映画『このまちで暮らせば』は、2018年7月14日(土)より、新宿K’scinemaにて1週間限定ロードショー。
熊本県にある林業の町・南小国町を舞台に、親子の絆と人々が未来に向かって歩む姿を、たくましく育つ杉の木の姿に重ねて描いた意欲作。
今回は注目の若手俳優笠松将の主演作『このまちで暮らせば』をご紹介します。
CONTENTS
映画『このまちで暮らせば』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【脚本・編集・監督】
高橋秀綱
【キャスト】
笠松将、芋生悠、藤本喜久子、勝野洋
【作品概要】
平成29年度熊本県地域づくり夢チャレンジ推進事業の一環として制作され、熊本県南小国町を舞台に主人公の樹の従事する林業と親子の絆を描いたヒューマンドラマ。
笠松将のプロフィール
笠松将(かさまつしょう)は、1992年11月4日に愛知県で生まれた俳優で、事務所は鈍牛倶楽部所属。
笠松将という俳優をドラマ『刑事バレリーノ』の脇役のバーテンの演技で彼を知ったファンも多いようですが、実は短編映画では主演作品もある俳優です。
短編映画『ぼくらのさいご』(2015)
短編映画『それからのこと、これからのこと』(2016)
【笠松将の出演した映画】
『生贄のジレンマ』(2014)
『クローズEXPLODE』(2014)
『キリング・カリキュラム〜人狼処刑ゲーム序章〜』(2015)竹谷瑛二役
『ぼくらのさいご』(2015)主演
『orange』(2015)
『それからのこと、これからのこと』(2016)主演
『きょうのキラ君』(2017)
『ピーチガール』(2017)
『カランコエの花』(2017)主演
『デイドリーマーA』(2017)主演
『デメキン』(2017)蘭忠次役
『リベンジgirl』(2017)赤城役
『不能犯』(2018)
『名前のない女たち うそつき女』(2018) 辻本将人役
『ラ』(2018)黒須彰太 役
『ギャングース』 (2018)
『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018)
今回紹介している『このまちで暮らせば』で笠松将は、ある考えを抱きながら家出した青年役を演じています。
その主人公である樹は、母親の絆や周囲との関係で、今しか演じられない瑞々しい演技をスクリーンに映し出し、実際に山に入り、林業の担い手として青年としてチェーンソーも使いこなしています。
ぜひ、注目してください。
映画『このまちで暮らせば』のあらすじ
新しい命を繋ぎ続ける林業と、それに関わる親子のストーリー
熊本県にある南小国町。ある思いを胸に、一人前の林業作業士を目指している青年、樹。
彼は母親町子と不仲となり、福岡にある実家から家出をしてきました。
師匠の茂に樹は両親はいないと嘘をついて暮らしています。
ある日、樹を訪ねて母親の町子がやって来ました。
師匠の茂に嘘がばれてしまった樹、しかも、東京から逃げて来た茂の孫娘の緑からも責められてしまう始末。
それでも母町子を受け容れようとしない樹は、町子は命に関わる病気であると茂から知らされます…。
映画『このまちで暮らせば』の感想と評価
物語の舞台「南小国町」とは
杉とともに世代を繋いできた林業の町・南小国町。
この映画の舞台となる南小国町は、阿蘇山北部、筑後川の源流域に位置しています。
NPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟した、美しい緑と水を保有する地域の一つです。
小国杉を幾世代にもわたって育ててきた林業の町として知られ、また、黒川温泉や満願寺温泉をはじめとする風情ある温泉地が多く、観光と農林業を主産業としています。
「小国杉」は強度に優れ、美しい艶と粘りのある木材で、造林が始まったのは江戸時代の頃で、それから250年近く脈々と林業は受け継がれてきました。
寒暖の差も激しく、また、雨も多い厳しい環境の中でゆっくりと育つ「小国杉」は美しい木材だと言われています。
