連載コラム「邦画特撮大全」第40章
平成仮面ライダー第4弾である『仮面ライダー剣』(2004~2005)が今年放送開始から15周年をむかえました。
そのため椿隆之、森本亮治、梶原ひかりといったメインキャストが現在放送中の『仮面ライダージオウ』にゲスト出演したほか、大人の変身ベルト“COMPLETE SEKECTION MODIFICATION”の第22弾として仮面ライダー剣の変身ベルト“ブレイバックル”の発売も決定しています。
今回の邦画特撮大全は『仮面ライダー剣』を特集します。
CONTENTS
『仮面ライダー剣』の作品概要
【放送期間】
2004年1月25日~2005年1月23日
【原作】
石ノ森章太郎
【脚本】
今井詔二、會川昇、井上敏樹、宮下隼一、今井想吉
【監督】
石田秀範、長石多可男、諸田敏、鈴村展丈、佐藤健光、息邦夫
【キャスト】
椿隆之、森本亮治、天野浩成、北条隆博、竹財輝之助、江川有未、梶原ひかり、本宮泰風、相澤一成、春田純一、森次晃嗣、山口香緒里、山路和弘
『仮面ライダー剣』のあらすじ
1万年前、53種類の不死生命体“アンデッド”たちが己の種の繁栄を賭けて戦い合っていました。
アンデッドは不死身であるため、“ラウズカード”と呼ばれる専用のカードに封印する以外に倒す方法はありません。
そして現代―― 何者かによってアンデッドの封印が解かれてしまいました。人類基盤史研究所・BOARDはアンデッドを封印するため、特殊強化服“ライダーシステム”を開発します。
BOARDで働く橘朔也は仮面ライダーギャレンに、剣崎一真は仮面ライダーブレイドに変身しアンデッドと戦っていました。
しかし、アンデッドの襲撃によってBOARDは壊滅。生き残った剣崎と研究員・広瀬栞はノンフィクションライター・白井虎太郎の元に身を寄せ仮面ライダーとして活動することになります。
そしてBOARDに所属していない相川始/仮面ライダーカリス、高校生の上条睦月/仮面ライダーレンゲルも現れます。4人の仮面ライダーはアンデッドを封印して世界を守るため戦い続けるのです。
『仮面ライダー剣』のスタッフたち
『仮面ライダーアギト』(2001~2002)から『仮面ライダー555』(2003~2004)まで3作連続でプロデューサーを担当していた白倉伸一郎、同じく3作連続でメイン監督を務めた田﨑竜太が平成ライダーシリーズを外れることになりました。
そのため本作のプロデューサーを日笠淳、メイン監督を石田秀範が務めています。日笠は『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999~2000)から『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003~2004)までスーパー戦隊シリーズのプロデューサーを5作連続で務めていま
した。
日笠がプロデュースした仮面ライダーシリーズ作品は本作が初にして唯一です。
石田秀範監督は『仮面ライダークウガ』(2000~2001)以来にパイロット(1話・2話)の監督を担当しました。
劇場版『仮面ライダー剣 MISSING ACE』(2004)の監督も務めた他、テレビシリーズ前期のオープニング映像も監督しています。
このオープニング映像はステージ上に出演者や仮面ライダーを並べ、スポットライトやスモークを多用したミュージックビデオのような斬新なものになっています。
メインライターを務めたのが『はみだし刑事情熱系』や『法医学教室の事件ファイル』などで知られる今井詔二です。今井が特撮ドラマの脚本を執筆するのは本作が初です。
そのため各話脚本には宮下隼一、井上敏樹ら特撮ドラマの執筆経験がある脚本家が起用されています。
今井がシリーズ前半で降板したため、後半のメインライターをテレビアニメ『機動戦艦ナデシコ』や『鋼の錬金術師』(2003)で知られる會川昇が務めています。
クリーチャーデザインを務めたのがシリーズ初参加となる韮沢靖(1963~2016)です。レザーとビスを取り入れたアンデッドのデザインは独創的で、さらに『仮面ライダー』に登場するショッカー怪人へのオマージュも取り入れられています。
アンデッドのデザインは高く評価され、テレビシリーズ終了後に画集も販売されました。韮沢はその後『仮面ライダーカブト』(2006~2007)『仮面ライダー電王』(2007~2008)にも参加していました。
トランプと昆虫のダブルモチーフ
『仮面ライダー剣』に登場する仮面ライダーたちは“トランプ”と“昆虫”の2つの要素をモチーフにしています。
仮面ライダー剣はヘラクレスオオカブトとスペード、仮面ライダーギャレンはクワガタとダイヤ、仮面ライダーカリスはカマキリとハート、仮面ライダーレンゲルはクモとクラブがそれぞれモチーフとなっています。平成ライダーでは数少ない昆虫モチーフの仮面ライダーです。
本作に登場する仮面ライダーたちは、トランプをモチーフとした“ラウズカード”というアイテムを使って変身・攻撃します。
変身・攻撃にカードを用いる点は前々作『仮面ライダー龍騎』(2002~2003)と共通しています。
しかし『龍騎』に登場するアドベントカードはカード1枚につき効果が1つですが、『剣』のラウズカードはポーカーの役のようにカードを組み合わせることでさまざまな技を生み出すことが出来ます。
敵怪人であるアンデッドたちにもトランプの要素が組み込まれています。ラウズカードはトランプ同様にスペード・ハート・クラブ・ダイヤのソートに別れています。
またアンデッドの中には“上級アンデッド”という強敵が存在し、下から順にJ(ジャック)Q(クイーン)K(キング)という風にカテゴリー分けされています。
怪人側のドラマの強化と斬新な設定・演出
この項では『仮面ライダー剣』の特徴を紹介しましょう。まず“怪人側のドラマの強化”という点です。
相川始/仮面ライダーカリスの正体は53番目のアンデッド・ジョーカーです。しかし彼は怪人でありながら人間の心を持ち、居候先の喫茶店ハカランダで生活しています。
本作は彼の葛藤を丹念に描いています。人間の心を持った怪人の描写は前作『仮面ライダー555』から発展させたものでしょう。
また、“職業としての仮面ライダー”という設定が導入されました。本作の主人公たちは基本的に雇われて仮面ライダーという仕事をしているのです。そのため仕事先から給与も振り込まれます。
そこで劇中にも“仮面ライダー”という呼称が頻繁に登場します。これまでの平成仮面ライダーシリーズで、劇中に“仮面ライダー”という呼称が登場するのは『仮面ライダー龍騎』のみでした。
本作の“仮面ライダー”は特殊強化服という設定です。そのため戦闘の際、マスクが割れて変身者の顔が覗くという演出がありました。いわゆる“マスク割れ”はスーパー戦隊シリーズではよく見られる演出です。
しかし仮面ライダーシリーズでは『仮面ライダーアギト』(2001)の仮面ライダーG3で前例があるものの、大々的に取り入れられたのは本作が
初です。
まとめ
平成仮面ライダー第5弾となった『仮面ライダー剣』。
仮面ライダー同士のバトルや散りばめられた謎などこれまでのシリーズの要素を受け継ぎつつ、新たなスタッフによって斬新な演出や設定も盛り込まれた意欲的な作品となっています。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は、『仮面ライダードライブ』(2014〜15)を特集します。お楽しみに。