ミニオンの可愛さと悪ふざけが加速した、家族で楽しめる人気CGアニメ映画
数多くのCGアニメ映画が製作されるようになる中、2007年に誕生した新たな製作スタジオ、イルミネーション。記念すべき第1回作品が『怪盗グルーの月泥棒』(2010)でした。
この映画に登場し、イルミネーションの公式マスコットとなったキャラクターが“ミニオン”、今や誰もが知る“ミニオンズ”です。
誕生からわずか10年で、世界を魅了したミニオン。その人気を確立した作品が『怪盗グルーのミニオン危機一発』です。
今やUSJの人気キャラで、街中で様々な商品を目にするミニオン。大人すら虜にする彼らの秘密と共に、作品を紹介します。
CONTENTS
映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』の作品情報
【公開】
2013年(アメリカ映画)
【原題】
Despicable Me 2
【監督】
ピエール・コフィン、クリス・ルノー
【キャスト】
スティーブ・カレル(笑福亭鶴瓶)/グルー
クリスティン・ウィグ(中島美嘉)/ルーシー
ラッセル・ブランド(伊井篤史)/ネファリオ博士
ベンジャミン・ブラット(中井貴一)/エル・マッチョ
ミランダ・コスグローブ(須藤祐実)/マーゴ
ダナ・ガイアー(矢島晶子)/イディス
エルシー・フィッシャー(芦田愛菜)/アグネス
モイセル・アリアス(宮野真守)/アントニオ・ペレス
ケン・チョン(山寺宏一)/フロイド・イーグル
【作品概要】
前作『怪盗グルーの月泥棒』で幼い孤児の3姉妹を引き取り、良き父親になろうと泥棒稼業から足を洗ったグルー。しかし彼の手下で仲間のミニオンたちが、次々誘拐されました。
悪と戦う組織「反悪人同盟」の捜査官となったグルーが、3姉妹と新たな相棒と共に冒険を繰り広げる、スパイアクション仕立てのファミリー向けコメディCGアニメです。
前作と同じくピエール・コフィンとクリス・ルノーが、監督とミニオンたちの声を担当。その他の前作の主要キャストも引き続き起用されました。
2013年の全世界映画興収ランキングで第3位となり、イルミネーションとミニオンのブランドを不動のものとした作品です。
映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』のあらすじとネタバレ
北極圏にある極秘研究所が、巨大な磁石メカの襲撃を受け施設ごと奪われます。巨大な悪と戦う秘密組織”反悪人同盟”は、何者の犯行か掴めずにいました。
その頃、「イジワルな俺サマ(Despicable Me)」の怪盗グルーは、引き取った3人姉妹の末娘アグネスの誕生会を開いていました。
長女マーゴ、次女イディスと、少し間抜けで陽気なミニオンたちが、友達を集めた誕生会を盛り上げます。
悪事から足を洗い、娘のために何でもするグルーに、幼いアグネスは感謝の言葉を伝えます。
すっかり丸くなっても、デート話を持ちこむご近所さんを冷たくあしらう、ワルな一面も持っているグルー。
グルーの前に”反悪人同盟”のエージェント、ルーシーが現れます。一枚上手の彼女はグルーを倒し、車のトランクに詰め込みます。
ボスの危機に気付いて現れたミニオンも乗せた、ルーシーの車は海に飛び込みます。
海中で潜水艇となり、”反悪人同盟”の潜水艦に収容されるルーシーたち。
“反悪人同盟”のサイラス会長は、極秘研究所の消失事件の捜査への協力をグルーに要請しました。
研究所ではPX-41と呼ばれる、生物を変異させ狂暴化させる薬品を開発していました。何者かが薬品を悪用する事態を恐れていたのです。
PX-41は、とあるショッピングモールに運ばれていました。そこで悪人の行動に熟知したグルーに、潜入捜査の協力を求めるサイラス。
今は3人の娘の父で、ジャムとゼリーを作る実業家だと言い断るグルーに、悪党時代の彼に憧れていたルーシーは、スリルある日々が恋しくなったら連絡して欲しいと伝えます。
自宅に戻り娘たちを寝かしつけるグルーに、次女イディスは紹介された相手とデートするか尋ねました。
人類が月面に着陸した頃の、少年時代のグルーは女の子に嫌われ、以来女性との付き合いは苦手です。それを娘に悟られまいと振る舞うグルー。
娘たちが寝ると、彼は地下の秘密工場に向かいます。そこはミニオンたちが騒いで働く、ゼリーとジャムの工場でした。
ミニオンたちと付き合いの長いグルーは、よく似た姿の彼ら1匹1匹を名前を呼び話しかけます。
商品開発はグルーの相棒で、数々の秘密兵器を発明したネファリオ博士が行います。しかし博士にゼリー作りは畑違いで、マズい物しか作れません。
