様々な映画監督に影響を与えたマカロニウエスタンのカルト人気作品
様々な映画監督に影響を与え、未だカルト的人気が尽きないマカロニウエスタン全盛期の秀作、セルジオ・コルブッチによる
映画『続・荒野の用心棒』。
メインテーマはクエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざるもの』(2012)でオマージュされた「ジャンゴ〜」という耳に残るテーマとなっています。
今回は映画『続・荒野の用心棒』をについてご紹介させていただきます。
映画『続・荒野の用心棒』の作品情報
【公開】
1966年(イタリア・スペイン映画)
【原題】
Django
【監督】
セルジオ・コルブッチ
【キャスト】
フランコ・ネロ、ロレダナ・ヌシアック、エドゥアルド・ファヤルド、ホセ・ボダロ、アンジェル・アルバセス
【作品概要】
フランコ・ロゼッティ、ホセ・G・マエッソ、ピエロ・ヴィヴァエッリ3人共作の脚本。撮影はアンジェロ・ノビ、音楽はルイス・エンリケス・バカロフが担当。製作はマノロ・ボロニーニ。
邦題にセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』(1964)の続編として『続・荒野の用心棒』となっているが、続編ではなく全くの他作品。マカロニウエスタンが確立された記念碑的作品。
映画『続・荒野の用心棒』のあらすじとネタバレ
南北戦争後のメキシコ国境沿いの沼地、ジャンゴは棺桶を引きずり歩いていると、メキシコ革命軍のユーゴ将軍一派と元南軍のジャクソン少佐一派に追われているマリアを見かけます。
マリアを助けたジャンゴはジャクソン少佐によりゴーストタウンと化した小さな町の酒場に入ります。
メキシコ人殺しを楽しんでいるジャクソン少佐の元に、町に見知らぬ男が来ているという知らせが入りました。その知らせを聞いたジャクソン少佐とその部下は酒場へ向かいます。
ジャンゴが酒場で一息ついているとジャクソン少佐がやってきます。ジャクソン少佐の部下が酒場の売春婦に絡んだところをジャンゴは助けます。
ジャクソン少佐と部下がジャンゴに「元北軍か?」と喧嘩をふっかけますが、ジャンゴは「だからどうした。」と言って、部下5人を早撃ちで射殺。
そしてジャンゴはジャクソン少佐に「残り40人全ての部下を連れて戻ってこい。」と言って、ジャクソン少佐を逃します。
マリアの元へ毛布を借りにきたジャンゴはマリアと一夜を共にしました。
次の日、酒場の前で棺桶に腰をかけているジャンゴの元へジャクソン少佐率いる40人の部下がやってきます。
ジャンゴは棺桶からガトリングガンを取り出し、撃ちまくり、皆殺しに。
部下を掃討されたジャクソン少佐は馬に乗り逃亡します。逃亡の途中、ジャンゴの撃った銃弾があたりますが逃げ切ります。
ジャンゴは酒場の店主に「なんでジャクソン少佐を殺さなかったのか。」と尋ねられますが、「殺すにはまだ早い。」と言い返します。ジャンゴは以前、ジャクソン少佐によって恋人を殺されていました。
その後、酒場にユーゴ将軍率いるメキシコ革命軍がやってきます。ユーゴ将軍とジャンゴは顔見知りで、昔、ユーゴ将軍が捕まっていたところをジャンゴが助けたと部下たちに説明します。
ジャンゴはユーゴ将軍に金になる話があると言います。その内容は砦にメキシコ政府の金があり、その金をジャクソン少佐が運んでいるというものでした。そしてその金を強奪しようという計画です。
計画当日、隙をつき砦に潜入したジャンゴたちはメキシコ政府軍とジャクソン少佐の部下を一斉に皆殺しにし、金を奪い去ります。
金を奪い酒場へと帰ってきたジャンゴたちは、大喜びしお祭り騒ぎとなります。しかし、ジャンゴに分け前を渡す気がないユーゴ将軍の意を知り、ジャンゴは金を持ち逃げしようとします。
馬車に金を入れた棺桶を積み、逃げようとしたところにマリアがやってきます。そしてマリアはジャンゴに「一緒に連れて行って欲しい。」と伝え、共に逃げました。
ジャンゴとマリアが出会った底無し沼地帯でジャンゴは「一緒にいれば巻き添えをくらう。俺の支えになろうなんて言うな。」と言いマリアを逃がそうとします。
