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Entry 2019/05/26
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映画『ロンゲストヤード(1974)』ネタバレあらすじと感想。アルドリッチ監督が描く反骨精神

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  • 20231113

タフガイ俳優のバート・レイノルズがゴールデングローブ賞に初ノミネートされた作品

俳優バート・レイノルズは、1961年ハリウッドで映画デビューを果たし、1970年代はタフガイ・セックスシンボルのイメージで人気を博しながらキャリアの絶頂期を迎えます。

この時期に反骨する男を描くことで知られる名匠ロバート・アルドリッチ監督の『ロンゲスト・ヤード(1974)』に、バート・レイノルズが主演を務めました。

映画『ロンゲスト・ヤード(1974)』の作品情報



© 1974 by Long Road Productions. All rights reserved.

【日本公開】
1975年(アメリカ映画)

【原題】
The Longest Yard

【監督】
ロバート・アルドリッチ

【キャスト】
バート・レイノルズ、エディ・アルバート、エド・ローター、マイケル・コンラッド、ジム・ハンプトン、ジョン・ステッドマン、リチャード・キール、チャールズ・タイナー

【作品概要】
人気絶頂期のバート・レイノルズが、刑務所の囚人チームを率いて看守チームと戦う、今も不朽の人気を誇るスポ根コメディ映画です。

2005年にはアダム・サンドラー主演でリメイクされ、そちらではバート・レイノルズは、元アメフト選手の囚人チームのコーチ、ネイト・スカーボロ役で出演しています。

映画『ロンゲスト・ヤード(1974)』のあらすじとネタバレ


© 1974 by Long Road Productions. All rights reserved.

かつてはプロのアメフトスター選手として、スタークォーターバックと活躍し、最優秀選手に選ばれたこともあるポール・クルー(バート・レイノルズ)。今は金持ち女のヒモとして、自堕落な生活を送っていました。

ある日別れ話がこじれ、女の車を盗んで飛び出したクルー。警察の追跡をかわし、車を海に沈めた彼は、窃盗・飲酒運転・警官への暴行の罪で逮捕されます。

シトラス州立刑務所に入れられたクルー。元スター選手の彼は看守にからかわれますが、初対面の看守長クナウナー(エド・ローター)はいきなり彼に暴力を加え実力を見せつけます。

シトラス刑務所には看守が選手を務める、セミプロのフットボールチームがありました。クナウナーはがクルーに、刑務所長が看守チームのコーチを務めるよう依頼しても、断るよう脅します。

看守長の立ち合いで、ヘイズン刑務所長(エディ・アルバート)と面会したクルー。所長は刑務所のセミプロチームが、5年連続2位だとクルーに打ち明け、コーチになってくれと頼みます。

現役を離れ8年になるので、と依頼を断るクルー。所長はチームの為に、方々に手を回しクルーをこの刑務所に収監させていました。コーチを引き受ければ、刑務所暮らしは快適なものになると、説得するヘイズン刑務所長。

それでもコーチを引き受けないクルーに、所長は沼地作業を命じます。クルーを部屋から出すと、所長は毎年チームは2位だと、看守チームのコーチ兼選手のクナウナーを叱りつけ、今年優勝しなければお前も看守チームの全員も、クビにしてやると脅します。

ヘイズンは何としてもクルーに、看守チームに協力させるよう看守長に命じます。クルーは所長と看守長の間で板挟みになります。

沼地で白人と黒人の囚人を分けて働かせる中、クルーは黒人の囚人クランビルと共に働かされます。看守からも囚人からも目を付けられているクルー。彼は皆が興味を持つアメフトチームに協力しないので、孤立していました。

クルーの味方と言える囚人はファレル、皆から便利屋(ジム・ハンプトン)と呼ばれる男と、長年沼地の作業場で囚人の世話を任されているオヤジさん(ジョン・ステッドマン)位です。

オヤジさんは30年前にヘイズンを殴り、その後刑務所長となったヘイズンは、現在まで彼を釈放せずにいました。しかしどこで死ぬのも一緒だと、と悪びれずに話すオヤジさん。

