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『風のマジム』映画原作小説のネタバレあらすじ感想と評価解説。原田マハが実話から描く沖縄産ラム酒作りのサクセスストーリー

  • Writer :
  • 星野しげみ

原田マハの小説『風のマジム』が映画化に!

「沖縄のサトウキビからラム酒を作りたい」とビジネスを立ち上げた女性をモデルとした原田マハの小説『風のマジム』。

沖縄の南大東島で沢山の風に吹かれて育ったサトウキビからラム酒を作る! 実話を基に、伊波まじむという女性が沖縄では初となる地元産ラム酒を作る夢を実現していく物語です。


『風のマジム』原田マハ(講談社)

原田マハのオシゴトサクセスストーリー『風のマジム』が、これまで様々な役を演じて来た伊藤沙莉主演で映画化決定!

広告やショートフィルムで活躍し、新たなチャレンジを試みる芳賀薫が初監督を務めます。

映画『風のマジム』は、2025年夏に全国ロードショー。映画公開に先駆けて、小説『風のマジム』をネタバレありでご紹介します。

小説『風のマジム』の主な登場人物

【伊波まじむ】
主人公。沖縄産のラム酒を造るために奮闘する。

【おばあ】
まじむの祖母

【吾郎】
バーのバーテンダー

小説『風のマジム』のあらすじとネタバレ


『風のマジム』原田マハ(講談社)

沖縄の離島南大東島をある目的で訪ねた、28歳の伊波まじむ。

沖縄の那覇で生まれ育った伊波まじむは、通信系事業を展開する会社に派遣社員として勤めています。実家は豆腐店を営み、父が早くに他界したため母と祖母が豆腐を作りながらまじむを育ててくれました。

東京の大学へ進学しますが、何をしたらいいのかわからず、卒業は故郷の沖縄へ帰ってきて、地元の会社の派遣社員になりました。

酒好きの祖母と賑やかな母。優しい2人に見守られながらも、これといった夢もなく毎日が淡々と過ぎていきます。

そんなまじむですが、ある日、社内で開催されることとなったベンチャーコンクールのことを知ります。

沖縄の郷土色の豊かな新規事業を全社員から募集するというもので、これは派遣社員であっても参加が可能でした。

それを聞いてまじむの頭に、祖母と行きつけのバーで飲んだラムのことが浮かびます。

サトウキビで作ったというそのラムを一口飲んだだけで、まじむはラムの虜になってしまい、いつまでも心に残っていたのです。

ラムの原料は沖縄でさかんに生産されているサトウキビですが、実は沖縄県産のラムはこの時点でまだありませんでした。

まじむはそんな中でサトウキビの生産地であり、『東の果ての島』と呼ばれる絶海の孤島・南大東島の存在を知ります。

そして、そこで作ったサトウキビを原料にした沖縄県産のラムを作りたいと思うようになりました。

先輩社員の知念冨美枝にそのことを話すと「夢物語」だと言われ、祖母からはラムについて勉強をしろと馬鹿にされました。

それがきっかけでまじむは、ラム製造やサトウキビについて猛勉強をし、プロジェクトの企画書をまとめ、夢を叶えるべく、社内ベンチャーコンクールに参加します。

まじむの企画は、はじめは単なる夢物語かと思われましたが、社内の審査を次々に通過します。気が付けばまじむは、プロジェクトのチームリーダーになっていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『風のマジム』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『風のマジム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

社内審査をいくつか通過したまじむの「沖縄産ラム酒製造プロジェクト」が、本当に大変なのはこれからでした。

会社は利益を出せないプロジェクトにお金を出すほど甘くないため、まじむの計画にあれこれと指図してきます。

また、お酒を造るには様々な資格や条件が必要となり、理想のラムを作るためには醸造家選びが重要です。

そもそもラム作りのためのサトウキビの提供すら許可が取れておらず、プロジェクトが動きだした時点ではまじむの計画はただの夢物語でした。

ですが、何度も挫けそうになるまじむを、行きつけのバーのバーテンダーの吾郎が励ましてくれました。

社内でまじむの計画をサポートしてくれる部長の儀間やほかの社員の面々の力もかりて、まじむは一つずつ問題を解決していきます。

まじむはラム工場建設地として南大東島、醸造コンサルタントとしてワイン造りをしていた瀬那覇仁裕に白羽の矢をたてました。

南大東島では、サトウキビを使った生産物がほかにあったためにその製造者から反対があり、瀬那覇からはワイン造りに没頭したいという返事があったのですが、運命はまじむに味方します。

