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吉田修一のスパイアクション小説『太陽は動かない』『森は知っている』の「鷹野一彦シリーズ」を原作に、羽住英一郎監督が映画化。
秘密組織「AN通信」に所属するエージェントは、幼少時代から訓練を重ねた一流の産業スパイ集団。
しかし、彼らの心臓には24時間ごとに更新される爆弾が埋め込まれていました。更新できない者、ミッションを遂行できない者は、爆死。
なぜ彼らは危険な人生を歩むことになったのか。今日を生き延びるため、命懸けのミッションに挑みます。
藤原竜也と竹内涼真のコンビにも注目。危険なスパイアクション映画『太陽は動かない』、見どころを紹介します。
映画『太陽は動かない』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
吉田修一
【監督】
羽住英一郎
【キャスト】
藤原竜也、竹内涼真、ハン・ヒョジュ、ピョン・ヨハン、市原隼人、南沙良、日向亘、加藤清史郎、横田栄司、翁華栄、八木アリサ、勝野洋、宮崎美子、鶴見辰吾、佐藤浩市
【作品概要】
『悪人』『怒り』『楽園』など映画化が続く人気小説家・吉田修一のスパイアクション小説『太陽は動かない』を、『海猿』シリーズの羽住英一郎監督が実写映画化。
産業スパイとして危険なミッションに挑む主人公・鷹野一彦を藤原竜也が演じます。その他、相棒の田岡役に竹内涼真、エージェント仲間の山下役には市原隼人が出演。
また、韓国から『華麗なる遺産』のハン・ヒョジュ、『ミスター・サンシャイン』『ミセン』のピョン・ヨハンが加わり、本格的なアクションを披露しています。
映画『太陽は動かない』のあらすじとネタバレ
「AN通信」とは、表向きは小さなニュース配信会社を装っていますが、その実態は国や企業などあらゆる組織の機密情報を入手し売買する、産業スパイ組織です。
そこに所属するエージェントは、組織への裏切り防止のため、胸に爆弾を埋め込まれ24時間ごとに本部への連絡を済まさなければ爆殺となります。
ブルガリアの首都ソフィア。まさに胸の爆弾が今にも起動しそうなエージェントがいます。山下竜二は、中国の巨大エネルギー企業CNOX会長、アンディ・ウォンを探っていましたが、捕まり監禁されていました。
残り5分。救出にやってきたのは、同じエージェント仲間の鷹野一彦と相方の田岡亮一です。どうにか山下を救出するも、新たな邪魔が入ります。
鷹野とは因縁のライバルでもある、韓国のフリーエージェント、デイビッド・キムでした。
追い込まれる山下。もう時間がありません。街の公衆電話から本部へ連絡を入れようとしますが、手遅れです。バンッ! 公衆電話が血に染まります。
山下は何の情報を追って殺されたのか。鷹野たちは、アンディ・ウォンを探ります。
アンディ・ウォンのCNOXは、裏の実行部隊を動かしあの手この手でのし上がり、今後は次世代型太陽光エネルギーの実用化に向け、日本の大手電機メーカーMETと手を組もうとしていました。
山下は、METの取締役である河上満太郎の依頼を受け、アンディ・ウォンの情報を探っていたと思われます。
鷹野は、河上に直接会いに行くことにしました。河上夫妻には昔、マニラで誘拐され消息不明になっている息子がいました。
河上は、「AN通信」という秘密組織の元、危険を覚悟で情報を集める若者たちに、息子の姿を重ね心を痛めていました。
そこに届いた、山下の死の報告。そして、山下の後を引き継ぐという鷹野の実直さに、やるせなさを感じます。なぜ、ここまで命を賭けて危険な任務をこなすのか。
「AN通信」のエージェントは、幼少期に親からの虐待を受け捨てられた子供たちでした。行き場を失くした子供たちは死んだこととされ、名前を変え産業スパイとして育て上げられます。
鷹野もまた、母親に部屋に閉じ込められたまま置き去りにされた子供でした。「AN通信」の司令塔である風間武に拾われた鷹野は、高校生まで島で過ごします。
島での暮らしは偽りのものでしたが、鷹野に希望を与えてくれました。閉じ込められていた狭い世界を抜け出し、壁の向こうの広い世界に飛び出したい。鷹野は自らエージェントの道を選んだのでした。
香港のCNOX本社へ侵入し、アンディ・ウォンの企みを知った鷹野は、河上にCNOXとの提携を止めるように忠告します。
