面倒くさすぎる性格の大学生、広島の地に立つ。
『月刊フラワーズ』で連載され、2021年には小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞した田村由美による漫画シリーズ『ミステリと言う勿れ』。
2022年には菅田将暉主演で連続ドラマ化され、全話において視聴率10%越えを達成する人気ドラマとなりました。
そして2023年、先が気になる「続編」を予感させる終わり方をしたドラマ『ミステリと言う勿れ』が、ついに劇場版映画として帰ってきました。
今回は映画『ミステリと言う勿れ』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『ミステリと言う勿れ』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【原作】
田村由美
【監督】
松山博昭
【脚本】
相沢友子
【キャスト】
菅田将暉、松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ
【作品概要】
田村由美による同名漫画を『花束みたいな恋をした』(2021)の菅田将暉主演で映像化した連続ドラマの劇場版作品。
『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』(2010)を手掛けた松山博昭が監督を務めた本作には、『すずめの戸締まり』(2022)で声優としても活躍した原菜乃華や、「チェリまほ」こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」シリーズのメインキャストを務めた町田啓太などの注目キャストが出演しました。
映画『ミステリと言う勿れ』のあらすじとネタバレ
【8年前】
猛スピードで道を走る車が、カーブを曲がり切れずにガードを突き破り、そのまま崖下へと転落。
車は大きな音とともに爆発・炎上し、乗っていた4人の男女は死亡しました。
【現代】
海岸で狩集汐路と会った犬堂我路は、「闇」の存在する狩集家に潜入し、汐路を守りながらその「闇」を覗く予定でしたが、自身が指名手配犯となったことから困難となります。
そこで我路は自身の代役として、知り合った大学生の青年・久能整を汐路に紹介しました。
広島に観光に訪れていた整は自身を尾行する汐路から、命と金のかかったボディガードの依頼を頼まれます。話が見えず困惑する整は、我路の紹介だという汐路の言葉に興味を惹かれているうちに、狩集家の遺言の場に連れてこられてしまいます。
狩集家の顧問税理士の真壁軍司と狩集家の顧問弁護士の車坂義家によると、汐路の祖父・狩集幸長の遺言には相続を受ける息子と娘の世代が全員死亡したことから、次なる当主は孫の世代から1人を選ぶと書かれているとのことでした。
「4人の候補者それぞれに狩集家の蔵の鍵が渡され、『それぞれの蔵において あるべきものをあるべき所へ 過不足なくせよ』というなぞかけの言葉を解き明かした者に相続が行われる」という条件を聞かされた整。
汐路は「狩集家では遺産相続時に必ず揉め事が起こり人が死ぬ」と言う祖父から聞かされたジンクスを語り、自身の父である弥が3人の兄弟と共に自動車事故で死亡したのも、遺産相続の揉め事が原因であると信じていました。
整は余計な問題が起きないように遺産相続候補者である理紀之助、新音、ゆらに汐路との話し合いを求めますが、競争相手であることを理由に話し合いには誰一人応じませんでした。
その日の夜、狩集の広大な家に泊まることになった整は玄関に魔除けの効果があるとされるアメジストドームが置かれ、空間の至る所にお札や祠のある狩集家に違和感を覚えます。
翌日、汐路に割当てられた蔵を捜索する整と汐路は蔵の中から9体の「日本人形」を発見。日本人形の服に描かれた花の柄から即座に整は人形が1年の各月を指していることに気づきますが、12ヶ月を揃えるためには「牡丹」「菊」「桜」が足りないことが分かります。
自身の蔵を見せることを条件として新音の蔵を覗いた2人は、新音の部屋には本物と偽造された物が対となった「有田焼」が大量にあることを知りました。
その日、蔵へと向かう途中に汐路の頭上から何者かから植木鉢が落とされ、また夜には何者かが階段に油を撒いたことで汐路と新音は階段から落下してしまいます。
不穏な空気が立ち込める中、ゆらが何者かによって「座敷牢」のある彼女に割当てられた蔵に閉じ込められたことが分かり、彼女の夫の一平と理紀之助が彼女を救出。
アリバイがなかったことから理紀之助が疑われることとなり、無実を証明するために理紀之助は自身の蔵の情報を開示。理紀之助の蔵には「血のついた日本刀」が多く置かれていましたが他に情報はなく、4人の候補者はそれぞれがそれぞれを疑い疑心暗鬼に陥り始めます。
夜、手をかければ崩れそうな柵の近くに短刀を埋める汐路に整は「それ以上はやってはいけない」と声をかけます。
ボディガード役を全うするために汐路を観察していた整は、落下してきた植木鉢も階段に塗られた油も、ゆらを閉じ込めた犯人も汐路であることを見抜いていました。
汐路は父の弥が運転する車の事故によって理紀之助、新音、ゆらの父親や母親が死亡したことを長い年月に渡って責められており、事故の原因が警察の発表した居眠り運転による事故ではなく遺産相続上のトラブルでの殺人と信じることで己を保っていました。
遺産相続の競争中に、殺人事件やそれに近い事故が起こることでより信憑性が上がると考えた汐路が一連の騒動を起こしており、彼女の抱えた強いトラウマの存在を知った理紀之助と新音とゆらは彼女の行動を許し、傷つけあうことなくなぞ解きをすることを誓います。
事件がひと段落したと判断した整は翌日に東京に帰ることを考えますが、コインランドリーからの帰路に何者かに車で轢かれそうになった上に、狩集家の代々の家族写真を見たことで考えを改めました。
映画『ミステリと言う勿れ』の感想と評価
人気エピソードを映像化した劇場版作品
神経質で面倒くさい性格の大学生・久能整が、巻き込まれた事件を解決していくミステリ漫画『ミステリと言う勿れ』。
ドラマ版から続く劇場版映画として公開された本作では、原作でも特に人気の高いエピソード「狩集家遺産相続問題」を主軸として物語が進行していきます。
整の豊富過ぎる知識量から来る、雑学と推理のマシンガントークは本作でも健在。論語における「君子の九思」から映画『サスペリアPART2』(1978)まで、物語に深く絡んでくる雑学は多岐に及んでいます。
ひとつひとつの知識に詳しければ詳しいほどに、本作での会話の意味を深く理解できるようになるため、知識を足した上での再鑑賞を何度も行いたくなるような楽しみがありました。
独自の視点で「家族」に着目した遺産騒動ミステリ
横溝正史による小説『犬神家の一族』以降、旧来的な大家族による遺産相続に絡む殺人や推理劇は和製ミステリの定番ジャンルとなりました。
そんな何番煎じにもなり得る「遺産騒動ミステリ」ですが、現代の価値観を反映し家族の持つ歪な関係にも目を向けてきた『ミステリと言う勿れ』は、いずれの作品にもない新たな「遺産騒動ミステリ」を描いていました。
どこの誰が作ったかもはっきりとしない悪しき習慣を、正しいものとして盲信することの愚かさに焦点を当て、新しい時代に沿うことの意義を問う本作は、古い価値観を捨てきれない人にこそ直視して欲しい作品です。
まとめ
原作では「広島編」とも呼ばれるエピソードの映像化作品である本作は、もちろん広島の観光名所も目白押し。
大画面で広島観光気分を味わいながら、巻き起こる遺産相続を題材とした事件の謎を整とともに推理してみてはいかがでしょうか。
また鑑賞までの時間に余裕のある方はぜひ、『サスペリアPART2』を予習してから本作を鑑賞してみてください。
きっと整の感じた「違和感」の意味に気づくことができると思います。