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Entry 2019/04/19
Update

映画『空母いぶき』感想評価と解説レビュー。豪華なキャストで“戦争と平和”を真正面から描く

  • Writer :
  • 河合のび

2019年5月24日(金)に公開される映画『空母いぶき』

「空母」が存在する近未来の日本を舞台に、決して絵空事などではない危機を克明に描いた映画『空母いぶき』。

『ホワイトアウト』『沈まぬ太陽』など多くの大作映画を手がけていきた若松節朗が監督を務めます。

また、日本屈指の人気実力派俳優である西島秀俊佐々木蔵之介の共演によって、すでに話題持ち切りとなっている作品です。

映画『空母いぶき』の作品情報


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

【公開】
2019年(日本映画)

【原作・監修】
かわぐちかいじ

【監督】
若松節朗

【監督】
伊藤和典、長谷川康夫

【監督】
岩代太郎

【キャスト】
西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、高嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉、中井貴一、村上淳、吉田栄作、工藤俊作、金井勇太、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市

【作品概要】
「空母」が存在する近未来の日本を舞台に、前代未聞の危機に立ち向かう海上自衛隊員らや政府要人、そして日本で暮らす人々の姿を描きます。

漫画『沈黙の艦隊』『ジパング』の作者で知られ、本作の監修も務めている人気漫画家かわぐちかいじの同名漫画を実写映画化しました。

監督は『ホワイトアウト』(2000)『沈まぬ太陽』(2009)『柘榴坂の仇討』(2014)で知られる若松節朗。

キャストには、人気実力派俳優である西島秀俊と佐々木蔵之介をはじめ、本田翼、高嶋政宏、玉木宏、市原隼人、中井貴一、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市など、豪華キャスト陣が勢揃いしました。

映画『空母いぶき』のあらすじ


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

20XX年、日本最南端沖にて、日本領土であったとある島が国籍不明の武装勢力によって占領され、そこに居合わせていた海上保安官らもその勢力によって身柄を拘束されてしまいました。

緊張が走る中、日本政府は小笠原諸島沖で訓練航海の最中だった第5護衛艦隊群を「海上警備行動」という形で出動させます。

その第5艦隊には、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦にして、竣工前から「これは『戦略的空母』である」「『専守防衛』に反している」と国会内にて論争が繰り返されていた護衛艦《いぶき》が旗艦として配備されていました。

現場海域を向かわんとする第5艦隊。しかし艦隊の乗員たちは、そして日本は、戦後一度も体験したことのなかった24時間を過ごすことになります。

緊迫する艦内と官邸でのキャストの名演


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

映画『空母いぶき』において最も目を惹かれるのが、防衛の前線、外交の前線に立ち、日本にとって前代未聞の危機に立ち向かう者たちの姿でしょう。

《いぶき》をはじめとする護衛艦内・戦闘機内・潜水艦内という密室を襲う、「日本の危機」「侵略の危機」がもたらす緊迫した雰囲気。

それはある種の密室劇の舞台そのものであり、キャスト陣の演技力を試されるシチュエーションでもあります。

また、外交の前線であり、「外交交渉」という名の心理戦・政治的工作を繰り広げる官邸もまた、密室劇の舞台と化すことは疑いようがありません。

しかしながら、《いぶき》艦長・秋津龍太一佐役の西島秀俊と副長・新波歳也役の佐々木蔵之介を筆頭に、紛う事なき実力を持つ豪華キャスト陣は、そのハードルを軽々と乗り越え、「日本に起こり得る危機」という空想によって限りなく現実へと肉薄しようとする映画『空母いぶき』を形作っているのです。

“戦闘”と“戦争”の狭間で


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

そして、キャスト陣が全力をもってその身を投じる「緊迫した雰囲気」を生み出す原動力であるのが、日本という国家、そしてそれを守ろうとする自衛隊が孕む“戦闘”と“戦争”の問題です。

自衛隊の最も優先される原則は「専守防衛」であり、今日までその原則が掲げられ、厳守を努めてきたからこそ、日本の国民は長いあいだ“戦後”という時代を過ごすことができたのです。

しかし、いざ自国の領土に侵略の危機が訪れた時、長年守られてきた「専守防衛」の原則は人々の、少なくとも前線に立つ人々の足枷となることは否定できません。

何が起これば防衛要件を満たされるのか、要件が満たされたとしてもどこまでが「自衛行為」にあたるのか……何よりも、そのようにして防衛のための“戦闘”が開始され展開された「先」、すなわち“戦争”との境界線はどこにあるのかという疑問が、次々と浮かび上がり、前線に立つ人々の思考を絡めとってゆくのです。

“戦闘”と“戦争”の境界線。この問題は、どのような思想の持ち主であったとしても、日本の国民である人間、或いは日本という国の中で暮らす人間であれば、どうしても避けることのできないものです。

そして、正解が存在しないその問題に対する答えを、本作劇中に登場する前線に立つ人々は「自分にとって、或いは自分たちにとっての」という条件付きではあるものの、観客たちに提示するのです。

“戦後”と“平和”を生きる人々の眼前に立つ“戦争”


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

そして、観客たちに「ある問題に対する答え」を提示するのは、前線に立つ人々だけではありません。

本作では映画オリジナルの展開として、ネットニュース記者の記者(本田翼)やコンビニの店長(中井貴一)と店員(深川麻衣)など、本来前線に立つことはない人々の姿も描かれています。

しかし、彼女らやその周辺を取り巻く人々、つまり長きに渡って“平和”を生きてきた人々の眼前に、突如として「侵略の危機」という“戦争”の姿が現れます。

メディアを通して伝えられる疑いようのないその輪郭に、人々は瞬く間に混乱に陥ります。

そして、そのような混乱に陥ることで初めて、人々が口に出すことも考えることも忘れつつあった「“平和”とは何か」という疑問が浮かび上がってくるのです。

その疑問と直面した時、人々はどのような答え、或いは行動を提示するのか。「本来前線に立つことのない人々」を描こうとした本作だからこそ辿り着くことのできたその瞬間を、見逃すことはできません。

まとめ


(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ

映画オリジナルの展開も加えることで、前線に立つ人々とそうでない人々をともに描き、「“戦争”とは何か」「“平和”とは何か」という疑問に真っ正面から向き合おうとした映画『空母いぶき』。

日本だからこそ起こり得る危機を二つの視点から描く、骨太超大作です。

映画『空母いぶき』は2019年5月24日(金)より全国ロードショー!




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