CNOXは、表ではMETの太陽光エネルギー開発に協力する姿勢をみせながら、実はMETの新型蓄電池の技術を盗むのを目的としていました。
それは、世界のエネルギーを納めるべく宇宙太陽光発電の開発に乗り出していたからです。宇宙太陽光発電には、太陽光パネルを取り付けた人工衛星。宇宙空間で集めたエネルギーをマイクロ波に変換し地上に送る技術。そして、マイクロ波を直流電流に変換するレクテナが必要です。
アンディ・ウォンは、すでに中国の砂漠地帯に巨大なレクテナ基地を建設していました。鷹野と田岡は、レクテナ基地にヘリコプターで偵察に向かいます。しかし、ヘリコプターは墜落。鷹野が捕まってしまいます。
一方、鷹野にCNOXのデータを取られたデイビッド・キムは、アンディ・ウォンに近付いていた女スパイ・AYAKOと接触し、新たな儲け話を持ち掛けます。
映画『太陽は動かない』の感想と評価
世界を舞台に飛び回る産業スパイたちの活躍をスリリングに描いた、吉田修一の小説『太陽は動かない』の実写映画化。
次世代エネルギーを巡り、大手企業間の陰謀が渦巻く中、情報を操作し頭脳戦を勝利するのは一体誰なのか。手に汗握るアクションシーンの連続に、ドキドキが止まりません。
原作の『太陽は動かない』『森は知っている』を混ぜ合わせ、110分にギュギュと凝縮した実写映画化。登場人物を抑え、複雑に絡み合う国家間の政治問題を省き、コンパクトにまとめられています。
原作では、争いの元となるエネルギー開発に新油田の発見もあり、鷹野と田岡コンビがさらに危険なミッションに挑みますが、映画化ではその部分を大幅カットし、はじめから次世代型太陽光エネルギー開発を巡っての競合がメインとなっています。
映画化でミッションが絞られたかわりに、もうひとつの原作『森は知っている』に描かれている主人公・鷹野一彦の幼少期の体験が盛り込まれています。
鷹野はなぜ「AN通信」のエージェントとして危険な道を歩んだのか。子供の頃の辛い体験が、大人になり危険なミッションに挑む鷹野の姿と重なり、せつないシーンとなっています。
高校生時代の鷹野を日向亘が、友達の柳勇次役を加藤清史郎、初恋の相手・菊地詩織役を南沙良が演じています。
エージェントになるための訓練をしながらも、普通の男の子として過ごした島時代。鷹野が広い世界に飛び立つまでの、もうひとつの物語が描かれています。
失踪したはずの友達が影で助けてくれたり、その後のライバルともなるデイビッド・キムとの出会いも描かれ、孤独に生きてきた鷹野にも人との繋がりがあることが分かります。
そして映画の最大の見どころは、なんと言っても鷹野(藤原竜也)と田岡(竹内涼真)の肉体美…はもちろん、迫力満点のアクションシーンの数々です。
日本を飛び出し世界中で暴れまくるエージェントたち。さらに、ヘリコプターや船でのアクションもありスケールの大きさに驚かされます。
ブルガリアのソフィで撮影された冒頭のノンストップ銃撃戦は、スタントマンなしで演じられた渾身のシーンとなっています。
このシーンでは、鷹野の仲間である山下竜二(市原隼人)も登場。ベテランエージェント山下の貫禄と、胸の爆弾が発動するという緊迫した中でのアクションシーンに釘付けです。
また、韓国から出演のデイビッド・キム役のピョン・ヨハンと、謎の女AYAKO役のハン・ヒョジュも華麗なアクションを見せてくれます。
女スパイとして場をかき回すAYAKO(ハン・ヒョジュ)は、アンディ・ウォンの元で働きながら、原作ではアメリカのスパイでもありました。まさに、ルパン三世の峰不二子。最後に美味しい所を攫っていくのもお決まりです。
日本のアクション映画を代表する作品がまたひとつ増えたと言っても過言でない映画『太陽は動かない』。ぜひ、映画館で迫力あるアクションシーンを堪能してもらいたいです。
まとめ
吉田修一のスパイアクション小説「鷹野一彦シリーズ」を原作に、羽住英一郎監督が実写映画化した『太陽は動かない』を紹介しました。
映画との連動で放送されているWOWOWのテレビドラマ版は、映画版では語られなかった鷹野と田岡のコンビ結成初期の様子や、「AN通信」の実態が描かれています。
映画版とドラマ版を合わせて見ると、原作の世界観がまるっと分かる仕組みです。さらに、小説「鷹野一彦シリーズ」では、第三弾となる『ウォーターゲーム』も刊行されています。映画化の続編にも期待します。