Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

Entry 2021/03/29
Update

実写映画『るろうに剣心(2012)』ネタバレ感想と結末あらすじ。キャスト佐藤健と武井咲で描く‟人斬りの生き様”を問う

  • Writer :
  • 星野しげみ

和月伸宏原作の漫画を実写化した映画『るろうに剣心』

明治維新で「人斬り抜刀斎」と恐れられた刺客・緋村剣心は、維新後、斬れない“逆刃刀”を携えて流浪の旅を続けていました。

そんな頃、ふとしたことから、神谷道場の師範代理の少女・薫を救った彼は、ニセ抜刀斎を用心棒に抱える悪徳実業家の陰謀に巻き込まれていきます。

映画を手掛けたのは、『龍馬伝』の大友啓史。緋村剣心に挑んだ佐藤健、神谷薫には武井咲と魅力的なキャストに加え、吉川晃司、蒼井優、青木崇高、綾野剛、江口洋介、香川照之といった実力派も顔を揃えました。

激しい斬りあい、殴り合いの多いアクション時代劇。新時代到来における熾烈な闘いと、その裏に秘められた奥深い人生ドラマを描き出しています。

映画『るろうに剣心』の作品情報

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

【公開】
2012年(日本映画)

【原作】
和月伸宏:『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』(集英社)

【監督】
大友啓史

【脚本】
藤井清美、大友啓史

【音楽】
佐藤直紀

【キャスト】
佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優、青木崇高、綾野剛、須藤元気、田中偉登、奥田瑛二、江口洋介、香川照之

【作品概要】
1994~99年に週刊少年ジャンプ(集英社)で連載され、テレビアニメ化もされて人気を博した和月伸宏の漫画『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』の実写映画版。

伝説の「人斬り抜刀斎」・緋村剣心が明治維新以後、殺さずの誓いをたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀」を携えて町から町へ流浪の旅を続ける姿を描いています。

主人公の緋村剣心に佐藤健、ヒロインの神谷薫に武井咲。敵側には吉川晃司、綾野剛、ボスに香川照之と豪華キャストをそろえ、江口洋介、蒼井優らも脇を固めます。NHK大河ドラマ『龍馬伝』で知られる大友啓史監督が手懸けました。

映画『るろうに剣心』のあらすじとネタバレ

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

1868年1月。戊辰戦争の真っただ中。京都伏見山中では、討幕派の官軍と佐幕派の武士たちが激しく戦っていました。

その中には、幕府要人や佐幕派の武士達に恐れられた「人斬り抜刀斎」の通り名を持つ凄腕の暗殺者がいました。

「人斬り抜刀斎」(佐藤健)は、神速な剣技と驚異の暗殺成功率をもつ、剣の達人です。新選組の斎藤一(江口洋介)は血しぶきを浴びながら剣を振るう「人斬り抜刀斎」を見つけますが、その時、官軍の勝利が告げられました。

去ろうとする抜刀斎に斎藤は「剣に生き、剣に死ぬ以外、俺たちに道はない」と言いますが、抜刀斎は血濡れた刀を地面に置き、去っていきました。

それから10年の月日が流れ、時は明治11年。

「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心は、人の命を奪うことを良しとしない「不殺の誓い」を掲げ、日本各地を旅しながら、か弱き人々を剣の力で守り助ける‟るろうに”として、穏やかな日々を送っていました。