伝統の「小国杉」を通じて描く「親子の絆」
そんな舞台となるに「南小国町」に移住した青年・樹と不和になった母町子の親子のすれ違いと和解をドラマチックに描き、人が未来に向かって生きていく姿を、たくましく育つ杉の木の姿に重ねて描いた作品です。
その主人公の青年樹役に若手実力派俳優の笠松将に迎え、母町子役には演技派で無名塾出身の藤本喜久子が務めています。
また、緑役には『それからのこと、これからのこと』でも共演をしている熊本出身の若手注目女優の芋生悠、緑の父親で樹の師匠となる茂役には地元出身のベテラン俳優の勝野洋が入魂の演技を見せています。
また、この作品で扱う林業の伐採シーンは、代役無しで現役作業士から指導を受けた俳優が自ら行い、演技に説得力を見せた場面がいくつもあります。
そこでは、杉の木の高さは約22メートルはあるものを実際に伐採したりもするのです。
見せ場となるクライマックスの台詞の掛け合いでは、ロケーションの魅力を最大限に活かした演出が要注目です。
「地域愛、師弟愛、恋愛、親子愛」という様々な思いや関係性を、樹の心情に濃縮させたことで、観る者に直接的に伝わる作品となっています。
また、現在、世界的にも知られる有名な温泉地である黒川温泉を抱える南小国町、それとは全く別の一面を、発見できるところも見逃せないポイントです。
高橋秀綱監督からメッセージ
「地方から都会へ移住した私にとって、自身と家族を改めて見つめ直すかたちになりました。田舎を疎ましく感じて上京したものの、父が亡くなった今は母を心配することが増え、都会の暮らしを疎ましく感じ、家族との思い出を思い返すことも多くなりました。それでもまだ、こちらでの仕事や人脈、家庭から離れることはできず、一番大事であるはずの家族からは離れて暮らしています。
なぜ家族とは離れて暮らすことができるのだろうか。それは、家族からしか感じることのない「無条件の優しさ」に見守られているからではないか。そのおかげで私は、どこでも暮らすことができて、何にでも挑戦することができている。そんな家族からの優しさを、私なりに描いた作品です」
高橋秀綱監督は『このまちで暮らせば』で、自身の抱える率直な思いをストレートなまでに描いています。
それを強いものにしたのは、林業の町である伝統的な職業につくことで、自己存在を見つめ直した若い青年である樹の揺れる心で表現しました。
家族という当たり前すぎる“存在”を見つめなす様は、南小国町という母親のもと離れた土地で、樹が見上げた「小国杉」を前にして、真っ直ぐに伸びる大きさに感じたものかもしれません。
参考作品:高橋秀綱監督の短編作品『あかべこ』
高橋秀綱監督は以前に、神保町映画祭でグランプリを受賞した短編映画『あかべこ』でも、離れた親子の関係を描いています。
その際には、母親の出産のため、福島県の会津に暮らす祖父母のもとにあずけられた6歳の少女ミカを通して、幼い彼女が寂しさゆえに、誰からも相手にされないと思い込んだことを描いた作品です。
高橋作品では常に語られる「無条件の優しさ」の家族の存在があります。それは彼のライフワークといっても良いかもしれません。
本作『この町で暮らせば』を通して、あなたも離れた家族について振り返ってみてはいかがでしょう。
まとめ
若手俳優の笠松将の演じる今しかない表情と演技。
そして、高橋秀綱監督は、笠松の演じた青年の樹に思いを込めた、“無条件の優しさである家族”という、「当たり前の日常にありがたさを感じていただけると幸いです」とも語っています。
熊本県阿蘇郡南小国町の全面的な協力を得て、完成させた42分の短編映画『このまちに暮らせば』。
ぜひご覧になってはいかがでしょうか。
『このまちで暮らせば』(監督:高橋秀綱)が2018年7月14日(土)より、新宿K’scinemaにて1週間限定ロードショー。
お見逃しなく!
*タイトル表記に一部誤りがあり、「町→まち」が正しい表記となります。関係者の皆さまに大変ご迷惑をお掛け致しました。衷心よりお詫び申し上げます。