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Entry 2019/07/31
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映画『トールマン』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。パスカル・ロジェ監督が放つどんでん返しの魅力とは|SF恐怖映画という名の観覧車60

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile060

鑑賞前と鑑賞後で作品に対するイメージが大きく異なる映画が存在します。

ホラー映画『ゴーストランドの惨劇』(2019)の日本公開が2019年8月9日(金)に控える鬼才パスカル・ロジェ監督が2012年に手掛けた映画『トールマン』(2012)はまさにそう言った作品であり、監督の異質さを感じることの出来る映画。

そんな訳で、今回のコラムでは『トールマン』のネタバレあらすじと共に、本作の「映画ジャンルとしての異質さ」の魅力をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『トールマン』の作品情報


(C)2012 Cold Rock Productions Inc., Cold Rock Productions BC Inc., Forecast Pictures S.A.S., Radar Films S.A.S.U., Societe Nouvelle de Distribution, M6 All rights reserved.

【日本公開】
2012年(アメリカ・カナダ・フランス合作映画)

【原題】
The Tall Man

【監督】
パスカル・ロジェ

【キャスト】
ジェシカ・ビール、ウィリアム・B・デイビス、スティーブン・マクハッティ、サマンサ・フェリス、ジョデル・フェルランド、、コリーン・ホイーラー、ガーウィン・サンフォード、ジャネット・ライト、イブ・ハーロウ、ジョン・マン、ティーチ・グラント、フェーン・ダウニー、ジェイコブ・デイビス

【作品概要】
理不尽すぎるスプラッターホラー『マーターズ』(2009)で知名度を得た映画監督パスカル・ロジェが2012年に制作したサスペンス映画。

主人公のジュリアを演じたのは『幻影師アイゼンハイム』(2008)や『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』(2019)などで知られるジェシカ・ビール。

映画『トールマン』のあらすじとネタバレ


(C)2012 Cold Rock Productions Inc., Cold Rock Productions BC Inc., Forecast Pictures S.A.S., Radar Films S.A.S.U., Societe Nouvelle de Distribution, M6 All rights reserved.

6年前に炭鉱が閉鎖され、失業者が溢れる町コールド・ロック。

町の診療所で看護師を務めるジュリアは、望まれぬ子の分娩に立ち会い心を痛めますが、町にはそれ以上に恐ろしい出来事が蔓延していました。

この町では多くの子どもが失踪しており、少し目を離した瞬間にいなくなることから「トールマン」の仕業だと恐れられています。

言語に障害を抱えたジェニーは、トールマンを見たことがあると、ジュリアに伝え、トールマンを描いた絵を見たジュリアは驚いた顔をしました。

家に帰り、息子のデヴィッドと過ごすジュリア。

亡き夫と比較される毎日の中で、デヴィッドと過ごす時間はジュリアにとって癒しの時間でした。

夜、酒を飲んだことでリビングで寝てしまったジュリアは、同居しているクリスティーンがキッチンで縛られ、デヴィッドがいないことに気がつきます。

玄関に人影を見かけたジュリアは走って人影を追い、人影が乗り込んだトラックに乗り込みデヴィッドを奪い返そうとしますが逆に襲われトラックの中に乗せられてしまいます。

拘束を解除し人影に襲いかかるジュリアによってトラックは横転。

しかし、人影は無事であり、そのまデヴィッドを連れ去って行きました。

ジュリアは道路に横たわっているところを刑事のドッドに保護され、町の人が集うダイナーで保護されます。

ダイナーの店主に着替えをもらったジュリアは、ダイナーの控え室やダイナーにいる人間の行動に違和感を覚え、窓から逃走。

そのことを確認した保安官を始めとしたダイナーにいた人間たちは銃を取り、森に逃げたと思われるジュリアを追い始めました。

保安官はパトカーに乗り、何かを報告しに廃墟へ向かいます。

パトカー内に隠れていたジュリアは保安官が居なくなった隙に廃墟の中に潜入し、子どもを育てる環境の整った廃墟内でデヴィッドを発見しますが、直後に何者かに襲われてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『トールマン』のネタバレ・結末の記載がございます。『トールマン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ジュリアを襲ったのは、町の女性ジョンソン。彼女によって椅子に縛られたジュリアは誘拐犯だと罵られます。

ジュリアが家で育てていたデヴィッドは実は、ジョンソンの失踪したとされていた息子であり、町の人間はジュリアが誘拐犯であると確信していたのでした。

攫った子どもの行方を問い詰めるジョンソンに対し「トールマンに渡した」と嘯くジュリアは自身で拘束を解き、ジョンソンを殴打し失神させ、そこに現れたジェニーと共に家へと逃走。

