「TAXi」シリーズ第4弾。凶悪犯を追いかけて、爆走タクシーがモナコを走る
リュック・ベッソンが脚本・製作を手掛けるカーアクションのシリーズ第4弾『TAXi4』。演出は前作に続き『WASABI』のジェラール・クラブジックが務めています。
スピード狂のタクシードライバー・ダニエルとマヌケな刑事・エミリアンが、「ベルギーの怪物」と恐れられる凶悪犯に挑み、モナコへと逃亡した凶悪犯一味を追う。しかし、何やら、そのなかには知った顔があり事態は思わぬ方向へ…。
おなじみのメンバーが繰り広げる軽快なコメディは、シリーズ最高潮の笑いと爆走に突っ走ります。
映画『TAXi4』作品情報
(C)2007 EUROPACORP – ARP – APIPOULA PROD – TF1 FILMS PRODUCTION
【日本公開】
2007年(フランス映画)
【原題】
TAXi4
【監督】
ジェラール・クラブジック
【脚本・製作】
リュック・ベッソン
【キャスト】
サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、ベルナール・ファルシー、エマ・シェーベルイ、ジャン=クリストフ・ブベ、ジブリル・シセ
【作品概要】
人気のあるカーアクションシリーズの第4弾。監督はジェラール・クラブジック、製作はリュック・ベッソンとおなじみのタッグ。サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタールを始めとする主要キャスト陣も集結し、人気サッカー選手のジブリル・シセのカメオ出演。ダニエルとエミリアンのコンビがひょんなことから、ヨーロッパ全土で指名手配される「ベルギーの怪物」と呼ばれる凶悪犯に挑みます。恐ろしく悪知恵の働く「ベルギーの怪物」を2人は逮捕することができるのでしょうか。
映画『TAXi4』のあらすじとネタバレ
(C)2007 EUROPACORP – ARP – APIPOULA PROD – TF1 FILMS PRODUCTION
マルセイユのあるホテルは、警察により物々しい警備がされていました。
警察を指揮するマルセイユ警察署長、ジベール(ベルナール・ファルシー)は特殊部隊を率い、ホテルの一室に向かいます。そこには、人気サッカー選手、ジブリル・シセの姿がありました。
マルセイユのチームに移籍したシセに興奮する警官達ですが、サッカーにまったく興味の無いジベールはシセの事を知らず、あろうことか不法入国者と信じて疑いません。
シセはそんなジベールに連行(本当はスタジアムまで護送)されます。しかし、警官隊の車列は玉突き事故を起こし、シセを乗せた車は立ち往生してしまいます。しかもキックオフの時間が迫り時間の猶予はありません。
時間を気にするシセにマルセイユ警察の刑事、エミリアン(フレデリック・ディフェンタール)は「頼れる男がいる」と話します。
次の瞬間、猛スピードでプジョー・407とそのドライバー、ダニエル(サミー・ナセリ)が現れます。
プジョーに乗り込むエミリアンとシセは、運転席のダニエルに残り8分で試合が始まってしまうことを告げます。
ダニエルは素早く運転席のパネルを操作すると、プジョーはたちまちレーシングカーに変身、再び、猛スピードで走り去ります。
ダニエルの見事なハンドル捌きで次々、車を追い抜いていくプジョー。大抵の客は青い顔でシートに体をうずめていますが、シセは試合に向けユニフォームに着替え始めます。
3人はスタジアムに到着しますが、駐車場がいっぱいで車を止められません。ダニエルはスタジアムのピッチにプジョーを乗り込ませました。
そのままピッチに降り立つシセは大歓声に迎えられ、ボールを追い、走り出していきます。
その後、ダニエルとエミリアンは子供のサッカーの試合を応援しに向かいます。
ダニエルが息子のレオに3分以上出場するよう励ます一方、エミリアンは息子マックスにボールに触れるなと言いつけ、ヘルメットとプロテクター姿で送り出します。
賢明に息子を応援する2人ですが、そこへエミリアンに一本の電話が入ります。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『TAXi4』ネタバレ・結末の記載がございます。『TAXi4』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