この場所とこの人には、沖縄の真心がある! 信念を曲げずに懇願し続けたまじむの思いは届き、2つの困難はどちらも了解を得ることで解消しました。

そして最終審査、満場一致で「沖縄産ラム酒製造プロジェクト」は1位を取得します。会社はこのプロジェクトを正式に事業化することにしたのです。

まじむは、それから新規事業開発部長の儀間と、工場長就任予定の渡那覇とともに、初めて南大東島の工場建設予定地を訪問します。

ですが、その日にまじむの愛する祖母が脳溢血で倒れて、病院へ担ぎ込まれました。まじむは病院へ出向き、一命をとりとめたベッドの上の祖母と再会しました。

そして、2年後。丹精込めて創り出された沖縄産ラムは、「風のマジム」と命名されました。なかなか意識の戻らなかった祖母の意識も戻り、まじむの周囲は純風満帆です。

ある日、大事にてがけたラム出荷を祝って、関係者が南大東島のそば屋「大東そば」に集まりました。

その場にかけつけた吾郎が、出来上がった最初のラムで「百パーセントうちなーモヒート」を作ってくれました。

「最初のいっぱいは、まじむが一番飲ませたい人に持って行ってあげて。お母さんと一緒にすぐ近くのサトウキビ畑で風にふかれているよ」

吾郎の言葉にまじむは、ラムの入ったシェイカーとコップを受け取ると、店の外へ飛び出しました。

「おばあーっ」! 真心の酒を手にしたまじむは、何度も大声で叫んで、祖母の元へと急ぎます。

小説『風のマジム』の感想と評価

沖縄の社内のベンチャーコンクールを活用してビジネスを立ち上げた実在する女性をモデルに、原田氏が書き上げた『風のマジム』

本書は主人公のまじむが「沖縄産ラム酒製造プロジェクト」を実行すべく、原料のサトウキビを栽培している島を訪ねるところから始まります。

サトウキビで作ったラム酒を飲んでその美味しさに魅かれたまじむ。沖縄を愛し、沖縄の真心を伝えたいというまじむの想いは、いつしか周囲の人々を巻き込んで、一大プロジェクトを成功へ導きました。

企画が頓挫しそうな危機や幾つかの難問も乗り越えてのプロジェクトの成功は、まじむにとって大きな勝利と言えるでしょう。

オシゴト小説としても面白いのですが、それだけで終わらないのが作者・原田マハの凄いところ。

まじむのおばあの持つ人としての大きな器量、優しくまじむを後押しする母、ラムの美味しさを教えてくれる異性の友人と、出て来る登場人物たちがみな魅力的に描かれています。

加えて、次第に心強い味方となってくれる先輩社員や厳しいながらも理解ある上司たちと、仕事に関係する人たちもまじむを支えてくれました。

実話がベースにあるとはいえ、一大プロジェクトが成功するまでのサクセスストーリーは読み応えたっぷり。夢で終わらせない主人公に拍手を贈りたくなり、大きな感動が残りました

映画『風のマジム』の見どころ


(C)映画「風のマジム」

平凡に生きてきた契約社員の主人公・伊波まじむが、社内のベンチャーコンクールに出した「沖縄産のラム酒を作る」という企画が勝ち残ります。

この企画を実現するために、周囲の人々を巻き込みつつも、まじむは家族に支えられて大奮闘。やがて夢を実現します。

実話でもあるこの小説を映画化したのは、広告やショートフィルムで活躍している芳賀薫。本作が映画監督デビュー作です。

朗らかで力強くポジティブにチャレンジ人生を歩む主人公・まじむを、役者にとどまらず、司会など幅広く活躍をしている伊藤沙莉が演じます

苦難も体当たりで解決していくまじむ役に、元気いっぱいで溌剌とした演技をする伊藤沙莉は最適と言えるでしょう。

美しい沖縄の海とサトウキビ畑、そして満面の笑みがはじけるラストシーンは、とても爽やかなものになるのに違いありません。今から楽しみです。

映画『風のマジム』の作品情報

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
『風のマジム』(著者・原田マハ/講談社)

【監督】
芳賀薫

【脚本】
黒川麻衣

【キャスト】
伊藤沙莉

まとめ

無謀とも思われる夢にチャレンジする主人公の伊波まじむ。

小説『風のマジム』は、普通の契約社員からビジネスの企画の責任者にチャレンジする伊波まじむの成長と、彼女の夢に関わる人々の真心の物語でした。

まじむとは沖縄の方言で「真心」を意味します主人公の沖縄のサトウキビに対する「真心」がいっぱいに込められた小説でした。

市井の女性のお仕事小説としても面白く読め、まじむの「皆に沖縄のサトウキビから生まれたラム酒を知ってもらいたい」というアツい想いが胸を打ちます

作者・原田マハ独特の爽やかな読後感の小説が、ノリにのっている伊藤沙莉主演で映画化されることになりました。

映画『風のマジム』は、2025年夏に全国ロードショー。乞うご期待!



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