大人気ヴィランを主人公としたタイムトラベルドラマ『ロキ』
自身の未来が運命によって定められており決して覆すことが出来ないと知った時、それが悪い運命だとしても簡単に受け入れることが出来るでしょうか。
「運命」と言う言葉は時に人の希望となり、時に絶望にもなり得る概念のような存在。
今回はそんな「運命」と対峙し、真の自由を勝ち取るために奮闘するヴィランを描いたスピンオフドラマ『ロキ』(2021)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
ドラマ『ロキ』の作品情報
【配信】
2021年(Disney独占配信)
【原題】
Loki
【監督】
ケイト・ヘロン
【脚本】
マイケル・ウォルドロン
【キャスト】
トム・ヒドルストン、オーウェン・ウィルソン、ソフィア・ディ・マルティーノ、ググ・バサ=ロー、ウンミ・モサク、タラ・ストロング、サッシャ・レイン
【作品概要】
映像配信サービス「Disney+」で独占配信された「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」のスピンオフドラマ第3弾。
シリーズの大人気ヴィランのロキを引き続きトム・ヒドルストンが演じ、「ナイト・ミュージアム」シリーズのオーウェン・ウィルソンや『クローバーフィールド・パラドックス』(2018)で主演を務めたググ・バサ=ローが本作でMCUシリーズに参加しました。
ドラマ『ロキ』のあらすじとネタバレ
かつて時間の「分岐点」から生まれた多数の時間軸が覇権を争い戦争が勃発。
その戦いを憂いた「タイムキーパー」と呼ばれる能力者は時間軸を統一した「神聖時間軸」を生み出します。
タイムキーパーは「時間変異取締局(TVA)」を設立し「多元宇宙」の基となる分岐点を作り出す「変異体」を捕縛し、神聖時間軸を守ってきました。
2012年のニューヨーク、ロキとの決戦を終えた過去のアベンジャーズから「4次元キューブ」を奪おうとする未来のアベンジャーズでしたが、目論見は失敗しロキにキューブを奪われ逃走されてしまいます。
キューブの力を使いゴビ砂漠へと逃走したロキは、駆け付けたTVAのハンターに捕縛され本部へと連行されます。
ロキは分岐点を作り出した元凶として捕縛され、その処遇は裁判によって決まることになります。
「アベンジャーズが過去の改変を行おうとしたのが元凶であり、彼らを処分するべきだ」と主張するロキはすぐに処分されそうになりますが、メビウス分析官がラヴォーナ裁判長の反対を押し切りロキを引き取ります。
ロキは自身が最も賢い存在だと確信しており、決断に踏み切れなかったり間違った決断によって不幸な道を辿る愚かな民衆を導こうと言う大いなる理想を持っていました。
しかし、取調室でロキと対面したメビウスはロキの行動によって彼の母が死亡してしまう未来を見せ、いたずらでは済ますことの出来ない暴力を働く悪党であることを自覚させようとします。
自尊心を傷つけられたロキはTVA自体が自身を追い込むために作られたトリックに違いないと思い取調室から逃げ出しますが、自身の魔力が全く使えないどころか大量のインフィニティ・ストーンが無力化されている様子を目撃し、TVAが自身の知る世界より遥かに進んだ存在であることを理解します。
取調室に戻ったロキは、自身が今後辿るはずだった未来の映像を見始めます。
言動とは裏腹に愛していた義母と義父が自身の行動によって死亡し、いがみ合っていた義兄のソーと協力関係を取り戻したもののサノスによって殺害されてしまう未来を見たロキは深く後悔します。
メビウスに自身の悪意は「力がないからこそ行う悪あがき」だと吐露したロキは、メビウスからさまざまな時代に派遣されたTVAのハンターたちを虐殺する危険な「変異体」の確保の協力を求められます。
なぜ自分が選ばれたのかを聞くと、メビウスはその「変異体」が別次元のロキであるからと言いました。
ロキは「ラグナロク」によって故郷のアスガルドが滅亡する未来が書かれた資料を読み、住民全員が死亡するような大災害が起きる場所では変異体が何をしようが未来は変わらず、それゆえにTVAも感知できないと言う仮説を立てます。
2050年に発生するアラバマでの大嵐が変異体ロキの隠れている災害であること突き止めた2人はTVAのハンターを引き連れ2050年に向かいます。
メビウスとロキは別行動を取ると、他者の精神に乗り移る技を使う変異体ロキがロキに接触。
ロキの前に姿を現した変異体ロキは女性であり、TVAのハンターを襲撃した際に奪った大量の変異を削除する爆弾「リセットチャージャー」を起動。
さらにTVAの装備である時間を移動する「タイムドア」でリセットチャージャーをさまざまな時間軸に移動させました。
TVA本部では大量のリセットチャージャーによって神聖時間軸に分岐点が生まれパニックが起きます。
変異体ロキは分岐点の点在によって混乱するTVAの本部へタイムドアを使い襲撃を仕掛けますが、ロキによってタイムドアを作られ、2人は滅亡寸前の惑星ラメンティスへと移動。
しかし、「タイムパッド」の電源が枯渇しタイムドアを作ることが出来なくなり、2人はラメンティスから脱走不能となります。
タイムパッドを魔術で体内に隠したロキと、タイムパッドの充電方法を知る変異体ロキは不本意ながらも協力することになりました。
変異体ロキは「シルヴィ」と名乗り、自身の長年の計画であるTVAを崩壊させ時間に自由を取り戻す計画がロキのせいで失敗したことを憤慨。
