トルコ軍の全面協力で描き、「仲間を決して見捨てない」と叫びたい映画『レッド・ホークス』。
実話をもとにNATO加盟国第2位の兵員規模を誇る軍事大国トルコの、今そこにある危機を描いた戦争アクション映画『レッド・ホークス』。
チャアタイ・トスンが監督を務めた、2018年製作のトルコの、武装テロ組織が支配する危険地帯の窮地を救ったトルコ軍特殊部隊『ホーク隊』の活躍を描いたアクション作品です。
絶体絶命の窮地に陥った『ホーク隊』を救ってくれた、味方の戦闘機のパイロットを救出するため、テロリストたちの巣窟へ足を踏み入れていく『ホーク隊』の姿とは、どんな内容だったのでしょうか。
トルコ軍全面協力のもとで撮影され、「守るために殺し続ける」トルコ軍特殊部隊『ホーク隊』をブラック・オズチヴィットやケレム・バーシンら豪華キャスト陣が演じています。
トルコの戦争アクション映画『レッド・ホークス』をご紹介いたします。
映画『レッド・ホークス』の作品情報
【公開】
2019年(トルコ映画)
【脚本】
ザフェル・クルンク
【監督】
チャアタイ・トスン
【キャスト】
ブラック・オズチヴィット、ケレム・バーシン、メリケ・ヤロヴァ、スレイマン・カラアメット、ザバハッティン・ヤクート、オズベク・カプラン、エムレ・アルマス、ジェム・クルトゥオウル、メフメト・ウスル、Onur Ayçelik
【作品概要】
ヒューマントラストシネマ渋谷の特集『WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019』内の『WEC ワールド・エクストリーム・シネマ2019』で上映された作品です。
ドラマシリーズ「オスマン帝国外~愛と欲望のハレム~」などのブラック・オズチヴィットが主演を務め、『シャークトパス SHARKTOPUS』などのケレム・バーシンら豪華キャスト陣が出演しています。
映画『レッド・ホークス』のあらすじとネタバレ
国民の男性皆兵の徴兵制度を敷き、中近東屈指の軍事大国であるトルコは、シリアやイラクなどの周辺国やイスラムなどの武装テロ組織との紛争が絶えませんでした。
トルコ軍はイスラムの武装テロ組織『ETG』が潜伏するシリア北部のアルバーブのアジトへ侵攻するため、空軍のピンポイント爆撃を仕掛けて進軍ルートを確保しようとしました。
アルパルスラン・キリリ大尉率いるトルコ軍特殊部隊『ホーク隊』は、空軍がアジトへのピンポイント爆撃に成功するように、シリアの危険な紛争地帯へ突入して敵と交戦し、拠点の位置を教える任務が与えられます。
これまで過酷の訓練を積んで今日この日を迎えた、ケラン・イルマス曹長・ナジム・ハリル・セリム・ジャンら12人のトルコ軍兵士を、アルパルスラン大尉はそれぞれ『ホーク4~6』の3つのチームに分かれて配置につき、一歩ずつ拠点へ前進していきました。
激しい銃撃戦が繰り広げられる中、前進しようとしたケランが足を負傷して後退し、それを知った敵は別の場所で待機していた殉教旅団を援軍に送り込みます。
また、ピンポイント爆撃をするタイミングを見計らっていた、オヌール・ケスキン大尉率いるトルコの空軍は、トルコ軍本部からの出撃命令を受け、2機の戦闘機が目標地点へ向かっていきました。
次々と増えていく大勢の敵相手に、ホーク隊は徐々に苦戦を強いられていき、部隊の指揮を執るアルパルスラン大尉が敵のミサイルによる爆風に吹き飛ばされ、意識を失ってしまうという絶体絶命の危機に陥ってしまうのです。
アルパルスラン大尉は意識を失っている間、トルコ軍の駐屯地へ来た妻子と出かけるために、車をとりに2人から離れた瞬間、何者かによる爆撃に巻き込まれた妻子が死んでしまった時のことを思い出します。
一瞬にして奪われた愛する家族に、アルパルスラン大尉が嘆き悲しんだところで、仲間の呼びかけによって意識を無事取り戻し、上空で待機するオヌール大尉に「観測手(接近する敵の排除などを受け持つ兵士)が被弾し、指示装置が破損した。
ホーク隊は目標地点まで50mのところまで到達したが、次から次へとくる敵の増援部隊によって、前進ができない。空軍の協力がなければ後退もできない」と無線で現状報告しました。
標的である敵の位置確認をするホーク隊が、絶体絶命の危機に陥っていると悟ったオヌール大尉は、「地上から25mの距離にいれば機体がもたないため、爆撃による援護が終わったらすぐに基地に帰投しろ」という上層部からの命令を無視し、危険を承知でホーク隊の救援に向かいます。
苦戦を強いられるホーク隊は、全員が携帯する銃の弾が切れ、予備の銃の弾も底を尽きてしまい、手持ちの武器はナイフだけになってしまいました。
それでもアルパルスラン大尉は、諦めかけていたホーク隊へ「弾が無ければナイフで戦え、ナイフが折れたら拳を使え。我々の手で1人でも多く敵を始末するのだ。忘れるな、俺たちが命をかけて戦うのは、国民が安全に暮らすためだ。国の為に命を捧げろ」と鼓舞します。