ゼリーの開発より、悪事を働く日々が恋しいと博士は告白します。他から誘いが来たと打ち明け、グルーとの別れを告げるネファリオ博士。
苦楽を共にした博士に敬意を表し、ミニオン軍団の放つオナラ砲の礼砲で送り出すグルー。しかし彼も、今後どうすべきか悩みます。
その夜、メイド姿で家を掃除中のミニオンが、何者かに誘拐されました。
翌朝、3人の娘に”反悪人同盟”のエージェントとなり、正義の味方として活躍すると宣言したグルー。
グルーは変装したミニオンたちと共に、疑わしいショッピングモールにオープンした、カップケーキ店に現れます。
そこにはルーシーがいました。彼女はグルーと共にケーキ店の経営者に偽装し、PX-41の行方を追うよう命じられていました。
すると店にサルサ料理店の店主、エドアルドが現れます。挨拶と共に、シンコ・デ・マヨ(メキシコの祝日)のパーティー用の、カップケーキを注文したエドアルド。
顔を見たグルーは、彼の正体は大悪党エル・マッチョだと疑います。しかしエル・マッチョは20年前にミサイルに乗って火山に突入し、派手に姿を消していました。
ルーシーはその時に死んだはずと疑いますが、エル・マッチョと確信したグルーの言葉に従い、今夜2人でサルサ料理店を調べると決めます。
その夜、娘たちを寝かせて調査に向かおうとしたグルーは、アグネスが幼稚園で母の日に演じる、劇の練習に付き合わされました。
母のいないアグネスは、この芝居は嫌だと話します。グルーが想像力を使って演じるようアドバイスすると、納得して彼にキスしてベットに向かうアグネス。
バカ騒ぎするミニオンたちの前に現れ、子供たちを世話をする者、自分について来る者を選ぶグルー。
留守番役のミニオンは、アグネスを子守歌で眠らせると遊び始めますが、怪しい物音に気付き家の外に出ます。
様子をうかがったミニオンたちは、怪しい光に飲み込まれ姿を消しました。
夜のショッピングモールに現れたグルーとルーシーは、サルサ料理店に忍び込みます。
番犬代わりのニワトリに襲われて騒ぐグルーを、ルーシーが助けます。2人で店内を調べ、悪党の経験から隠し金庫の場所を突き止めるグルー。
中にあったのは料理店秘伝のサルサソースでした。そこに店荒らしに気付いたエドアルドが現れます。
脱出したグルーとルーシーを、待機していたミニオンたちが助けます。車に乗り込みモールに突入、暴走させるミニオンたち。
2人は車に乗り込みます。ルーシーが運転した車は飛行機に変形、彼らは無事脱出しました。
次の日、グルーの家の前に派手なアイスクリームトラックが現れます。
気づいたミニオンたちが、ジェラートを買おうと殺到します。それは罠で、特殊な装置でミニオンを残らず捕らえるトラック。
そんな事とは知らず、ショッピングモールで怪しい人物はいないか探すグルーとルーシー。
モールにグルーの様子を見に来た、マーゴたち3姉妹が現れます。グルーは娘たちにルーシーを紹介します。
末娘のアグネスはルーシーが気に入り、独身かと聞きグルーに2人は結婚するのかと尋ねました。
グルーは3姉妹に小遣いを与え去らせます。養女たちに愛されるグルーの姿を見つめるルーシー。
長女のマーゴはモールで見かけた、同じ年頃の男の子アントニオに一目惚れします。彼と共に行ったマーゴに呆れる次女のイディス。
グルーは怪しいと睨んだカツラ屋を訪れ、店主のイーグルと話します。彼はグルーの素性を暴いていましたが、商売熱心からハゲ頭のグルーの身元を調べたと説明します。
目的の薬品PX-41らしき反応を確認したとき、イディスとアグネスが姉のマーゴが男の子とデートしてると告げ口に現れました。
心配の余りグルーはマーゴの姿を探します。そしてアントニオとサルサ料理店に入るマーゴの姿を見たグルー。
舞い上がりラブラブな雰囲気のマーゴの前に現れるグルー。そこに陽気なダンスを踊りながらエドアルドが登場しました。
グルーとは対照的に、積極的に女性客にアプローチするエドアルド。アントニオは彼の息子です。
マーゴと息子をくっつけようとするエドアルドに、引き離そうとするグルー。エドアルドはグルー一家をシンコ・デ・マヨのパーティーに招待しました。
嫉妬か過保護か、マーゴを守ろうとエドアルトを犯人と決めつけ、息子共々”反悪人同盟”に逮捕させようとするグルー。
サイラス会長はその態度に呆れますが、ルーシーは取り繕って捜査状況を報告します。
その頃、誘拐されたミニオンたちは、南の島で楽しく過ごしていました。
そこは事件の黒幕である何者かが、ミニオンたちを監禁するために用意した空間だったのです。
映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』の感想と評価
