“彼女が史上最も有名な大統領を〈伝説〉にした…”
世紀のファーストレディの知られざる物語『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ、チリ、フランス合作)
【原題】
Jackie
【監督】
パブロ・ラライン
【キャスト】
ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、ビリー・クラダップ、ジョン・ハート、リチャード・E・グラント、キャスパー・フィリップソン、マックス・カセラ、べス・グラント、ジュリー・ジャッド、ブロディワインバーグ、エイデン・ワインバーグ、サニー・ペラント
【作品概要】
『NO』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたチリ出身のパブロ・ララインが監督を務め、製作にダーレン・アロノフスキー、撮影監督にステファーヌ・フォンテーヌを迎え、“史上最も有名なファーストレディ”ジャクリーン・ケネディの姿を描いた伝記ドラマ映画。
ジャッキー役にナタリー・ポートマン、ボビー・ケネディ役にピーター・サースガード、他にもグレタ・ガーウィグ、ジョン・ハート、ビリー・クラダップ、リチャード・E・グラントら豪華俳優陣が名を連ねている。
第73回ベネチア国際映画祭(2016年)最優秀脚本賞(ノア・オッペンハイム)受賞作品。
第89回アカデミー賞(2017年)主演女優賞(ナタリー・ポートマン)、作曲賞(ミカ・レビ)、 衣装デザイン賞(マデリーン・フォンテーヌ)ノミネート。
第74回ゴールデングローブ賞(2017年)ドラマ部門最優秀主演女優賞(ナタリー・ポートマン)ノミネート。
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』のキャスト一覧
ジャクリーン・”ジャッキー”・ケネディ / ナタリー・ポートマン
1981年生まれ、イスラエル出身の女優ナタリー・ポートマンと聞けば、みなさんの頭の中に思い起こされるのはリュック・ベッソン監督の『レオン』(1994)のマチルダ役でしょう。
『レオン』への出演前からすでにモデルや舞台で活動していたナタリー・ポートマンは、2000人以上もの候補者の中から見事にマチルダ役を掴み取り、ハリウッド・リポーター誌が後援するヤング・スター賞のドラマ部門最優秀女優賞を受賞するなど、国際的に一気に知名度を上げました。
その後も『ビューティフル・ガールズ』(1996)、ウディ・アレン監督のミュージカル映画『世界中がアイ・ラブ・ユー』(1996)などに出演したナタリー・ポートマン。
1999年には『スター・ウォーズ』の新たな三部作で惑星ナブーの女王パメド・アミダラとして出演したり、同年の『地上より何処かで』ではゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされるなど着実にステップアップを重ねます。
マイク・ニコルズ監督の『クローサー』(2004)では見事ゴールデングローブ賞助演女優賞を獲得、その後も活躍を続けますが、彼女がさらなる高みへと登りつめたのは本作でも再びタッグを組むダーレン・アロノフスキー監督作『ブラック・スワン』(2010)。
この作品で今までのイメージを払拭するかのような妖艶な姿を見せたナタリー・ポートマンは、見事アカデミー主演女優賞を受賞し、名実ともに実力派女優としての地位を確かなものとしました。
そんな彼女が『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』で演じているのは、誰もが知るJFKの妻ジャクリーン・ケネディ。
「ただケネディの隣にいる人」と思われていたジャッキーが、毅然とした態度で夫の国葬を取り仕切るまでに至った背景には一体何があったのかという点に注目しつつ、ナタリー・ポートマンが実在の人物(しかも国民的人気者の!)をどう演じているのかに注目が集まっています!
ロバート・F・ケネディ / ピーター・サースガード
ピーター・サースガードが俳優として注目を集めるようになったのは、キンバリー・ピアース監督の『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)。
ヒラリー・スワンクの出世作として有名(オスカーを獲得した!)なこの作品ですが、当のピーター・サースガードも素晴らしい存在感を発揮しました。
彼がさらに賞賛を浴びるようになったのは、2003年の『ニュースの天才』でしょう。この作品ではゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされ、脇役ではあるもののその地位を確立することに。
その後もサム・メンデス監督の『ジャーヘッド』(2005)や、『17歳の肖像』(2009)、ウディ・アレン監督の『ブルージャスミン』(2013)、『ラヴレース』(2013)など、様々な作品で、バラエティに富んだ役柄をこなすピーター・サースガードは、どの監督も使いたくなるような俳優と言えるかもしれません。
そんな彼が本作で演じているのは、JFKの弟で司法長官のロバート・F・ケネディ。
ボビーの愛称で親しまれたロバート・ケネディにかなり似せているという名優ピーター・サースガードが一体どのようなボビー像を表現しているのか要注目です!