過酷な労働に倒れかけたクルーを、オヤジさんが支えます。絡んで来る若い囚人ロッカと、泥の中格闘し皆を沸かせたクルーは、ようやく囚人仲間から認められます。

皆が見つめる前でクナウナー看守長に反抗したクルーは、懲罰で独房送りとなります。

独房から出たクルーを、ヘイズン刑務所長が呼び出します。ヘイズンと看守チームの練習を見たクルーは、強くするには勝てる相手との、仕込み試合が必要と話します。

その話を聞いたヘイズンは、クルーに看守チームに勝たせる相手として、囚人チームを作るよう命じます。あと18ヶ月で仮釈放されると断るクルーに、看守長を殴った罪で2年から5年は刑期が伸ばせるぞと脅すヘイズン。

囚人チームを作るのに与えられた期間は4週間。やむなくクルーはチーム作りを引き受けます。

クルーは囚人チームの参加者を募集します。囚人たちは試合で怪我をすれば入院して楽が出来る、何より看守を叩きのめすチャンスだと、ロッカたち暴れ者の囚人がチームに参加します。

その一方黒人囚たちは、味方を裏切ったクルーは信用できないと、参加を拒否しました。

素人の集まりである囚人チームを見て、元アメフト選手の囚人ネイト・スカーボロ(マイケル・コンラッド)が助力を申し出ます。彼は看守チームの強さも弱さも知り尽くしていました。

クルーは彼をヘッドコーチに任命し、便利屋や親父さんと共に囚人の経歴を調べ、チームに必要な人材を集め始めます。彼らが集めた大男の中に、サムソン(リチャード・キール)もいました。

看守チームにどう勝つかを考えるネイトに、無謀な考えを捨て、生き残る事だけを考える様に話すクルー。しかし14年間刑務所で暮らしてきたネイトの考えは違いました。

囚人を支配する刑務所長にも、俺たちから奪えないものが2つある。それは“金玉”さ、と看守チームに正面から挑む事を望むネイト。その話をクルーは、黙って笑いながら聞いていました。

プロ経験者もいる黒人囚にもクルーは声をかけますが、チームに参加する者はいません。しかし沼地で彼と働いたクランビルだけは、参加を表明します。

まともに技を磨く時間の無い囚人チームに、クルーは反則にならない限り何でもやると宣言します。彼をネイトを使って、危険な裏技を囚人たちに伝授します。

便利屋の働きで、看守も手を出さない危険な囚人、コニー・ショークナーをチームに加えたクルー。彼にチームのマネージャーにするよう、看守の手先である放火犯の囚人アンガー(チャールズ・タイナー)近づきますが、クルーは断ります。

徐々に形になっていく囚人チームの姿を、クナウナー看守長に報告するアンガー。クナウナーは試合の前に、黒人のクランビルを潰すよう看守に指示します。

他の囚人の前でクランビルを挑発する看守。しかしクランビルは耐え抜きます。その姿を見た黒人囚も、クルーのチームに参加します。

クルーはヘイズン刑務所長に直接会い、アンガーに練習を監視されていると訴え、看守チームにバレない環境で練習したいと申し出ます。何か企んでるのかと問うヘイズンに、試合に尊厳を与え、チームに希望を与えたいだけ、と説明するクルー。

試合までの特別待遇に意気上がる囚人チーム。便利屋はクルーに、3つの贈り物があると話します。新品の練習用具、看守チームの実戦記録映画、もう一つは秘密にされました。

もっとも、実践記録映画のフィルムを手に入れる条件は、クルーが所長の秘書と関係を持つ事でした。

ショークナーは危険な技を、親父さんはサポーターを凶器に帰る方法を、便利屋は看守チームの医療記録を手に入れ、体の弱点をチームに伝授します。

ネイトは相手の弱点を的確に攻撃する方法を、クランビルはフォーメーションの中で相手を倒す戦術を伝え、チームは試合本番を待ち望む様になります。

便利屋が調達した酒を、彼と酌み交わすクルー。便利屋はクルーが、なぜ現役時代八百長に手を染めたのかを尋ねます。彼はその事実によって、多くの者から信用を失っていました。

