キアヌ・リーブス主演のヒットシリーズ!
「ジョン・ウィック」チャプター3『ジョン・ウィック:パラベラム』。
最強の殺し屋である主人公ジョン・ウィックをキアヌ・リーブスが演じる他、本作ではアカデミー賞主演女優賞を受賞しているハル・ベリーが新キャラクター・ソフィアを演じています。
また、ジョン・ウィックが対峙する最終決戦の相手は、忍術を使う日本人という設定も見どころのひとつで、アジア映画に造詣が深いチャド・スタエルスキがシリーズを通して監督を務めています。
本作の鍵となるのは、日本。キーワードとして使われている言葉はカルマです。
今回は映画『ジョン・ウィック:パラベラム』を、より楽しむための8つのトリビア深堀り解説でご紹介します。
【映画『ジョン・ウィック:パラベラム』の「あらすじネタバレ」記事はコチラ!】
CONTENTS
映画『ジョン・ウィック:パラベラム』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
John Wick:Chapter3-Parabellum-
【監督】
チャド・スタエルスキ
【キャスト】
キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、イアン・マクシェーン、ランス・レディック、アジア・ケイト・ディロン、マーク・ダカスコス、アンジェリカ・ヒューストン、ハル・ベリー
【作品概要】
デレク・コルスタッドが継続して脚本を担当し、アンジェリカ・ヒューストン扮する新キャラクター“指導者”を考案したジェイ・ハッテン等も共同執筆。
監督は、チャド・スタエルスキが引き続き務めました。劇場公開から僅か2週間で2億ドルを超える興行収入を記録し世界中で大ヒットしている本作は、批評家からも高い評価を得ています。
トリビア①ジョン・ウィックのオリジナル性
『ジョン・ウィック』は原作が無く、監督チャド・スタエルスキと主人公を演じるキアヌ・リーブスが本作の原案をまとめました。
第1作目から脚本を担当するデレク・コルスタッドや他のクルーもアイデアを出し合い、手作りで物語を構築しています。
スタエルスキは、クレジットに自分の名前が監督となっているが、キアヌも共同クリエイターだと述べています。
本作『ジョン・ウィック:パラベラム』でジョン・ウィックと最終決戦を闘う相手を忍者にしたかったのは、スタエルスキ。
そして、主人公が砂漠へ行くことや新キャラクター・審判者(adjudicator)を思いついたのはキアヌです。
コルスタッドは、主席連合(The High Table)という組織が支配する闇組織のモチーフはカトリック教会だと話しています。
『ゴッド・ファーザー PARTⅢ』でもバチカンの掟や粛清等が描かれており、過去にもハリウッド映画で題材にされました。
そして、主な舞台となるのがニューヨークのマンハッタンであるため、怪しさも漂います。
2019年1月公開の実話を基にした『ビューティフル・アイランド』でもマンハッタンのアンダーワールドを描いており、表と裏の顔を持つ街だと分かります。
トリビア②チャプター3の撮影前の訓練
シリーズのヒットに伴い、作品に魅せられた多くのスタントマンや俳優から出演したいと声が掛かったそうですが、殆どの人が1週間で脱落して行くとスタエルスキは明かします。
凄まじい訓練を完遂したのが本作でソフィアを演じるハル・ベリー。
大ファンの彼女は、「ジョン・ウィックの世界に身を置きたい!」と、スタエルスキに直に会い出演を猛烈に交渉しました。
トレーニングだけで半年のコミットだとスタエルスキは忠告しますが、脚本も無い段階でベリーは承諾。
護衛犬を演じたベルジアン・シェパード・マリノア犬達との共同訓練も含め1日も休まず、肋骨を3本骨折する怪我を負っています。
幼い頃体操選手だったベリーは、ジョン・ウィックに劣るアクションは出来ないと肝に銘じたとインタビューで答えています。
