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Entry 2019/07/26
Update

【犯罪小説集】あらすじネタバレ。映画『楽園』として綾野剛×佐藤浩市らキャスト共演

  • Writer :
  • もりのちこ

動機とは、時に些細な出来事から生まれるもの。
誰の心にも潜むもの。

これまで素晴らしい数々の賞を受賞してきた人気小説家・吉田修一の短編集『犯罪小説集』が、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市など豪華キャストで実写映画『楽園』として、2019年10月18日に公開されます。

偏見、痴情、ギャンブル、過疎の閉鎖空間、豪奢な生活。人はなぜ、罪を犯すのか?実際に起きた事件を元に書かれた短編5本からなる『犯罪小説集』。

映画版は、その短編集の中から、「青田Y字路」「万屋善次郎」の2編を組み合わせて脚色されました。

原作『犯罪小説集』のあらすじとネタバレ映画『楽園』で注目したい点をまとめます。

小説『犯罪小説集』から「青田Y字路」のあらすじとネタバレ


(C)2019「楽園」製作委員会
稲が青々と育つ田んぼに、風が吹き美しい青田波が立つ。この田園風景の一本道を歩いて行くと、大きな一本杉のあるY字路がありました。

その側の中前神社では、夏越祭りが行なわれていました。祭りの賑わいの中、男の怒鳴り声が聞こえてきます。「誰の許可もらってここで商売してんだよ」。

偽ブランド品を販売する出店の女・中村洋子が、ヤクザの男に絡まれていました。

店を手伝っていた息子の豪士は助けを求め、主催グループのリーダー・藤木五郎の元へ駆け付けます。

騒動は収まったものの、五郎と妻・朝子は、この親子としょっちゅう会っているにも関わらず、豪士が口が利けたことに驚いていました。それほどまでに無関心だったのです。

豪士が来日したのは7歳の時でした。母の洋子という名は、日本で呼ばれている名前で、彼女は海外からこの地区の農家へ嫁いできました。

しかし結婚生活は2年も持ちませんでした。離婚後、母国に残していた息子・豪士を日本へ呼び寄せます。洋子はその後も何人かの日本人男性と付き合っては別れを繰り返していました。

豪士もまた仕事も続かず、今は母が男と暮らすために出ていった団地にひとりで住んでいました。

親子は偽のブランド品を売りながらの貧しい生活でしたが、仲睦まじく暮らしていました。

その夜、事件は突然起きました。五郎と朝子の元に、孫娘・愛華が小学校から戻らないと連絡が入ります。

日が暮れても戻らず、警察が動き出します。心配する地区の者たちは、Y字路に集合していました。

愛華と最後にいたのは一緒に下校していた同級生の紡でした。このY字路で別れたのが最後です。

「誰かいなかったか?声をかけられなかったか?」。大人に質問され、すっかり怯えています。

紡の父親は懸命に用水路を探します。側には、豪士の姿もありました。地区の者たちは、手分けして広範囲を探します。赤いランドセルが見つかるも、愛華は帰ることはありませんでした。

それから10年。事件は、愛華の家族はもちろん、多くの者の心に悲しみを残したままです。

変わらぬY字路の中前神社では、今年も夏越祭りが行われていました。

愛華と最後に分かれた同級生の紡は、高校生になった今も後悔していました。ボーイフレンドの広呂と、一本杉のあるY字路を通るたび「お前だけ幸せになっていいのか?」。と、声が聞こえてきます。

中村洋子と豪士の親子は相変わらず、偽ブランド品を売っていました。

その親子の姿をぼんやり眺める五郎。あの親子に会って30年、事件から10年経っても、自分たちはあの親子の姿をちゃんと見ようとしてこなかったことに気付きます。豪士は35歳になっていました。

祭りのあと、自宅に戻った五郎の元へ、新たな事件の知らせが入ります。それは10年前の愛華の事件と似ていました。

以下、小説『犯罪小説集』から「青田Y字路」ネタバレ・結末の記載がございます。小説『犯罪小説集』から「青田Y字路」をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

「小学生の娘が帰ってこねえらしいんだ」。町内会の会長が、言いにくそうに五郎の元へやってきました。横で妻の朝子が「ヒッ」と息を呑みます。

一瞬にして、五郎は10年前に戻っていました。座り込む朝子。五郎はかける言葉もありません。無言で服を着替えY字路に向かいます。

そこにはすでに地区の者たちが集まっていました。誰もが10年前の事件を思い起こしています。到着した五郎に皆が注目します。

その五郎の横で興奮したようにつぶやく紡の父親の姿がありました。「やっぱりあん時のあいつの動きはおかしかったんだ。わざと、俺にランドセルを発見させないように歩かせたんです」。父親の言う、あいつとは豪士のことでした。