2人はラメンティスから貴族たちが脱出するための宇宙船から動力を得ようとしますが失敗し、タイムパッドも破損してしまいます。
脱出を諦めたシルヴィはアスガルドに居た幼少期に大きな分岐点に存在したことでTVAに逮捕され、逃亡生活を余儀なくされたことをロキに話します。
彼女の話の中で彼女が洗脳したTVAの職員に「TVAの職員になる前の記憶」があったことを知ったロキは、「タイムキーパーがTVAとその職員を創造した」と言う物語が嘘であり、TVAの職員は記憶を消された変異体なのではないかと疑いを持ちました。
TVAの本部では分岐点の監視装置が異常に高い数値を捕捉し、メビウスはラメンティスへと急行し2人を逮捕。
メビウスは終末の惑星で分岐点が発生した原因がロキとシルヴィと言う別次元のロキ同士が恋愛感情を持ってしまったからではないかと考えます。
ロキはシルヴィの行動や自身の行動に対して嘘を並べ立てた性で、「TVAの職員が記憶を消された変異体」と言う説をメビウスに信じてもらうことが出来ず、幽閉の期間が続きます。
ラヴォーナにロキから得た情報を説明するメビウスは、彼女の言動やシルヴィへの尋問を拒否する姿勢に違和感を覚え、ラヴォーナのタイムパッドを盗み出します。
盗んだタイムパッドの記録を確認するメビウスは、ハンターの1人がシルヴィの洗脳の影響でTVA以前の記憶を取り戻し、自分たちが変異体である旨をラヴォーナに告発する映像を見つけます。
そのころ、シルヴィに過去に洗脳を受けたハンターのB15も自身の中にある記憶を不審に思い、独断でシルヴィと接見し自身たちが変異体であることを聞きだしていました。
告発動画を見たメビウスはロキを信用し彼を牢獄から解放。
ロキもメビウスを信頼し、「今からでも善人になれる」と話すメビウスを友と呼び動き出します。
しかし、メビウスの動きはタイムパッドの盗難に気づいたラヴォーナに捕捉されており、牢獄を出た場所でメビウスは「剪定(時間軸からの消滅)」されてしまいます。
ロキとシルヴィはラヴォーナによってタイムキーパーの前に連れてこられ、その場で剪定を受けることとなります。
その場に現れたB15が2人の拘束具を外すとシルヴィとロキは協力してラヴォーナたちを倒し、シルヴィはタイムキーパーの首を落とします。
しかし、3人のタイムキーパーはロボットであることが分かり、2人は「誰がこのロボットを作ったのか」と言う問題に悩まされることになりました。
ロキはシルヴィに対し特別な感情を持っていることを自覚し、彼女にTVAにまつわる全ての謎を解くことを約束しますが、隙をついたらラヴォーナによって剪定されてしまいます。
ドラマ『ロキ』の感想と評価
己が運命を打ち破る物語
『マイティ・ソー』(2011)で雷神ソーの弟として初登場し、マーベルヒーローの初の集合作となった『アベンジャーズ』(2012)でもメインヴィランを務めた人気キャラクター「ロキ」。
「トリックスター」として有名な北欧神話の神をモデルとしているため、劇中では「裏切りの神」に相応しい先の読めない行動で物語を引っ掻き回します。
ロキの悪の行動は「血の繋がらない両親や兄弟に自身の力を認めてもらいたい」という心から生まれており、根っからの悪人ではないこともこのキャラクターの魅力の一つとなっています。
そんなロキを主人公とした本作では、善と悪の狭間で揺れる彼が「ヴィランでなければならない」と言う定められた運命に立ち向かう物語となっており、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で改心しながらも死亡したロキを残念に思った方にこそ観て欲しいドラマです。
ラストシーンの意味
本ドラマはTVAを作り出し「アベンジャーズ」をも遥かに超える存在である「在り続ける者」の石像がTVAのロビーに建っているラストシーンで終わり、物語はシーズン2へと引き継がれることになります。
ロキとシルヴィの会った「在り続ける者」は自身が死ねば他の宇宙の「在り続ける者」が支配者の座に着くべく戦争を仕掛けてくると話していました。
ロキの見た石像によって、他の宇宙の「在り続ける者」がロキのいる次元のTVAを支配する立場となったことが分かり、メビウスの反応からはロキがTVAに来たと言う過去が消されていることが想像できます。
MCUにおける「多元宇宙(マルチバース)」との接触は遂に本作から本格的になり、予定されている『ドクター・ストレンジ イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』(2021)が本作の物語からどのような影響を受けた作品なのかが期待されます。
まとめ
最新MCU映画『ブラック・ウィドウ』(2021)では、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021)のキャラクターが登場しただけでなく「Disney+」で配信予定のドラマ『ホークアイ』(2021)への布石となるシーンがあり、MCU映画はドラマの鑑賞を前提とした舵きりを始めたことが明らかとなりました。
アベンジャーズを翻弄し、時に共闘する裏切りの神「ロキ」がこの後のMCU世界にどう影響を及ぼすのか。
そしてアベンジャーズを遥かに超える組織「TVA」の存在は果たして正義なのか。
自身の忌まわしき運命に立ち向かうロキの物語をぜひとも「Disney+」で鑑賞してみてください。