(C)2007 EUROPACORP – ARP – APIPOULA PROD – TF1 FILMS PRODUCTION
電話はジベールからの呼び出しでした。エミリアンはダニエルにマックスの世話を任せると言い、署へ向かいます。
マルセイユ警察ではジベールが署員を集め、「ベルギーの怪物」の異名を持つフェニモア・ヴァンボッシュ(ジャン=リュック・クシャール)をパリよりコンゴへ移送する途中で、一時的にマルセイユ警察で身柄を預かることになったと説明します。
そこでジベールらはフェニモアの身柄を受け取りに空港に向かいました。それと入れ替わりに警察署に入っていく怪しい男の姿……。男はジベールのオフィスに向かい、彼のパソコンを操作し始めました。
ダニエルはレオとマックスを連れ、マルセイユ署へやって来ました。エミリアンにマックスを引き取らせるつもりでしたが、エミリアンが出かけたことを知り、レオとマックスにゲームで遊んでいるように言います。
エミリアンのデスクからゲームソフトを持ち出したレオとマックスですが、最新のパソコンがあるジベールのオフィスへ向かいました。
その頃、ジベールのオフィスに忍び込んだ男は上手く、パソコンを操作することができず、悪戦苦闘していました。そこに現れたレオとマックスはパソコンを覗き込むと、エラーの原因を言い当てます。
男はレオとマックスに教えを請いながら目的を果たします。それはある、指名手配犯の顔写真を入れ替えることでした。
レオとマックスに感謝を述べお小遣いを渡す男ですが、空港から帰ってきたジベールがオフィスにやってきます。
見慣れない男をパソコン教室の教師と勘違いしたジベールは、レオとマックスを追い出し、男にレッスンを始めるように促します。
パソコンのレッスンを終えたジベールは、エミリアン、アラン(エデュアルド・モントート)と共に空港から連行したフェニモアの尋問を行いました。
全身を覆う拘束服を着せられたフェニモアの姿はその凶悪さを物語っており、ジベールは万一に備え、ゾウすら眠らせる麻酔銃を備えます。
しかし、フェニモアは備え付けられた黒板で尿意を催したことを伝え、エミリアンは備え付けられたホースをトイレの水道と便器につなぎ、小便をさせようとします。
その間、ジベールは誤って自分の足に麻酔銃を打ち込んでしまい、眠ってしまいます。それを見て大騒ぎするエミリアンとアランですが、フェニモアの拘束服が徐々に膨れていくのに気がつきません。
エミリアンは取り付けるホースを誤っており、水道から拘束服に水が流れて続けていたのでした。
他の署員にジベールを任せ、フェニモアの元に戻ったエミリアンとアランは拘束服が不自然に膨れていることに気がつきます。
自身の失敗に気がついたエミリアンは慌てて水道を止め、フェニモアの拘束服を脱がします。意識を失っていたフェニモアを何とか目覚めさせたエミリアンは尋問を続けようとします。
しかし、フェニモアと思われた男は自分がベルギー大使館の職員・トリブレだと名乗ります。男はトイレで何者かに襲われ拘束服を着せられたと言うのです。
男の言うことに聞く耳を持たないエミリアンですが、アランがパソコンのデータベースで調べたフェニモアの人相とは似ても似つきません。
いぶかしんだエミリアンはベルギー大使館に電話し、トリブレに取り次ぐように話しますがトリブレは数日前から行方が分からず大使館でも捜索している事を知らされます。
エミリアンは目の前の男がフェニモアではないことを確信。しかし、エミリアンが電話した先はベルギー大使館ではなく、電話口の男はマルセイユ署に忍び込んだ男でした。
男はフェニモアの手配写真を別人にすり替え、マルセイユ署のデータベース上のベルギー大使館の連絡先も自身の電話番号に書き換えていたのです。
エミリアンはトリブレことフェニモアを誤認逮捕だと思い込み、放免します。署を出たフェニモアは、たまたまそこに居合わせたタクシーに乗り込みます。
そのタクシーはちょうど署を後にしようとしていたダニエルのものでした。ダニエルはフェニモアの希望通り、港の住宅に「急いで」送り届けます。
フェニモアはそのアジトとする住宅に入ると、部下に迎えられます。以前より計画していた次の盗みを実行に移そうとするフェニモアは、部下に凄腕の泥棒を探すように命令していました。
