映画『ムルゲ/王朝の怪物』は2020年3月13日より公開。
都を脅かす存在となった「物怪」と、最強の武人との戦いを描いた映画『ムルゲ/王朝の怪物』。
韓国版ドラマ『白い巨塔』など、多くの映像作品に出演し「出演作に外れ無し」と呼ばれる実力派俳優キム・ミョンミンが、かつて政争により朝廷から追放された最強の武人に扮しました。
「朝鮮王朝実録」の一節をもとに、監督のホ・ジョンホが、独特の世界観で「物怪(ムルゲ)」との戦いを描いた映画『ムルゲ/王朝の怪物』をご紹介します。
映画『ムルゲ/王朝の怪物』の作品情報
【日本公開】
2020年(韓国映画)
【原題】
Monstrum
【監督・脚本】
ホ・ジョンホ
【キャスト】
キム・ミョンミン、チェ・ウシク、イ・ヘリ、キム・イングォン、パク・ソンウン、パク・ヒスン、イ・ギョンヨン
【作品概要】
1527年の朝鮮半島を舞台に、朝廷内のクーデターと正体不明の怪物、2つの戦いに挑む武人ユン・ギョムの姿を描いたモンスター・アクション。主演は、韓国版のドラマ『白い巨塔』など、多くの映像作品に出演し「出演作に外れ無し」と呼ばれる実力派俳優、キム・ミョンミン。
共演は、2016年に韓国歴代視聴率No.1を記録した『恋のスケッチ ~応答せよ1988~』でヒロインに抜擢されたイ・ヘリに加え、新米の宮廷の役人ホ宣伝官を、世界で高い評価を得た『パラサイト 半地下の家族』でギウ役に抜擢された事でも知られる、チェ・ウシクが演じています。
映画『ムルゲ/王朝の怪物』のあらすじ
朝鮮・中宗22年(1527年)。都では謎の疫病が蔓延し、人々は不安を抱えながら生活をしていました。
疫病の根源は、宮廷の背後にそびえる仁王山(イナンサン)に現れる「物怪(ムルゲ)」であるという噂も飛び交います。
国の民が混乱状態である事に、心を痛める11代中宗王。さらに、中宗王の腹心であるはずの領議政役が、この混乱に乗じて権力を掌握しようとしていました。
人里離れた山奥で、ひっそりと暮らすユン・ギョム。ユン・ ギョムは、娘のミョンと、自身を「兄貴」と慕う、お調子者のソン・ハンと3人で、猟師として自給自足の生活を送っていました。
ある時、庭の作物を収穫していたミョンは、自分の家を覗く怪しげな男に気付きます。男は宮廷から使いとして現れたホ宣伝官で、「かつて、王直属の軍隊の長官で、最強の武人と呼ばれたユン・ギョムに用がある」とミョンに伝えました。
山奥で冴えない暮らしをしているユン・ギョムが最強の武人であった事を信じないミョンですが、ユン・ギョムの家を中宗王が直々に訪ねて来ます。
中宗王が語る、ユン・ギョムの過去。
ユン・ ギョムは、疫病に苦しむ村から助け出した幼い娘を宮廷に連れ帰りますが、感染を恐れた役人により「娘を殺せ」と命令されます。ですが、ユン・ギョムは、この命令を無視した為、宮廷から追い出される事になりました。
ユン・ギョムは「幼い命1つ守れないなら、意味が無い」と、武人の証である剣を置いて宮廷を去り、彼の部下でナンバー2の強さを誇る武人だったソン・ハンも、共に宮廷を後にしたのです。
その後、山小屋に身を潜めたユン・ギョムが、自分の娘のように育てたのがミョンでした。
国に広まる「物怪」の噂の裏に領議政役の陰謀が絡んでいる事を悟った中宗王は、ユン・ギョムの力を借りに来ました。悩んだ末、ユン・ギョムはソン・ハン、ミョンと共に都へ戻り、「物怪」と朝廷の陰謀から中宗王を救う事を決意します。
映画『ムルゲ/王朝の怪物』感想と評価
都を脅かす「物怪」と、最強の武人、ユン・ギョムとの戦いを描いた『ムルゲ/王朝の怪物』。
本作は「物怪」との戦いを描いたモンスターパニック映画に、朝廷を揺るがす陰謀を加えた、一風変わった作品となっています。
物語の序盤は、朝廷の全権力の掌握を目論む領議政役の陰謀が中心。序盤では「物怪」の存在をハッキリと表現する場面は無く、一連の事件を調査するユン・ギョムの目線で、物語が進行します。
「物怪」の混乱に乗じて、自身が朝廷の権力を掌握しようとする領議政役と、陰謀から中宗王を守ろうとするユン・ギョムとの攻防戦が、物語の軸となります。
ここまでモンスターパニック映画としては異色の展開ですが、物語中盤では「物怪」がその姿を現します。
「物怪」が登場して以降は、「『物怪』との戦い」と「領議政役のクーデターの阻止」という2つの物語が同時進行していき、クライマックスでは2つが交じり合う展開となります。
時代劇ならではの剣術アクションと、一筋縄ではいかない「物怪」との死闘を描いたSF要素が入り混じった、独特の展開となっています。
かなり個性的な作品ですが、監督のホ・ジョンホは「朝鮮王朝実録」の短い一節から、本作の構想を得た事を明かしています。
「朝鮮王朝実録」には、「中宗の治世中に『物怪』が現れ、宮殿中が混乱に陥り、王が居城からの退去を余儀なくされた」という一節がありました。
この「物怪」が、何の事かは不明ですが、作中に登場した領議政役は自身の野望の為に多くの民の命も平気で犠牲にする「物怪」と呼べる人物です。または疫病を「物怪」と表現したのかもしれません。
「朝鮮王朝実録」には、第10代国王の燕山君が実際に珍獣を収集しており、作中に登場した珍獣を閉じ込めていた小屋「調隼坊」も実在していた事が記されています。
なので、本当に正真正銘の「物怪」が現れたのかもしれません。
ホ・ジョンホは、想像力を膨らませ時代劇にモンスターの要素を加えるという、唯一無二の作品を生み出しました。