ナンシー・タッカーマン / グレタ・ガーウィグ
女優であると共に映画監督でもあり脚本家でもあるグレタ・ガーウィグは、コメディ作品のイメージが非常に強いですよね。
おそらく最初に注目を浴びるようになったのは、『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(2010)でしょう。
この作品でインディペンデント・スピリット賞主演女優賞など数々の賞レースにノミネート(受賞には至らず)したことで、一躍知名度が上がることに。
その後もアイヴァン・ライトマン監督の『抱きたいカンケイ』(2011)や、ウディ・アレン監督の『ローマでアモーレ』などのコメディ寄りの映画に出演したグレタ・ガーウィグ。
そんな彼女がさらなる飛躍を遂げたのは、主演と脚本を務めた『フランシス・ハ』ですね。
この作品でゴールデングローブ賞主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)や、放送映画批評家協会賞コメディ映画女優賞にノミネートされるなど、脚本家としても演技派女優としてもその名を世界中に知らしめることになりました。
『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』で彼女が演じているのは、常にジャッキーに寄り添う存在であるナンシー・タッカーマン。
なんでも幼い頃からジャッキーとは昵懇の仲で、ケネディ大統領の秘書としてホワイトハウスで働いていたのだとか。
ジャッキーに笑顔をもたらす存在としては、グレタ・ガーウィグは適任と言えるでしょう!
ジャーナリスト / ビリー・クラダップ
デビューとなった『スリーパーズ』(1996)で存在感をすでに発揮していたビリー・クラダップ。
キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』(2000)でのロックスターのぶっ飛んだ演技も見事でしたし、ティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』(2003)でもいい味を出していました。
どんな役でも(『ウォッチメン』のDr.マンハッタンのような役でも!)サラリとこなして見せるビリー・クラダップが本作ではジャーナリスト役として登場するようです。
JFKの死後、ジャッキーにインタビューすることになる役回りになりそうですが、ビリー・クラダップであればどんな役でも安心して見ていられるのは間違いありません。
神父 / ジョン・ハート
2017年1月。イギリスの名優ジョン・ハートは77歳でその生涯に幕を降ろしました。
150本以上という出演作は、彼がいかに素晴らしい俳優であったかを物語っていますね。
『ミッドナイト・エクスプレス』(1978)や『エレファント・マン』(1980)ではオスカーにもノミネート(『ミッドナイトエクスプレス』ではゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞)されたジョン・ハート。
他にもリドリー・スコット監督の『エイリアン』、マイケル・チミノ監督の『天国の門』(1980)、サム・ペキンパー監督の『バイオレント・サタデー』(1983)など、常に話題作に出演し続け、その溢れんばかりの存在感を発揮してきました。
若い方には『ハリー・ポッター』シリーズのオリバンダー老人役の印象が非常に強いと思われます。このことはジョン・ハートが老若男女問わず、誰もが知る名優であったことを強く表していますね。
本作では、突然の夫の死に戸惑うジャッキーに道しるべを示す神父という重要な役どころを演じているようです。
癌との闘病中だったジョン・ハートの最後の雄姿を、しかとこの目に焼き付けなければなりません!
ウィリアム・”ビル”・ウォルトン / リチャード・E・グラント
当時(1957年)イギリス領だった現スワジランド出身の俳優リチャード・E・グラント。
ブルース・ロビンソン監督の『ウィズネイルと僕』(1987)でデビューを飾り、一気に知名度を上げることになります。
その後は『ザ・プレイヤー』(1992)、『プレタポルテ』(1994)、『ゴスフォード・パーク』(2001)など、ロバート・アルトマン監督作品には欠かせない俳優に。
他にも『ドラキュラ』(1992)、『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(1993)、『十二夜』(1996)、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011)などに出演し、その地位を確立。
『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』では、JFKの友人ウィリアム・ウォルトンを演じているよう。まだ詳細は明らかになっていませんので、彼がどんな役回りを果たすのか見ていきましょう。
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』の監督紹介
監督:パブロ・ラライン
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』の監督を務めるのは、パブロ・ララインです。
1976年、チリで生まれたパブロ・ララインは、2006年に『Fuga』という作品で長編映画監督デビューを果たします。
その後チリのピノチェト大統領の独裁政権を描いた3部作『Tony Manero』(2008)、『Post Mortem』(2010)、『NO』(2012)を発表。
『NO』(日本でも2012年に公開された)ではサンパウロ国際映画祭で外国作品を受賞したり、アカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされるなど世界中で高評価を博しました。
さらに『ザ・クラブ』(2015)ではベルリン国際映画祭で審査員グランプリ賞(銀熊賞)を受賞するなど国際的に知名度を上げたパブロ・ラライン。
とはいえ、日本においては公開された作品が『NO』しかなかったので、まだまだ知られていない存在ですよね。
そんな監督にとって初の英語作品であると同時に、日本でも大々的に公開されるのが本作『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』です。
プロデューサーとしてダーレン・アロノフスキーが加わったことにより、これまで自国のチリ資本で製作されていた作品が一気に世界的なものへと広がりを見せ、撮影監督にステファーヌ・フォンテーヌ(ステファーヌ・フォンテーヌについてはこちらをご参照ください)が参加するなど、最高のスタッフが集結していますね。
パブロ・ララインという監督がどんな手腕を見せるのか注目しましょう!
