スパイアクション映画『アメリカン・アサシン』は、6月29日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー。
大切な人の掛けがえのない命を奪われたことで、テロリストへの復讐心に燃えた青年ミッチ。
その事実を掴んだCIAは、彼のスカウトに踏み切り、元ネイビー・シールズの鬼教官ハーリーの元で訓練を積ませます。
「ジャック・ライアン」シリーズや「ジェイソン・ボーン」シリーズなどの系譜を好むあなたに、新たなミッチ・ラップが、ついに始動!
CONTENTS
映画『アメリカン・アサシン』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ)
【原題】
American Assassin
【原作】
ヴィンス・フリン
【監督】
マイケル・クエスタ
【キャスト】
ディラン・オブライエン、マイケル・キートン、サナ・レイサン、ナビド・ネガーバン、スコット・アドキンス、テイラー・キッチュ
【作品概要】
原作は累計売上げ2500万部を超えた人気作で、作者ヴィンス・フリンが2010年に出版した『American Assassin』を映画化。
リアルさを求めたスパイ・アクションで、演出は映画『L.I.E.』やテレビドラマ「シックス・フィート・アンダー」シリーズなどのマイケル・クエスタ監督。
ミッチ役には『メイズ・ランナー』で初主演を果たしたディラン・オブライエン、鬼教官ハーリー役には名優マイケル・キートンが演じています。
映画『アメリカン・アサシン』のあらすじ
スペインのイビザ島でバカンスを楽しむアメリカ人青年ミッチ・ラップ。
彼は恋人のカトリーナと、今まさに申請で最も輝かしい瞬間を迎えています。
「君を誰よりも愛してる。結婚してくれ」日差しがまばゆいビーチの海でそう言って、愛しいカトリーナに婚約の指輪を差し出します。
カトリーナも突然のことに驚きを隠せず、感激の面持ちでミッチのプロポーズを受け入れます。
ミッチはプロポーズを記念した思い出に残るカクテルドリンクを頼みに、彼女の傍から離れ買い出しに出かけます。
ホテルのプールサイドにあったスタンドバーで、バーテンダーにドリンクをオーダーすると、突然、ビーチに紛れた漁師やバカンス客に変装した武装テロリストが浜辺にいた観光客に無差別乱射を開始。
地獄のありさまとかしたパニックの中、ミッチは必死でカトリーナを探し、彼女のもとに駆け寄ります。
しかし、非情にもカトリーナはミッチの目の前で絶命します。
最愛の人をテロ事件で亡くしたミッチは、テロリストに復讐に燃え、イスラム過激派へのコンタクトを模索していました。
テロリストに報復したい気持ちを抱くミッチはカトリーナを失ってからの生活は、アラビア語の習得し、格闘技や銃撃の鍛錬のみの生き方になりまりました。
そんなミッチを重要人物として監視してきたCIAの情報機関。なかでもテロ対策担当の女性幹部ケネディは、彼をCIAのスパイに必要な人物だとスカウトします。
ミッチはテロリストへの自分の抱く私怨ために、オファーを受け入れることにします。
やがて、バージニア州の人里離れた山奥の施設に向かったミッチは、極秘ミッション遂行チーム「オライオン」に加わり、元ネイビー・シールズで鬼教官スタン・ハーレーの指導下に入ります。
過激なトレーニング・キャンプに身を投じたミッチは、日々昼夜問わず、対テロ戦を想定した様々なミッションの訓練で、並外れた潜在能力を発揮していきます。
そんな矢先、ロシアの核施設から大量のプルトニウムが盗まれる事件が発生。
テロリストがそれを使用して核兵器に転用する事態を恐れたケネディは、ハーリーの極秘チームに出動を要請します。
ミッチを同行させるように命令が下ったハーリーだが、ミッチの実力を認めながらも、彼の精神面を問題視して「何があろうと個人的な感情は捨てろ」と厳しく言い聞かせます。
そして、トルコのイスタンブールに向かったハーリーとミッチだが…。
映画『アメリカン・アサシン』の感想と評価
通好みなリアルさを追求したアクション映画!
本作『アメリカン・アサシン』は、マイケル・クエスタ監督はじめ、スタッフ陣がリアルさを求めて制作した作品です。
安易に笑いをとったり派手な演技でごまかしたりしない、抑制の効いた王道的なアクション映画と言えるでしょう。
本国アメリカで本作が公開されたのは、2017年9月15日。全米3,154館で封切られ、公開初週末には制作サイドの期待通り1,484万ドルを叩き出し、週末興行収入ランキング初登場2位となりました。
その一方で、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesでは、「登場人物に生命を吹き込めるだけのスタイルとウィットがない」など、批評家支持率はそれほど高くはありません。
しかし、本当にその感想は正しいのだろうか?