部下は探してきた泥棒をフェニモアに対面させます。フェニモアの前に現れたのは、変装したマルセイユ警察の女刑事でエミリアンの妻、ぺトラ(エマ・シェーベルイ)でした。
ダニエルは自宅にレオとマックスを連れ帰り、エミリアンを待ちますが、エミリアンがダニエル宅に現れたのは明け方でした。そのうえ、いつになく意気消沈しているエミリアンにダニエルは訳を聞き出します。
エミリアンはフェニモアを逃がした後、フェニモアの策略に嵌っていた事に気がつきました。8時間眠り続けた後に目覚めたジベールに、解雇を宣告されたのです。
フェニモアの話を聞いたダニエルは警察の前で、よく似た男を乗せて港近くの家へ送ったことを話します。その話を聞いたエミリアンは汚名返上のチャンスと考え、フェニモアを捕まえるため、案内するよう頼みます。
ダニエルとエミリアンはレオとマックスをエドモンドに預けると、フェニモアのアジトへ向かいました。アジトを張り込むこと、数時間、アジトから数人の男と老人、黒髪の女が現れます。
フェニモアではないといぶかしむエミリアンですが、老人のひげが取れ掛かっていることから、ダニエルは老人がフェニモアの変装である事に気が付きました。
また、黒髪の女にどこか見覚えがあり、エミリアンに訪ねますが、エミリアンは見たことがないと言います。車で出かけるフェニモアたちを追う、ダニエルたちは、モナコへやってきます。
フェニモアたちは、ベルギー王立銀行へ入っていきます。その様子を目にしたエミリアンはジベールに応援を要請します。
銀行に入ったフェニモアは受付で「エドゥアールに会いたい」と告げました。案内された部屋に入ると、そこにはフェニモアそっくりな男がいました。
その男はフェニモアの弟で、その容姿はマルセイユ署でのフェニモアそのものでした。フェニモアは部屋で、エドゥアールに変装します。
その後、銀行に入ってきたぺトラは、受付で貸金庫を開けたいと申しで、エドゥアールになりきったフェニモアは鍵を手にぺトラの前に現れます。
貸金庫室に入ったぺトラは、フェニモアの指示で貸金庫を開け始めます。その頃、ダニエルはフライドポテトの移動販売車から、黒服の男が出てくるのを目撃し、いぶかしみます。
ぺトラは貸金庫を開けることに成功、そこに入っていた書類をフェニモアに渡します。フェニモアはエドゥアールに老人の変装をさせると、銀行から追い出しました。
銀行を出たエドゥアールは折よく到着したジベールらに捕まってしまいます。フェニモアを逮捕したと勘違いしたジベールの報告を聞き喜ぶエミリアンですが、ダニエルは違和感を感じていました。
銀行に入っていったのは複数人ですが出てきたのは老人だけ。しかも、入っていったときはおぼつかない足取りだったのに、出てきたた時は普通に歩いていたことから、銀行内で別人に入れ替わっていたのではと考えます。
その証拠といわんばかりに、ぺトラと共にエドゥアール姿のフェニモアが銀行から出ていくのを2人は確認します。
ダニエルとエミリアンはフェニモアたちを追います。その後ろをフライドポテトの移動販売車もつけていましたが、途中、車の故障で停車します。
フェニモアはアジトではなく、別の場所に向かいます。そこには南米の麻薬王の屋敷がありました。フェニモアは銀行から盗んだ書類を公表されたくなかったら、ここから出て行けと麻薬王を脅します。
フェニモアはそこでぺトラに迫りますが、ぺトラは誘いに乗るふりをし、着替えると言い、更衣室で隠していた通信機で救助を求めます。
その相手はフライドポテトの移動販売車から出てきた男であり、車が故障したため、動けないことぺトラに告げます。
豪邸まで追跡してきたダニエルとエミリアンはジベールに事の真相を話し、再度、応援を要請します。エミリアンはジベールが到着するまで屋敷を偵察すると言い、車を降りようとします。
ダニエルは一応止めますが、聞く耳を持たないエミリアンが何らかの失敗をすることを予見しながら見送ります。
案の定、潜入に失敗して捕まったエミリアンは、フェニモアの前に連れてこられます。驚くぺトラを尻目にフェニモアはエミリアンを殺そうとします。
慌てるぺトラは自分にやらせるようフェニモアに頼みます。快諾するフェニモアにぺトラは自分の存在に気づいていないエミリアンを、何度も投げ飛ばしながらそれとなく伝えます。
ようやく気が付いたエミリアンはぺトラの指示で、隠していたナイフを取り出し、ぺトラを人質に取るふりをします。
