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Entry 2020/05/11
Update

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』あらすじと感想レビュー。劇場版アニメに市川染五郎と杉咲花の爽やかなボイスキャストが映える

  • Writer :
  • 村松健太郎

8代目市川染五郎が声優に初挑戦。
『サイダーのように言葉が湧き上がる』は2021年7月22日(祝・木)より全国公開。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、それぞれコンプレックスを抱える、少年と少女のひと夏の出逢いと恋を、音楽と俳句を絡めて描く爽やかな長編アニメーション。

歌舞伎役者の新星・市川染五郎が襲名後初めて本職以外の仕事として、主人公“チェリー”のボイスキャストを務めます。相手役の“スマイル”には杉咲花。イシグロキョウヘイ監督の初のオリジナルアニメーション作品です。

この2人を人気・実績ともに十分な潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一といった声優陣が支えます。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の作品情報

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【脚本・監督】
イシグロキョウヘイ

【主題歌】
never young beach 『サイダーのように言葉が湧き上がる』

【キャスト】
市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一

【作品概要】
映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、漫画『四月は君の嘘』や『クジラの子らは砂上に歌う』などを手掛けるイシグロキョウヘイ監督の初のオリジナルアニメーション。また、フライングドッグ会社から音楽部門として独立し、アニメーションの劇伴やアニソン制作において第一線を走り続ける「レーベルフライングドッグ」の10周年記念作品でもあります。

音楽を『聲の形』の牛尾憲輔が手掛けるほか、Never young beachや大貫妙子ら豪華アーティストが参加しているのも話題となっています。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』のあらすじ

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

ある地方都市⸺。コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないよう、いつも音楽の流れていないヘッドホンを着用している少年・チェリー。

彼は口に出せない気持ちを趣味の俳句に乗せて、ネットに呟いています。

矯正中のために大きな矯正具が装着された前歯を隠すため、いつもマスクをしている少女・スマイル。人気動画サイトの主催者の彼女は、“カワイイ”を見つけては動画を配信していました。

俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイル。

そんな2人が迎えた17回目の夏。地元のショッピングモールで2人は出会い、SNSを通じて少しずつ言葉を交わしていくようになっていきました。

ある日2人は、チェリーのバイト先のデイケアセンター“陽だまり”で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった想い出のレコードを探しまわる理由にふれます。

2人はそれを自分たちで見つけようと決意。フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていきます。

友人のビーバーやジャパン、フジヤマの孫のタフボーイらの協力を得て、ついにレコードを発見します。

しかし、スマイルの不注意から、思わぬトラブルが発生、2人の想いはすれ違っていきます。

さらに、元々決まっていたチェリーの引っ越しの日が迫ってきます。地元で50回以上の歴史を誇る夏祭りと花火大会が迫るなか、もう一度、2人の心は寄り添うことができるのでしょうか……?

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の感想と評価

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

アニソンや劇判を多く手掛けてきたフライングドッグのメモリアル作品ということで、言葉や音楽を大事にした作品になっています。

主役のチェリーの声には歌舞伎役者の市川染五郎。父である現幸四郎のイメージが強い「染五郎」という名前ですが、2018年の三大同時襲名で8代目染五郎を襲名した新星です。

彼は、以前にNHKのドラマに出た以外には歌舞伎以外のジャンルに進出したことがないので、世間的にはまだまだ印象が薄い存在です。

そんな15歳の当代市川染五郎を、ボイスキャストに抜擢したイシグロキョウヘイ監督の着眼点には驚かされます。

イシグロ監督は市川染五郎の舞台を見て、この声がチェリーの声だ! と確信して、自ら手紙をしたためたそうです。

市川染五郎はまだ15歳ということで、これから多ジャンルにどんどん出てくると思われますが、その第一歩がアニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の声優だったのです。

このキャスティングは上手くハマりました。後々、“タイミングよくこの存在をつかまえてきたな”と評価されることになるに違いありません。

相手役の杉咲花は『思い出のマーニー』(2004)や主役を務めた『メアリと魔女の花』(2017)などで、声優として確かなものを見せていました。今回のスマイル役ももちろん、巧みに受けの側に回っています。

共演の声優陣は改めていうまでもなくベテラン揃い。安定の存在感で主人公を支えてくれています。

まとめ

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

主題歌を歌うのはバンド「never young beach」。映画と同題のテーマ曲『サイダーのように言葉が湧き上がる』も良いですが、物語のカギとなる大貫妙子の劇中歌『YAMAZAKURA』は格別です。

ここへきて再ブームとなっているシティ・ポップ・ミュージック。山下達郎と組んだシュガー・ベイブ、そしてソロになってからも、変わらぬ世界観を保ち続けてる大貫妙子の劇中歌です。

その普遍性は、映画の土台として物語のクライマックスを支えてくれます。

また、映画は地方都市を舞台にしているのですが、再開発で作られたショッピングモールが大きな舞台となっています。

“地方の中に出現した人工の都市”であるショッピングモール。見渡せばどこにでもありそうな、のどかな田園風景と大きな青空が広がっています。けれどもどこか異なる世界感が漂っています。

そんなショッピングモールが重要な舞台になっている映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、大貫妙子のシティ・ポップ・ミュージックが不思議なくらいにハマっているのです。

細田守監督の『サマーウォーズ』(2009)では、山下達郎がメインテーマ曲『僕らの夏の夢』が起用されていましたが、山下達郎はもともとの都会的なテイストを控えめにして、ローカルの香りがする楽曲に仕上げてきました。

地方都市のどこを切り取ってどんな音楽を添わせるか、『サマーウォーズ』との比較も含めて『サイダーのように言葉が湧き上がる』は色々な発見がありました。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は2021年7月22日(祝・木)より全国公開。


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