もはやハリウッドが、まるで“歌舞伎のようにスタイルやウィット”という、見栄を切るような俳優たちの演技や内容の映画は、有りふれ過ぎているし小休止しても良いような気がします。
本作『アメリカン・アサシン』は、あらすじでも紹介したように、映画冒頭から“痛い”、“悲痛で過酷”なシークエンスで始まります。
無差別テロ事件に巻き込まれた結果、ミッチという人間の出した答えが私怨の復讐であり、CIAのスパイに加わりました。
それでもミッチ・ラップは、もとはどこにでもいるようなアメリカ人青年です。
サプライズで婚約者のプロポーズを海でおこない、それをスマホで撮影する様子は、愛しいカトリーナに鼻の下を伸ばし、鼻毛すら見せ、2人で異国でのバカンスを楽しむ緊張感のないアホ面そのものです。
それが被害者となって復讐心を抱いてからは、一変して隙のないヒリヒリとした表情と行動のみの男になってしまいます。
もちろん、復讐したいという気持ちは逆の意味では、人間味そのものと言えますから、マシーンのように冷たい人間にはなっていません。
そこは本作のひとつ目の前提のリアルさで、ヒーローの抱え込んでいる人間味のリアルさです。
また、この作品では、他のスパイアクション映画にあるように海外ロケの撮影を敢行していいますが、作品のビジュアル的な画作りの派手さを先行させた海外各地のロケという意味だけではありません。
一般的な青年ミッチのように、ロケ撮影の行われたスペイン、アメリカ、トルコ、イタリアなどのどこにいてもテロ事件が起こりうるという、時代のリアルさが根底にあります。
さらに、各地の撮影場所も観光名所のような象徴的な有名な建物や史跡をロケ地に使用していないところも、映画通なアクション好きには地味に楽しめるはずです。
マイケル・クエスタ監督は、本作に臨む際に魅了されたのは、「世界的な規模のストーリーであると同時に、個人を駆り立てる恐怖とその結果」と語り、コミックやファンタジーの要素を作品からことごとく排除したそうです。
マイケル・クエスタ監督は、こうも述べています。
「私はフリン(原作者)が小説で実践したように、最も強烈なアクション・シーンであっても物語をスタイリッシュにしすぎず、現実に根ざした描き方をしようと思ったんだ」
ヴィンス・フリンが1999年に開始したスパイ小説「ミッチ・ランプ」シリーズは、その内容の正確性に実際の諜報機関のメンバーからお墨付きをもらったほどの原作だそうです。
また、かつて歴代のアメリカ大統領であったビル・クリントンやジョージ・W・ブッシュなども原作に惹かれ愛読者になるほどですから、映画化した本作『アメリカン・アサシン』の作品の出来栄えに、“スタイルやウィット”を求める方が何かズレてはいないでしょうか。
映画的な演出「ゴースト」は見どころだ!
CIAのスパイとなったミッチ・ラップが戦う相手である、ロシア人から手に入れたプルトニウムを使用して核爆弾を作ったのは、“ゴースト”と呼ばれる人物です。
ストーリーの中で当初“ゴースト”の存在は知られずに、ミッチが向かう先々になぜか現れる存在でした。
また、「ゴースト(ghost)」を和訳すれば、「幽霊、亡霊、怨霊、魂、霊魂」。
つまり、“私怨”を抱くミッチ自身も“ゴースト”であり、それと戦う相手の“ゴースト”という存在も鏡合わせの関係になっています。
また、鬼教官スタン・ハーリーにとっても、戦う相手の“ゴースト”は鏡合わせの存在であり、登場人物たちの魂のズレである“後悔”こそが、ゴーストという「怨」なのでしょう。
しかし、なぜ、そのような鏡合わせ構造をアメリカ人同士の中に生み出して、観客に露呈させるのか。
それは「スマフォに残された幸せそうなカトリーナの映像(ゴースト的表現ですね)」、これに見られるような個人的に無力であっても「助けられなかった」という無念さが、アメリカ社会にスピリッツを揺さぶり加速させていくのでしょう。
このことは映画を超えて、実際の実社会で息を潜めるテロリストという、魂のズレが生んだ見えない影のゴーストのテロ集団そのものです。
本作はリアルさの中にも、それを超えたメタファー(隠喩)として、“無差別テロ”の核心の闇であるゴースト的な存在も描いています。
まとめ
本作『アメリカン・アサシン』で主人公の青年ミッチ・ラップ役を演じたのは、「メイズ・ランナー」シリーズで初主演に抜擢され、ハリウッド注目の若手俳優として、一躍知れ渡ったディラン・オブライエン。
ディランはこの作品の見どころをこのように語っています。
「多くのスパイ映画がありますが、彼らがベテランになる前にどうしてスパイになったのかを描いた作品は滅多にありません。20代の青年が凄まじい悲劇を経験し、自分を発見していく。それを目撃するのはとても面白いと思います」
また、マイケル監督は、「リアルなこの映画を通して、観客もミッチと一緒にいるような感覚に浸れる」と述べています。
スパイ映画でありながら、ある意味では“新種の巻き込まれ型”ともいう作品は、ごくごく一般的青年の成長物語でもあるのでしょう。
しかし、ミッチの成長といえども、まだまだ本作において今後の成長も気になり、ディラン・オブライエン&マイケル・キートンのバディ映画としても、個人的には続編が作られることを強く望みたい作品です!
スタイリッシュやウィットを排したリアルさを求めたスパイアクション映画『アメリカン・アサシン』は、6月29日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー。
正式に公開日が発表された際には改めて、本記事にて公開日をお知らせいたします。
ぜひ、劇場にて、ご覧くださいね!