連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile160
人の良し悪しに関わらず自然による猛威はあらゆる人間に降りかかります。
冬を代表する「雪」はそんな自然の猛威の中でも特に危険であり、毎年世界の各地で大きな災害を引き起こしています。
今回は「雪」によって足止めされてしまったパーキングエリアで子供を攫った誘拐犯と対峙することとなってしまうサスペンス映画『パーキングエリア』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『パーキングエリア』の作品情報
【公開】
2022年2月25日(アメリカ映画)
【原題】
No Exit
【監督】
デイミアン・パワー
【脚本】
アンドリュー・バラー、ガブリエル・フェラーリ
【キャスト】
ハバナ・ローズ・リュウ、ミラ・ハリス、ダニー・ラミレス、デビッド・リスダール、デニス・ヘイスバート、デニス・ヘイスバート、ベネディクト・ウォール、カースティ・ハミルトン
【作品概要】
テイラー・アダムスによる同名小説を『キリング・グラウンド』(2018)のデイミアン・パワーが映像化した作品。
『アサシネーション・ネーション』(2018)や『トップガン マーヴェリック』(2022)に出演するダニー・ラミレスや、ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」で大統領デイビッド・パーマーを演じたデニス・ヘイスバートが出演しました。
映画『パーキングエリア』のあらすじとネタバレ
サクラメントの禁酒リハビリ施設に入所させられるダービーのもとに、母親が脳動脈瘤で倒れ危険な状態と言う連絡が入ります。
しかし、繰り返し問題を起こしたことで施設からの出所が許可されていないダービーは、深夜に施設を抜け車を盗んで母のいる病院があるソルトレークを目指します。
山道を進む中、警察に止められたダービーは「吹雪によって山道が通行止めであり、道を戻るか少し先のパーキングエリアで待機するか」の選択を迫られます。
パーキングエリアに寄ったダービーは同じ境遇の4人の男女を目にします。
屋内にはWi-Fiがなく電波も通じていないことからダービーは駐車場で電波を探すと悲鳴が聞こえ、駐車場に停められたバンの中に拘束された少女の姿を目撃。
車のナンバーを撮影したダービーは警察への通報を試みますが圏外のため繋がりません。
呼び戻され施設内に戻ったダービーは施設内のサンディ、エド、ラーズ、アッシュに誘われトランプゲーム「ダウト」をプレイします。
誘拐犯が4人の中にいると確信するダービーはプレイ中に4人の素性を聞き出そうとします。
ラーズの行き先がネバダであることを知ったダービーはバンのナンバーがネバダであることを思い出し、彼を疑い始めます。
トイレから外に忍び出たダービーはバンのドアを工具で開けて入り込むと「アジソン病」と刻印されたバングルをつけた少女を発見しますが、その場にラーズが現れ、咄嗟に車内に隠れます。
銃を持つラーズは少女を「ジェイ」と呼ぶと、彼女を誘拐していることが会話から明らかになります。
ラーズが車から出た後、ジェイに「必ず助ける」と言い車を後にしたダービー。
しかし、ラーズはすぐに車に戻り、ダービーが残した足跡から何者かがジェイの存在を知ってしまったことを確信。
施設内に戻ったダービーは若者のアッシュに自分の知る事実を話します。
ジェイが病気を患っていることから急ぎの救助を求めるダービーは、アッシュがラーズを見ている間にバンへと戻り、ジェイの猿轡を取ります。
するとジェイは「犯人は2人いる」と言い、もうひとりの犯人がアッシュであると分かります。
トイレから施設内に戻ったダービーでしたがアッシュに先回りされ拘束されてしまいました。
アッシュはジェイを身代金目的で誘拐したと話し、ジェイの抱えるアジソン病が「興奮するとアドレナリンを過剰分泌する病気である」と言い関わらないようにと忠告。
車の中に居たジェイはダービーが残したナイフを使い拘束を解き車から脱出しており、その様子を目撃したアッシュとラーズはダービーを連れジェイの逃げた山林を捜索。
2人の隙をついたダービーはアッシュに発砲を受けながらも山間に逃げ込みます。
その頃、銃声を聞いたエドとサンディは駐車場でジェイを見つけ出し彼女を保護。
施設内に逃げ戻ったダービーはサンディとエドにアッシュとラーズの犯行を伝えます。
映画『パーキングエリア』の感想と評価
閉ざされた空間で繰り広げられる極限の攻防
猛吹雪によってパーキングエリアに避難することになった大学生のダービー。
しかし、駐車場に停められている車の中で監禁されていた少女の存在に気づき、犯人はパーキングエリアに避難していた先客4人のうちのひとりであることが確定します。
逃げ場のない極限の状況下で繰り広げられる、手に汗握る疑心暗鬼の攻防劇。
クエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』(2016)を彷彿とさせるような、ワンシチュエーションな疑心暗鬼スリラーとして楽しめる作品でした。
「雪」がもたらす、災厄と福音
本作では雪がもたらす脅威が登場人物を飲み込んでいく様子が描写されています。
ダービーは母のいる病院を目指していましたが雪によってパーキングエリアに避難せざるを得なくなり、騒動に巻き込まれることとなります。
猛吹雪で外からの助けも呼べず、そして視界悪化と凍死の恐れから逃げることも出来ない極限状態へとダービーを追い込む雪の脅威。
しかし、雪そのものは人の良し悪しに関わらず平等にその脅威を発揮しており、誘拐犯もまたパーキングエリアに足止めされる存在のひとり。
雪が無ければ犯罪は見咎められることもなく、ダービーは子供を救う手すら差し伸べることは出来ませんでした。
人間の悪意に恐怖する一方で、自然の平等さについても考えさせられる作品です。
まとめ
禁酒リハビリ施設に入れられながらも、自身の癖を見直すことをせずに目的のためなら違法な手段を使うことを厭わない主人公のダービー。
しかし、彼女は決して悪人というわけではなく、立ち寄ったパーキングエリアの車内で監禁されている少女を見過ごすことができず、全てを投げうってでも犯人に立ち向かうことを決めます。
人の善意と人の悪意がひとつのパーキングエリアに集う、緊張感たっぷりのサスペンススリラー映画『パーキングエリア』はスリラー映画好きにオススメの1作です。