2017年10月のU-NEXTで特集が組まれているダンテ・ラム監督特集。
『ビースト・ストーカー/証人』は、脚本、『密告・者』では原案を担当していますが、今回ご紹介する『コンシェンス 裏切りの炎』は脚本は別の人物により書かれたものになっています。
しかしそれでも、監督得意のへヴィーな人物の背景は存在し、かつ現在進行形で悲劇的展開へ爆進していく様を怒涛のアクション演出で見せてくれます。
CONTENTS
1.映画『コンシェンス 裏切りの炎』の作品情報
【公開】
2012年
【原題】
火龍
【監督】
ダンテ・ラム
【キャスト】
レオン・ライ、リッチー・レン、ビビアン・スー、リウ・カイチー、ミシェル・イェ、ワン・バオチャン
【作品概要】
香港を舞台としたポリティカルアクションノワールとなっており、妻を殺した犯人を追うマン警部と、別の殺人事件の現場で偶然会ったエリート刑事のケイが、協力して事件の容疑者を捕まえるストーリーかと思いきや・・・
過去作に比べド派手な銃火器アクションが繰り広げられるだけでなく、目を背けたくなるような悲劇的展開や過去が散りばめられ、これまでにないハードなサスペンスとなっています。
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2.映画『コンシェンス 裏切りの炎』のあらすじとネタバレ
香港の地下鉄で何者かが警官から銃を奪い、射殺して逃走する事件が発生。さらに別の場所ではホンと言う男性が、携帯を盗まれ必死に追いかけると、車に撥ねられます。
駆けつけたケイという男は、男の安否よりも先に、携帯のありかを聞きますが、ホンは息絶えます。
妻を通り魔によって失った刑事マンは常に仕事に没頭するだけでなく、空いている時間で妻を亡き者にした犯人を捜査し続けていました。
ある日、マンたちのチームに、娼婦が何者かに殺害されたと連絡が入り、現場へ向かいます。
現場には銃火器による灰が残っており、最近あった地下鉄での発砲事件と関連があるのではないかと疑います。
すると、現場にエリート刑事のケイがやってきて、マンに一緒にある捜査に協力して欲しいと依頼してきます。
それは部下が何者かによって奪われた携帯を捜索するというものでした。
携帯を盗んだ犯人の所在を突き止めると、そこには檻に監禁された少女が見つかり、犯人悪質さにマンは暴力的なまでに男を捕らえます。
捕らえた男は、ある少年窃盗団の一員だったことが判明し、彼らは大量の携帯を盗んでいました。
ケイの探す携帯もそこにありましたが、携帯のメモ画面には、数字の羅列が記載されていました。
少女を監禁していた男を尋問にかけますが、娼婦の事件に関する証拠はありませんでした。
しかし、現場の灰は拳銃によるものだと判明し、さらに地下鉄の銃乱射事件の犯人に目星もついたとマンに報告が入ります。
地下鉄で銃を奪われ警官が打たれた事件と関係?犯人の目星がついたと部下のメイから伝えられます。
とある駐車場では、ケイの部下であるサムが何者からか金を受け取っていました。
すると、別の男が香港の外から爆弾を製造できる火薬職人の男を、妻を人質にして呼ぶつもりだと連絡をしています。
地下鉄の事件の犯人が、あるレストランへ取引のため現れると連絡が入ると、マンのチームは現場で張り込みます。
そこへ管轄内の別チームがレストラン内へ入って現場を押さえようとしますが、警察の存在を内密に伝えられていた犯罪組織が、銃で反撃していきます。
マンとメイも応戦し、外で待機していた部下も応戦に向かいますが、相手の手榴弾によって吹き飛ばされます。
そこへケイとサムが現場へ駆けつけますが、犯人は既に逃走していました。
逃げた犯人を追うマンとケイ。しかし犯人は街中でも発砲し、ケイは撃たれて、犯人も姿をくらまします。
幸いケイは防弾チョッキを着ていたことから軽症で済みましたが、マンの部下は腕を失うほどの重症を追ってしまいました。
マンたちはレストランで捕らえた火薬職人を拷問にかけ、情報を聞き出そうとしますが、男は事件と関係ないの一点張りで、わかったことはクーという男に妻と一緒に連れてこられたことだけでした。
さらに火薬職人には犯罪歴はなく、妊娠している妻がいることをメイは報告書にあげるのを怠っていました。
ケイはマンの暗い過去が、手荒な捜査につながっているのか聞きますが、ケイ自身もに過去に上司に不正されたことで、出世街道を閉ざされてしまいました。
やっとの思いで自身の手で事件を解決し続けて、今の地位を手に入れたという過去がありました。
数日後、マンとは長い付き合いの部下・チョンが射撃場での記録を捏造したことが発覚し、マンはチョンが犯人ではないかと追求します。
しかしチョンは死んだ娼婦と遊んでいたことは認めますが、犯人と娼婦に会った後すれ違ったといいます。
