連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第81回
映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』は、2022年2月25日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!
原作はジェームズ・ボーウェンのノンフィクション。その日暮らしの青年が1匹の猫との出会いを通して人生の再生をしていく姿を描いた『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(2017)の続編です。
出版記念パーティーに出席した帰りに、警察官に連行されそうになるホームレスの青年をジェームズが助け、自分とボブの路上で過ごした最後のクリスマスの話をします。
ホームレスのストリートミュージシャンからベストセラー作家に転身を果たしたジェームズと、茶トラの彼の飼い猫ボブとの心温まる物語。
前作に続きルーク・トレッダウェイが主演で、監督はチャールズ・マーティン・スミスが務めます。
CONTENTS
映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』の作品情報
【日本公開】
2022年(イギリス映画)
【原作】
ジェームズ・ボーウェン
【脚本】
ギャリー・ジェンキンス
【監督】
チャールズ・マーティン・スミス
【撮影】
デビッド・コネル
【美術】
アントニア・ロウ
【編集】
クリス・ブランデン
【音楽】
パトリック・ニール・ドイル
【キャスト】
ルーク・トレッダウェイ、クリスティーナ・トンテリ=ヤング、ファルダット・シャーマ、アンナ・ウィルソン=ジョーンズ、ボブ(猫)
【作品概要】
本作『ボブという名の猫2 幸せのギフト』は、ホームレス同然のストリートミュージシャンが一匹のノラ猫との出会いによって再生していく姿を描いた前作『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(2017)の続編。
その日暮らしの主人公が、最も困難で苦しい選択を迫られた忘れられない路上生活最後のクリスマスの話をホームレスの青年に語ります。
前作に続き主役は、『アタック・ザ・ブロック』(2011)『タイタンの戦い』(2010)のルーク・トレッダウェイ。本作の監督はチャールズ・マーティン・スミスが務めます。
映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』のあらすじ
ホームレス同然の生活を送っていた青年ジェームズのもとへ、ある日足を怪我した茶虎のノラ猫がやって来ました。ボブと名付けられた猫はそのままジェームズの飼い猫となります。
いつしかライブを行うジェームズのそばにボブも居るようになり、ボブとジェームズは有名になりました。そのかいあって、ジェームズはベストセラー作家への転身を果たしたのです。
出版社のクリスマスパーティに出席した彼らは、その帰り道で、路上演奏違反で警察官に取り押さえられたホームレスの男性を助けました。
ジェームズは自暴自棄になっているその男性に、路上で過ごした自分の最後のクリスマスの話を語り出します。
それはジェームズにとって、最も困難で苦しい選択を迫られた忘れられない日でした。
映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』の感想と評価
ボブとの暮らしにさす暗い影
ベストセラー作家に転身してやっと夢を叶えたジェームズ。そんな彼が自暴自棄になっているホームレスの青年に語ったのは、自分が最も辛い選択を迫られたクリスマスの話でした。
前作『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』では、怪我をしたボブを手厚く看病したジェームズに恩返しをする猫のボブの姿が見られます。
前作から一人と一匹がしっかりとお互いの存在を確かめあい、信頼を築いて、離れられない絆を作り上げてきました。本作で語られるのは、信頼を築いてから現在に起った、彼らにとって最もつらい出来事です。
ボブとジェームズに何があったというのでしょう。
悪い予感がわきおこる展開ですが、ツンデレを決め込んでいるのに、時々ジェームズを気遣う素振りをみせるボブの愛らしさが、作品を心温まるものにしています。
何が幸せと言えるのか
言葉を話せない猫が自分の意志を伝えるのは、並大抵のことではありません。人の勝手な見識や想像によって、ボブも無理やり飼われている可哀想な猫と思われたりします。
ボブの幸せは、いえ、ボブだけに限らず、ペットの幸せというのは、彼らが今置かれた状況に満足しているかどうかで決まるのではないでしょうか。
言葉は話せなくても、飼い主の孤独感や傷ついた心を察して癒してくれる存在のペットは、飼い主にとっては無くてはならない相棒です。
たくさんの友人、ハリのある毎日、満ち足りた笑顔……。
作中でボブがジェームズに与えてくれたもののなんと多いことでしょう。
お互いの存在を確認しあってボブと一緒にいられること。これがジェームズにとっては最高の幸せなのに違いありません。
まとめ
前作は、猫の恩返しともいうべきストーリー。ノラ猫のボブがジェームズに人生巻き返しのチャンスをくれました。
続編となる本作では、奇跡を呼んだボブの境遇を傍から見て、彼が幸せなのかと問われているようです。
大好きな人と一緒に居心地の良い暮らしができるなら、ボブも何も望まないと思われます。猫のボブにとっては、人間のすることは大きなお世話かもしれません。
ストーリーが展開するにつれ、本作では「いつも一緒に笑顔でいられること」が、ボブとジェームズの最強バディの幸せなのだと確信できます。
幸せを招いてくれるボブ。そんな猫が本当にいるのなら、きっと一緒に暮らしたくなることでしょう。
映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』は、2022年2月25日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!
次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。