剣心が東京に流れ着いた頃、中毒性の高い新型阿片の密売と“神谷活心流 人斬り抜刀斎”を語る辻斬りという、2つの事件が起こっていました。

そのころ、悪徳商人・武田観柳(香川照之)の邸では、観柳に囲われている女医・高荷恵(蒼井優)が、新型阿片を開発させられていました。

新型の強力な阿片が完成した時、恵は良心の呵責に駆られて観柳の屋敷を逃げ出します。

観柳は恵を連れ戻すため、配下の鵜堂刃衛(吉川晃司)を差し向けました。恵の逃げ込んだ警察署内で、刃衛は斬殺を繰り広げましたが、恵を取り逃がします。

一方、辻斬りの流派と噂されたために門下生が皆無となった神谷活心流。

「人を活かすのが剣の道」と説く亡き先代師範の父親の教えを頑なに守る師範代の神谷薫(武井咲)は、‟神谷活心流”を名乗る辻斬りに腹立たしい想いを抱えています。

街でみかけた剣心を犯人と勘違いして挑みかかり負けますが、その直後に薫は刃衛と遭遇し、斬られそうになったところを剣心に救われました。

神谷道場へ戻った薫に、今度は別の観柳の手下たちが道場の土地を譲るよう押しかけて、狼藉を働きます。

観柳が禁制品を取り扱う港を新設するために、神谷道場の界隈はうってつけの場所にあったのです。

そこに「逆刃刀」を掲げて剣心が現れ、手下たちを殺さずに皆、昏倒させました。人斬り抜刀斎の剣は「飛天御剣流」。見事な剣さばきに剣心の正体はばれてしまいます。

まもなく駆けつけてきた警官隊は、「廃刀令」を破ったとして手下どもを捕まえますが、剣心は騒動の原因は自分にあって道場は無関係だと告げ、手下ともども警察へ連行されます。

警察で、剣心は警官になった斎藤一と再会。

剣心が抜刀斎であることを知る斎藤一は、彼を山県有朋(奥田瑛二)の元へ連れて行きました。

山県は、陸軍の要職につき剣の腕を新型阿片の捜査協力に貸してくれと頼みますが、剣心はこれを断ります。

「人斬りに戻れ」と斎藤は剣心と一戦を交えて抜刀斎の頃の血を呼び覚まそうとしますが、「もう人は斬らぬ」と剣心は戦いながら「不殺の誓い」で斎藤の誘惑に耐えます。

一部始終みていた山県は諦めたのか、「もうよい」と戦いを中断させ、剣心は釈放となりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『るろうに剣心』ネタバレ・結末の記載がございます。『るろうに剣心』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