目の悪い父親の老後の為に、ひとヤマ当てたかったと話すクルー。しかしその父も死んでしまったと語ります。クルーは俺の悩みは、悩みが多いことだ、と打ち明けます。

クナウナー看守長は、手先として使ったアンガーを、クルーが所長に看守チームの手先だと訴えたと説明します。囚人仲間から責められかねない立場のアンガーは救いを求めますが、自業自得と拒絶するクナウナー。

クルーを恨んだ放火犯のアンガーは、彼の監房の電球に仕掛けを施します。クルーの部屋に入った便利屋がその仕掛けに引っかかり、焼死してしまいます。

便利屋の葬儀は、囚人チームの面々が見守る中で行われました。

看守チームと囚人チームの試合の日がきました。試合は特設放送で刑務所中に流されます。

試合前のロッカールームで、囚人チームにヘイズン刑務所長が訓話を行いますが、それは試合会場に武装した看守が配置されていると、警告するものでした。

便利屋がクルーにもう一つ残した贈り物は、それは新しいチームのヘルメットとユニホームでした。それを身に付けて、囚人チームは試合に臨みます。

以下、『ロンゲスト・ヤード(1974)』ネタバレ・結末の記載がございます。『ロンゲスト・ヤード』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

看守チームと囚人チームの試合は、ヘイズン刑務所長の更生計画の一環として大きく宣伝された結果、多くの注目を集め、試合会場は大いに盛り上がっていました。

真新しいユニホームに身を固めた囚人チーム“ミーン・マシン”が登場し、アメフトの元スター選手ポール・クルーは大きくアナウンスされます。

足に古傷を持つネイトも、いざとなれば出場する構えで囚人チームは試合に臨みます。

前半、第1クォーターは囚人チームは翻弄され、看守チームに圧倒されます。しかしクルーがロングパスを決め囚人チームがトライすると、観客・囚人たちは歓声を上げます。

次のプレイもクルーの作戦が決まり、囚人チームと看守チームの得点は7-8。

第2クォーターが始まると、囚人チームのラフプレーが効き看守チームに退場者が出ます。サムソンは相手選手の首を折りニンマリします。目を付けられた看守チームのプレーヤーは次々潰され、第2クォーター、前半終了時の囚人チームと看守チームの得点は13-15.

ハーフタイムショーが行われる中、クナウナー看守長は看守チームに激を飛ばします。一方囚人チームのクルーの前に、ヘイズン刑務所長が現れます。

何をするつもりだ、とクルーに警告するヘイズン。所長はアンガーが、便利屋殺しを自白したと伝えると、クルーをこの件の共犯に仕立て上げれば、少なくとも20年は服役になると脅します。

それが嫌なら21点以上の差で負けろ、と脅すヘイズン。拒絶しようとするクルーに、ヘイズンは八百長なら前にもやったろ、と告げます。

所長の指示を守ったら、看守チームの過剰な暴力を控えさせろ、そう所長に約束させるのが、クルーに出来る精一杯の抵抗でした。

クルーはあんたも出場させたかったと言い放ちます。もう年だと言うヘイズンに、度胸が無いだけだと言うクルー。

クナウナーの激に、看守チームも自信を取り戻します。しかし後半、第3クォーターのプレイに向かうクナウナーに、所長は21点差で勝つ事になった、点差が付いたら囚人チームを徹底的に潰せと命じます。支配者私だと見せつけろ、という所長の命令に、クナウナーは不承不承従います。

クルーは通せるパスを通さず、ミスを犯すプレイを繰り返します。看守チームは得点を重ね、点差は広がっていきます。クルーの怠慢プレーは誰の目にも明らかで、ベンチに下がります。

13-35と点差が付くと、看守チームは所長の指示で、囚人チームの選手を潰し始めます。どんな条件でゲームを売ったと、ネイトとクランビルはクルーを責めますが、彼は黙して語りません。