クリスティーンに頼んで眠らせたデヴィッドを、地下へと連れて行くジュリア。

家庭環境が劣悪なためにトールマンに自分を連れ去って欲しいジェニーはジュリアに協力していましたが、ジュリアにその気はありませんでした。

先に町を出たクリスティーン、そしてジェニーに嘘をつき帰らせたジュリアは1人家に残ります。

翌日、警察が家に到着し、ジュリアを確保しに来ました。

逃げたと思われていたクリスティーンはジュリアが逃げないことに絶望し、首を吊って自死。

ジュリアは確保され、家を包囲していた住民たちからの攻撃を浴びますが、警察が保護しながら連行します。

ドッドがジュリアの家を調べると、ジュリアの家の地下は炭鉱に繋がる森への通路となっており、子どもたちは発見されませんでした。

ジュリアを取り調べるドッドは、拉致した子どもたちの行方をジュリアに聞きます。

事件の概要を正直に答えるジュリアでしたが、子どもたちの行方に関しては頑なに語ろうとしません。

その後警察による懸命な捜査が続きますが、森や山など隠す場所の多いこの町では、少なく見積もってもジュリアが関与したとされる18人の子どもは1人も見つかりません。

警察の面会室でジョンソンに懇願されたジュリアは、炭鉱が閉鎖され終わりゆくコールド・ロックでは到底子どもたちはまともに育てられないと町の惨状を語り始めたものの、子どもたちの居場所については話しません。

ジョンソンに子どもたちの生死を聞かれたジュリアは、全員は守れなかったと伝えた後、子どもたちの場所がこの国の様々な場所にあると言い、ジョンソンは面会を終えました。

夜、母が男と揉め、その現状に耐えられなくなったジェニーは畑の中で男に拉致されます。

車に乗せられたジェニーはその男がトールマンだと悟ると彼に協力し、座席の下へと隠れます。

その車は町を出て、都市部へと向かっていました。

化粧をし綺麗な出で立ちとなったジェニーは「ベラ」と名前を変え、女性に引き取られました。

ジェニーの受け渡しをするトールマンは過去に死んだはずのジュリアの夫であり、お金を渡そうとする女性に対しそれは困ると突き返します。

トールマンはコールド・ロックでの誘拐は全て終わったと告げ、別の町へ移動し拉致を続けると語ります。

数ヶ月後、ジュリアは死刑を求刑されジェニーは家出として捜索されていました。

ジェニーは裕福な家庭で育てられ、言語障害も回復し、好きな絵を学ばせてもらえるなど何不自由なく生活しています。

トールマンに攫われた子どもはジュリアが親として接し洗脳する移行期間を行うため、それまでの暮らしを忘れがちでしたが、ジェニーは移行期間がなかったため過去の暮らしを鮮明に覚えています。

町で自身と同じように、裕福な家庭で新たな人生を過ごすデヴィッドを見かけたジェニー。

過去の暮らしや母親を捨てたことに後悔の残る彼女は、新しい自分の人生は自分が望んだことなのだと自身に言い聞かせるのでした。

映画『トールマン』の感想と評価


(C)2012 Cold Rock Productions Inc., Cold Rock Productions BC Inc., Forecast Pictures S.A.S., Radar Films S.A.S.U., Societe Nouvelle de Distribution, M6 All rights reserved.

導入部分やパッケージデザイン、監督のイメージなどから「トールマン」と言う殺人鬼や化物との対峙や恐怖が描かれる「ホラー」映画と思われがちな本作。

しかし、鑑賞後には意外にも「サスペンス」や「ヒューマンドラマ」と言ったジャンルが当てはまることが分かります。

失業者であふれる町コールド・ロックで起きる子どもの誘拐事件を中心に物語は大きく揺れ動き、真実が明らかになる度にそれまで物語の「土台」となっていた部分がいとも簡単にひっくり返るどんでん返しの連続。

鑑賞中には目まぐるしく変化する映画のジャンルに頭が混乱してしまいそうになりますが、丁寧に張られた伏線により物語の崩壊は一切感じさせない練り込まれた脚本に驚愕すること間違いなしの1作。

鑑賞前のイメージで敬遠している方にこそ鑑賞して欲しい、パスカル・ロジェの技巧が光る作品です。

まとめ

貧困や児童虐待をテーマに衝撃的なメッセージを放つ映画『トールマン』。

しかし、作中のとある人間の行動は決して肯定されてはおらず、鑑賞者に判断は委ねられています。

終わりゆく町で起きる誘拐事件の真相、そして「トールマン」とは何者なのか。

どんでん返し映画としても、サスペンス映画としても、メッセージ性の強い映画としても楽しめること間違いなしのオススメ作です。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…


(C)2017 – 5656 FILMS – INCIDENT PRODUCTIONS – MARS FILMS – LOGICAL PICTURES

いかがでしたか。

次回のprofile061では、2019年8月9日(金)より日本で公開される、フランスの鬼才パスカル・ロジェ監督が放つ最新ホラー映画『ゴーストランドの惨劇』の魅力をご紹介させていただきます。

8月7日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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