Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『チェイン・リアクションズ』あらすじ感想と評価考察。ホラー映画の名作金字塔《悪魔のいけにえ》がもたらしたものとは|だからドキュメンタリー映画は面白い94

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第94回

今回紹介するのは、2026年3月28日(土)よりシアターイメージフォーラムほか全国公開の『チェイン・リアクションズ』。

トビー・フーパー監督『悪魔のいけにえ』(1974)製作50周年を記念し、同作がなぜホラー映画の金字塔と称されるのか、その核心に迫ります。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

映画『チェイン・リアクションズ』の作品情報

©2024 Emperor Film Production Company Limited. All Rights Reserved.

【日本公開】
2026年(アメリカ映画)

【原題】
Chain Reactions

【監督・脚本】
アレクサンドル・O・フィリップ

【製作】
ケリー・ディーグナン・ロイ

【製作総指揮】
キム・ヘンケル、イアン・ヘンケル、パット・キャシディ、ハムザ・アリ、ベイディー・アリ、グレッグ・ニューマン

【撮影】
ロバート・ミュラトール

【編集】
デビッド・ローレンス

【キャスト】
パットン・オズワルト、三池崇史、カリン・クサマ、アレクサンドラ・ヘラー=ニコラス、スティーヴン・キング

【作品概要】
1974年製作のホラー映画『悪魔のいけにえ』製作50周年を記念し、2024年に製作されたドキュメンタリー。映画俳優、監督、作家、評論家といった5人の識者が、作品の魅力を検証します。

監督は『ピープルVSジョージ・ルーカス』(2012)のアレクサンドル・O・フィリップ。

日本では2024年の第37回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて初上映。第81回ヴェネチア映画祭クラシック部門でドキュメンタリー賞を受賞しました。

映画『チェイン・リアクションズ』のあらすじ

©2024 Emperor Film Production Company Limited. All Rights Reserved.

1974年にトビー・フーパーが監督した『悪魔のいけにえ』。この1本は、その後のホラー映画の歴史を大きく塗り替えたと云われます。

低規模、低予算で作られた『悪魔のいけにえ』がもたらしたものとは、一体何なのか?映画俳優や監督、作家や評論家といった5人の証言者たちが、作品の魅力と核心に迫ります。

低規模で作られたホラー映画の金字塔

©2024 Emperor Film Production Company Limited. All Rights Reserved.

大学講師とドキュメンタリーカメラマンの仕事を掛け持ちしながら、1969年の『Eggshells(原題)』で長編映画監督デビューしたトビー・フーパー。74年に、2作目となる『悪魔のいけにえ』(以下、『いけにえ』)を製作します。

製作費およそ14万ドル(当時のレート)、キャストは無名俳優を起用、総撮影日数4週間という低規模作ながら、チェーンソーを振り回す殺人鬼レザーフェイスが繰り広げる戦慄の猟奇描写が観客の度肝を抜き、世界各国で大ヒット。

その後も続編やリメイク、リブート作を生み、2026年1月には『悪魔のいけにえ 4Kデジタルリマスター 公開50周年記念版』が日本で劇場公開されるなど、半世紀を経た今もなおスクリーンを侵食し続ける、ホラー映画の金字塔と称されています。

本作『チェイン・リアクションズ』は、『いけにえ』製作50周年を記念し、『ピープルVSジョージ・ルーカス』のアレクサンドル・O・フィリップ監督が制作。『いけにえ』が、その後のホラー映画に及ぼした影響力を検証します。

「アメリカの闇を描いている」

©2024 Emperor Film Production Company Limited. All Rights Reserved.