土砂降りの雨の中。剣心が釈放されると知った薫が警察まで迎えに来ました。傘を差しだす薫を見て剣心は驚きます。

「もう、わかったでござろう。拙者は人斬り……」「私が出会ったのは、剣心という‟るろうに”よ。行くとこないんでしょ。うちに来て」

薫の言葉に剣心も心を動かされ、薫と共に神谷道場へ向かいました。

丁度その頃、逃亡中の恵は神谷活心流門下生となって神谷道場に居候する士族の少年・明神弥彦(田中偉登)と出会います。

弥彦に助けられ、事情を明かさないまま恵もまた、「人斬り抜刀斎」の過去を持つ剣心と同じく、神谷道場に居つくことになりました。

翌日、剣心たちは助けてくれたお礼にと、牛鍋屋「赤べこ」で牛鍋を薫からごちそうになっていました。

そこへ一人で何人もの侍をやっつけた強者がいると聞いた武田観柳が、彼を自分の配下に引き込もうと勧誘に来ました。

武田の姿をいち早く見つけた恵はお手洗いへと駆け込み、その後すぐに武田は剣心を見つけます。

お金を山のように積まれても、剣心は首を縦に振りません。

そこへ警察の牢屋で剣心と一緒になり、斎藤たちの話から剣心の過去を知っている喧嘩屋の相楽左之助(青木崇高)が現れ、剣心と勝負して勝ったら俺を雇えと武田に言います。

強い者をみると勝負したくなる性分の左之助は、筋骨隆々とした男です。

馬を切る刀「斬馬刀」を振り回て大暴れしますが、すばしこい剣心は刀を抜くことなく、「あんな男のためにお前と闘いたくない」と左之助を諭します。

剣心はその場から逃げ出し、己の愚かさを悟った左之助も去りますが、残った武田には、本物の抜刀斎はアイツかとわかってしまいました。

その後、町の多くの住人が急に苦しみだす事件が起きました。

神谷道場に担ぎ込まれた病人を見て、恵はこれが井戸に入れられた毒のためと見破って治療に奔走。

治療が一段落すると、恵は町の住人にこれ以上迷惑が掛らぬようにと、自ら観柳の屋敷に戻りました。

恵の書き置きを読み彼女の置かれた境遇を察した剣心は、喧嘩屋・相楽左之助と共に観柳の屋敷に向かい、手下ともども観柳を打ち据えて、恵を助け出します。

しかし、恵から刃衛が薫を拉致して剣心との戦いを望んでいることを聞かされました。

剣心は、今度は薫を救うために刃衛のもとへ向かいました。

刃衛の策略通り、薫を拉致された怒りによってかつての人斬りへと戻りかける剣心でしたが、薫の心からの叫びから我に返り、刃衛を殺すことなく決着をつけることに成功しました。

負けを認めた刃衛は「所詮、人斬りは人斬りだ」と言う言葉を残して、自ら刀を差して死にました。

現場にかけつけた斎藤からは「るろうになど、弱虫の逃げ道だ」と言われますが、何一つ反論しない剣心。

気を失っている薫を抱き上げたまま、無言で帰途に着きました。

映画『るろうに剣心』の感想と評価

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

十字傷の過去と逆刃刀の誓い

凄腕の「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心は、頬に十字の傷を持っています。

十字に斬られた2つの切り傷のうち1つは、剣心が暗殺者となって活躍始めたころに斬った若侍につけられたものです。

その侍は愛する人と祝言間近だったため、死ぬわけにいかないと、斬られても斬られても、剣心に向かってきました。

その執念に驚く剣心に気の緩みがでて、最後に侍の剣が頬をかすったのです。

事件現場を後から見に行った剣心は、その侍の遺体に縋って泣き崩れる女性の姿を見ます。

頬の傷と一緒に心もとても痛んだ剣心。後に、その女性からもう一つ頬に傷をつけられたと語る剣心ですが、その過去の出来事は、剣心に十字架を背負わせることになりました。

良き時代を作ろうとしているのに、なぜ罪もない人を斬らねばならないのか。この出来事は、剣心の心に迷いを生じさせます。

そして、新時代の到来。廃刀令も出されますが、落ちぶれた武士はいまだに剣を携え、生きるために権力者に金で雇われます。

剣の腕前はピカ一の剣心がその気になれば用心棒として引く手数多なのですが、彼はその道には決して戻ろうとしません。

剣の刃先を自分の方に向けた「逆刃刀」を愛用して、”殺さず”の剣で悪人を斬り、人を助けるために剣を振るうだけでした。

「人斬り抜刀斎」から緋村剣心へ。彼は自分の損得では決して動きません。

しかし、静かな生活を望む剣心を人斬りに戻して自らの私利私欲に利用したい輩のなんと多いこと。その代償も地位やお金であったり、罪なき者の命であったりします。

剣心が悪の誘惑を断ち切れる秘密は、切ない十字傷のエピソードと「逆刃刀」に込めた‟不殺の誓い”にあったのです。

連続アクションと個性的なキャスティング

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

恐ろしく腕の立つ緋村剣心を演じるのは、佐藤健。映画冒頭から終わりまで、ほぼ全編にわたって、絶えることなくアクションが続きます。

その殺陣レベルはかなり高く、佐藤健の人並優れた身体能力の高さに驚くことでしょう。

「人斬り抜刀斎」を斬れば、己の剣の腕前が証明されるということで、人を殺したくない剣心の前には、強敵が次々と現れて闘いを挑んできます。

本作での強敵1号は、斎藤一。剣心の宿敵として、人斬り抜刀斎の顔を知る数少ない人物です。

新撰組の信念を貫くため、警視庁の密偵として暗躍しています。

斎藤に扮するのは江口洋介で、敵か味方かわからない無口な斎藤の不気味な存在感を充分引き出しています。

武田観柳に雇われた鵜堂刃衛も、上級の剣の腕前に加えて相手の身体の自由を奪う術を使う、怖ろしい強敵といえます。

刃衛を演じているのは、吉川晃司。白目と黒目が反転している特徴的なルックスは、彼にはピッタリでした。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

