伝説の女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの子供時代の物語
アニメーション映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(2019)が高く評価されたレミ・シャイエ監督最新作の映画『カラミティ』が、2021年9月23日(木)より新宿バルト9ほかで全国公開されます。
西部開拓史上、伝説の女性ガンマンとされるマーサ・ジェーン・キャナリーの子ども時代を描いた、壮大なアニメーション映画の見どころをご紹介しましょう。
CONTENTS
映画『カラミティ』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス・デンマーク合作映画)
【原題】
Calamity, une enfance de Martha Jane Cannary
【監督・脚本】
レミ・シャイエ
【製作】
アンリ・マガロン、クラリー・ラ・コンベ
【音楽】
フロレンシア・ディ・コンシリオ
【声の出演】
字幕版キャスト:
サロメ・ブルバン、アレクサンドラ・ラミー、アレクシ・トマシアン
日本語吹き替え版キャスト:
福山あさき、松永あかね、木野日菜、木戸衣吹、畠山航輔、杉田智和、上田燿司
【作品概要】
長編デビュー作『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(2019)が高く評価されたレミ・シャイエによるアニメーション映画。
西部開拓時代のアメリカに実在した女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの子ども時代を描きます。
2020年のアヌシー国際アニメーション映画祭にてワールド・プレミア上映され、見事クリスタル賞(グランプリ)を受賞。
日本では2020年12月開催のフランス映画祭2020横浜にて字幕版が、2021年3月開催の東京アニメアワードフェスティバルでの日本語吹替え版プレミア上映を経て、満を持して同年9月に一般公開となります。
映画『カラミティ』のあらすじ
12歳の少女マーサ・ジェーンは家族とともに大規模な旅団に加わり、西へ向けて旅を続けていました。
しかしその旅の途中で父親が負傷し、マーサが家長として家族を守る立場に。
少女であることの制約にいら立つマーサは、家族の世話をする義務を果たすため少年の姿で生きることを決意します。
そんな彼女の生き方は、古い慣習を重んじる旅団の人々との間に軋轢を生み、さらにマーサを危機から救ってくれた中尉を旅団に引き入れたことで、盗みの共犯の疑いまで掛けられてしまい……。
映画『カラミティ』の感想と評価
何度も映画化された女性ガンマンの少女時代
本作『カラミティ』は、西部開拓史上、初の女性ガンマンとして知られるカラミティ・ジェーンことマーサ・ジェーン・キャナリー(1856~1903)が主人公です。
やはり西部開拓時代に名を馳せたガンマンのワイルド・ビル・ヒコックと親交を深め、南北戦争で北軍を指揮したカスター将軍の下で斥候として、さらに晩年は自身を主役とした巡業ショーを開くなど活躍しました。
しかしながら、その逸話の多くは都市伝説も含まれており、特に幼少期は謎が多い人物とされています。
本作では、『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のレミ・シャイエ監督のイマジネーションによる、12歳の少女マーサの成長譚が描かれます。
ちなみに、マーサが登場する映画も数本作られており、コメディ『腰抜け二挺拳銃』(1948)ではジェーン・ラッセルが、ミュージカル『カラミティ・ジェーン』(1953)ではドリス・デイがそれぞれ彼女を演じています。
参考動画:『カラミティ・ジェーン』(1953)
西部開拓をテーマにジェンダーレスな現代を描く
大規模な旅団に加わり、新天地を求めて旅を続ける12歳のマーサは、負傷してしまった父の代わりに家族を支えようと、乗馬に馬車の手綱さばき、投げ縄といった男性の作業を自ら行おうとします。
しかし、「女性は女性らしくあれ」という根強い慣習が彼女を妨げ、やがて旅団全体に降り注ぐトラブルが原因で、カラミティ(厄介者)扱いされてしまいます。
やがて、自身に着せられた泥棒の濡れ衣を晴らすべく、一人旅に出ることとなるも、さまざまな困難と人との出会いにより、“自分らしさ”を見つけていくことに。
もちろんこれは、ジェンダーレスな現代にも十分通じるテーマなのは言うまでもありません。
男性優位社会の中で、男らしさとは何か、そして女らしさとは何かについて、真正面に向き合った内容となっています。
映える絵画的作画デザイン
前作『ロング・ウェイ・ノース』でも大きな特徴となった作画スタイル。
輪郭線を使わずにキャラクターを囲い、ベタ塗りの色彩と陰影によって、人物と背景を絵画的に描く作画は、本作でも際立っています。
前作では陰影表現を用いて描かれた白銀の世界が印象的でしたが、本作で目を引くのが自然の風景描写でしょう。
平原の草木に透き通った川の水、黄色や橙色を何重にも重ねた雲や、ほのかに明るい星が輝く夜空など、その鮮やかな色彩は挙げるとキリがないほど。
それでいて手描き作画から伝わる“あたたかみ”も、大きな魅力です。
まとめ
マーサは、何も男子に憧れたり、男子になろうとしているのではありません。
むしろ彼女は、女性であることに誇りを持っています。
平原の女王と呼ばれ、若くして自身のアイデンティティを示したカラミティ・ジェーンの熱き物語に、ご期待ください!
映画『カラミティ』は、2021年9月23日(木)より新宿バルト9ほかで全国公開。