入院中だった紡の父は、隣のベッドにいた豪士の義理の父親が、母親の洋子に向かって「お前の息子は人殺しだ」と言っているのを聞いていました。

疑いが確信へと変わり、人々は興奮したように豪士の家にむかいます。容赦なく踏み込む人々。豪士の姿はなく、部屋は荒れ放題でした。

その時外から「いたぞ」。と声が上がります。わけもわからず逃げる豪士。今まで食事をしていた油そばの店に逃げ込みます。

駆け付ける五郎。店にいた客と油まみれの店員が店の外へ転がるように出てきます。

店の中では豪士が、油をまき散らし、手にライターを持っていました。駆けつける母、洋子。なりふり構わず、五郎に掴みかかります。「豪士はどこ。あの子は何もしていない。信じて」。

豪士の耳にずっと離れなかった男たちの声が聞こえてきます。「愛華ちゃん、愛ちゃん!」。

豪士は「愛ちゃん!」と叫び、ライターを擦ります。

外では五郎もまた叫んでいました。「愛華!愛ちゃん」。そこへ、火だるまの豪士が飛び出してきました。

その時、Y字路では、いなくなった子供が帰ってきて、連れ去った犯人も捕まったという知らせが入っていました。

10年経っても消えない紡の後悔とは、あの時Y字路で別れた愛華に冷たく当たったことでした。シロツメクサの花冠をあげると言われた紡は、「いらない」と払落します。

ひとりになった愛華は、用水路の橋に止まっていた車の横を通ります。その車には偽ブランド商品が詰まっていました。

車の中にいた若い男が泣いているように感じた愛華は、「遊んでくれる人、誰もいないの?」と、花冠をかぶせます。

女の子のあとを追おうとした男の頭から、花冠が落ちてしまいました。

小説『犯罪小説集』から「万屋善次郎」のあらすじとネタバレ


(C)2019「楽園」製作委員会
善次郎は妻に先立たれ、父の介護のためにこの限界集落の村に戻ってきました。父を看取った後は、養蜂を営み、愛犬のレオと暮らしています。

大型犬のレオは気性が荒くよく吠えるものの、善五郎にはよく懐き言う事を聞く賢い犬でした。善次郎の事を気に掛ける黒塚の婆さんの所の小型犬チョコと仲良しです。

60代の善次郎は集落では若手の方で、草むしりや力仕事を任される存在でした。集落の飲み会の席で、善次郎の手掛ける養蜂が「村おこしに繋がる事業になるのでは?」と話題に上がります。

善次郎いわく、この辺りは高級なハチミツ作りに適した環境があるのだとか。

売店や喫茶店、お土産で販売したら全国からこの集落に人が集まるかもしれない。集落の者にはどこか夢のような話にしか聞こえません。

伊作はこの集落のリーダー的存在です。この限界集落の村おこしになるのなら、娘の久子も戻ってくるかもしれない。そんな期待もあり、善次郎の養蜂場の拡大に協力的です。

ただ、この村おこしの話を役場に持っていき予算を工面するのはリーダーである自分の仕事だと思っていました。

しかし、善次郎もまた面倒な手続きは自分がやるべきだと役場に話を持ち込みます。役場の予算案の割り振りのタイミングにも合い、話はあれやあれやと進みます。

面白くないのは伊作です。集落にとっては良いことなのに素直に喜べません。善次郎に「俺のこと、バカにしてるやろ」と後には引けない対応に出ます。

狭い集落ではこの出来事が大袈裟に伝わっていきます。いつのまにか集落を脅かす存在になってしまった善次郎。

重ねて、愛犬レオが村人のひとりを噛んでしまう事件が起こります。村八分どころか、村十分にされる善次郎。自ら家に閉じこもり、奇妙なマネキンを自宅の前に置くようになります。

不気味な家と化した善次郎の家。犬のレオは不衛生で体も弱り疱瘡がでる始末。家からは悪臭が立ち込めます。

2、3年が経つ頃、事件は起きました。

以下、小説『犯罪小説集』から「万屋善次郎」ネタバレ・結末の記載がございます。小説『犯罪小説集』から「万屋善次郎」をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
「現場は混乱を極めております。容疑者の行方は分かっていません」。各局の記者が集落に押し寄せていました。

雪が積もる中、遺体を乗せた救急車のサイレンが響き渡ります。殺されたのは、集落のリーダー黒塚伊作、その妻・志津、轟木昌五、多部良一、その妻・章子、北多さよ子の6名です。