マンとケイらは火薬職人を使って犯人の居場所を突き止めようとしますが、マンのチームは出動を禁じられ、チョンは捏造の件で拘束されてしまいます。
しかしマンは上の命令を無視して、火薬職人が連行される後をつけます。
すると、火薬職人は刑事たちの指示を無視して、犯人と連絡を取って逃走します。
単身後を追うマンは、合流した火薬職人と犯人で激しい銃撃戦が行われます。命からがら、マンは地下鉄の犯人の身柄を拘束します。
犯人は尋問の末、地下鉄での事件と娼婦の事件の犯人は自分だと自白します。
マンとケイたちは犯人を連行しようと車で移動していると、別の場所で仲間と妻を人質に取られた火薬職人が待機している警官を襲います。
さらに犯人は何者からか手錠の鍵を手渡されており、マンたちを道ずれに事故を起こして逃走します。
意識がなくなる寸前、犯人がいた座席に手錠の鍵があったのを見たマンは、ケイがない通者ではないかと疑います。
事故の巻き添えを食ったチョンは亡くなってしまいます。
ケイには美しい妻・エレンがいますが、実は彼女は裏社会と過去につながりがあり、彼女と結婚するために、身の丈に遭わない生活を送ったせいで借金を抱えてしまいます。
ケイは犯罪組織と手を組み、警察が取り締まって保管している大量の薬物で大金を得ようとしていたのです。
その薬物を搬送するトラックを犯人と火薬職人一味は襲います。
火薬職人は大量の手榴弾がついたベストを着用しており、それを脅しにトラックの中から薬物を強奪。
現場に駆けつけたマンは何とか一味の一人を射殺しますが、犯人が逃走すると、火薬職人のつけている手榴弾のピンが全て抜けます。
「俺は無実だ!」と叫ぶと、彼は跡形もなくなるほど肉片を撒き散らします。
その場を目の当たりにしたマンは失意に沈みますが、そこへ射殺した一味の一人は、過去にケイは捕まえたが釈放された男で、彼の部下サムは薬物取締課に所属していたことが判明します。
ケイはいよいよ目的の薬物を入手しますが、犯人が寝返って銃を乱射。負傷しながらも生き残ったのはケイだけでした。
証拠隠滅のためアジトを燃やすケイですが、そこには火薬職人の人質となっていた妻が拘束されていました。
ケイは彼女の拘束を解こうとしますが、そこに後をつけていたマンが現れます。
マンの火薬職人の妻を助けようとしますが、ケイは崩れた車の下敷きになってしまい、さらに突然、妻は産気づきます。
ケイは妻の相手をしているマンの隙をついて、何とか自力で脱出しますが、下敷きなった際に足を怪我してしまい、もう走ることは出来ません。
アジトにはメイも駆けつけ、妻は無事に出産をします。
マンは後を追いますが、待ち伏せしていたケイに狙撃。
しかし、ケイはまるでマンを自分に重ねるようなことを言うと、自決してしまうのでした。
事件後、マンは自分の妻が亡くなった経緯を思い出します。
当時、妊娠していた妻は、バスに乗った際スリをした犯人が逃げるのを止めますが、逆恨みした犯人は妻をお腹の子ごと切り殺してしまいます。
マンはケイの件が終わっても、犯人を追い続けますが、彼との出会いで何かが変わろうとしていました。
3.映画『コンシェンス 裏切りの炎』の感想と評価
『ビースト・ストーカー/証人』を見た後に、『コンシェンス 裏切りの炎』を見ると、前作がまるでファンタジー映画のように感じてしまうほどの展開となっていました。
たった2時間もない映画で主人公の部下が職務復帰不可能と、命を落とすという容赦ない展開に、何の罪もなかった男が跡形もなく肉片を撒き散らす。
それもこれもケイの目論見が呼んだ悲劇なのですが、彼には彼なりの信念があったゆえに、見ている側も行き場のない感情を抱えずには入れません。
悪人が明確になっていて、かつ事件も解決できたのに、全く達成感が得られないのはマンの妻を襲った事件が未解決というのもありますが、ケイという人物のもつ哀愁さ、そしてマンもまたケイと同じ素質を持っているという点が、この作品の怪しい魅力なのかもしれないと思いました。
まとめ
これまで見てきたダンテ・ラム作品の中でも、ストーリーが難解な分、銃火器のアクションや演出がかなり凄みを増しているので、それだけでも楽しむ要素は十分あります。
もちろん、芸の細かさも健在で、犯人が待ち伏せしてたら近所のおばちゃんに文句を言われてばれてしまったりもします。
マンが辻褄を合わせるために、赤ん坊がいないのにベビーベッドを組み立てるのですが、自分の不甲斐なさに、せっかく組み立てたベッドを破壊するシーンでさえ、ものすごく力が入っています。
まだダンテ・ラム作品を見ていない方が、いきなりこの作品を見ると監督の過去作を見るべきなのか、尻込みしてしまいそうなハードな内容ですが、まさかこの作品の数年後、熱いボクシング映画が撮影されるなど、まだ誰も予想させない内容でした・・・
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