連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第25回
大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。
2021年のテレビアニメ2期「遊郭編」のテレビ放送、そして9月25日(土):夜9時の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のテレビ初放映が迫る中、1期「炭治郎立志編」に新規カットを加え再編集を行った特別編が先んじてテレビ放映され、第二次鬼滅ブームの機運が高まっています。
今回はその一編にして、9月18日(土):夜7時に放映される「鼓屋敷編」のあらすじとエピソード解説をネタバレありでご紹介します。
『鬼滅の刃 鼓屋敷編』の作品情報
【放送】
2021年
【監督】
外崎春雄
【キャスト】
花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、山崎たくみ、石見舞菜香、大塚芳忠、土岐隼一、市来光弘、岡崎美保、関俊彦、諏訪部順一
【作品概要】
2019年に放送されたテレビアニメ『鬼滅の刃』の10~15話を編集した「鼓屋敷編」は、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』でのメガヒットも記憶に新しい外崎春雄が監督を担当。アニメーション制作は「Fate」シリーズや『空の境界』などで知られるufotableが担当しています。
「鼓屋敷編」で戦う事となる響凱の存在により、以降の物語で炭治郎をはじめとした鬼殺隊と激しい戦いを繰り広げることとなる“十二鬼月”の謎の一部が明かされる他、後に炭治郎にとってのかけがえのない仲間となる善逸・伊之助との出会いが描かれています。
『鬼滅の刃 鼓屋敷編』のあらすじとネタバレ
珠世と兪史郎との出会いを経て、鬼と化してしまった妹・禰豆子(声:鬼頭明里)を人間に戻す手がかりを得た竈門炭治郎(声:花江夏樹)は、鎹鴉の伝令により新たな任務へ赴きます。
その道中、道端で少女に縋りつき「結婚してくれ」と泣きじゃくる少年に遭遇。困っている少女を見かねて仲裁に入る炭治郎は、その少年が最終選別で会った同期の隊士・吾妻善逸(声:下野紘)である事に気が付きます。
少女を巡るひと騒動(主に善逸の勘違い)が落ち着き、善逸と炭治郎は同じ任務に赴いていること知ります。そして鎹鴉に誘われ辿り着いた屋敷の前で、二人は子供の兄妹に出会います。
正一(声:市来光弘)、てる子(声:岡崎美保)と名乗る兄妹は、兄が何者かにさらわれ、何とかそれを追い続けてきた結果、この屋敷に辿り着いた事を二人に明かします。
炭治郎は屋敷から漂う匂いにより、そこに鬼がいることを察知。禰豆子の入った箱を正一・てる子に預けると、嫌がる善逸と共に屋敷へと入ります。
その後、二人を追って室内へ入ってきてしまった正一・てる子と合流する炭治郎・善逸。ところが屋敷鼓の音が鳴り響いた途端、炭治郎とてる子、善逸と正一は別々の部屋へ移動させられ、はぐれてしまいます。
てる子を安心させる炭治郎ですが、二人の前に体に鼓を付けた巨体の鬼・響凱(声:諏訪部順一)が出現。炭治郎はその匂いから、響凱こそが屋敷の主であることを察知します。
一方の善逸は、年下で一般人である正一にさえ恐怖から泣きつく始末で、とにかく屋敷の外に出ようとします。その途中、猪の皮を頭に被った謎の人物に遭遇しますが、その人物はあっという間に善逸たちの前から姿を消してしまいます。
対して炭治郎は、「“稀血”の子供を喰い損ねた」とうわ言のようにつぶやく響凱に迫りますが、鼓によって屋敷内の空間を自由自在に動かす響凱の血鬼術のせいで、思うように接近できません。
そこに、例の猪の皮をかぶった人物が乱入してきます。
『鬼滅の刃 鼓屋敷編』の感想と評価
2019年に放映されたTVアニメ『鬼滅の刃』の11~15話を再編集した「鼓屋敷編」。本エピソードは、以降の『鬼滅の刃』の物語の「起点」となっていると捉える事ができます。
炭治郎が鼓屋敷で対峙した響凱は元“十二鬼月”であり、「浅草編」では「無惨の直属の配下」しか語られていなかったその実態の片鱗が明かされ、その設定は以降のストーリー展開へとつながっていきます。
また心根の優しい炭治郎が倒した鬼にさえも情けをかけ、その結果として死の間際に鬼の心が救われる展開が話題を呼んだ『鬼滅の刃』ですが、この「鼓屋敷編」での響凱を通じて初めて明確に「鬼が“人”だった頃の物語」が描かれており、それが以降の『鬼滅の刃』おなじみの演出となっていきます。
そして最も重要なのが、以降の物語で仲間として共に戦う事となる善逸・伊之助との出会い。「鼓屋敷編」の時点では二人ともまだ明かされていない設定が多いのですが、すでに二人の心境の変化や炭治郎との交流が描かれ、炭治郎と共に成長していく兆しが垣間見えます。合わせて、この「鼓屋敷編」では善逸と伊之助の戦闘シーンが初登場しますが、どちらの戦闘シーンも二人の個性をを深く印象付ける場面になっています。
特に善逸が「霹靂一閃」を使用し鬼を倒す場面は、尺としては僅か10秒程度の短さですが、善逸の背後から回り込み俯瞰ショットへと移動するカメラワーク、技が発動する際に巻き上がる埃や迸る雷、まさに“一閃”の語にふさわしい太刀筋のエフェクトは、あまりの速さに抜刀はおろか納刀の瞬間も目に映らない「霹靂一閃」の絶技を表現して余りある迫力を持ち、その映像を初めて観る者は誰もが鳥肌が立つはずです。
その他の場面においても、秀逸な点が多く見られます。中でも炭治郎と伊之助が素手で戦う場面は、「鼓屋敷編」の見せ場の一つである響凱と炭治郎の戦いがCG等のエフェクトを多用しているのに対し、あえてエフェクトをあまり使用せず、作画によって迫力ある映像を実現しています。
そのため、二人がテンポよく息をつかせぬ拳打の応酬を繰り広げる場面は、ジャッキー・チェンの香港映画さえも彷彿とさせる見事な演出でした。この場面では、それを可能にしている作画レベルの高さを実感できるのと共に、アニメ『鬼滅の刃』が作画・エフェクト共に高いレベルの作品である事が理解できます。
まとめ/次回の『鬼滅の刃全集中の考察』は……
「鼓屋敷編」でかけがえのない仲間である善逸・伊之助と出会った炭治郎は今後、度重なる困難に見舞われる事となります。
しかし、炭治郎は幾度となくその困難を仲間と共に乗り越えていく事からも、そんな仲間たちとの出会いを果たした「鼓屋敷編」は、ある意味では『鬼滅の刃』の「第二のはじまり」の物語を描いたエピソードなのかもしれません。そして炭治郎は、次の任務先である「那田蜘蛛山」にて、改めて“家族の絆”を試される事になります。
次回記事では、テレビアニメ2期「遊郭編」の放送、そして9月25日(土):夜9時の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のテレビ初放映に先んじて、9月23日(木):夜7時に放映される「柱合会議・蝶屋敷編」のあらすじとエピソード解説をネタバレありでご紹介します。