実際の撮影では、犬達は訓練士ではなく、ベリーの命令に従っています。公開されたトレーニング風景でも、犬達はベリーの脇を挟んで離れず歩き、劇中で見せた通り、彼女の掛け声でベリーの背中を跳び箱代わりに使い高台へジャンプしています。
スタエルスキが選んだトレーナーは、『ゲーム・オブ・スローン』でも犬の訓練を担当したアンドリュー・シンプソン。スタエルスキが「ドッグ・ウィスパラー」と呼ぶ人物で、犬のオーディションも行い、選出した5頭の訓練に1年掛かりました。
『ジョン・ウィック:パラベラム』で公開された7分弱のシーンは、実に18ヶ月間トレーニングに費やした成果なのです。
スタントマン出身であるスタエルスキは、誤魔化さないのが信条。細かいカットを入れて、動きを繋げるようなアクションは彼の誇りが許さないのです。
トリビア③修行者キアヌ・リーブス
主演を演じるキアヌは、誰よりも時間を費やし猛烈なトレーニングを積んでいます。
柔道、合気道、空手、柔術も含めて日々鍛練し、修行と言っても過言ではありません。
本作でゼロを演じたマーシャルアーティストのマーク・ダカスコスは、キアヌもマーシャルアーティストだと言います。
『ジョン・ウィック』シリーズを通し一貫しているのは、銃撃戦の場面でマガジン交換も描写されている点です。
通常はタイムロスが生まれ流れを止めてしまうため省かれます。その結果、弾切れの無い銃のように映り、観客からすれば少し白けてしまう部分です。
スタエルスキはこれを嫌がり、本物志向を貫いて前例の無い試みを実行します。ジョン・ウィックは、弾が切れればマガジン交換をし、それも含めて戦闘シーンです。
それに応えるキアヌは、体術に加え射撃訓練の際、タイマーで自己記録に挑んでいます。マガジンを素早く入れ替えながら多数の的を命中させるトレーニング風景は圧巻。
本作の終盤で使うショットガンも、実際にキアヌが弾を込める敏速さで真価を発揮しています。
トリビア④キャストの秘話と『マトリックス』
当初、ゼロ役にはキアヌの推薦で真田広之がキャストされていました。残念なことに、個人でトレーニングしていた際に怪我をして手術を余儀なくされ、撮影に間に合わなかったそうです。
代役としてスタエルスキが白羽の矢を当てたのは、フィリピン人俳優のマーク・ダカスコスです。
『エイリアン4』(1997) や『PLANET OF THE APS/ 猿の惑星』(2001)等、造形作家として活躍するスティーヴ・ワンが監督し、日本人俳優の加藤雅也も出演する『破壊王』(1997)で主演を務めたダカスコス。
彼と仕事をして以来の知り合いだったスタエルスキは、『ジョン・ウィック:パラベラム』のスタントチームにダカスコスが加わっていたことから声を掛けたそうです。
ゼロは忍者マスターと設定されていましたが、ダカスコスが本人の個性を活かし即興でユーモアを入れたのをスタエルスキが気に入り、そのまま取り入れたそうです。
また、ローレンス・フィッシュバーン演じるバウリー・キングは、本作で重ね着をしています。これは、日本の十二単からヒントを得てデザインされました。
劇中、ジョン・ウィックが「銃。どっさりと(Guns. Lots of guns)」と言う場面があります。キアヌとスタエルスキは、『マトリックス』(1999) で出会い、この経験を「ウォシャウスキー・スクール」と呼んでいます。
革命的なアクションを生み出した両監督の作品に対し、スタエルスキは20周年記念のオマージュとしてネオと同じ台詞を使いました。
トリビア⑤アクション
『ジョン・ウィック』ファンが楽しみにしている戦闘シーンですが、3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』は、スタエルスキのより大胆な構想とそれをやって退けるキアヌが注目されています。
マンハッタンは騎馬警官で知られており、セントラルパーク近辺に厩舎を発見したスタエルスキは、馬に乗るジョン・ウィック対オートバイ軍団のアクションを思いつきました。
