公開60周年となる2013年にデジタルリマスター化された名作西部劇『シェーン』
最近は名作映画が次々にデジタル・リマスター版として、美しい映像で返り咲き上映されています。
西部劇の名作『シェーン』も、2016年4月から全国順次上映され話題となりました。まさに、「シェーン、カムバック〜〜〜‼︎」と、美しい映像で戻ってきた1本。
流れ者シェーンと開拓者一家の交流や許されざる思い、そして悪徳な牧場主との戦いを描いた名作西部劇。をご紹介します。
映画『シェーン』の作品情報
【公開】
1953年(アメリカ)
【監督・製作】
ジョージ・スティーヴンス
【キャスト】
アラン・ラッド、ジーン・アーサー、バン・ヘフリン、ブランドン・デ・ワイルド、ウォルター・ジャック・パランス、ベン・ジョンソン、エドガー・ブキャナン、エミール・メイヤー、エリシャ・クック・Jr.、ダグラス・スペンサー、ジョン・ディアクス、エレン・コービイ、ポール・マクビ、ジョン・ミラー、エディス・エバンソン、レオナルド・ストロング、レイ・スパイカー、ジャニス・キャロル、マーティン・メイソン、ヘレン・ブラウン、ナンシー・カルプ
【作品概要】
雄大な自然が広がるワイオミングに現れた流れ者シェーンが、開拓民家族との交流や、悪徳牧場主との戦いを描いた西部劇の名作。
ジャック・シェーファーの小説を原作に、ジョージ・スティーヴンス監督による、『陽のあたる場所』『ジャイアンツ』と並ぶアメリカ史三部作です。
2013年に、公開60周年を記念してデジタル・リマスター版が製作され、日本では2015年に、第28回東京国際映画祭で初上映されました。
映画『シェーン』のあらすじとネタバレ
1890年の初夏。ワイオミング高原から少年ジョーイの前に、一人の流れ者ガンマンがやって来ます。
移住民一家のジョー・スターレットの家に立ち寄った流れ者ガンマンは、飲み水を分けて貰いました。
その矢先、ジョーとその家族に嫌がらせをする荒くれ者の牧場主の一味が訪れてきます。
彼らを追い払うことに、一役買った流れ者ガンマンは、ジョーの誘いで泊めてもらうことになりました。
ガンマンは、シェーンと名前を名乗り、頼れそうな彼に、息子のジョーイや妻のマリアンは興味を持ちます。
夫のジョーは、悪徳牧場主のライカーに悩まされているので、一緒に働いてくれないかとシェーンに頼みました。
町に買出しに出かけたシェーンは、酒場でライカーの子分から喧嘩を売られますが相手にしません。
ライカーたち嫌がらせを受けている移住民たち家族は、集団で挙って町に買出しに行きます。
再びシェーンが酒場に現れると、前のことで図に乗ったライカーの一味は、またも彼に絡んできました。
しかし、シェーンも応えて乱闘が始まり、助けに入ったジョーと共々、ライカーの一味を相手を叩きのめして、酒場を引き揚げていきます。
怒り心頭に達したライカーは、シャイアンから腕利きの殺し屋ウィルソンを呼び寄せます。
やがて、移住民たちの中で短気なトリーが、ウィルスンの挑発に乗り、最初の銃弾を受けて殺されてしまいます。
ついに、移住民たちの中から犠牲者が出たことで、結束は揺らいでしまい、町を去る決断迫られた家族も出ます。
映画『シェーン』の感想と評価
アラン・ラッド演じるシェーンが、初めて少年ジョーイに出会った時のセリフが印象深いですね。
「しっかり、ものを見る子どもは好きだ、きっと立派な男になる。」と会話を交わします。
これを聞かされた観客も、ジョーイのように瞳を丸く見開いて、何一つ見落とさないようにスクリーンを観なくてはいけないな〜、と思わされてしまいますよね。
原作者ジャック・シェーファーは、「私が書こうとしていることは、アメリカが、かつてどんな型の人間を持っていたのかということである。そして、そういう人間を書くことは、もう一度アメリカは、そういう人間になれると確信するからだ」と述べています。
このことが、ジョージ・スティーヴンス監督の『陽のあたる場所』『ジャイアンツ』と並べて、「アメリカ三部作」と言われる点です。
西部劇ではありますが、密に描かれたヒューマンドラマとも言えるのではないでしょうか。
また、映画の特徴は、「境」というキーワードです。
先ほど挙げたセリフの前には、ワイオミング高原からやって来るシェーンと、鹿のいる川(境)挟み、ジョーイ、または、ジョーの家が位置されていて、冒頭から「境」がテーマであること暗示しています。
それは、「流れ者と移住者」「子どもと大人」「人妻マリアンとシェーン」「正義と悪」など踏み越えてはいけない対向軸の意味を表しているのでしょう。
その中でも、人妻アリアンとシェーンの関係の境は、この当時はまだ不倫関係を描くことはできない時代でしたから、ジョー・スターレット家の室内セットは、デザイン設計がされせ見せてくれます。
気持ちの揺れを表現するために、巧みに部屋やドアがセットに位置され、登場人物の動きで見せています。
(映画評論家の淀川長治も巧みなセットであることは指摘しています。)
他にも、祝祭のダンスシーンの柵や、酒場と雑貨など、美術を担当したハル・ペレイラとウォルター・タイラーの見事さには眼を見張るものがあります。
50年代初頭に忘れかけてしまったアメリカ人としてスピリッツ、あるいは「境」という隠喩を強いこだわりの表現を見せた西部劇は、なかなか他にはありません。
やはり、名作中の名作と言っても過言ではありませんね。
まとめ
映画評論家の淀川長治は、ハリウッドにあるパラマウントスタジオの試写室で観た後、「これはアメリカ映画の不死鳥である。生涯この美しい映画の思い出は消えまい。」と述べました。
まさに、デジタル・リマスター版とは、不死鳥のように蘇り、現代に「カムバック」した作品なのかもしれません。
映画とは、その時代の人に対するメッセージ。
しかし、時代に左右されず「色あせない」大切なメッセージは、時を越えて名作と呼ばれるのでしょう。
不死鳥(デジタルリマスター)のごとく再生させることで、誰もがそのメッセージの受信者となり、見返すものかもしれません。