自分の身を危険に晒してでも助けたい人がいる。
何が起きているのかも、何故そうなったのかも分からない「世界の終わり」が迫る中、その中心部にいる大切な人を助けに行く一風変わった「ロードムービー」である『すべての終わり』。
今回は、Netflixの独占配信映画らしい壮大なスケールと、独自性に満ちた今作の魅力の一部を紹介させていただきます。
映画『すべての終わり』の作品情報
【公開】
2018年7月13日(Netflix独占配信)
【原題】
How It Ends
【監督】
デヴィッド・M・ローゼンタール
【キャスト】
テオ・ジェームズ、フォレスト・ウィテカー、カテリーナ・グレアム、グレイス・ドーヴ
【作品概要】
未映画化の脚本を登録するサイト「ブラックリスト」で高評価を受けていた脚本を映像化した作品。
主演は『ダイバージェント』シリーズで主人公のトリスを最後まで支えるフォーを演じたテオ・ジェームズ、共演に『ラストキング・オブ・スコットランド』(2006)でアカデミー賞主演男優賞を受賞し『大統領の執事の涙』(2013)や『メッセージ』(2016)など話題作に多数出演するフォレスト・ウィテカーなど。
映画『すべての終わり』のあらすじとネタバレ
弁護士のウィルは元軍人のトムの娘、サムとの間に子供を授かっていました。
しかし、シカゴに住むトムの家での会食中、元々無職なウィルに対しトムは不満顔で、トムとウィルの関係は険悪なものとなってしまいました。
翌日、ウィルはシアトルにいるサムとの電話中に突然電話が途絶え音信不通となり、ニュースでアメリカ西部との連絡が途絶えたことを知ります。
空港も全ての便が運休となり、シアトルへと行けなくなったウィルはトムの家に行きます。
トムは各地での異常な天変地異は待ってても回復するものではないと考え、サムのいるシアトルまで車で行こうと考えていて、ウィルも同行し、2人でシアトルへ向かうことになりました。
軍によって封鎖された高速道路をトムの交渉によって通過し西へと車を走らせる2人でしたが、凶悪犯罪刑務所の近くでパトカーに乗る暴徒に襲われ、車が破損してしまいます。
2日目、暴徒との戦いであばらが折れたトムに代わり車を走らせるウィルは先住民住居地リトル・クローで破損した車を修理工の女性リッキーに修理してもらい、トムはリッキーに2千ドルの報酬を払うことを条件に同行を求めます。
リッキーを加え3人となったウィルたちでしたが、コンパスが北を正常に指さなくなったことに気を取られ、反対車線を走る車とぶつかってしまいます。
横転した車の生存者を見捨てたことで、リッキーは罪悪感にかられるのでした。
3日目、3人はウィルの友人のいるアシュランドと言う町に寄ることにします。
アシュランドは保安官により住民以外の出入りは禁止されていましたが、友人の名前を具体的に出すことにより通行を許可されます。
ウィルの友人アダムの妻、メグに迎え入れられた3人は水の補給や車の修理を済ませます。
メグは夫のアダムが西へ仕事へ向かったまま帰らないことから、その生存を期待していないようでした。
そんな様子の彼女を置き、再び西へと車を走らせる3人。
道中、一瞬だけ電波が回復し2日前にサムが残した留守番電話聞きますが最後まで再生することは出来ませんでした。
焼けた山の中を走る途中、助けを求める女性を見つけ車を降りたウィルは銃を持った男たちにガソリンを奪われます。
トムはあばらの骨折により戦うことが出来なかったため、ウィルがガソリンを奪った男たちの車を追跡し、リッキーが銃で男たちの乗った車のタイヤを撃つことで横転させることに成功。
横転した車からガソリンを奪い返したウィルとリッキーでしたが、直後に車が爆発し乗っていた男たちは死亡します。
リッキーは度重なる道中での惨事に耐えきれず、1人仲間を去ることに決め、姿を消しました。
映画『すべての終わり』の感想と評価
『ザ・ロード』(2009)や『ザ・ウォーカー』(2010)など、「ポストアポカリプス」と呼ばれる文明が崩壊した後の世界を描く作品は、各地を巡りながら物語が展開していく「ロードムービー」の形式を採用していることが多々あります。
それらの作品と同様に、今作は「ロードムービー」の形式ではあるのですが、「文明が崩壊しきった世界」ではなく、現在進行形で「文明が崩壊していく世界」の中で、アメリカを東から西へと縦断する異質な「ロードムービー」の形式となっています。
混乱する都会、漠然とした恐怖を覚える田舎、自身の目的のため暴徒となる人々、侵入者を拒む町など、天変地異の発生したアメリカ西部に向かうにつれ人々の様相が変わっていく様子を、何が起きているのかもわかっていないウィルたちと同じ空気で感じ取ることが出来ます。
元軍人のトムとの旅の中、銃の使い方すら知らない弁護士のウィルが荒廃した世界に順応していく様子や、上手くいかない義理の父との分かりあっていく展開など「ロードムービー」としての定石や魅力がしっかりと詰まっている作品でした。
まとめ
トムを演じたフォレスト・ウィテカーに惹かれて、この作品に興味を持つ方がいるかもしれません。
現に筆者自身もその一人だったのですが、堅物で娘の彼氏に厳しく、娘を救うために全てを捧げる父を演じているフォレスト・ウィテカーは期待していた通りの魅力的な演技でした。
役者の演技も光る、今作をぜひ確認してみてください。