例えここから生還できずとも、最後まで国の為に戦うと誓ったホーク隊が覚悟を決め、身を潜めていた建物の陰から出ようとしたその瞬間、オヌール大尉が操縦する味方の戦闘機が危険を顧みず、地上から25m離れた距離から爆撃で敵を一掃したのです。
しかし、危険な賭けに出た戦闘機は損傷してコントロールがきかなくなってしまい、オヌール大尉は墜落する寸前に脱出しました。
オヌール大尉の命懸けの爆撃により、命を救われたホーク隊はこの隙に倒れた敵から武器を補充し、アルパルスラン大尉はまだ動ける5人のトルコ兵士を率いて、敵が乗っていた車を奪ってパイロットのオヌール大尉の救出へ向かいます。
オヌール大尉は地上にいる敵からの攻撃を受け、敵の巣窟に降り立ってしまい、ホーク隊はオヌール大尉と無線が繋がるか常に確かめつつ、緩衝地帯にある洞窟で一晩明かすことにしました。
その洞窟には12人のトルコ人市民がおり、ホーク隊は彼らを後ろに下がらせ守りながら、闇夜の中襲ってきた複数の敵との戦闘に備えます。
敵から「パイロットは捕まえた、仲間の命が惜しければ降伏しろ」と言われたことを合図に、互いに暗視スコープを使って銃を撃ち合い、ホーク隊は敵を全員返り討ちにしました。
アルパルスラン大尉はトルコ人市民を安全な地ジャラーブルスへ避難するよう促し、敵が持っていた無線を傍受したナジムから、「パラシュートが見つかってしまった。敵兵はパイロットを探すために大規模な捜索隊を周囲に展開した」と報告を受けます。
夜が明け、ホーク隊が周囲を警戒しながらオヌール大尉の救出へ動き出した頃、パラシュートを置いて一晩中山の岩陰に身を潜めていたオヌール大尉は、すぐ後ろまで敵の捜索隊が迫ってきたことに銃を手に身構えていました。
ホーク隊は道中、一般市民の親子が敵に狙撃されているのを目撃し、アルパルスラン大尉はナイフを持って、たった1人で親子を襲う敵を倒します。
アルバルスラン大尉やイルマス曹長には、助けた幼い娘と同い年ぐらいの自分の娘と重ねてみてしまい、より一層親子がジャラーブルスへ無事辿り着けることを祈りました。
再びオヌール大尉の救出に向かう道中、ナジムは何故自分たちが敵を狙撃できる位置にいたのに、単身で敵を殺して親子を救ったのかアルパルスラン大尉に問いかけると、彼は「あの少女は亡くなった娘のナズリムと同い年くらいだった。
敵は子供だろうが気にも留めず、容赦なく殺すクズどもだ。俺は死ぬまで許すことなく、娘を殺された怒りを抱いたまま生きていく」と強く訴えます。
一方、トルコ軍が2000人の兵士を率いて進軍してこようとしていることを受け、オヌール大尉の捜索を中断して『タクフィール(背教徒宣告した別のイスラム教徒)』と手を組み、世界を敵に回す覚悟でトルコ軍を1人残らず皆殺しにしようと企んでいました。
映画『レッド・ホークス』の感想と評価
戦争ものや軍隊VS武装テロ組織のアクション映画が好きなファンにとって、トルコ軍特殊部隊の『ホーク隊』と武装テロ組織『ETG』の激しい銃撃戦に狙撃合戦、迫撃砲による爆破シーンはどれも圧倒的な迫力がある場面ばかりなので、大興奮すること間違いなしの映像が盛り沢山です。
トルコ軍の「仲間を決して見捨てない」という精神による言葉は、思わず歓声をあげたくなるほど格好良かったので、本作を観た方は、「仲間を決して見捨てない」と真似して叫んでしまうことでしょう。
しかしその一方で、セヘルが語る紛争地域に住む住民たちの苦しみや悲しみは、想像以上に辛いものなのだなと実感し、彼女が叫ぶ言葉に自然と涙が溢れてきます。
そして、ジャンとセリムが最後の戦場で死んでしまうエピソードや、このままトルコへ帰還するかと思ったオヌール大尉が、戦友のアルバルスラン大尉の腕の中で息を引き取ったのは号泣必至の悲しい場面です。
さらに、後日談で描かれた「オヌール・ケスキン大尉記念小学校」のシーン、あれを観てさらに泣いてしまうファンが多いことでしょう。
まとめ
トルコ軍全面虚力で描かれた臨場感あふれるアクション場面は、戦争映画ファンの方であれば、心躍るほどの興奮があり、共に戦う兵士の仲間同士の絆の強さに感動を覚える戦争アクション映画となっています。
観ているこちらもドキドキハラハラが止まらないほど、一瞬も気を緩められない緊迫感、二度も訪れた絶体絶命の危機、それを乗り越え諦めずに戦ったトルコ兵士を演じきったブラック・オズチヴィットやケレム・バーシンたちの雄姿は、本当に格好良かったです。
しかも男ばかりの軍隊ものならではの、男同士の熱き友情も描かれていて、休息時と移動中の彼らの他愛もない会話はその絆の強さを実感する、大変微笑ましい描写でした。
愛国心にあふれ、とても仲間想いで正義感が強いトルコ軍、これほど素晴らしい軍隊が他にいるでしょうか。
トルコ兵士のような人が世界中に多くいたら、紛争や戦争もない、平和な世の中になっていくと感じました。
戦争アクション映画の中でも、愛国心を持った男同士の友情と、本物の兵器を使った戦いを観たいという人に、ぜひともオススメしたい作品となっています。