本作は、『いけにえ』製作に直接携わったスタッフやキャストではなく、作品の影響を受けた映画俳優や監督、作家や評論家といった5人の証言で構成されているのがポイント。

最初に登場する、『LIFE!』(2014)、『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』(2024)などに出演のコメディ俳優パットン・オズワルトは、「30回以上は観ている」ほどの作品愛を語りつつ、『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)、『風と共に去りぬ』(1939)などとの関連性を指摘。

2人目の三池崇史監督は、とあるきっかけで『いけにえ』を劇場で観て「映画とはヤバいもの」と知り、「『いけにえ』で痛みの表現を学んだ」と、『オーディション』(2000)、『殺し屋1』(2001)といった自身の監督作の基盤となったことを明かします。

余談ですが、筆者が本作を2024年の東京国際映画祭で観た際、日本人の観客が多かったということもあってか三池の証言では逐一笑いが。特に、『いけにえ』以降に劇場で観て衝撃を受けた作品に、とある日本アニメを挙げた際は、場内が驚きと爆笑に包まれたほどでした。

3人目のオーストラリアの映画評論家アレクサンドラ・ヘラー=ニコラスは、オーストラリアでは女性は『いけにえ』を観るのを禁じられていたというエピソードに加え、「『いけにえ』は『荒野の千鳥足』(1971)などのオーストラリア映画の影響を受けている」と独自の見解を述べます。

4人目は“ホラーの帝王”の異名を持つ作家スティーヴン・キング。ホラー映画評論家としての顔も持つ彼ならではな恐怖演出の解説や、『いけにえ』がその後の自著にもたらした影響を語ります。もちろん、自著が映画化されるもその出来に大いに不満を持っている、“あの作品”について言及することも忘れていません。

最後の証言者は、『ガールファイト』(2000)、『ストレイ・ドッグ』(2018年)の監督カリン・クサマ。「『いけにえ』はアメリカの闇を描いている」と断言しつつ、「フランシス・ベーコンなどの影響も感じる」とアート視点からの魅力を語ります。

©2024 Emperor Film Production Company Limited. All Rights Reserved.

これまでに数限りない論者が検証・考察してきていますが、今なお連鎖反応《チェイン・リアクションズ》を引き起こし、チェーンソーで切り口を変えて語り継がれる『悪魔のいけにえ』。

次に『いけにえ』を検証・考察するのは、あなたかもしれません。

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューのほか、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



関連記事

連載コラム

映画『ドルフィン・マン』感想レビューと評価。伝説の素潜りダイバーがたどる波乱の生涯【ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ】|だからドキュメンタリー映画は面白い28

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第28回 伝説のダイバーが深くたどる、波乱に満ちた生涯とは――。 今回取り上げるのは、2019年11月29日(金)より新宿ピカデリー、アップリンク渋谷、 …

連載コラム

Netflix『全裸監督』第3話あらすじネタバレと感想。駅弁とデビュー作撮影の裏側|パンツ一丁でナイスですね〜!3

連載コラム『パンツ一丁でナイスですね〜!』三丁目 Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』が2019年8月8日より配信中です。 伝説のAV監督村西とおるを描いた本シリーズ。 全話ラストで警察の手か …

連載コラム

マーベル映画・ドラマ【MCUフェイズ4】情報まとめ解説!アベンジャーズの2020~21年の行方を占う|最強アメコミ番付評35

連載コラム「最強アメコミ番付評」第35回戦 こんにちは、野洲川亮です。 今回は2019年7月に、アメリカ・サンディエゴで行われた「コミコン・インターナショナル」にて発表された情報とその後の続報を基に、 …

連載コラム

【2019年の挨拶】あけましておめでとうございます。

橿原神宮 ©︎Cinemarche 謹啓 あけましておめでとうございます。 今年も映画の多様な価値を、“読者の皆さんに映画を届ける”という原点に立ち返り、専属ライターともに作品解説のご紹介することに取 …

連載コラム

映画『わたくしどもは。』あらすじ感想と評価解説。ロケ地・佐渡島で小松菜奈×松田龍平が“輪廻という別れ”を演じる|TIFF東京国際映画祭2023-14

映画『わたくしどもは。』は第36回東京国際映画祭コンペティション部門にてワールド・プレミア上映! 男と女は「生まれ変わったら、今度こそ一緒になろうね」という約束の言葉を最後に、寺の境内から身を投げた… …

『還り花』
Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学