しかし馬車の衝撃で持っていた銃が暴発し、それに驚いた馬が暴れ、底無し沼へ金の入った棺桶が落ちていきます。
ジャンゴは慌てて棺桶を引き上げようと底無し沼に飛び込みますが、自力ではどうにもなりません。マリアの手を借り、底無し沼から脱出しようとします。
そこへユーゴ将軍がやってきます。将軍の撃った銃弾がマリアに当たり、マリアは倒れます。ジャンゴは底無し沼から引き上げられ、両手を粉砕され、解放されました。
ユーゴ将軍はジャンゴの元から帰る途中、ジャクソン少佐の襲撃に遭い、全滅します。ジャンゴは酒場へ負傷したマリアを抱え、帰ります。
映画『続・荒野の用心棒』の感想
参考映像:クエンティン・タランティーノ『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)
様々な作品に影響を与え、多くの監督、映画ファンに支持されているマカロニウエスタンの金字塔『続・荒野の用心棒』はマカロニウエスタンらしい作品となっています。
クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)や、三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)などは特に本作の影響を強く受け、本作のシーンや音楽がオマージュとして使われています。
また、ロバート・ロドリゲス監督の『デスペラード』(1995)に出てくるギターケースの仕込み銃などの設定も本作からの影響なのでしょう。
マカロニウエスタンとは、イタリアによる西部劇作品の通称でセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』(1964)によって確立されたジャンルですが、イタリアで初めて西部劇を撮った監督はセルジオ・コルブッチです。
セルジオ・コルブッチが手掛けた本作『Django』は邦題に『続・荒野の用心棒』という名が付けられていますが、『荒野の用心棒』とは全く関係がないというちょっと面白い構造があります。
イタリア製西部劇の独特な絵作りと設定
なぜ『続・荒野の用心棒』がマカロニウエスタンの金字塔と言われているかですが、『荒野の用心棒』と『続・荒野の用心棒』には決定的な違いがあります。
その違いは『荒野の用心棒』ではアメリカ西部劇を、『続・荒野の用心棒』ではイタリア独特の西部劇を根底に置き展開しているところです。
そのため『続・荒野の用心棒』では、機関銃を乱射し掃討するシーンや、血生臭い残酷描写、無意味な会話やシーンなどアメリカ西部劇とは異質なシーンが展開されていきます。極め付けに冒頭シーンとラストシーンの絵作りは強烈な印象を観客に与えます。
この超現実主義的物語の展開と強烈で異質な絵作りから『続・荒野の用心棒』はマカロニウエスタンらしいマカロニウエスタンと呼ばれているのです。
本作の設定も独特でユニークなものとなっています。ジャクソン少佐一派が赤頭巾を被り襲撃しているシーンでは、おそらく低予算のため白人系エキストラを用意できなかったという問題もあるでしょうが、ジャクソン少佐の差別主義的な考えから頭巾をかぶることでKKKを連想させるものとなっています。
そして、主人公ジャンゴはセリフで『棺桶にはジャンゴという男が入っている』と言います。その棺桶が底無し沼に沈むことで過去との決別を想起させる点もとてもユニークです。
総括すると、『続・荒野の用心棒』はとても血の騒ぐフランコ・ネロのカッコいいシーンと耳に残るメインテーマ、印象深い絵の数々というロマンあふれる作品となっています。
まとめ
セルジオ・コルブッチの『続・荒野の用心棒』は世界に大きな影響を与えた作品であり、とても魅力的な雰囲気を持つ映画です。
今でこそ「マカロニウエスタン」というジャンルはあまり見ませんが、過去の作品を観ることで逆に今日のものにも通じるテーマや考えを理解できます。
これを機にマカロニウエスタンの名作を鑑賞してみるのも面白いかもしれません。