また、カーチェースならぬオートバイチェースでは、アメリカ最長の吊り橋であるヴェラザノ・ナローズ・ブリッジを封鎖して撮影。
ジョン・ウィックのアクションはスタントマン無しで全てキアヌが行い、走行スピードは104キロを超えています。
そして、ジョン・ウィック対ゼロ&忍者が繰り広げる決戦には、2階建ての広いガラス張りのフロアが建造されました。
ここもスタエルスキのアクションに対するこだわりがあります。ワイヤーもカメラも無く360度見渡せるスペースでカメラを長回し。キアヌとスタントマン達の壮絶な近接戦闘が流れの中でスクリーンに写し出されます。
観客が主人公に感情移入する理由は、キアヌ・リーブスを見ていると認識しながらも、満身創痍のジョン・ウィックが繰り出すアクションの殆どをキアヌが担っていると明確に分かるためです。
トリビア⑥ジョン・ウィックに影響を与えた巨匠
スタエルスキは、黒澤明、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のセルジオ・レオーネ、『ラストエンペラー』のベルナルド・ベルトルッチの名前を挙げ、大きな影響を受けたと話します。
特に黒澤明とセルジオ・レオーネの作品は、プロット重視では無く主人公の旅路を描いている点が魅力で、本作にも活かされていると述べています。
また、大きな話題を集めたインドネシア映画『ザ・レイド』(2012) が好きなアクション映画の1つとし、スタエルスキは、マッド・ドッグを演じたヤヤン・ルヒアンを本作の忍者として召集しました。
トリビア⑦カルマ
劇中、度々出てくる台詞が「consequences」です。主人公のジョン、ウィンストン、バウリー・キング、ソフィアも含め、自分の過去の行動に対して代償を支払うことを意味しています。
北米では広く使われている言葉で、自分のやったことは必ず返ってくる=カルマ(karma)として理解されています。
トリビア⑧パラベラム
チャプター3となる今回は、副題がついています。パラベラムは、銃に使う9ミリ弾の呼称でもありますが、作品の副題として引用されたのは、ラテン語の一節にある後半部分です。
「Si vis pacem, para bellum」。英語では「If you want peace, prepare for war」となり、「平和を望むなら、戦争に備えよ」という意味です。
本作は、ローレンス・フィッシュバーン扮するバウリー・キングとキアヌ・リーブス演じる主人公ジョン・ウィックが主席連合に対する怒りを露わにする所で終わります。
副題・パラベラムは、ジョン・ウィック4への伏線となるわけです。
製作スタジオのライオンズゲートは、2021年5月21日に続編が劇場公開されると既に発表し、ファン宛にメッセージを送信。「John Wick:Chapter 4 is coming‐May 21, 2021」。
まとめ
子供の時から人殺しだけを教えられた孤独な暗殺者は愛する妻の為に引退。
しかし、妻は急逝し、悲しみを分かち合えた唯一の相手は、彼女が残した犬のデイジーでした。男の復讐は、目の前でデイジーが殺された瞬間から始まります。
『ジョン・ウィック:パラベラム』は、強大な裏組織・主席連合が不文律を破った殺し屋を抹殺するために敷いた粛清包囲網を描いています。
【映画『ジョン・ウィック:パラベラム』の「あらすじネタバレ」記事はコチラ!】
カラヴァッジョ、ベートーベン、そしてヴィヴァルディを愛する元スタントパフォーマーがアクションは、クラシック・バレエのように美しいと信じてガンフー映画『ジョン・ウィック:パラベラム』を監督。
大スクリーンで観客に披露されるのは、舞台裏でバレエリーナの如く長期間肉体の限界に挑んだ演者達の集大成です。
ヴィヴァルディ「冬」のヴァイオリンが響くコンチネンタル・ホテルで多勢に無勢戦を制し、立ちはだかる忍者の首領とジョン・ウィックの刀対刀の大勝負は、準備と撮影に4週間掛けたトリック無しの一騎打ち。
本作は、芸術的アクションを楽しむ至極のエンターテイメント映画です。