映画『永遠に僕のもの』は2019年8月16日(日)より、渋谷シネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!
アルゼンチン犯罪史上最も有名な、実在の凶悪犯罪者。
わずか20歳で終身刑を言い渡され、その存在によって世界を震撼させた彼は、「ブラック・エンジェル」「死の天使」と称される程の美少年でもありました。
そして、彼の美と暴力に彩られた鮮烈な青春を基に制作されたのが、青春クライム映画『永遠に僕のもの』です。
第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門への正式出品、第91回アカデミー賞外国語映画賞のアルゼンチン代表作品への選出を果たした本作。
今後もその評価が高まり続けるであろう注目のアルゼンチン映画です。
映画『永遠に僕のもの』の作品情報
【公開】
2018年(アルゼンチン・スペイン合作映画)
【原題】
El Angel
【監督】
ルイス・オルテガ
【脚本】
ルイス・オルテガ、ルドルフォ・バラシオス、セルヒオ・オルギン
【キャスト】
ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、ルイス・ニェッコ、ピーター・ランサーニ、セシリア・ロス
【作品概要】
実在の殺人犯の記録を基に作られた物語で、2018年のアルゼンチンナンバーワンヒット作品。
『トーク・トゥ・ハー』で知られるアルゼンチン映画界の巨匠ペドロ・アルモドバルが製作に参加し、カンヌ映画祭「ある視点」部門にも出品されています。
また、凶悪犯罪を繰り返す奔放な美少年カルリートスを演じたのは、本作が初の本格的な俳優への挑戦となったロレンソ・フェロです。
映画『永遠に僕のもの』のあらすじとネタバレ
17歳の少年カルリートスは「みんなどうかしている、もっと自由に生きられるのに」という思いの元、窃盗や強盗を重ねます。
主な獲物は貴金属や絵画。車やバイクを盗み、乗り捨てることもあります。そうして得たものは自分で使ったり、売ったり、ガールフレンドにプレゼントしたり、デートに使ったりと自由に振る舞います。
両親からは多少疑われることもありましたが、そこは何事もないように振る舞って軽くやり過ごします。
やがて新しい学校に入ったカルリートスは、そこでラモンという青年に出会います。一目見て彼の存在に惚れ込んだカルリートスはわざと喧嘩を仕掛けて、距離を詰め、友人となります。
ラモンは家族にカルリートスを紹介。ラモンの父ホセは、前科もある犯罪者でした。
カルリートスが今まで一度も捕まったことがない程の窃盗の才能を持っていることを知られると、ホセとラモン、そしてカルリートスは三人で窃盗団を組むことになりました。
最初の標的は銃砲店。大胆過ぎるカルリートスの振る舞いに、ラモンたちは感心すると同時に危うさも感じるようになりました。
その後、宝石店に忍び込んだカルリートスとラモン。ラモンの慌てるそぶりを見て、カルリートスは「楽しまなきゃ」と言います。
ある時、盗んだ絵画の処理のためフェデリカと知り合います。彼はゲイで、ラモンと特別な関係になっていきます。しかしそのことが、カルリートスを苛立たせます。
表の世界にも顔がきくフェデリカの後推しもあり、足を洗おうかと言い出すラモンに、カルリートスは彼に見捨てられるのではないかという不安と苛立ちを抱くようになります。
ある時、検問で捕まった二人。ラモンは身分証を持っていなかったことで警察に拘留されてしまいます。カルリートスは署長をうまく丸め込んで身分証を取りに帰ることに成功しますが、警察署の前まできて、罠だと感じたカルリートスは直前で引き返します。
後々、釈放されたラモンに事情を話し、一応の納得を得ることができましたが、ラモンはミゲルという新し仲間を見つけ、さらにフェデリカのおかげで釈放されたということもあって、カルリートスとの間に距離が生まれてしまいます。
映画『永遠に僕のもの』の感想と評価
主人公カルリートスのモデルであるカルロス・ロブレド・プッチ(プフ)は1971年から72年の一年程の間に11人を殺害、さらに多くの強盗・窃盗を犯した人物です。最終的には終身刑を言い渡され、いまだに収監中です。
今では信じがたいことですが、当時の犯罪学には犯罪学の父と呼ばれたロンブローゾという学者が唱えた、その人物の外見などの生まれつき持っているものが犯罪に直結するという考えがあり、それが一般的だった時代でした。
そんな中で、誰もが認める美少年にして凶悪な犯罪者であるカルロス・ロブレド・ブッチの登場は世界に衝撃を与えました。
このカルロス・ロブレド・ブッチことカルリートスを演じたのは、本作が本格的な演技初挑戦となるロレンソ・フェロです。
たった一人で当時の犯罪学の常識を覆す程の存在感を示さなくてはいけないというのは役者にとってかなりのプレッシャーであったと思いますが、ロレンソ・フェロはそのようなプレッシャーを感じさせることなく、飄々、軽やか、そして美しい犯罪者を演じています。
端々の部分ではまだつたないところもありますが、若干20歳ということもあって、今後の成長が楽しみです。
すでに母国ではテレビシリーズや新作の出演もしているとのことですが、この映画自体がペドロ・アルモドバルのプロデュースによってカンヌに出品されるという対外的にとても強い“引き”があることから、同じスペイン語圏から国際的な映画スターになったアントニオ・バンデラスやハビエル・バルデム、ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナなどのように英語圏の作品にも登場してくるのではと楽しみです。
まとめ
この『永遠に僕のもの』は、いわゆるピカレスクロマン物といっていいでしょう。
一貫して犯罪者である主人公・カルリートスの視点から物語が語られ、捜査関係者や家族、友人、果ては共犯者まで脇役でしかありません。彼が、いかに日常的に犯罪を犯していったかよくわかります。
また、監督は否定していますが、主人公のカルリートスはいわばサイコパス=反社会性パーソナリティ障害の人間であると思われます。
本人の中にはそれなりにしっかりしたロジックがあったりもしますが、常識的な視点から見れば到底理解しがたい動機や感情で様々な犯行を行います。そして、一種の危ういカリスマとも言えるキャラクターで物語全体を牽引していきます。
ただ、時折妙に人間臭い部分を見せたりする描写については賛否が分かれるかもしれません。
今後何かにつけて犯罪映画史に名前が挙がるようになるであろう、美少年犯罪者カルリートスですが、この人間臭さがあることで例えば『ダークナイト』のジョーカーのような突き抜けた異物感が薄まっています。
本当になんだかわからない得体のしれないモノとしてカルリートスを描くのであれば、もっと無軌道なキャラクター造形をした方が良かったのかもしれません。この点を考慮すれば、監督の「カルリートスはサイコパスではない」という考えが伺い見ることができます。
この映画は極端な犯罪者をどう描くかで見え方、捉え方、感情移入の仕方が多様に変化することを改めて感じさせてくれる作品です。
映画『永遠に僕のもの』は2019年8月16日(日)より、渋谷シネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!