その頃、ジベール率いる警察の特殊部隊が到着、射出装置を用い壁を乗り越え屋敷に侵入します。毎度のことながら自身も突入しようとするジベールですが、射出装置が作動しません。
なんとかしろと言われた部下のアランは、射出装置の出力を最大にします。すると、ジベールは天高く舞い上がり、屋敷に突っ込みます。
ジベールはエミリアン、ぺトラとフェニモアがにらみ合う部屋に墜落、その時、特殊部隊が突入を開始、フェニモアの部下たちと銃撃戦を開始します。
戦況が拮抗する中、現れたのは墜落の際に大量のコカインを吸い込んだジベールでした。ジベールは両手に機関銃を手にし、敵味方関係なく撃ちまくり、終いにはミサイルランチャーを取り出して乱射。屋敷が崩落を始めます。
焦るエミリアンとぺトラの前にダニエルのプジョーが現れ、2人を回収。二階から落下したフェニモアもトランクに閉じ込め、屋敷を後にします。
フェニモアを直接警察長官に引き渡し、事件を解決したダニエルとエミリアンは日常を取り戻します。一方、ジベールはコカインの影響か、散々バカにしていたサッカーに熱中し、試合に乱入して強烈なゴールを決めていました。
映画『TAXi4』の感想と評価
(C)2007 EUROPACORP – ARP – APIPOULA PROD – TF1 FILMS PRODUCTION
フランス発のカーアクション映画である「TAXi」シリーズも本作で第4弾を数えます。
前作『TAXi3』から約5年ぶりの続編となり、久しぶりに世界に顔を見せた本作ですが、これまで通りの安定したバカバカしさにホッとします。
例えば、エミリアンが屋敷に侵入しようとする場面では、ダニエル引き留めるにもかかわらず、潜入を強行し、結局捕まってしまうわけですが、シリーズファンにとっては容易に想像できるというか、ある意味では「期待通り」の結果に、笑いを誘われます。
また、おなじみのジベールの暴走ぶりはさらに磨きがかかっています。クライマックスのフェニモアを逮捕するために屋敷に突入するシーンでは、味方の足を引っ張るだけでなく、思いがけず吸ってしまったコカインにより、敵味方構わずに機関銃で撃ちまくるというシリーズ最大の暴走を見せています。
そんな様子もいつも通りで、久しぶりの「TAXi」に安心したファンも多いのではないでしょうか。そのうえ、本作で垣間見えた新しい魅力もありました。
前作『TAXi3』のエンディングで父親になることになったダニエルとエミリアンが、本作で父親としての姿を見せているのです。が、こちらも「TAXi」らしいというべきか……。二人は子育てをこじらせているようでした。
とりわけ、エミリアンの過保護ぶりは変な方向へ発揮され、サッカーの試合でアメフト張りの装備をさせる始末にどこから突っ込んでいいものか悩みます。また、演出面でもCGが用いられるという真新しさが見られます。
屋敷に潜入する際の射出装置でジベールが飛び上がる場面や、ジベールが発射したミサイルが屋敷を飛び回る場面、エンディングでジベールが決める超人的なシュートの場面などです。
どれも、現実ではありえない場面ばかりですが、それゆえにCGでの演出が功を奏し、笑いを誘います。
しかも、全てジベールにかかわる場面ばかり、というのもさすが「TAXi」といったところでしょうか。
まとめ
これまでヒットの記録を延ばし、世界を席巻してきた「TAXi」シリーズは、本作『TAXi4』で一旦シリーズが締めくくられます。
本シリーズは、様々なジャンルでヒット作を手掛け続けたリュック・ベッソンにとって、その才能がコメディでも発揮できる事を証明した作品となりました。
また、映画における「自動車」及び「カーアクション」の立ち位置を決定的に変えた作品になったといっても過言ではありません。
いまや「カーアクション映画」の代名詞となっている「ワイルドスピード」シリーズは、2001年の公開後ヒットを記録。
その「ワイルドスピード」シリーズは本シリーズと同じく、リュック・ベッソンが製作を務めた「トランスポーター」シリーズの影響を強く受けていると指摘ができるでしょう。
一時代を築き上げ、今なお根強い人気を誇る「TAXi」シリーズは、ド派手なカーアクションとシュールなコメディの融合による化学反応を引き起こします。
これら全ては、リュック・ベッソンの手腕の素晴らしさに尽きるといえるのではないでしょうか。