容疑者は田中善次郎。山中に逃げたとされています。

記者から容疑者の話を取材される集落の住人たち。「昨日、伊作さんたちと善次郎の間で、またひと悶着あったみたいやもんね」。

話し合うつもりで善次郎の家を訪れた伊作たちは、門残払いをされ「この集落が嫌なら出て行け!ついでに病気持ちの犬も連れていけ!」と怒鳴り出したといいます。

小型トラックの荷台にはケージに2匹の犬が入れられていました。善次郎のところのレオと、黒塚家のところのチョコです。

レオは毛並みも悪く酷く汚れ、低く唸りながら涎を垂らしています。チョコも興奮から吠え続けています。

その時「容疑者、確保!重症の模様。腹部に自分で刺したと思われる傷あり」。記者の間に知らせが届きます。

担架で担がれて山を下りてくる容疑者。その周りにはいつしかケージから逃げた2匹の犬が駆け寄っていました。

救助隊のズボンに噛みつく大型犬。反射的に警官たちの警棒が振り下ろされます。倒れる大型犬の周りで、キャンキャンと小型犬が吠え続けます。

運ばれる容疑者。雪の上に倒れる大型犬が声を上げました。それは吠えたのでなく、間違いなく、何かを言おうとしていました。

映画『楽園』の作品情報


(C)2019「楽園」製作委員会

【日本公開】
2019年(日本映画)

【原作】
吉田修一『犯罪小説集』より

【監督】
瀬々敬久

【キャスト】
綾野剛、杉咲花、村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明、佐藤浩市

映画『楽園』ここに注目!


(C)2019「楽園」製作委員会
吉田修一の短編集『犯罪小説集』の中の「青田Y字路」「万屋善次郎」の2編を組み合わせて脚色された映画『楽園』

綾野剛、杉咲花、佐藤浩市など豪華キャストの共演もみどころのひとつですが、異なる事件の登場人物がどのように絡み合ってくるのかが気になる所です。

この2編に共通する点として、集落での疎外感、無関心、孤独といった、日常の人付き合いの中に犯罪が潜んでいる点が挙げられます。

原作の登場人物を元に、映画『楽園』の注目点を探ります。

豪士と紡の関係とは?


(C)2019「楽園」製作委員会

綾野剛演じる豪士と、杉咲花演じる紡は、原作では「青田Y字路」の登場人物です。

行方不明になった少女・愛華の同級生の紡は、事件から10年経っても、最後に愛華に冷たく接したことを後悔しています。

原作で紡は、犯罪者扱いされる豪士とは直接会うことはありません。父親を通して豪士の悪い噂を聞く程度です。むしろ紡の父親の疑いが加速し、豪士を追いやったと言っても過言ではありません。

そんな2人が映画ではどのような関係性で描かれるのか注目です。

久子の存在とは?

片岡礼子演じる久子という登場人物に注目です。原作では「万屋善次郎」の編で、集落のリーダー的存在の黒塚伊作、妻の志津の娘という設定です。

村おこしの案が出た時、伊作と志津は、夫に先立たれアパートでひとり暮らしを続ける娘が戻ってきてくれるかもしれないという思いがありました。

久子は、主に志津の思いの中だけにしか登場しておらず、重要な役には感じられません。

しかし、映画では実力派女優、片岡礼子が久子を演じるにあたり、どのようなキーパーソンとして登場するのか楽しみです。

田中善次郎と紀子の関係とは?

根岸季衣川演じる田中紀子は、善次郎の亡くなった妻です。善次郎が愛犬レオを可愛がる理由が、妻・紀子を通して語られます。

幸せだった頃の思い出を胸に、真面目に暮らす善次郎。万屋=なんでも屋として集落で頼りにされながらも、些細な誤解から孤立していく姿は、もの悲しさがあります。

善次郎役の佐藤浩市と妻・紀子役の根岸季衣の夫婦役にも注目です。

まとめ


(C)2019「楽園」製作委員会
人気小説家・吉田修一の短編集『犯罪小説集』を、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市など豪華キャストで実写映画化した『楽園』。原作のあらすじ、映画の注目点をまとめました。

実際に起きた事件を元に書かれた短編5本からなる『犯罪小説集』は、人は些細なことが原因で犯罪を犯す生き物なのだという恐怖に満ちています。

犯罪は身近にあるという恐怖感。人はなぜ、罪を犯すのか?そこに理由はないのかもしれません。

誰もが願う「楽園」への羨望が、自分の中に眠る犯罪の魔物を目覚めさせてしまうのかもしれません。

集落で存在感なく生きてきた男の犯罪を描いた「青田Y路地」。村おこしが原因で孤立化した男の犯罪を描いた「万屋善次郎」。

2編の物語が映画化により、どのように組み合わされるのか注目です。

『犯罪小説集』を映画化した『楽園』は2019年10月18日より公開です。


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