作品に感じます。
まとめ
「明確な「悪」が定義できない時代だから人々の異なる「主義主張」の対立を描き、そこに生じるリアルなヒーローものを作りたかった」と青木弘安監督とコメントした通り、本作では新しいヒーロー像が描かれています。
チラシなどのタイトルは「HREO≠MASK」と見え、そこには「ヒーローにマスクは必要ない」というメッセージが込められているように感じます。
アメリカンコミックにおいて、マスクはヒーローのスタンダードではありますが、本作ではそのスタンダードに一石を投じています。
本作でマスクを使用したグリム、テオはマスクにより超人的な能力を手に入れ、それぞれの主義主張という個人の「正義」を行使しています。
そんな彼らがヒーローか?と聞かれ、素直に頷ける人はいないのではないでしょうか。
その定義でいうならば、主人公・ジェームズでさえ、自らの主義主張に基づいて行動しているわけですから、明確に「ヒーロー」を見出すのは難しいのかもしれません。
けれども、ジェームズには何かを守りたいという献身的な姿勢があり、それこそ「素顔のヒーロー」と呼ぶにふさわしいものではないでしょうか。
なおこの作品は、2018年よりNetflixオリジナル作品でしたが、2020年7月より日本国内TV放映もされています。