乱闘が発生し、クランビルは退場します。それを見たクルーは、親父さんに、30年刑務所にいる事になっても、所長を殴るだけの価値があったのか、と尋ねます。

親父さんは後悔していない、と答えます。その言葉を聞いたクルーは、試合への復帰を決意します。

クルーはうって変わって真剣なプレーを見せますが、看守チームの壁は厚く得点出来ません。見かねたネイトが足の故障を押して出場します。

ネイトがタッチダウンを奪いますが、直後に看守チームが反則で彼を潰します。退場したネイトは、後をクルーに託します。

これが囚人チームに火を付けました。クルーの指示に従い点数を重ね、最終第4クォーター残り5分4秒で、27-35まで盛り返した囚人チーム。クルーはドロップキックを決め、更に3点追加します。

余裕の出た囚人チームは、看守チームの選手の股間にボールをぶつけ、皆でのしかかって潰し、ついに退場に追いこみます。余裕を失った看守チームを責め立てるクルーたち。

相手ゴールまであと僅かに迫りながら、残り時間はあと7秒。クルーはクランビル、ネイト、そして便利屋の為に勝つと、皆に宣言します。

最後のプレーに全てを賭けたクルーは、相手選手の上を飛び越し、タッチダウンに成功します。囚人チームは36-35で勝利し、囚人たちは盛り上がり、所長の思惑は潰されました。

皆が引き上げる中、クルーは独り別方向のグランドの端へと向かいます。それを脱走とみたヘイズン刑務所長は、銃をクナウナー看守長に渡し撃つよう命じます。

しかしクナウナーは撃ちません。クルーはグランドに転がるボールを拾っただけでした。

拾ったボールを大事にしろと、ヘインズに渡すクルー。1人残されたヘインズを残し、クルーと親父さんは肩を抱きあい、笑って競技場を後にします。

映画『ロンゲスト・ヤード(1974)』の感想と評価


© 1974 by Long Road Productions. All rights reserved.

ロバート・アルドリッチの反骨精神が光る作品

あらすじを読まれた方は、いかにもベタなスポ根コメディとの印象を持つでしょう。しかしそう単純な物語ではありません。

クルーは様々な事情を抱えて、八百長を強要されますが誰にも理由を語りません。それを語った方が敵味方が明確で、判りやすいお話になるでしょう。

しかしロバート・アルドリッチ監督はそれを許しません。あえて男は語らず、行動で周囲を納得させるという姿勢を見せ、男臭い物語にする事を選びました。

バート・レイノルズ演じるクルーも、クナウナー看守長もヘイズン刑務所長も、自分の小さな世界を守る人物として、激しくエゴをぶつけ合います。

参考映像:『北国の帝王』(1973)

大不況時代、放浪者仲間のため列車の無賃乗車を繰り返し、“北国の帝王”の異名を持つ男リー・マービンと、プライドにかけ意地でも阻止しようとする、鬼車掌のアーネスト・ボーグナインの対決を描いた映画、『北国の帝王』はこの前年の映画です。

自分の小さな世界を、自分の誇りをかけて守ろうとする男たちの対決。端から見てそこまでする価値があるのか、とも思われますが、そこにこだわるのがアルドリッチ監督の描く男の真骨頂です。

そんな男臭い人物を、男の魅力を最も発揮していた時期のバート・レイノルズが演じる、貴重な作品が『ロンゲスト・ヤード』です。

まとめ

囚人チームが看守チームをボコボコにし、最後に勝利を納める姿は痛快です。そして映画の中で殴り合った同志は、何らかの和解と共感を手にする、実に男臭い展開です。

その中で自分の手を汚さず、権力を欲しいままにしていたヘイズン刑務所長。この人物こそ真の敵と見定め、最後に真っ向挑戦を決意するバート・レイノルズ。将に男の中の男像です。

このヘイズン刑務所長は、傍らにいる側近に会話をテープに録音させる権力者。当時ウォーターゲート事件の渦中にあり、『ロンゲスト・ヤード』の全米公開直前に辞任した、ニクソン大統領への風刺が感じ取れます。

また試合シーンで多様される画面分割シーン、ブライアン・デ・パルマの映画同様、70年代映画らしさを感じさせるテクニックです。

この映画のラフプレイ、騒ぎになったどこかの国の大学アメフト部より、実にとんでもない行為ですので、くれぐれも真似しないように。

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