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『マンティコア』あらすじ感想と評価解説。心に“怪物”を宿したゲームデザイナーを取り巻くインモラルロマンス

  • Writer :
  • 松平光冬

タブーを超えた衝撃の境地。この結末は愛か、悲劇か?

2014年の長編デビュー作『マジカル・ガール』で第62回サン・セバスチャン国際映画祭グランプリ&監督賞を受賞したカルロス・ベルムトの最新作『マンティコア 怪物』が、2024年4月19日(金)よりシネマート新宿、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショーされます。

ゲームデザイナーの青年が予期せぬ“怪物”を生んでしまう顛末を、独創的なストーリーと予測不能の展開で描くアンチモラル・ロマンスの見どころをご紹介します。

映画『マンティコア 怪物』の作品情報


(C)Aqui y Alli Films, Bteam Prods, Magnetica Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE

【日本公開】
2024年(スペイン映画)

【原題】
Manticora(英題:Manticore)

【監督・脚本】
カルロス・ベルムト

【製作】
ペドロ・エルナンデス・サントス、アレックス・ラフエンテ、アマデオ・エルナンデス・ブエノ

【衣装】
ビニェト・エスコバル

【撮影】
アラナ・メヒーア・ゴンザレス

【編集】
エンマ・トゥセル

【キャスト】
ナチョ・サンチェス、ゾーイ・ステイン、アルバロ・サンス・ロドリゲス、アイツィべル・ガルメンディア

【作品概要】
デビュー作『マジカル・ガール』で注目を浴びたスペインの鬼才カルロス・ベルムト最新作。ゲームデザイナーの青年フリアンが、少年を火事から救った出来事を機に予期せぬ事態に陥る様を描きます。

フリアン役に『SEVENTEEN セブンティーン』(2019)のナチョ・サンチェス、フリアンが心惹かれる女性ディアナ役をディズニープラス『The Invisible Girl(原題)』(2023)で主演を務めたゾーイ・ステインが、それぞれ演じます。

日本では2022年の第35回東京国際映画祭コンペティション部門に『マンティコア』のタイトルで出品され、2024年4月19日(金)より一般公開されます。

映画『マンティコア 怪物』のあらすじ

(C)Aqui y Alli Films, Bteam Prods, Magnetica Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE

空想のモンスターを専門にクリエイトするゲームデザイナーのフリアンは、同僚の誕生日パーティーで美術史を学ぶ女性ディアナに出会います。

内気で繊細な性格のフリアンは、次第に聡明でどこかミステリアスなディアナに魅かれていきます。しかし実は数日前に、隣人の少年を火事から救った出来事をきっかけに原因不明のパニック発作に悩まされていたのでした。

その発作が発端となり、フリアンは思いもよらぬ“怪物”を作り出してしまい……。

映画『マンティコア 怪物』の感想と評価


(C)Aqui y Alli Films, Bteam Prods, Magnetica Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE

モンスターを創造するゲームデザイナーが生んだ“怪物”

長編デビュー作『マジカル・ガール』で魔法少女に憧れる少女の願望を起因としたサスペンス、『シークレット・ヴォイス』(2019)では記憶喪失の歌手に秘められた虚実を描くミステリーと、センセーショナルな作品を次々発表してきたカルロス・ベルムト監督。

長編第3作となる『マンティコア 怪物』は、あえてジャンル分けすればラブロマンスとなるでしょうか。ですが当然、巷に溢れる純愛ものとは一線を画しているのは言うまでもありません。

モンスター専門のゲームキャラクターデザイナーをしている青年フリアンは、自宅のアパートで作業中に隣の部屋が火事となり、室内にいた少年クリスチャンを救助。しかし、その火事を機に発症したパニック発作に悩まされ、それはやがてゲームキャラとは異なる新たな“怪物”を生むことに。

タイトルの「マンティコア」とは、人間のような頭、ライオンまたは虎のような胴、ヤマアラシの羽に似た有毒な棘の尾もしくはサソリの尾を持つ怪物を指し、人喰い(マンイーター)とも云われています。

“欲望”とも言い換えられるであろう、フリアンが宿してしまった怪物=マンティコア。それはインモラルでタブーとされるものとして、奇異に感じたり不快感を抱く人もいるかもしれません。

「人は欲望を選ぶ事はできない」

(C)Aqui y Alli Films, Bteam Prods, Magnetica Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE

そんな中、パーティーで知り合ったボーイッシュな女性ディアナに惹かれたフリアンは、彼女と親しくなることで怪物が巨大化するのを止めようとします。しかし、思わぬ形でその怪物が明るみとなり、フランケンシュタインの創造物や狼男のように、怪物を退治しようとする者たちに追われることに。

ベルムト監督は、劇中で起きている事態を明確に映さず、観る者に暗示させる手法を好みます。いたるところに謎の伏線を張り徐々に明かしていく展開は、『マジカル・ガール』から一貫しています。

「欲望を法律で取り締まる事はできないし、人は欲望を選ぶ事はできない」とベルムトが語るように、人は誰しも怪物を宿している可能性があります。その可能性を伏線とし、それが明かされる終盤の展開には目が離せません。

『マジカル・ガール』(2016)

まとめ


(C)Aqui y Alli Films, Bteam Prods, Magnetica Cine, 34T Cinema y Punto Nemo AIE

デビュー作の『マジカル・ガール』からも察せるように、ベルムト監督といえば日本マンガやアニメに造詣が深い人物。本作でも「日本」というキーワードが随所に散りばめられています。

特に本作では“怪物”にちなんだモチーフが施されており、フリアンのスマホの着信音に某モンスターゲームの曲が使われているなど、細部にまで行き届いた監督のオタク心を探してみるのも一興かもしれません。

ゲーム上でプレイヤーに倒されるモンスターのように、フリアンが生んだ怪物=マンティコアも倒される運命なのか? そもそも、その怪物は本当に退治せねばならないものなのか?

結末に待っているものは、愛か、悲劇か?観終わった者同士で議論したくなる作品となるのは間違いないでしょう。

映画『マンティコア 怪物』は2024年4月19日(金)よりシネマート新宿、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー

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