製作:ダーレン・アロノフスキー
『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』にダーレン・アロノフスキーが参加しているのは非常に大きな意味を成していると思われます。
カルト的人気作『π』(1997)で衝撃の監督デビューを飾り、『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)、『ファウンテン 永遠につづく愛』など話題作を発表し続けます。
アロノフスキーがさらに輝きを見せたのが『レスラー』(2008)と『ブラック・スワン』(2010)でしょう。この2作でその名を世界中に知らしめることになりました。
製作に回るケースもあり、デヴィッド・O・ラッセル監督の『ザ・ファイター』が本作同様のケースで製作総指揮のみを担当しています。
さて、今回の『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』ではプロデューサーとして、この作品及び監督としてのパブロ・ララインをさらに高みへと押し上げることが出来るのか…非常に期待が持てますね!
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』のあらすじ
1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に銃撃されました。
同乗していた夫が無残にも惨殺される姿を目の前で見せつけられ事になったファーストレディの“ジャッキー”ことジャクリーン・ケネディ。
衝撃と怒りと悲しみと…様々な感情が彼女の頭の中を駆け巡ります。
しかし、ジャッキーに悲しみに暮れる時間など存在しませんでした。
当時の副大統領リンドン・ジョンソンに新たな大統領としての引継ぎをしなくてはならないのです。
そうして、刻一刻と夫であるジョン・F・ケネディという存在が過去の存在になっていくのを体感していたジャッキー。
そこで彼女はふと気が付くのでした。
第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・フィッツジェラルド・ケネディの名とその功績を後世に残せるかどうかは、この数日間の自分の行動に懸かっているということを。
こうして彼女は“JFK”伝説を永遠のものとするため、命の危険さえも顧みることなく、最後の使命を果たそうと動き出すのです。
「なぜジャッキーは、夫の突然の死で人生が一変したわずか3日後に、今も語り継がれる偉業を成し遂げられたか?」
その秘密が、今ここに明かされる…?!
映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』感想と評価
大統領暗殺の真実に迫るようなサスペンスではないこの映画は、まさにタイトル通り、ジャッキー=ナタリーのための映画でした。
この映画に惹かれた方の多くは、おそらく『ブラックスワン』のコンビ、製作のダーレン・アロノフスキーと主演のナタリー・ポートマンの名前からではないでしょうか。かくいう私もその一人であり、その点で期待通りのものが観られて満足しました。
監督は『NO』で有名なパブロ・ララインですが、やはり連想してしまうのは『ブラックスワン』。ボロボロに壊れていく内面とは相反して、どんなことがあってもやはり消えない美しさ。これを体現できる女優はナタリーなんですよね、結局。
これでもかとナタリーの顔をアップで映し続けるわけですが、彼女は本当に画が持ちますね。史実なのではっきり言って地味ですが、なかなかこれは面白かったぞと思えたのは間違いなくナタリーの素晴らしい演技があってこそでしょう。(神父役のジョン・ハートも脇役ながらさすがの存在感でした。もう演技を見られないと思うと寂しいですね…)
それに加えてあの心をざわつかせる不穏な音楽。ジャッキーの華麗な衣装の数々。楽しめる要素はもちろんナタリー以外にもあります!
私が一番面白いと感じたのは、ファーストレディという立場そのものですね。今回は夫を亡くすというこれ以上ない気まずい立場に追いやられるわけですが…。世界中のあらゆる妻の中で最もきちんとしていなくてはいけないし、強さや社交性も持ち合わせてなくてはならないし。正直絶対なりたくないですね。(アホみたいな感想ですが)
『ムーンライト』の記事の時にも書きましたが、これもやはり自己の肯定が大きなテーマだと思います。ファーストレディの本当の意味での存在意義はなかなか見出しづらい、ましてやその夫を失ったとなると、これは辛いですね。実際のジャッキーがどうかはわかりませんが、この映画では夫・ケネディのためにみたいなことをいいながら、彼女は夫と過ごした大切な時間すらも無きものにされてしまうのがただ怖かっただけではないでしょうか。でも同時にしたたかさも確かに感じさせるところが、女性は強しということですが。
こんなにも壮絶で辛い人生を、不謹慎ではありますが面白いと思えてしまうのは、映画の為せる技ですね。
まとめ
ジョン・F・ケネディを題材とした映画作品は数多く存在します。デイヴィッド・ミラー監督の『ダラスの熱い日』(1973)やオリバー・ストーン監督の『JFK』(1991)など、暗殺事件の真相を探ろうというものがほとんどですよね。
最近では暗殺直後のケネディ周辺の様子をドキュメンタリータッチで描いた『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(2014)のように、事件の真相ではなく、事件そのものに焦点を当てる作品も出てきています。
そして本作『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』ではジャクリーン・ケネディにスポットを当てるというこれまでにない視点で描かれており、非常に興味深い作品となりそうです。