不思議生物ミニオン誕生の舞台裏
創立間もないイルミネーションの経営を、軌道に乗せる大ヒットを記録した前作『怪盗グルーの月泥棒』。
幼い子供は悪モノが大好き。そこで「イジワルな俺サマ(Despicable Me)」、グルーを主人公にした作品を企画します。
従来のCG映画より、低コストの製作体制を目指し設立されたイルミネーション。当初より子供向けの、児童文学や絵本を題材にした作品の製作を考えていました。
まず最初に原作を持たないオリジナルストーリーの作品を手掛けることにします。それが『~月泥棒』でした。
当初ミニオン、グルーの手下となる者のイメージは、マッチョな小鬼かロボットが考えられます。しかしCG映画としては低予算ゆえに、多くのキャラクターを作ることが出来ません。
そこで簡単に複製できる、伸ばしたり縮めたり太らせたり、アレンジ容易な丸みを帯びたデザインのキャラクターが考えられます。それがミニオンでした。
なお『~月泥棒』の公開時、笑福亭鶴瓶はイルミネーションのスタッフから聞いた話を披露しています。
スタジオジブリに行ったスタッフは、『となりのトトロ』(1988)の“まっくろくろすけ”のような、無数の小さいキャラクターを出すことがヒットにつながるとの話を聞きます。
そのアドバイスを生かし、子供に親しまれるよう作ったのがミニオン、というエピソードでした。
TV番組『トリビアの泉』の2007年5月12日の放送回で、「誰もがカワイイと思うキャラクターとはどんなものなのでしょうか?」という疑問を学者が検討し、真剣に考えだす企画がありました。
その結果は丸みを帯びた体で大きい目を持つ、短い手足の黄色いキャラクターが良い、との結論に達します。
番組ではカステラ色の、丸っこいスズメのようなキャラを誕生させましたが、後のミニオン人気を知るとほぼ正解、といった所でしょうか。
ともかく第1作に誕生したミニオンに、まだ深い設定はありません。劇中のセリフから「バナナから生まれた」「バナナの妖精」説が流れましたが、公式ではありません。
日本では映画よりミニオン人気が先行
1作目より多くの予算で製作された『~ミニオン危機一発』。人気となったミニオンはより繊細に動き、なぜか歯が矯正されて登場しました。
3人の娘の父となり、正義のために活躍し始めるグルーと、性別が無くイタズラ好きで、人間のマネが大好きなミニオンたち。
彼らの性格には、イルミネーションが2010年に映画化に動いたと発表した絵本、「おさるのジョージ(ひとまねこざる)」が反映しています。
おさるのジョージや、幼い子供たちは意味も分からず大人のマネをします。その結果好ましくないことを口にしたり、止めさせたい姿で現れたりします。
タブー無き好奇心で動く子供の姿は、笑いと大人社会の風刺を生みます。これは「クレヨンしんちゃん」と同じと言えるでしょう。
前作で女装したり、歌を歌ったミニオンの活躍は本作で発展、LGBT的な扮装で現れミュージカルの様に大騒ぎします。
群れをなしイタズラを行い、人間のカルチャーを真似る姿は、『グレムリン』(1984)に登場する”グレムリン”からも大きな影響を受けています。
ミニオンたちの愛らしい行動は子供を楽しませ、その振る舞いは大人にパロディとしての笑いを提供してくれました。
世界的人気作となった『~ミニオン危機一発』ですが、日本ではまだ第1作同様「ピクサー以外が作った、ファミリー向けCG映画の1本」といった扱いで、興行は今一つ伸び悩みます。
しかしミニオン人気は高まります。2015年3月6日にUSJにミニオン・プラザが誕生、3月20日にストリート・ショー「ミニオン・フィーバー」が開始。
同じ年の7月31日公開の映画『ミニオンズ』(2015)を前に、日本ではミニオンがブームを牽引していました。
まとめ
『怪盗グルーのミニオン危機一発』が、ミニオン人気を決定した作品とお判り頂けたでしょうか。
ところで当初は、シリーズとして企画されていない『怪盗グルー』には、重大な問題が存在します。
それは「イジワルな俺サマ」、怪盗グルーは1作目で父親となり、2作目で正義のために働き結婚する、どんどん善人化している事実です。
これでは子供が喜ぶ、チョイワルな物語が維持できません。その思いはシリーズに、そしてワルが大好きなミニオンにも、大きな葛藤を与えます。
その問いに答えるようにスピンオフ映画『ミニオンズ』、シリーズ第3作『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017)が誕生します。この解説は別の機会に譲りましょう。