しかし、最もすごかったのは、悪徳商人武田観柳を演じた香川照之でしょう。

観柳王国を築くのが夢と豪語する憎たらしい強欲男を、特徴的な髪形といやらしい表情で見事に体現。

観柳のテーマともいうべき音楽も用意され、音楽と同化したコミカルな演技が光っていました。

見せ場のひとつである観柳邸での対決では、屋敷に乗り込んだ剣心たちに向け、ガトリングガンで銃撃も浴びせました。

財力に物いわせ、新政府になって生活に苦しむ士族や侍を用心棒替わりに雇い、親衛隊もどきまで作っている武田観柳。お金さえあれば何でもできると思っています。

こんな悪人の薄汚い根性を表情からにじませる演技は、香川照之でしかできないと言っても過言ではありません。

本作は血が噴き出すアクションの映像が多いし、殺陣の見せ場もいたるところにありますが、その反面、初々しい演技の武田咲や妖艶さを醸し出した蒼井優など、女性陣の活躍もありました。

ただの斬り合いだけで終わらない、爽やかな達成感の残る作品となっているのは、原作の面白さに加えて魅力的なキャストの活躍があるからでしょう。

まとめ

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

和月伸宏原作の漫画を、大友啓史監督が実写化した映画『るろうに剣心』。

‟人斬り抜刀斎”の過去を持つ緋村剣心が、‟不殺の誓い”をたてて生きていく姿を描いたアクション時代劇です。

斎藤、観柳というキャラクターは、実在する人物をモデルにしてつくり上げたものと言います。彼らの存在も物語に一層のリアリティを加えていました。

神谷道場に徐々に集結する緋村剣心とその仲間たち。時代の変革が生んだ歴史の大きな歪の中で、弱い人々の味方となって剣を振るう姿に次作への期待も高まります

ひときわ印象深いのは、ラストの薫と剣心の微笑ましい会話でした。

「お帰りなさい、剣心」「ただいまでござる」。

人斬りに戻らずに帰ってきた剣心を労わる薫と、それに感謝しこれからも‟るろうに”として生きようとする剣心の決意が現れた、すがすがしい場面となっています。






関連記事

アクション映画

『007/慰めの報酬』ネタバレあらすじ感想と結末の考察解説。オイルが注目アイテムとなるダニエルボンドの2作目!

大人気スパイアクション映画「007」シリーズ第22作! マーク・フォースターが監督を務めた、2008年製作のアメリカ・イギリス合作の大人気スパイアクション映画『007/慰めの報酬』。 英国情報局秘密情 …

アクション映画

映画『フューリー』ネタバレ結末あらすじと感想解説。ブラッドピッド演じる兵士が指揮する“戦車の一騎打ち”

たった1台のシャーマン戦車と300人のドイツ軍部隊が激突する戦争アクションドラマ! デヴィッド・エアーが脚本・製作・監督を務めた、2014年製作のアメリカの戦争アクションドラマ映画『フューリー』。 第 …

アクション映画

映画『キングダム』登場人物の成蟜(せいきょう)役は本郷奏多。演技力とプロフィール紹介

中国春秋戦国時代を舞台にした原泰久原作の大人気マンガ『キングダム』を実写化した映画が2019年4月19日より公開。 原作は第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞し、累計発行部数3600万部を超える一大 …

アクション映画

映画『300スリーハンドレッド』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。ザックスナイダー監督が史上最強のスパルタ軍を描く

300のスパルタ軍が100万のペルシア軍に挑む歴史スペクタクル・アクション ザック・スナイダーが監督を務めた史上最強の男たちの勇姿を描いた、2007年製作のアメリカのR15+指定の歴史スペクタクル・ア …

アクション映画

映画『ダークタワー』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

モダンホラーの帝王スティーヴン・キングの原点と言われている小説『ダークタワー』を、イドリス・エルバとマシュー・マコノヒー主演で映画化。 世界の平和を保つ塔を巡るバトルを描いた、キング映画初の本格派アク …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学